食品EC市場は急成長を続ける中で、競争が激化しています。
「食品をオンラインで販売したいが何から始めたらいいか分からない」
「成功するための具体的な戦略を知りたい」
このような方に向けて、本記事では食品ECの成功事例15選を徹底解説します。顧客への訴求方法や売上アップのポイントはもちろん、物流や倉庫管理の効率化を踏まえて成功へ導くヒントをお伝えします。
食品ECの市場規模と今後の課題
食品ECは年々拡大している一方で、さまざまな課題もあります。食品ECの市場規模や今後の課題を把握したうえで、EC導入を検討しましょう。
以下は、2023年の電子商取引における食品ECの市場規模とEC化率です。
分類 |
2023年市場規模 |
EC化率 |
食品、飲料、酒類 |
2兆9,299億円 |
4.29% |
生活家電、AV機器、PC、周辺機器等 |
2兆6,838億円 |
42.88% |
衣類・服装雑貨等 |
2兆6,712億円 |
22.88% |
生活雑貨、家具、インテリア |
2兆4,721億円 |
31.54% |
書籍、映像・音楽ソフト |
1兆8,867億円 |
53.45% |
※一部抜粋
物販系分野では「食品、飲料、酒類」部門の市場規模が最も大きく、3兆円に迫る勢いです。前年比から6.52%増加しており、食品ECは成長分野であることが伺えます。
一方で、EC化率は売上上位の中でも4.29%と低く、EC化が進んでいないことが課題です。食品のEC化が進まない理由には、以下が挙げられます。
- 実店舗より利便性が低い
- 手に取って商品を確認できない
- 品質管理に手間がかかる
- 物流や運営にコストがかかる
食品をオンラインで扱う特性上、このようなデメリットがあります。しかし、効果的な施策を講じて成功を収める企業も多数存在します。
参照:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」
<関連記事>「食品ECとは?市場規模や課題、事業を成功させる5つ秘訣を解説」
食品ECの成功事例15選
実際に食品ECに成功している企業は、どのような戦略を取っているのでしょうか?ここでは、食品ECで成果を上げた15の事例を紹介します。
- カゴメ直送便
- Oisix(オイシックス)
- ニチレイフーズダイレクト
- ウェルネスダイニング
- BASEFOOD
- 豊洲市場ドットコム
- 醤油職人
- 大江ノ郷自然牧場
- 47CLUB
- マルコメオンラインショップ
- ロイズチョコレート
- うまいもんドットコム
- Mr.CHEESECAKE
- オリオンビール
- おとりよせネット
(1)【カゴメ健康直送便】定期購入へ自然誘導するサイト設計
カゴメ健康直送便は、1998年にスタートしたカゴメの通信販売です。人気の野菜ジュースや青汁、ポタージュ、サプリメントなど充実したラインナップが特徴です。
サイト内では、飲み比べセットや季節限定の旬シリーズなど、実店舗では手に入らない限定品を提供しています。また、単品購入でカートに商品を追加すると、定期購入へと自然に誘導するサイト設計が特徴です。
さらに、スマイルレシピでは、カゴメの商品を使用した簡単レシピを提供し、ユーザーに付加価値を提供しています。これにより、利用者の定着率を高め、リピート率の向上につなげている成功事例です。
参照:カゴメ健康直送便
(2)【Oisix(オイシックス)】利便性が高く使いやすいサイト構築
オイシックス・ラ・大地は、有機・無添加食品、ミールキットなどの通信販売を提供し、約40万人の会員数を誇る食品ECサイトです。Oisixでは公式のスマートフォンアプリを通じて、利便性の高いサイトを構築しています。
商品検索や注文の確認、定期便の変更・スキップ・再注文が設定でき、ライフスタイルに合わせた柔軟な注文が可能です。物流面では、冷凍食品専用の物流拠点「ORD厚木冷凍ステーション」を新たに設置し、冷凍食品の取り扱いを強化しています。
これにより、物流稼働量は約2.8倍に増加し、効率的な管理と輸送を実現しています。
(3)【ニチレイフーズダイレクト】目的や特徴から商品を選択可能
ニチレイフーズダイレクトは、株式会社ニチレイフーズが運営する宅配食サービスです。「糖質を控えたい・食物繊維をとりたい・体力をキープしたい」など、目的や特徴から商品を選べる利便性の高いサイト構成になっています。
特に、管理栄養士が監修した糖質・脂質・塩分が気になる方向けの「きくばりごぜん」シリーズが好評です。パッケージには栄養成分や原材料名、調理法が詳しく表記されており、身体に合った食事を選べるよう工夫されています。
