物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
ブランドの認知や価値を高めるための方針を「ブランド戦略」といいます。自社の商品やサービスをユーザーに認知してもらうためには、明確なブランド戦略が必要です。
本稿では、ブランド戦略の効果や重要性を解説したうえで、具体的なブランド戦略の立て方やフレークワークを分かりやすく説明します。
ブランド戦略とは
ブランドとは、製品やサービス、企業に対してユーザーが持つ共通イメージのことです。共通イメージを正しく認知してもらうためには「ブランド戦略」が重要となります。
まずは、ブランド戦略について確認していきましょう。
ブランド戦略の意味
ブランド戦略とはブランドの認知を広めつつ、価値を高めるための計画のことです。商品やサービスのイメージ・ロゴ・名称などの識別記号と、「品質がいい」といった信頼性や雰囲気による知覚価値を設定します。
数多く存在する商品やサービスのなかで、ユーザーがどの選択をするかは、ブランド戦略によって大きく変わります。ブランド戦略が成功すると、ユーザーに共通のイメージが認知されます。
「○○といえばこのブランド!」と、ユーザーに選ばれる確率が高まるでしょう。
ブランディングとの違い
「ブランド戦略」と混同しやすい言葉に「ブランディング」があります。ブランディングとは、商品・サービスのイメージをユーザーに共通認識させたうえで、他社との差別化を図る取り組みのことです。
具体的には、商品やサービスを「どのような場面で活用できるのか」など、ブランドをユーザーに認知してもらうための経過を指します。ブランド戦略で設定したイメージを、世間に認知・浸透させていきます。
企業視点におけるブランド戦略の重要性
ブランド戦略を適切に行なうことで、以下のメリットが得られます。ここからは、ブランド戦略の重要性・メリットを企業視点で解説します。
- 差別化の促進
- 利益率の向上
- 指名買いの増加
差別化の促進
ブランドイメージが定着することで、他社との差別化促進が可能です。
例えばスターバックスの緑のロゴから連想されるのは、美味しいコーヒーと共に提供される居心地のよい空間でしょう。割高な価格設定であっても、他のカフェと比較して顧客満足度は上位をキープしています。
ブランド価値が高められれば、商品やサービスの「価格」で選ばれている企業との価格競争に参加する必要がありません。
利益率の向上
ブランド戦略が成功すると、以下のコストが削減できるため、結果として利益率の向上が期待できます。
広告宣伝費の削減
口コミなどにより認知が広がることで、ユーザー獲得のために投資していた広告宣伝費が削減できます。
製造コスト削減
ブランド戦略の成功によって、商品の売上げが向上し販売数の増加につながります。仕入れ量が増加し、仕入れ価格の値下げ交渉がしやすくなるでしょう。
指名買いの増加
ブランドの価値が定着すると、指名買いの増加が期待できます。ファン化が進めば、競合商品と比較することなく、自社ブランドを選択してくれる状態になるでしょう。
コンセプトや商品価値の認知が広がることで、ブランド価値が向上します。口コミと実際の商品・サービスの価値に乖離がなければ、満足度が高まります。その結果、既存顧客が離れにくくなり、LTV(顧客生涯価値)が向上するためブランド戦略は重要といえます。
ブランド戦略を適切に立案できれば、プラットフォームなどに頼らない直販もしやすくなります。「メーカー直販とは?メリットと問題点、事例から見る成功のポイント」の記事でチェックしてみてください。
ユーザー視点におけるブランド戦略の効果
ブランド戦略の成功は利用するユーザーにとっても、大きなメリットがあります。
1.品質への安心感
ユーザーにとって知名度が高い商品やサービスは、実際の利用者の声や口コミ情報が多くあり、購入前に品質の情報収集がしやすい特徴があります。
ブランド戦略を講じ、多くの利用者に選ばれる商品になれば、品質への信頼度が高くなり、ユーザーは安心して購入できます。
2.識別機能
ブランド戦略によって、他社との違いが明確になります。そのため、目的に合った商品やサービスを選びやすく、迷わずに購入できます。購入の時間短縮に効果的です。
3.意味づけ
共感するブランドイメージの商品やサービスを購入・利用すれば「なりたい自分」に近づけます。自己を表現し、他者に伝達する手段として、ブランドの価値を用いることができるのも、ひとつの効果です。
ブランド戦略の立て方と役立つフレームワーク
ここからは、ブランド戦略の立て方・フレークワークを以下の内容に沿って解説します。
- 市場の分析|PEST分析
- 強みの把握|3C分析
- ターゲット選定|6R
