西間木 智
西間木 智

物流会社で20年経験しD2C EC スタートアップから中規模、大規模のeコマース事業者へフルフィルメントサービスの提供や物流の見直し・改善、スピード配送、複数拠点展開を設計して提唱している。 事業者様の売上貢献するために 「購買体験」 「リピート施策」 「Unboxing」 やOMO対応での「オムニチャネル」 「返品交換物流」 を提案し、事業者と常に伴走して最新の物流設計を試みる。

D2C・DNVB・EC(Eコマース)のビジネスモデルとは? 2023年徹底比較

D2C DNVB ビジネスモデル

【D2C/eコマース/OMO ビジネスモデル編】

2021年、D2Cブームが盛り上がっていましたが従来の、E-コマースビジネス(EC)と、D2C(DTC:Direct to Consumer)、そしてD2CのそもそもビジネスモデルであるDNVB(「Digitally Native Vertical Brand」の略称)について明確に自社のビジネスモデルとして理解をしていないままに、ブームとして言葉を利用しているとの指摘を受けることが多くなってきました。

本当に、「顧客視点」に添ったソリューションビジネスとして提供していくことを目指して行かないと、顧客から一律にソッポを向かれるのも遠くない未来・2023年だと考えています。

  • 「それって、昔からある通販のことですよね?」
  • 「D2C(DTC)って言って、ECをカッコよくしているだけですよね。何が違うのですか?」
  • 「単品リピート通販と、サブスクってどう違うの?」
    *サブスクリプションについてはこちら

さまざまな用語が飛び交うようになり、混合してバズワード・マーケティング的に使っている事業者も多いことを、顧客も見透かしているのではないでしょうか。

そこで、EC(本来は、Eコマースです。ECは世界では通じません)とD2C、DNVBそれぞれの特徴・概要について考察していきます。

EC:E-コマース とは

ECとは「electronic commerce」の略称です(ECは、日本でしか通じません)、従来のリアル店舗でのモノやサービスを提供、購入する体験を、インターネット上で提供するサービス形態です。

通販:通信販売=オフライン・アナログ
アナログ(オフライン)モデルで、4マス広告を展開して、コールセンターに着電して欲しい商品を聞いて発送したりすることは、「通販:通信販売」と定義しておきます。

E-コマース=オンライン・デジタル(オンライン)モデル
デジタル広告を展開して、自社ECサイトに訪問していただき、バイヤーズ・ジャーニー「購買体験」をして頂くことを、EC(E-コマース)と定義しておきます。リアルな店舗を通さない(持たないではない)、で顧客とダイレクトマーケティングを通じ購買体験を提供する手段のこととします。

場所や時間を問わないため、顧客の利便性が高いこともあり、その市場規模は益々の拡大をしていました。更に2020年のコロナウィルス禍による「巣ごもり消費」の影響を受け、市場の底上げは更に拡大したため、参入企業も増えているのと同時に、競争も激しくなっていますし、オフライン事業との連携としての強化が図られています。

D2C(DTCが本来の表記)とは

D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で和製表記です。ブランドがダイレクトに顧客とコミュニケーション&マーケティングをして、購買体験を提供するビジネスモデルです。

次のような工程をD2C事業者では、顧客に提供しています。

  • 商品企画・開発
  • 製造(OEM製造も含む)
  • サイト制作(企画だけで、制作はパートナーも多々あり)
  • コミュニケーション&マーケティング
  • 受注業務(出荷業務以降と含めて、フルフィルメント)
  • 出荷業務(パートナーアウトソースが主流)
  • 配送(自社配送は、大手やプラットフォームだけ)
  • 顧客関係性マネージメント(CRM:Customer Relationship Management)
  • アフターサポート

D2Cモデルを採用するメリットについて業務に添って検証してみます。

商品企画・開発

D2Cモデルを採用するメリットは、顧客・オーディエンスの課題の添った、商品企画・開発でできることです。これで事前に、商品が売れる=顧客に支持されるかなどをリサーチ検証することができます。

*コスメの商品開発のポイントはこちらのセミナーレポートを参考にしてください。

D2C/P2C スキンケア&コスメで成功・成長するポイント

製造(OEM製造も含む)

自社で製造設備を有している事業者は、従来型のモデルでCPG・アパレルなど展開事業者に限られています。(これらの旧来の企業がチャネルとマーケットの変化に対応するために、D2Cマーケットに参入していることも特徴的です。)

多くの、スタートアップはOEM/ODMでの商品調達が基本になります。
企画開発のポイントから、生産管理(SCM)そして、販売と在庫とキャッシュフローについては充分な知見と運用管理ノウハウが必要になります。

*コスメのOEM/ODMのポイントはこちらのインタビュー記事を参考にしてください。

#1化粧品の商品開発は効率化でき、顧客に支持されるのか

#2化粧品ビジネスの失敗事例と「しくじり先生」

#3化粧品関連企業・OEM&ODM企業検索のポイント

コマースサイト制作

企画を自社・創業者で実施して、実際のデザイン・コーディング制作はパートナーに依頼することが一般的です。

*パートナーとのリレーションのポイントはこちら

【フラクタ、シナブル、富士ロジテックに聞く】コロナで進化する『顧客体験』を商機に!「脱丸投げ」「顧客主体」が鍵

    コミュニケーション&マーケティング

      顧客視点の「Our(私たち)のミッション」や、ストーリー、ベネフィットなどの情報を直接伝えていくことで、ブランドを顧客とともに創り上げていくこと

      自社サイトへの訪問アクセスのために、ブランドストーリーなどのオウンドコンテンツ、SNSを通じてのコミュニティ醸成とSEO対策などを実施していきます。

      デジタルマーケティングでの広告出稿

      SNS(自社にとってコミュニケーションしたい顧客がいるオーディエンスコミュニティ)

