【D2C/eコマース/OMO ビジネスモデル編】EC・D2C・DNVBのビジネスモデルとは?バズワードにしないために徹底比較
Written by 株式会社富士ロジテック 西間木 智
2021年、D2Cブームが盛り上がっていますが、従来の、Eコマースビジネス(EC)と、D2C、そしてD2CのそもそもビジネスモデルであるDNVB(「Digitally Native Vertical Brand」の略称)について明確に自社のビジネスモデルとして理解をしていないままに、ブームとして言葉を利用しているとの指摘を受けることが多くなってきました。
本当に、顧客視点に添ったソリューションビジネスを提供して目指して行かないと、顧客から一律にソッポを向かれるのも遠くない未来だと考えています。
- 「それって、昔からある通販のことですよね?」
- 「D2C(DTC)って言って、ECをカッコよくしているだけですよね。何が違うのですか?」
- 「単品リピート通販と、サブスクってどう違うの?」
さまざまな用語が飛び交うようになり、混合してマーケティング的に使っている事業者も多いのと、顧客も見透かしているのではないでしょうか。
そこで、ECとD2C、DNVBそれぞれの特徴・概要について考察していきます。
EC:Eコマース
ECとは「electronic commerce」の略称です(日本でしか通じません)、従来のリアル店舗でのモノやサービスを提供、購入する体験を、インターネット上で提供するサービス形態です。
アナログ(オフライン)モデルで、4マス広告を展開して、コールセンターに着電して欲しい商品を聞いて発送したりすることは、通販と定義しておきます。
デジタル(オンライン)モデルで、デジタル広告を展開して、自社ECサイトに訪問して購入体験をして頂くことを、ECと定義しておきます。リアルな店舗を通さない(持たないではない)、で顧客とダイレクトマーケティングを通じ購買体験を提供する手段のこととします。
場所や時間を問わないため、顧客の利便性が高いこともあり、その市場規模は益々の拡大をしていました、更に2020年のコロナウィルス禍による「巣ごもり消費」の影響を受け、市場の底上げは更に拡大したため、参入企業も増えているのと同時に既存事業としての強化が図られています。
D2C(DTCが本来の表記)
D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で和製表記です。ブランドがダイレクトに顧客とコミュニケーション&マーケティングをして。購買体験を提供するビジネスモデルです。
次のような工程をD2C事業者で顧客に提供しています。
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D2Cモデルを採用するメリットについて業務に添って検証してみます。
- 商品企画・開発
- 製造(OEM製造も含む)
- サイト制作(企画だけで、制作はパートナーも多々あり)
顧客視点のOur(私たち)のミッションや、ストーリー、ベネフィットなどの情報を直接伝えていきことで、ブランドを顧客とともに創り上げていくこと
- コミュニケーション&マーケティング
自社サイトへの訪問アクセスのために、ブランドストーリーなどのオウンドコンテンツを通じてのSEO対策
デジタルマーケティングでの広告出稿
SNS(Instagram・LINE・Twitter・YouTube・TikTokなど自社にとってコミュニケーションしたい顧客がいるコミュニティ)での、コミュニケーション・キャンペーン・PRプロモーションを実施する仕組み。
- 受注業務(出荷業務以降と含めて、フルフィルメント)
- 出荷業務(パートナーアウトソースが主流)
顧客が最初に商品に出会い、触れる、最大の接点である、Unboxingで感動と購買体験を醸成する企画と仕組み
- 配送(自社配送は、大手やプラットフォームだけ)
- 顧客関係性マネージメント(CRM:Customer Relationship Management)
初回購買や、リピートを通じて購入体験データと、顧客からの商品の感想などを直接入手することで、より顧客に寄り添った商品開発や、コミュニケーションにフィードバックしていくこ仕組み。
- アフターサポート
D2Cの特徴でメリットであり、成長の源泉です。
ECとD2Cは、マーケティング的には
「どんな投資をすれば何人くらいの購入があり、何円売り上げる」