- ポジショニングの確認|ポジショニングマップ
- ブランドアイデンティティの言語化
- ブランドシンボルの設計
- 宣伝方法の決定
1.市場の分析|PEST分析
ブランド戦略を立てる際には、まずは市場動向を調査し、把握・分析することが重要です。市場分析には「PEST分析」が多く活用されています。
PEST分析とは4つに分類される要因(政治・経済・社会・技術)をもとに、マクロ環境(外部環境)が自社に対してどのような影響を及ぼすかを把握・予測するマーケティング手法の一つです。
外部環境は、市場動向から傾向を予測するため、自社でコントロールはできません。外部環境に合わせて、自社の内部環境をその時々のトレンドや流行に柔軟に適応させることが重要となっています。
2.強みの把握|3C分析
次に、ユーザーに打ち出す自社の強み(メリット)を明確にする「3C分析」を行なうとよいでしょう。
3C分析とは、自社(Company)・競合他社(Competitor)・顧客(Customer)をリサーチしたうえで、戦略を立てる手法のひとつです。3つの頭文字をとって3C分析と呼ばれています。
3つの視点で分析を行なうことで、次の情報が整理できます。
- Customer:顧客ニーズの移り変わり・市場動向の把握
- Competitor:競合他社が顧客ニーズの変化にどのような対策を講じているか
- Company :1.2で分析したニーズや市場動向をもとに自社独自の強みを導きだす
世の中のトレンドは移り変わりが速いことが特徴です。分析に時間がかかりすぎると、リサーチした情報が最新ではなくなります。効果的にブランド戦略が行なえるようスピードを重視しましょう。
3.ターゲット選定|6R
ブランディングを展開するには、ターゲット選定がかかせません。効果的な訴求を打ち出すには、自社ブランドを「誰に」「どのように」狙いを定めるか決定する必要があるためです。
ターゲット選定には、以下の6つの指標(6R)をもとにターゲット層をセグメントするとよいでしょう。
- Realistic scale(市場規模)
- Rank(優先順位)
- Rate of growth(成長性)
- Rival(競合)
- Reach(到達可能性)
- Response(測定可能性)
6つの指標は、自社ブランドを客観的に評価できるものです。「自社商品やサービスがユーザにとって優先順位が高いものか?」「市場規模はどのくらいか?」などを評価します。
指標をもとに自社ブランドが訴求すべき有効なターゲット層を総合的に判断しましょう。
4.ポジショニングの確認|ポジショニングマップ
ポジショニングとは、競合ブランドに競り勝って優位に立つのではなく、ユーザーに選ばれ続ける「代替できない独自の魅力を持ったブランド」をつくることです。
自社のポジショニングを考えるうえで、自社ブランドの位置づけを確認する「軸」の設定が必要不可欠となります。
軸の種類は、ブランドの属性や提供価値、パーソナリティ、アイデンティティなど多岐にわたります。どのような視点でポジショニングをするか定めたうえで、軸を決定するとよいでしょう。
たとえばカフェ業界でいえば、スターバックスは高級であるものの「おしゃれ・くつろげる場所」というポジショニングを築いています。
一方で、ドトールコーヒーは「一時に気軽に立ち寄れる場所」というポジションに位置します。ポジショニングによって目指す価値提供が変わることは一目瞭然でしょう。
5.ブランドアイデンティティの言語化
ブランドアイデンティティとは、ブランドを創る企業側がブランドから連想してほしいと願うものです。一方ブランドイメージは、受け取るユーザー側の認識を指します。
企業側が価値提供として守るべき指標であり、ブランド構築にはブランドアイデンティティの規定が重要です。
ブランドアイデンティティを構成する要素は主に次の4つが挙げられます。
- 製品
- 組織
- 人
- シンボル
自社ブランドのアイデンティティを、明確に言語化できるよう検討しましょう。
6.ブランドシンボルの設計
ブランドシンボルは、ブランドを連想させる重要な要素です。有名ブランドのようにロゴやマークを一目見ただけで、ブランドを連想できることが理想となります。
単純に印象に残るようなシンボルというだけでは、意味を成しません。シンボルを見るとブランドに関するイメージを呼び起こせるような設計が重要です。
ユーザーが「なぜこのシンボルにしたのか?」と気にしたときに、明確な理由があれば、ブランドイメージ定着によりつながりやすくなるでしょう。
7.宣伝方法の決定
明確なブランディングが固まったあとは、宣伝方法を決定しましょう。ブランドの認知・定着を図るには、多くのユーザーに知ってもらうことが重要なためです。
