国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
自社の在庫管理を任されているものの、
「在庫回転率ということばの意味がいまいちよく分からない」
「在庫回転率の計算方法はこれで合ってるの?」
など、お悩みではありませんか。
在庫回転率が把握できれば、経営効率が上がり売上拡大にもつながります。
この記事では在庫回転率について、数字を用いてわかりやすく計算方法を解説しています。業種ごとの回転率の値の目安にも触れていますので、在庫管理の参考になさってください。
在庫回転率とは
在庫回転率とは、一定の期間内に在庫が入れ替わった回数を計算した数値をあらわします。1年間を基準に算出するのが一般的です。
数値が高いほど商品が入れ替わるサイクルが速く、低いほど在庫が長期間とどまっているということになります。
次項では、具体的な数字を用いてわかりやすく解説します。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率の計算方法には、大きく分けて金額をもとにした計算方法と、商品数をもとにした計算方法の2種類があります。
以下、それぞれ期間を1年間として在庫回転率を見ていきましょう。
金額にもとづく計算方法
金額をもとにした計算式は、1年間の出庫金額÷平均在庫金額=在庫回転率です。
ある商品の在庫回転率を出すために、仮に以下の条件で計算してみましょう。
例)※すべて売上原価
年度初めの棚卸し金額:300万円
年度末の棚卸し金額:200万円
年間仕入れ金額:3,000万円
まず1年間の出庫金額は、年度初めの棚卸し金額+年間仕入れ金額−年度末の棚卸金額で求めます。
上記の数字を当てはめると、
300万円+3,000万円−200万円=3,100万円となります。
続いて平均在庫金額は、(年度初めの棚卸し金額+年度末の棚卸金額)÷2です。
こちらも数字で計算すると、
(300万円+200万円)÷2=250万円になります。
この場合の在庫回転率は、3,100万円÷250万円=12.4となり、1年間に在庫が入れ替わった回数は、12.4回ということがわかります。
商品数にもとづく計算方法
商品数をもとにした計算式は、出庫した総数÷平均在庫数=在庫回転率です。
前述の金額にもとづく計算方法で使用した例題で売上原価が2,000円だった場合、商品数は以下の通りになります。導き出した商品数から、在庫金額を求めてみましょう。
例)
年度初めの在庫数:1,500
年度末の在庫数: 1,000
出庫総数:15, 500
平均在庫数は、(年度初めの在庫数+年度末の在庫数)÷2です。
上記の数字を当てはめると、
(1,500+1,000)÷2=1,250となります。
在庫回転率は、15,500÷1,250=12.4となり、金額をもとに算出した値と同じになりました。
このように、在庫回転率は金額と商品数どちらからでも算出できます。
在庫回転期間の計算方法
在庫回転期間とは、在庫が1回入れ替わるまでにかかった期間を算出したものです。
在庫回転期間が分かれば、今ある在庫がおおよそどれくらいの期間の分量かを把握できます。
日ごと、月ごとそれぞれの計算方法を見ていきましょう。
日ごとの計算方法
計算式は、
棚卸資産÷(年間売上高÷365)=日ごとの在庫回転期間です。
売上原価は、売上原価にしても計算できます。
例)
棚卸資産:500万円
年間売上高:3,500万円
500万円÷(3,500万円÷365)=52.1となり、およそ52日で在庫は1サイクルするということです。
月ごとの計算方法
計算式は、
棚卸資産÷(年間売上高÷12)=月ごとの在庫回転期間です。
例)
棚卸資産500万円
年間売上高3,500万円
500万円÷(3,500万円÷12)=1.7 となり、およそ1.7ヶ月で在庫が1サイクルすることになります。
【業種別】在庫回転率の目安
製造業、卸売業、小売業の各業種における在庫回転率の目安は以下表のとおりです。
このうち製造業のみ中小企業の回転率が大企業を上回っています。