物流面では自社の物流部門に加え、ニチレイグループの物流系事業を統括する株式会社ニチレイロジグループに業務を委託し、効率的な配送を実現しています。また、セット食数の種類を増やすことで一出荷で届ける食数を増やし、物流コストの削減に向けた取り組みも行っています。
参照:ニチレイフーズダイレクト
(4)【ウェルネスダイニング】管理栄養士による個別相談で安全な食生活をサポート
ウェルネスダイニングは、食事制限が必要な方に特化した「健康宅配食」を提供しており、管理栄養士が常駐している点が強みのひとつです。腎臓病や高血圧の方、糖尿病や血糖値が気になる方、嚙む力が弱くなってきた方などに向けた特化型サービスを展開し、他社との差別化を実現しています。
定期注文では、7食セットの送料が半額、14食・21食セットで送料無料になるサービスを打ち出し、リピート率の向上を促しています。
参照:ウェルネスダイニング
(5)【BASEFOOD】物流システムの強化で土日祝出荷も可能に
BASEFOODは、1食で1日に必要な栄養素の1/3が取れる完全栄養食を提供する企業です。B手軽に栄養素が摂取できるというコンセプトが20~30代を中心に支持され、2023年9月時点で累計販売数1.5億袋を突破しています。
BASEFOODは自社の食品ECだけではなく、他者のECモールやドラッグストア、コンビニなどのリテールチャネルでも商品を展開し、多様な顧客層へのアプローチを実現しています。さらに、SNSなどのデジタルマーケティングにも積極的に取り組み、LINE広告の導入では新規顧客獲得数約3万人増加に成功しました。
物流面では、OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)が一体化したシステムを物流倉庫に導入しています。これにより、全注文の90%以上が自動出荷され、土日祝にも対応した効率的な配送体制を整えています。
(6)【豊洲市場ドットコム】ここでしか手に入らない特別感を演出
豊洲市場ドットコムは、豊洲市場に集まる全国各地の旬の食材を取り扱う食品ECサイトです。プロの料理人が仕入に用いる「プロ向けの食材」から、「訳あり品」、さらには鮮魚、野菜、フルーツなど鮮度にこだわった食材を提供しています。
ここでしか手に入らない特別感を演出し、他サービスとの差別化を図ることで顧客の関心を引き付けています。また、新サービスの「きょう着く空便」では、旅客機の貨物スペースを活用し、関東1都7県を対象に最短24時間のスピード配送を実現し、顧客のニーズに応えています。
参照:豊洲市場ドットコム
(7)【醤油職人】作り手の想いを届けて顧客の心を掴む
醤油職人は、日本各地の醤油蔵から厳選した醤油を100mlの小瓶で販売する食品ECサイトです。小容量ボトルは気軽に味を試せる仕様で、気に入った商品があれば蔵元に直接連絡し追加購入を促すユニークな取り組みを採用しています。
サイトでは、醤油蔵の作り手の想いやこだわりが写真付きで紹介されており、顧客の心を掴むサイト設計が特徴です。また、醤油を楽しむ料理レシピや醤油の魅力、全国のイベント情報などコンテンツも充実しています。
参照:職人醤油
(8)【大江ノ郷自然牧場】牧場の理念を反映したブランディング効果を発揮
大江ノ郷自然牧場は、養鶏場で採れた卵「天美卵」を主力商品とし、スイーツ、加工食品、鳥取県の特産品を販売する食品ECサイトです。サイトを運営する有限会社ひよこカンパニーでは、飲食店やホテルを備えた複合型リゾート施設の大江ノ郷牧場も運営しています。
牧場の理念を反映したブランディング効果を発揮し、5年間で売上を約10倍に増加させた食品ECの成功事例です。成長の理由には、2021年に導入したオムニチャネルが挙げられます。
ECサイトの顧客がリゾート施設に訪れる、また、施設利用客が帰宅後にECサイトで商品を購入するなど、オンラインとオフラインの相乗効果を実現しています。
参照:大江ノ郷自然牧場
(9)【47CLUB】地方新聞社厳選の逸品で特別感を演出
47CLUBは、全国の地方新聞社が厳選した商品を集めたお取り寄せ食品ECサイトです。全国1,300を超えるショップと全国47都道府県の新聞社が一丸となり、地方の価値ある逸品を紹介するプラットフォームです。
商品欄には取材内容をもとにした製造過程や、品質管理などの様子の画像を掲載し、顧客への信頼性を高めています。抽選で賞品が当たるプレゼントやメルマガ購読者プレゼント、期間限定の送料無料キャンペーンなど、購買意欲を高める施策も好評です。