宣伝方法は大きく2つに分かれます。可視的ブランドメディアを介さずとも、ブランディングに成功した例もあるため、自社ブランドのターゲットに合わせて宣伝方法を検討するとよいでしょう。
1.抽象的ブランドメディア
・ロゴマークなどのデザインやキャッチコピーのこと <具体例> キャッチコピー:ナイキ「Just do it」など |
2.可視的ブランドメディア
・キャッチコピーやロゴマークを使用し、可視化したもの <具体例> |
ブランド戦略施行後には効果測定
自社のブランド戦略を始めた場合は、効果測定を行なうことが重要です。戦略の方向性が正しいのかを判別するためです。
ただし、ブランド戦略の効果は短期間で結果が出るとは限らないため、細かく検証し微調整を行なうことが推奨されています。ブランド戦略の効果測定の方法は「NPS®」と呼ばれる顧客ロイヤリティを測る指標の利用が一般的です。
企業が提供する商品・サービスへの愛着や信頼の程度のことを「顧客ロイヤリティ」といいます。顧客ロイヤリティ値が高いほど、商品やサービスを長く愛用してもらいやすくなります。
ブランド戦略の方向性や施策、社内体制やサービスの見直しに有効な判断基準のため、定期的に行なうことが重要です。
ブランド戦略の成功事例
ブランディングが定着し、ブランド戦略が成功することで、企業にとってさまざまなメリットが得られます。ここからは、3つの成功事例を紹介します。
豆腐のブランド戦略:男前豆腐店
画像出典:男前豆腐店
豆腐好きの口コミで話題になっている「男前豆腐」や「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」は、阪神百貨店から売り出されている豆腐です。
豆腐の価格は、1丁320円。一般的な豆腐と比較すると約3倍となっています。高価であるものの、北海道産の大豆を100%使用しており、濃厚な味わいが評価される豆腐です
ブランド戦略の成功の鍵は、取り扱う店舗が少ない「希少性」、高級な原材料の使用による「濃厚な味」を追及したことが挙げられます。
また、商品パッケージが斬新な点も特徴です。豆腐の形がサーフボードであったり、豆腐自体に太い字のロゴが入っていたり、商品の見た目にもこだわっています。
「豆腐は安いもの」というイメージを覆した同商品は、多数のファンを生み、マス広告に頼らずともインターネット上の口コミで広まりました。運営は社員50名ほどの会社ですが、工夫とアイデアによって2年で売上20数億円達成した成功事例のひとつです。
シャンプーのブランド戦略:ボタニスト
画像出典: BOTANIST
ヘアケア商品で有名となったボタニストは、パッケージに注力することで、ターゲットである若い女性にブランディングが浸透した成功事例です。運営会社は、コンセプトとパッケージデザインだけをつくる会社であり、製品の中身は外注しています。
つまり、ヘアケアの効能よりも「お風呂に置いておくとオシャレ」「インスタ映えするパッケージ」という理由でヒットしました。元々はインターネット上の販売のみでしたが、InstagramなどのSNSを通じて「インスタ映え」する商品と口コミで広まり、若者を中心に人気となりました。
スポーツシューズのブランド戦略:瞬足
画像出典:瞬足クラブ|アキレス
アキレス株式会社が展開するスポーツシューズブランド「瞬足」は、ブランド戦略の代表的な成功例の一つです。
競合他社の分析を徹底的に行ない、他社にはない「小学生が速く走れる靴」をコンセプトに設計。また、ターゲットは「小学生」ではなく「小学生低学年男子向け」と細かな対象を設定しました。
「速く走りたい!」と考える小学生男子の需要に合致した商品として認知され、「速く走れるスポーツシューズといえば、瞬足」というブランディングを成功させた一例です。
ブランド戦略を練り、ブランディングを成功させよう!
ブランド戦略とはブランドの認知や価値を高める取り組みを指します。
自社ブランドの商品やサービスをユーザーに広く認知されるためには、明確なブランド戦略の構築が重要です。しかし、多くの人に自社のブランドを認知してもらうことは、簡単ではありません。
ブランドへ込める企業の想いだけでなく、市場動向や顧客ニーズなどの分析、ユーザーに価値提供できるブランディング設計・宣伝なども重要です。
物流代行を支援する富士ロジテックホールディングスでは、ブランディングの一部である宣伝に活用できるロゴ入りのオリジナル梱包資材の提案・提供をしています。パッケージデザインや同梱物の設計など、さまざまなカスタマイズも可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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