物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
メーカー直販とは、卸業者や小売店などのプラットフォームを介さずにメーカーが直接顧客へ販売する方法です。近年、ECサイトが急増したことで販売網が拡大しており、すそ野を広げるメーカーが増えている状況です。
本稿ではメーカー直販の概要、メリット・問題点に触れたうえで、成功するポイントについて解説します。
メーカー 直販とは?
メーカー直販とは、どのような販売方法なのか確認していきましょう。
メーカー直販の意味|生産者が消費者に直接販売
生産者が消費者に商品を直接販売するビジネスモデルのことを「メーカー直販」と呼んでいます。ほぼ同義でD2C(Direct to Consumer)とも呼ばれます。
従来、メーカーが商品製造を行なったあと、問屋を介して商品を小売店へ卸し、消費者へ販売する流れが一般的でした。
しかし現在は問屋を通さない流通経路の確保が容易になり、メーカー直販が改めて注目されています。
メーカー直販に注力する企業が増えた背景
近年では、メーカー直販に注力する企業が増えつつある状況です。その背景にあるのは以下2つの変化です。
- EC市場の拡大
- デジタルマーケティングのインフラ普及
スマートフォンが普及したことで、手軽にインターネットショッピングができるようになりました。その影響で商品の販売に必要なデジタルツールやSNSも気軽に利用できるよう整備され、顧客への直接アプローチが可能になりました。D2Cの経済効果が大きいこともあり、メーカー直販だけに注力する企業も存在しています。
ショッピング機能を搭載したSNSについても「Instagram ショッピング機能」 の記事で解説しています。
直販するメリット
ここからは、メーカーが直販するメリットを解説します。以下の5つです。
- 利益率の向上
- ブランド認知度の促進
- ストーリーやビジョンからファン化
- 商品開発のデータ収集に有効
- 需要の予測が可能
利益率の向上
仲介業者を挟んだ販売方法には、中間マージン・手数料のコストが発生します。そのため、販売数によっては利益率が低くなる傾向がありました。
メーカー直販であれば、直接消費者へ商品を販売できるため、コスト削減につながります。コストが抑えられることで、利益率の向上へプラスに作用することがメリットのひとつです。
ブランド認知度の向上促進
メーカー直販では、作り手である生産者が商品訴求を行ないます。他社商品との違いや商品への想いを明確に消費者へ伝えられるため、ブランドの認知度向上へつながりやすくなる点もメリットです。
問屋を介して販売する場合、販売手段を小売店に一任します。小売店のなかには、価格を下げて販売訴求を行なっているケースもあり、低価格での販売はブランド価値の低下につながるおそれがあります。
メーカー直販は安売りではなく、商品価値を消費者に伝えられるため、商品価値に見合った適切なブランディングができるでしょう。
ブランド認知度の向上にはブランド戦略も大事です。「ブランド戦略」の記事で解説しています。
ストーリーやビジョンからファン化
メーカー直販では、商品の開発過程(ストーリー)や将来像(ビジョン)を明確に伝えられるメリットがあります。
ストーリーやビジョンに賛同や共感をした顧客が、商品を応援してくれるファンとなり、自社商品を長く愛用してくれる可能性が高まるでしょう。
また、顧客がファン化すると、購入単価の向上や口コミで商品を広めてくれる効果も期待できます。
商品開発のデータ収集に有効
小売店やECモールで商品を販売した場合、細かな情報収集ができません。分析まで行なえる情報収集は、メーカー直販ならではのメリットでしょう。
商品開発時やキャンペーンで狙っていた層と、実際の成果を比較可能であり、改善や方向転換などの対策が立てられます。またデータを分析することで、今後の商品開発にいかせるメリットもあります。
需要の予測が可能
メーカー直販のメリットは、製品ライフサイクルや消費者ニーズを適切に把握できる点にもあります。毎月の売上や商品ごとの日々の販売数など、細かなデータを把握することで、需要予測が可能です。
在庫が余ることを予測して需要があるうちに施策を組むなど、早期対処ができるでしょう。
直販する問題点・課題
メーカー直販は、メリットが大きいビジネスモデルですが、問題点や課題となる点も存在します。
- 自社集客が必須
- 立ち上げコストがかかる
- 運用コストがかかる
- EC運用ノウハウが必要
自社集客が必須
新たに参入したブランドや認知度がそれほど高くないブランドの場合、自社のECサイトへの集客が難しいことが課題です。
もともと利用者数の多いECモールに出店をすれば、ある程度の集客が期待できます。しかし、自社ECサイトで運用する場合は、集客への施策が必須でしょう。
認知度を向上させるためには、SNSやWeb広告に投資する方法も手段の一つです。
立ち上げコストがかかる
自社で運営するECサイトを立ち上げる場合、一から作るため、目的に沿った運営や独自サービスの提供が可能ですが、その分コストや時間がかかる点が懸念されます。
具体的には、以下のようなコストです。
- サイト構築のシステム費
- 広告宣伝費
- サイト運用のための人件費
近年では、比較的低コストでECサイト制作~運用まで委託できる物流サービスも増えている状況です。初期投資を抑えたい場合は、運用規模や目的に合わせて、物流サービスを利用する検討も必要でしょう。