お中元やお歳暮などのギフト需要にも対応し、複数配送先指定サービスを提供することで、顧客の多様なニーズに答えた利便性の高い配送サービスを実現しています。
(10)【マルコメオンラインショップ】SNSの発信でブランドの認知度を高める
マルコメオンラインショップは、即席みそ汁や甘酒、液みそ、大豆製品などを販売する食品ECサイトです。主力製品の味噌だけではなく「大豆のお肉シリーズ」や、「麴甘酒・米麹ミルク」など豊富なラインナップで幅広い層の顧客を獲得しています。
特に、好きな商品を自由に組み合わせできる「お好みセット」が好評で、最も利用されている購入方法です。購入する数量に応じて割引が適用される仕組みで、リピート利用を促進しています。
さらに、麹甘酒の販売では若年層を中心に顧客層を大きく取り込み、定期購入利用は800件から2,500件に大幅に増加しました。SNSでは商品を使った「マルコメレシピ」を積極的に発信し、ブランドの認知度を高めています。
(11)【ロイズチョコレート】数量限定品や地域性を活かしたブランド戦略
ロイズチョコレートは、北海道の製菓メーカーが運営する公式オンラインショップです。高品質なチョコレートや焼き菓子を中心に、充実したラインナップが魅力です。
ギフトボックスやラッピングサービスを提供し、贈り物需要にも対応しています。特に、北海道限定の「生チョコレート」は、地域性を活かしたブランド価値が高い商品です。お土産として購入した商品を「また食べたい」と感じた際などに、食品ECサイトを通じて全国どこからでも購入できます。
商品レビューでは、購入層、性別、購入回数、購入目的など商品の評価が明記されており、顧客が安心して商品を選べる工夫がされています。さらに、SNSを活用したプロモーションも活発です。
バレンタイン時期に開催されたフォトコンテストでは、多くのインスタグラマーが参加し、新規顧客層へのアプローチに成功しています。
参照:ロイズ(ROYCE')公式-チョコレート・お菓子のオンラインショップ
(12)【うまいもんドットコム】流通しにくい食材を提供し食品ロス削減に貢献
うまいもんどっとコムは、全国各地の厳選された食品を取り扱う食品ECサイトです。株式会社食文化が運営しており、一般の店頭ではなかなか見かけない希少な食材や、生産量が限られているこだわりの食材を提供している点が特徴です。
サイトでは、地域や価格ごとに商品を選択できるほか、ランキング機能や生産者情報が詳しく掲載されており、顧客が納得して商品を選べる工夫がされています。運営面では、地元の生産者と直接取引を行うことで、一般流通しにくい食材をいち早く仕入れ、鮮度を保った状態で顧客へ届ける仕組みを構築しています。
うまいもんドットコムに加盟した事業者は1,000店舗を超え、小規模な生産者を応援するだけではなく、フードロスにも貢献しています。
参照:うまいもんドットコム
(13)【Mr.CHEESECAKE】eギフト対応で手軽にギフトが送れる
Mr.CHEESECAKEは、フレンチレストラン出身の田村浩二シェフが手掛けるチーズケーキ専門のオンラインショップです。定番のチーズケーキから、季節限定の特別商品まで幅広く提供します。
さらに、先端わずか0.3mmのチーズケーキ専用の「スプーン」や、ケーキの味わいを引き立てるブレンドティーなど、付加価値のあるアイテムも展開しています。商品紹介ページでは、原材料がひと目でわかる写真を多く使用している点もポイントです。
また、メールやSNSでギフトを送れる「eギフト」に対応し、住所を知らない相手にも手軽にギフトが贈れる利便性の高いサービスが好評です。期間限定のポップアップストアやエキナカの常設店展開など、新たな顧客層の獲得を目指した戦略を実施しています。
(14)【オリオンビール】SNS戦略で売上50倍に
オリオンビールの公式通販サイトでは、沖縄の地域素材を活かしたビールやオリジナルグッズを販売しています。愛好者に特化した完全会員制を導入し、会員専用の定期購入や限定サービスが充実しています。
ソーキそばや島らっきょう、ミミガージャーキー、じーまーみ豆腐など沖縄ならではの商品を展開し、沖縄ファンからも好評です。SNSの積極的な運用により、単なる商品紹介だけではなく、沖縄の絶景スポットや観光地の画像を通じて地域の魅力を発信しています。
SNS施策により、2020年時点で5,000人だった公式Xのフォロワー数は、2024年11月現在で29万人に達しました。食品ECでの売上を約50倍に成長させた成功事例です。