      • Instagram
      • LINE
      • Twitter
      • YouTube
      • TikTok

      などでの、コミュニケーション・キャンペーン・PRプロモーションを実施して、フィット&ギャップを進めていきます。

      フルフィルメント業務

      購買後体験

      顧客が最初に商品に出会い、触れる、最大の接点である、Unboxingで感動と購買体験を醸成する企画と仕組み

      初回購買や、リピートを通じて購入体験データと、顧客からの商品の感想などを直接入手することで、より顧客に寄り添った商品開発や、コミュニケーションにフィードバックしていく仕組み。

      アフターサポート

      ■YouTube オムニチャネル・OMO TVで詳細を解説
      Post Purchase:購入後体験の改善

      D2Cの特徴でメリットであり、成長の源泉です。

      ECとD2Cのマーケティング視点分析

      「どんな投資をすれば何人くらいの購入があり、何円売り上げる」

      というように、効率を上げ利益を追い求める、パフォーマンス・マーケティングの考え方が中心とも言えます。

      DTC Formula

      特に日本では、ECとD2Cにももちろんブランディングもありますが、パフォーマンス・マーケティングが支配的です。その点からも、D2CはECの一部でもあります。(VCもそこを評価しています。) 

      DNVB(Digitally Native Vertical Brand)とは

      DNVBとは、デジタルネイティブ世代(Digitally Native)に対し、バーティカル市場(Vertical Brand:ニッチな市場)において、顧客体験を提供するブランドと定義します。

      D2Cと同じ様にDNVBもインターネット上での購買・決済までをするので、ECの一部でもあります。 

      DNVB は、D2Cのビジネスモデルの一つではありますが、商品(モノ)の訴求よりも

      • ブランドの存在意義や制作秘話、ストーリー、
      • 参加型キャンペーンなどの体験を得られるコンテンツ(コト)から
      • 顧客の共感を獲得し、ブランド価値の向上までを目的としています。

      これまでは「モノ」を購入してもらうためのマーケティングが主流でしたが、DNVBはブランドが提供する価値、体験といった「共感を得るコンテンツ」によるブランドコミュニケーションを通してブランドを作っていくモデルです。 

      EC→D2C→DNVBに移るにつれて、モノ→価値観に、顧客は価値を見出して、購買(ペイメント)するようになってきていると言えます。

      「EC」「D2C」と「DNVB」のポイント

      PCでのEコマースのフォト

      EC(E-コマース)はオフラインのリアル店舗販売を、デジタルに展開しているビジネスモデルとしての延長線上にあります。
      カートシステムはあくまでも、デジタル店舗でのレジ機能です。

      DNVBはリアル体験をデジタルでソリューションを提供されています、カートシステムより「コンテンツ」が重視されています。

      顧客起点(ユーザーインターフェース UI:User Interface)での、最も大きな相違

      D2Cはデジタル上での共感が消費のきっかけです。
      ECが流通のチャネルとして登場し、そこにD2Cが登場して情報のチャネルが付加されてきました。

      DNVBはリアルでの体験が消費の動機として、サービスのチャネルとバリューチェーンの垂直統合が加わったことがDNVBの重要な特徴となります。
      DNVBは商品を売るだけでなく、それ以外に無料や有料でサービスがついてくることもあります。 

      たとえば米国発の「Peloton」(ペロトン)は、エアロバイクのD2Cを展開していますが、そこにエクササイズのためのオンライン動画サービスがついていたり、同じクラスを受講している人同士とつながることができるコミュニティサービスなどがついています。更に、アメリカ的ですが、商品配送網まで自前で構築し、顧客バリューチェーンを統合しています。

      *Pelotonのビジネス解説はこちら

      今までは、EC、D2Cは一方的に商品や情報を届けるチャネルだったのに対し、サービスを届けるということ(ここが、サブスクリプションモデルでもあります。)と、インタラクティブに届けることができるようなチャネルを複数持っていることがDNVBの大きな特徴とも言えます。そのため、DNVBはすべての顧客体験から一次情報(ファーストパーティデータ)を取得して、活用することができるという特徴とメリットがあります。

      たとえば「POSデータ」をメーカーである製造業や流通卸が手に入れようとすると他社の持つデータを購入してもらわなくてはなりません。広告でも他社の保有する情報は一次情報ではなくサードパーティ・データと呼ばれます。これを自社でとることが可能になれば、一次データなのでファーストパーティ・データになります。 DNVBは自社のバリューチェーンやカスタマージャーニーから一次情報をすべてとることに注力しているという特徴があります。

      PCデータ

      一方で、あらゆるタッチポイントから情報をとることは工数と労力がかかということは、時間とコストがかかるということです。事業としてのスケールやグロースのスピードが一定のキャズムを超えるまでは、パフォーマンスマーケティングでは劣ります、EC・D2Cでは顧客の態様データをとるよりとにかく売上・利益を上げようという考え方に陥りがちです。

      熱狂的なオンラインのファンとのすべてのタッチポイントから一次情報をとれるという一見面倒なことを目指し、それらの顧客をアンバサダーとしてコミュニケションを拡大させていきます。お気づきのとおりDNVBはビジネス投資ではなく「ブランド投資」です。

      これを基礎として、D2Cビジネスや、DNVBビジネスに関するコラムを随時アップしていきますので、リクエストお待ちしております。

       

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      詳細はYouTubeをご覧ください。

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      西間木 智

      監修者

      株式会社富士ロジテックホールディングス

      西間木 智 / 通販営業部 部長

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