メーカー直販にはECサイトの構築が必須といえます。「ecサイト 構築」の記事で詳しく解説しています。
運用コストがかかる
自社ECサイトでは、システム維持費、運用人件費などのランニングコストが発生します。他にも、市場のシステム動向に合わせて改修などを行なうためのメンテナンス費用なども挙げられます。
自社ECサイトの立ち上げをする場合、導入後のコストが月単位・年単位でどの程度かかるか視野に入れて検討するとよいでしょう。
EC運営ノウハウが必要
ECサイトを運営するには、以下のような業務内容を理解する必要があります。
- ささげ業務
- 決済
- 受注処理
- 発送
- カスタマーサポート
- 集客・追客
- 情報収集・分析
ECサイトを円滑に運用するには、EC業務全般の知識や運用フローの構築など、EC運用ノウハウが必須です。自社で対応できない分野は、専門業者にアウトソーシングするなどの業務切り分けも必要でしょう。
メーカー直販の成功事例
ここでは、メーカー直販の成功事例を具体的に紹介します。
BASE FOOD
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げるブランド「BASE FOOD」では、主食1つで栄養が取れる麺やパンを提供しています。
もともと、クラウドファンディングで商品開発を行なっており、企業の想いに賛同するお客様と直接つながりを持つことで成功した一例です。
立ち上げ後も、D2Cによるビジネスモデルを取り入れ、顧客の声を聞いたうえで検証や改善を繰り返し行なっています。
BOTANIST
シャンプーブランド「BOTANIST」を展開する株式会社I-neは、累計販売数5,000万本を突破するなど、高い人気を誇ります。
話題となったきっかけは、若者を中心に人気が高まったSNS「Instagram」です。
「BOTANIST」のシンプルかつミニマルなパッケージが刺さり、「インスタ映え」する商品だと大きな話題を呼びました。
その背景には、パッケージだけでなく、明確にターゲットを絞ったうえでのブランディング・ECモールでの認知度向上を目的とした土台作りが影響しており、D2Cのお手本とされています。
MEDULLA
株式会社Spartyでは、自分だけのカスタマイズシャンプー「MEDULLA」など、パーソナライズに特化したD2Cブランドのサブスクリプションサービスを展開。
デジタルマーケティングでは伝えられない「香り」を体験してもらうために、実店舗での販売にも注力しています。そこで得られたお客様のリアルな声をもとに、広告・マーケティング施策の改善を行なうことで、多くのファンを獲得している成功例です。
直販で売上げアップに導くポイント
メーカー直販で売上げアップを目指すためには、以下のポイントを押さえた運用が効果的です。
- 卸・小売への配慮
- 直接コミュニケーションを増やす
- SNSの活用
卸・小売への配慮
すでに小売店で販売している商品を、メーカー直販する場合、直販価格と小売店価格のバランスに配慮する必要があります。
金額に差がある場合、販売量が低下する可能性があります。場合によっては、小売店で商品を購入した顧客から、クレームや問い合わせが入るなど、パートナーである小売店に悪影響を与えてしまうおそれも。
メーカーならではのメリットを打ち出したい場合は、購入者特典をつけるなど、プラスαで対応するとよいでしょう。
直接コミュニケーションを増やす
メーカー直販は、直接顧客とのやり取りを行なうため「顧客との距離が近い」ことが特徴です。自社商品に対しての率直な意見や改善点など、求められていることがすぐに把握できるため、スピード感のある対応ができます。
顧客の声を生かした取り組みは、自社商品のファン化を促せるだけでなく、商品に不満を覚えた顧客の離脱を防ぐ対策にも効果的です。
また、顧客データをもとに販売効果が高い訴求方法を細かく分析できるため、マーケティングに活用できるメリットもあります。
SNSの活用
売上げアップを目指すためには、SNSを活用した訴求方法も有効です。話題性を呼びこむ「映えるパッケージ」などは、若者を中心に人気が高く、多くの人に認知を広められる効果が期待できます。
さらに、SNSを利用する自社商品の顧客が、商品を使ったレビューや投稿をすれば認知拡大も狙えるため、SNSの活用は売上げアップをさせる有効な手段の一つといえます。
メーカー直販は今が始めどき!
メーカー直販は、ブランディングやファン化につながるなど、長く商品を選んでもらうために必要な訴求ができる手段の一つです。
しかし、一からECサイトを構築する場合、導入や運用コストの負担が大きく、D2C参入の足かせとなるケースもあります。コスト面で懸念がある場合は、低コストでサイト制作から運用、物流業務まで依頼できるサービスの利用も検討するとよいでしょう。
富士ロジテックホールディングスでは、D2Cに特化した最適なサポートを提案しています。物流機能を一括してアウトソーシングも可能であり、マーケティング業務に集中しやすい環境が整います。メーカー直販に重要な映えるパッケージの提案、サブスクリプションサービスに対応する物流構築も可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。
ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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