参照:オリオンビール公式通販
(15)【おとりよせネット】モニター審査員の評価制度で信頼性をアップ
おとりよせネットは、全国のお取り寄せの品を集めた日本最大級の食品ECサイトです。人気商品がひと目でわかるランキングや、結婚祝い、還暦祝い、誕生日、サプライズなどシーン別にギフトを選択できる使いやすいサイト設計が特徴です。
おとりよせネットの特徴的な機能の一つに、「モニター審査員制度」があります。この制度では、会員登録したモニター審査員が実際にお取り寄せ品を試食し、味、パッケージ、コスパ、見た目など複数の項目の評価を行うシステムです。
ギフトやリピートのおすすめ度など、購入を検討する際に役立つ情報が投稿されており、商品の信頼性を高めています。
参照:おとりよせネット
食品ECサイトを成功させるためポイント
ECサイトを成功させるためには、次のようなポイントが重要です。
- ユーザーのリピート率を高める
- 利便性の高い食品ECサイトを構築する
- ニーズに合った配送方法を工夫する
- 物流業務を外部に委託して効率化を図る
順番に解説します。
ユーザーのリピート率を高める
食品ECサイトでは、顧客のリピート率を高めると売上アップが期待できます。以下のような施策が効果的です。
- 初回購入特典
- 次回利用可能なクーポンの提供
- メールマガジンで新商品の情報発信
さらに、ポイント制度や定期購入者限定割引などを導入すると、顧客の継続利用につながるでしょう。
<関連記事>「初回同梱物が通販の売上げを伸ばすワケとは?役割と10のツール事例」
利便性の高い食品ECサイトを構築する
食品ECサイトを構築する際は、使いやすさを重視した利便性の高いサイト設計が不可欠です。特に、食品を扱うECサイトでは、成分表示や賞味期限の詳細な情報が必要です。
分かりやすい商品情報やスムーズな決済プロセス、利便性の高い配送オプションを備えた食品ECサイトは、顧客の安心感にもつながります。また、チャット機能を活用し質問に迅速に対応できれば、信頼性も高まるでしょう。
ニーズに合った配送方法を工夫する
食品ECサイトでは、ニーズに合った配送方法を工夫することがポイントです。特に、冷蔵や冷凍管理が必要な商品では、品質を保つための倉庫管理や適切な配送方法が求められます。
また、お中元やお歳暮などの複数の配送先指定への対応も必要です。そのため、顧客のニーズに合った配送方法に柔軟に対応できるシステムを導入しましょう。
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物流業務を外部に委託して効率化を図る
食品ECサイトでは、賞味期限管理やロット管理などの徹底した物流管理が必要です。しかし、高度な物流管理システムを導入するにはコストや時間もかかります。
そのため、物流業務を外部に委託するのがおすすめです。業務委託により、出荷業務に追われることなく、効率的な配送が実現します。
また、外部委託により企業はコア業務に集中できるため、商品の訴求やマーケティング活動に注力できるでしょう。
<関連記事>「【最新】冷凍倉庫とは?種類や市場規模、課題から見る打ち手」
食品ECをアウトソースするなら富士ロジテックホールディングスがおすすめ!
食品EC業界は、他の業界に比べてEC化が遅れているものの、成功事例も多く、市場規模は拡大傾向です。そのため、利便性の高いECサイトを構築し、顧客の心理を上手く掴めば、売上アップや定期購入につなげられるでしょう。
食品ECでは、賞味期限やロットの管理が不可欠です。富士ロジテックホールディングスでは、クラウド型のOMSとWMSの一体型システムを導入し、賞味期限やロットの管理、当日受注分の自動出荷に対応しています。
また4温度帯(常温、冷凍、冷蔵、定温)に対応しており、クリーンな環境で、24時間温湿度管理が可能です。
オリジナル梱包や資材の提案、ギフト包装、同梱物の封入などの個別対応にも幅広く対応いたします。食品EC業務のアウトソーシングを検討し、効率的な物流管理のもと食品ECの成功を実現しましょう。
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ライター
森恵
貿易事務と物流代行営業の経験を活かし、専門知識に基づいた記事作成を行っています。お客様に寄り添い、分かりやすく役立つ情報を提供します。
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