EC物流/第4回:倉庫は委託すべきか、自社で行うべきか

皆さん、こんにちは。坊主の頭株式会社の加藤です。
EC物流についての第4回目です。

前回までで倉庫業務の内容と重要性について話しましたが、倉庫は委託すべきなの?自社発送でやった方が良いの?という点について私見となりますがお話いたします。

今回のテーマ

・所説あるが、私は断然委託
・売上規模拡大のボトルネックになるケースが多い
・自社出荷から倉庫委託への切り替えについて
・倉庫委託のメリット

所説あるが、私は断然委託

倉庫に限らず、委託の考え方としては自前(自社)で行うことのコスト(人件費、設備費、管理費など)と委託料を比べてどうか?というところが一番の判断ポイントだと思います。

商材や規模にもよると思うのですが、私が自分の今の立場でEC店舗での販売をするとなると、委託する方向で考えると思います。

第6回でも話す予定ではありますが、委託を検討する時には取り扱ってる商材が委託に向いてるか?向いてないか?ということも大きな要因になります。特別な許可を取っていないと取り扱えない商材もありますし、温度管理・湿度管理なんかも必要な商材もあります。

私が物販を行うなら、簡単に倉庫委託できる商材で始めるだろうと思ってます。何故ならば、それだけ出荷作業を自分でやりたくないからです。一言で言ってしまうならば、出荷作業が面倒だからやりたくない。のです。

「面倒」というところから派生して、もうちょっと掘り下げた理由をお話しますね。

売上規模拡大のボトルネックになるケースが多い

これは前職の時に開催したウェビナーでも何度も話していることなのですが、受注処理→出荷作業という、ECのバックヤード業務がネックでECの売上規模を拡大できない、というケースを多く見て来ました。

この話をするにあたって前提として【売上UPの施策を行うにも時間がかかる】という事をご認識いただきたく思います。ここを掘り下げて話してしまうと長々と脱線してしまうので今回は割愛しますが、売上UPの施策は「時間がかかる」+「頭を使う(試行錯誤が必要)」な業務になります。

本題に戻りますと、ECを立ち上げた当初はまずは多少の売上を立てることが最優先となり、受注数自体も少ないので受注が入って来ることに喜び、受注処理→出荷作業が大きな苦難だと感じることはないのではないでしょうか。

売上が増えて来て、受注数が増えて来るとそれだけ出荷をしなければならない件数も増えます。ピッキングして、検品して、梱包して、送り状発行して貼り付けて、配送業者様へ引き渡す。

ここの体制が整っていないと、売上規模を拡大すればするほど売った後が地獄になって行くんですね。出荷作業の人手が足りなくなり、本来であればフロント担当(販促・店舗運営)の人まで出荷作業に回って貰うこともあるでしょう。そうでなかったとすれば、出荷担当の不満が溜まっていくことでしょう。

事業としては売上を伸ばすことが目的だったはずなのに、目的の達成に近づくにつれ、内部の状況がどんどん悪くなって行き、「売上を伸ばす」ということに消極的になっていくことが十分にあり得ます。

安心して売上規模を拡大していくためには受注処理→出荷作業と言ったバックヤードの効率化が必要不可欠になってきます。(受注処理の部分は次回お話いたします)

EC店舗側として出荷作業の最大の効率化(自動化)はアウトソーシング、委託です。

私もECの店舗担当を行っていた時は倉庫を委託していました。私がジョインした時には既に委託した後だったので、私自身が出荷が大変で売ることを躊躇した経験はございません。過去の歴史や他の企業様の話を聞いて見えた部分になります。

その点、出荷の心配をせずに売ることができる環境だったのは本当に幸せなことだったのだな、と改めて思います。

自社出荷から倉庫委託への切り替えについて

自社出荷をされていて、いざ倉庫をアウトソーシングしよう!となった時に悩まれる大きな理由が現在自社で抱えている出荷作業の担当者をどうするか?だと思います。

出荷作業も兼任で行っている場合であれば良いのですが、専任の場合は仕事がなくなってしまいますからね。悩みどころかと思います。

聞いて来た事例としては、仕事をコンバート・変えるということが多いです。出荷作業のスタッフは今まで商品の実物に触れて来た方なので、商品の知識を活かせる仕事が相性が良いという見方が多いです。