大企業は完成品を製造する傾向が高く、中小企業は部品を製造する業者が多いからだと推測できます。
製造業の方は自社の製品がどちらに該当するかを考慮し、在庫回転率の目安にするとよいでしょう。
業種 |
全企業の平均 |
中小企業 |
大企業 |
製造業 |
11.1回 |
12.6回 |
10.5回 |
卸売業 |
19.9回 |
15.9回 |
23.3回 |
小売業 |
11.4回 |
9.5回 |
13.5回 |
参照元:経済産業省「商工業実態基本調査」
在庫回転率を把握することの重要性
管理コストの削減や粗利益の低下を防ぐためにも、在庫回転率を把握することが重要です。
昨今は消費者の嗜好の移り変わりがはやく、売れ残りの在庫は大幅に価格を下げるなどしなければ売れづらい傾向にあります。
売れない在庫を抱えたままだと粗利益が圧迫されるだけでなく、管理コストも増加します。
在庫量を必要最小限に絞り込むためには、在庫回転率を上げ、なるべく循環させるような管理体制が必要です。
在庫回転率を上げて適正在庫を保つ方法
適正在庫とは、自社の出荷状況に合わせた適切な在庫量です。在庫回転率を上げ適正在庫を保つ方法を、以下4つの項目に分けて解説します。
- 定期的に在庫回転率を算出
- リードタイムの短縮
- 売れ筋商品の特定
- 売れ残り商品の削減
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期的に在庫回転率を算出
適正在庫を保つためには、月1回、週1回などのペースで定期的に在庫回転率を計算し、在庫状況を可視化しておくことが大切です。
そのうえで、在庫回転率が下がっている商品は仕入れの数量を減らす、あるいは価格を下げて販売するなどの対策を講じましょう。
月単位や四半期の時点で適正とする目標値を下回っている場合でも、定期的にチェックしていれば臨機応変に軌道修正ができます。
リードタイムの短縮
小売業やEC通販におけるリードタイムとは、顧客が発注してから商品が届くまでの期間を指します。
リードタイムを短くすることで、顧客満足度が上昇し購買意欲も喚起できるため、自社のファンやリピーターの獲得に効果的です。結果、売上が増えて在庫回転率の向上につながります。
<関連記事>「物流業におけるリードタイムとは?短縮のメリットや注意点、方法を解説」
売れ筋商品の特定
商品ごとに在庫回転率を算出すると、売れ筋商品を特定できます。
在庫回転率の高い商品が売れ筋である可能性が高いからです。
売上データと在庫回転率をあわせて参照することで、売れ筋商品の分析ができます。需要のある時期や必要に応じて、在庫を増やすことも可能です。
反対に回転率の悪い商品は、在庫を減らしたり仕入れを抑えるなど取り扱いを見直すことが一般的です。ただし、粗利が大きい商品は回転率が悪くても売れると利益幅が大きいので、在庫回転率と利益率の両側面からデータをとる必要があります。
売れ残り商品の削減
在庫回転率が極端に悪い商品は、過剰在庫である可能性が高いです。
過剰在庫は保管料がかかるので、管理コスト削減のために対策を講じなければなりません。
過剰在庫や長期間売れ残っているデッドストックを削減するためには、返品や値引き、廃棄なども検討しましょう。
<関連記事>「ECサイトを成功へ導く最新在庫管理術 - API連携とWMSの活用法」
在庫回転率を上げて経営効率を向上させよう!
在庫回転率をあげることで、管理コストの削減や粗利率の低下を防ぐことが可能です。その分の経費を売れ筋商品の仕入れコストに回せば、売上アップにもつながります。
在庫回転率の管理は、エクセルや在庫管理システムを活用すれば分析が可能です。
在庫回転率を上げて経営効率を向上させ、売上拡大を目指しましょう!
<関連記事>「オムニチャネルの在庫管理にシステム活用が重要な理由!リアルタイム反映と見える化」
発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。
ライター
オガミキヨ
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