というように、効率を上げ利益を追い求める、パフォーマンス・マーケティングの考え方が中心とも言えます。
特に日本では、ECとD2Cにももちろんブランディングもありますが、パフォーマンス・マーケティングが支配的です。その点からも、D2CはECの一部でもあります。(VCもそこを評価しています。)
DNVB(Digitally Native Vertical Brand)
DNVBとは、デジタルネイティブ世代(Digitally Native)に対し、バーティカル市場(Vertical Brand:ニッチな市場)において、顧客体験を提供するブランドと定義します。。
D2Cと同じ様にDNVBもインターネット上での購買決済までをするので、ECの一部でもあります。
DNVB は、D2Cのビジネスモデルの一つではありますが、商品(モノ)の訴求よりも
・ブランドの存在意義や制作秘話、ストーリー、
・参加型キャンペーンなどの体験を得られるコンテンツ(コト)から
・顧客の共感を獲得し、ブランド価値の向上までを目的としています。
これまでは「モノ」を購入してもらうためのマーケティングが主流でしたが、DNVBはブランドが提供する価値、体験といった「共感を得るコンテンツ」によるブランドコミュニケーションを通してブランドを作っていくモデルです。
EC→D2C→DNVBに移るにつれて、モノ→価値観に、顧客は価値を見出し、購買(ペイメント)するようになってきていると言えます。
「EC」「D2C」と「DNVB」のポイント
ECはオフラインのリアル店舗販売をデジタルに展開しているビジネスモデルの延長線上にあります。カートシステムはあくまでも、デジタル店舗でのレジ機能です。
DNVBはリアル体験がデジタルでソリューションが提供されていて、カートシステムよりコンテンツが重視されています。
顧客起点(ユーザーインターフェース UX:User Interface)での、最も大き相違は、
D2Cはデジタル上での共感が消費のきっかけです。ECが流通のチャネルとして登場し、そこにD2Cが登場して情報のチャネルが付加されてきました。
DNVBはリアルでの体験が消費の動機として、サービスのチャネルとバリューチェーンの垂直統合が加わったことがDNVBの重要な特徴となります。DNVBは商品を売るだけでなく、それ以外に無料や有料でサービスがついてくることもあります。
たとえば米国発の「Peloton」(ペロトン)は、エアロバイクのD2Cを展開していますが、そこにエクササイズのためのオンライン動画サービスがついていたり、同じクラスを受講している人同士とつながることができるコミュニティサービスなどがついています。更に、アメリカ的ですが、商品配送網まで自前で構築し、顧客バリューチェーンを統合しています。
今までEC、D2Cは一方的に商品や情報を届けるチャネルだったのに対し、サービスを届けるということ(ここが、サブスクリプションモデルでもあります。)と、インタラクティブに届けることができるようなチャネルを複数持っていることがDNVBの大きな特徴とも言えます。そのため、DNVBはすべての顧客体験から一次情報をとることができるという特徴があります。
たとえばPOSデータを製造業が手に入れようとすると他社の持つデータを購入してもらわなくてはなりません。広告でも他社の保有する情報は一次情報ではなくサードパーティ・データと呼ばれます。これを自社でとることが可能になれば、一次データなのでファーストパーティ・データになります。 DNVBは自社のバリューチェーンやカスタマージャーニーから一次情報をすべてとることに注力しているという特徴があります。
一方で、あらゆるタッチポイントから情報をとることは工数と労力がかかということは、時間とコストがかかるということです。事業としてのスケールやグロースのスピードが一定のキャズムを超えるまでは、パフォーマンスマーケティングでは劣ります、EC・D2Cでは顧客の態様データをとるよりとにかく売上・利益を上げようという考え方に陥りがちです。
熱狂的なオンラインのファンとのすべてのタッチポイントから一次情報をとれるという一見面倒なことを目指し、それらの顧客をアンバサダーとしてコミュニケションを拡大させていきます。お気づきのとおりDNVBはビジネス投資ではなくブランド投資です。
これを基礎として、D2Cビジネスや、DNVBビジネスに関するコラムを随時アップしていきますので、リクエストお待ちしております。