そのため、商品部やカスタマー業務に適正があるのではないでしょうか。また、単純に人手が欲しいところに配置することもあり得ると思います。新しいことを覚えていただく必要はございますが、職を失うということは回避できるのではないかと思います。

委託のメリット

自社出荷だと対応が難しそうな部分から倉庫を委託するメリットを整理してみました。ポイントは3つになるのではないかと思っております。

1.設備投資

最近のECでは配送のスピードも重要視されることが多いです。理想を言えば、注文した翌日には届く。365日、土日祝関係なく。と言ったところになります。普通に考えれば大分おかしいことを言っているのですが、Amazon発送はこのクオリティを実現しているんですよね。

出荷業務も手作業で行っていると、そのクオリティにはとても追い付けないと思うのです。出荷現場の自動化も必要なことになってくるのではないでしょうか。実際に、富士ロジテック様を含めた倉庫業者様はロボットの導入も進めています。

自動梱包機やピッキング用のロボットなんかもあったりします。

このような設備を自社出荷で整えるのはなかなかに非現実的だと思うんですよね。餅は餅屋と言うように、配送のスピード・クオリティを上げる為の設備という面でも委託のメリットは高いと思います。

2.波動への対応

1日の出荷量って毎日同じ数、ではないんですよね。

繁忙期もあれば閑散期もあります。同じ1週間の中でも売れる曜日もあれば売上が落ち込む曜日もあります。このような売上の波を波動と呼びます。

これが誤差10%程度のさざ波みたいな感じであればそんなに問題視はしないのですが、閑散期と繁忙期の差が2倍とか3倍とか誤差レベルじゃない感じで差があるのが厄介なところなのです。

ベースが5件/Dayなどであれば、3倍になっても15件なので捌けると思います。でも、売上規模が増えて来て、1000件/Dayがベースになったりすると・・・3倍だと3000件になります。

自社出荷の場合、どうやって捌く?という疑問や、そもそもどの出荷件数を見越して人員を雇っておく?という疑問が出て来ます。多く雇っておけば出荷体制としては問題無いと思いますが、人件費で見たときに閑散期は無駄な人件費になってしまいそうです。

倉庫に委託しておくことで、出荷現場のスタッフの人数調整も倉庫側で行ってくれます。1社分の倉庫業務を行っているだけでなく、複数の企業の倉庫業務を行っているので、その時の状況に応じてスタッフの配置を均すことができるのが倉庫業者の強みであると言えるでしょう。

3.配送業者との付き合い

自社出荷の企業様であれ、出荷作業は配送業者様に引き渡すところで終わりかと思います。実際に荷物を輸送し、お客様へお届けしてくれるのは配送業者様になります。配送業者様無しで、EC店舗って成り立たないんですよ。

ここ数年でEC化率が上昇し、小口の配送が増え、配送業者様も凄く大変になって来ています。配送料の値上げのニュースも耳にすることが増えました。

最近は緩和されてるのかな?と思いますが、ちょっと前には配送業者様のキャパがパンクして、荷物を持って行って貰えなくなる(配送業者様と契約できなくなる)なんて話も耳にしました。

そのようなところからEC店舗を運営する上で、お客様にも選んでいただく必要がございますが、配送業者様にも選んで貰えるようにすることも必要なのではないかと思うようになりました。

集荷の時間に確実に準備しておく、ことも当然必要だと思いますし、持って行きやすいように荷物を整理しておいておくとか、配送業者様との信頼関係をしっかり結んでおくことが重要なんじゃないかと思います。

ここは自社出荷でも可能な領域ではあると思いますが、物流を生業としている倉庫業者様であればこの辺りも抜かりなくやってくれるのではないか?という信頼感はあると思うんですよね。多くの荷物を取り扱っているので、その分、配送業者様とのやりとりも濃くなっているので、物流が止まることは無いのではないかと思います。

このような理由により、委託が100%正しい!とは言いませんが、私は倉庫は委託した方が良いのではないかと思っております。

【著者紹介】
坊主の頭株式会社(https://bozu-head.co.jp/)
代表取締役社長 加藤誠



EC店舗の成長には壁がある。2つ目の壁(受注数が増えて受注処理→出荷作業が回らなくなって来て売上規模の拡大に踏み切れない)を突破するまで伴走するECの家庭教師を行っております。

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