【Femcare 企業シリーズ】カイロ発・女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する教育:Mother Being

https://thisismotherbeing.com/

 Written by 植島 寛子

カイロを拠点とする新興企業「Mother Being」では、女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する教育、誤って続けられている風習、メンタルヘルスの問題に対処するためのオンラインコースを提供しています。
今回は、この「Mother Being」についてご紹介していきます。世界や日本の取り組みについてもまとめてみました。

「Mother Being」とは?


概要

「Mother Being」は、創業者券最高経営責任者の助産師Nour Emamさんがスタートさせたスタートアップ企業です。主な事業内容は、アラビア語圏の女性にオンラインで正しい月経や女性の体に関する知識を伝えるコースやコンテンツを提供するというもの。誤解から生まれる精神衛生上の問題に対しても取り組んでいます。
「Mother Being」の目標は
  • 女性の性に関する誤解を解く
  • 社会的スティグマ(差別や偏見の対象になる属性)を解消する
  • 女性が自分の医療上の権利を理解して医師と適切にコミュニケーションできる
  • 不必要や強制的な帝王切開の割合を少なくする
  • 産科の暴力を無くす
といった女性の地位向上に繋がるものです。
中東と北アフリカはフェムテック産業が盛んとは言えません。しかし、十分に将来性のある分野といえるでしょう。
Mother Beingでは、女性性器切除(FGM)に対する正しい知識を伝え、実際にFGMを受けた女性に対するケアも行っています。
エジプトでは、法では禁止されている(FGM)が地方部を中心に残っています。FGMを受け命を落とすケースも少なくありません。Mother Beingは誤った情報や適切とはいえない慣習を無くそうと努めています。

サービスについて
ターゲットは18歳から35歳ですが、更年期に関するコンテンツを追加する予定です。今後さらに幅広い年代の女性がターゲットになると考えられます。
Mother BeingのInstagramとTikTokで140万人のフォロワー、2,000人の利用者のうち30%はリピーターです。
ユーザーベースが前月比で17%増加、収益が前月比で44%増加と好調です。
主なコースは以下の通りです。
・出産に関する3つのオンラインライブクラス(1,200エジプトポンド・約8,667円)
・月経周期(600ポンド・約4,300円)
・女性中心の性教育に関する文化に配慮したコース(800ポンド・約5,800円)
また自社製品を宣伝する製薬会社やウェルネス会社との有料コースや有料パートナーシップもMother Beingの大きな収益源です。

始まり
Mother BeingはInstagramのアカウント(https://www.instagram.com/thisismotherbeing/)としてスタートしました。もともとNour Emamさんが助産師のサービスを宣伝する用のアカウントでしたが、月経周期に関する質問が多数寄せられるようになってサービスを拡大します。

ちょうどその頃、エジプトではMeToo運動が盛んになっており、Mother Beingに対する注目度もアップしました。
またコロナの流行も、Mother Beingにとっては追い風でした。自宅でオンラインを使って情報収集したいという人々が多く、Mother Beingに関心が集まっています。

今後について
エジプトだけでなく、アラブ首長国連邦とヨルダンであるサウジアラビアにもサービスを拡大する予定です。最終的には、女性の健康と福祉の分野で独自の製品の発売を検討しています。

Mother Beingは女性の生殖の健康についての男性主導ではなく、女性主導になるように務め続けることでしょう。
さらに医学部や看護学校でも女性の性に関する正しい知識が広まれば、医療分野に変革を起こせるとMother Beingは考えています。
医療分野に正しい知識が広がれば、診療を受ける女性も選択肢が増え、帝王切開率の低下、性教育による性病率の低下、適切なアドバイスができる医師が誕生することでしょう。

世界の状況

Emergen Research社によると、女性がターゲットのテクノロジーの世界市場は、2019年の187億5,000万ドルから3倍以上に拡大し、2027年には600億ドルに達すると予測されています。

特に不妊治療、妊娠、卵子凍結、女性用衛生用品、医療診断ツールに関しては投資額も増えています。

日本では

日本でもフェムテックサービスは注目を集めているものの、日本生まれのサービスは多くありません。日本ではジェンダー問題に関する関心が低く、政治も積極的とは言えない状況です。
Mother Beingの日本語版のようなサービスが登場すれば、女性の社会進出も役立つ可能性が高いです。今後の動向に注目しましょう。

まとめ

Mother Beingの取り組みは、古くから続く慣習によって悲しい思いをする女性を減らす取り組みだといえるでしょう。アラビア語圏の女性が正しい知識の元、自らの健康について向き合う機会が増えることを願ってやみません。