物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
在庫管理の一元化はオムニチャネル施策を推進するうえで、課題の一つです。「エクセル管理じゃダメなの?」「在庫情報の一元化とは?」と悩んでしまう人もいるかもしれません。本稿では、オムニチャネルの在庫管理における課題を明確にしたうえで、システム活用の重要性を解説します。
オムニチャネルの在庫管理における課題
オムニチャネルの在庫管理における最大の課題は、チャネルを超えた在庫情報を、
「いかにリアルタイムで正確に伝えられるか」
です。
そもそもオムニチャネルは、複数の販売チャネルを持ち、それぞれの情報を連携させて顧客へアプローチする戦略。その特性上、在庫管理にリアルタイムの正確性を意識しなければ、以下のようなエラーを招きかねません。
・誤った在庫情報の提供
・欠品による受注キャンセル
たとえばECと店舗の在庫をまとめて管理していれば、ECサイトからの受注と店舗での購入のタイミングが合致してしまうことは起こりえるでしょう。店舗の購入で品切れになってしまえば、ECサイトの注文をキャンセルせざる得なくなってしまいます。
また、ECサイトのモール間でも、同じことが起こりえます。オムニチャネルを目指す事業者がAmazon、楽天、自社ECサイトなどで多展開をしていることは珍しくないでしょう。
それぞれのデジタル店舗での、在庫管理が独立していては、リアルタイムでの在庫反映が困難になり、ここでも在庫情報の混乱を招きます。
・チャネル間での在庫の取り合い
・誤った提案による顧客からの信頼の低下
を避けるため、リアルタイムで反映される仕組みの構築が必要です。
オムニチャネルについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
「オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違い・導入のメリットデメリットも解説」
オムニチャネルの在庫管理にシステム活用が重要な理由・メリット
オムニチャネルの在庫管理における課題をクリアにするためには、システムの活用が重要です。なぜならエクセルや帳票管理ではできない、
「見える化」
「リアルタイム反映」
が実現できるからです。それらが、もたらすメリットを4つ紹介します。
メリット1. チャネルを超えた適切な提案ができる
在庫管理をシステムで行うことにより、複数の倉庫や店舗の在庫情報が可視化できます。同一のシステム内で拠点別で管理すれば、顧客のニーズに合わせてチャネルを超えた適切な提案も可能です。
たとえば
ECサイトを見ている人の中でも、「できれば今日商品を手に入れたい」といったニーズもあるでしょう。
そうした顧客向けに、近隣店舗の在庫情報提示にも活用できます。
メリット2. データの蓄積による需要予測
在庫管理システムに自動的に蓄積するデータが需要予測に役立ちます。オムニチャネルでは購買経路が多様化し、エクセル管理での情報収集・分析は不可能といっても過言ではありません。
それぞれのチャネルでどのくらいの需要があるのか分析し、適正在庫を保つことは健全な経営を行ううえで重要です。過剰在庫になり、保管スペースひいては経営の圧迫にも繋がりかねません。
在庫を一元化しつつ、蓄積された購買データを活用、適正在庫を維持することで、欠品と過剰在庫のリスクを低減できます。
メリット3. 欠品による販売機会損失の回避
システム管理で在庫情報がリアルタイムに反映されていれば、欠品による販売機会の損失を回避できるシーンもあります。
エクセルや帳票管理などのアナログな在庫管理においては、入荷情報をリアルタイムに反映するのが難しいものです。実際にはすでに入荷しているものの、オンライン上で「欠品」と表示されていれば、その間販売機会を逃していると考えられるでしょう。
また、純粋に欠品の場合も、オムニチャネルの在庫を一元管理することで、他チャネルへの誘導がスムーズに行えるといったメリットもあります。在庫情報のリアルタイムな「見える化」は欠品リスクへの備えになります。
メリット4. チャネルごとの特性に合わせた在庫管理が可能
在庫管理システムの活用で、チャネルごとの特性に合わせた情報管理も手軽に行えます。
チャネルが違えば、単品・ケース・セット組など、一つの商品でも単位の違う管理方法をしなければならない場合もあるでしょう。
さらにロットや賞味期限の管理など、オムニチャネルによって、ますます情報管理が煩雑化します。システム活用で自動的に情報が整理し、ヒューマンエラーの削減も可能です。
出荷の伸びに対応できる
オムニチャネル化を進める中で、事業の規模の成長を見込んでいる場合もあるでしょう。
在庫管理システムを導入し、出荷や棚卸し業務を効率化することで、同じ人数で一日に作業できる量が飛躍的に伸びるのもメリットです。出荷スピードが3倍にアップした例も。リードタイムの短縮効果も期待できます。
出荷が伸び、対応しきれなくなってしまってからでは遅いため、事前の対策として取り入れておくのも良いでしょう。
在庫管理システム選定の3つのポイント
ではオムニチャネルに適した在庫管理システムは、どのように選定すれば良いのでしょうか。ポイントを3つ紹介します。
OMSとWMSが連携・一体化しているか
1つ目のポイントはOMS(受注管理システム)とWMS(在庫管理システム)が一体化しているサービスを選ぶことです。
様々なモールやカートの一元管理が必須なオムニチャネルでは、OMSとWMSの間に人の手が介在すれば
・人為的ミスの増加
・作業時間の増加
に繋がってしまいます。リアルタイムの在庫把握も困難になるでしょう。受注から在庫管理まで、自動化できるかどうかが選定基準になります。
こちらの記事も参考にしてください。
【D2C/eコマース/OMO システム編】受注管理システム(OMS)の導入メリットとポイントを解説!
目的に対してコストは適正か
在庫管理システムを導入によって、赤字化してしまえば元も子もありません。目的に対して導入コストが適正であるかどうかが選定ポイントの2つ目です。
コストが適正か判断するためには、料金体系のわかりやすさに着目しましょう。導入費が高額なシステムは、事業規模が小さければコストが見合わない可能性もあります。事業の成長に合わせた価格設定がされているかチェックしましょう。安心して利用できます。
パーソナライズに対応したカスタマイズが可能か
ポイントの3つ目は、注文状況に合わせた同梱物や梱包資材の出荷指示が可能かどうか、が挙げられます。オムニチャネルでシームレスな購買体験を目指すうえで、購入者によってパーソナライズ化したサービスを提供する必要もあるでしょう。
・初回購入者にカタログを封入
・SNSのライブ配信経由での購入者に特別梱包
・モールから¥10,000以上の購入者にノベルティを同梱
オムニチャネルやECに特化していない在庫管理システムでは、これらの管理がしにくい場合があります。
比較検討し、確認しましょう。
オムニチャネルの在庫管理には「見える化」と「リアルタイム反映」が必須
在庫管理はそもそもが煩雑な作業であるうえに、顧客接点が増えるオムニチャネルの仕組みの中では、さらに複雑さを増します。
しかしそれだけ、販売機会が増えたということ。在庫管理システムの導入により、一つひとつの機会を逃さず掴んでいきましょう。信頼を損なうことなく、顧客の隠れたニーズを汲み取っていけば、利益の向上に繋がるはずです。
富士ロジテックでは、オムニチャネル対応の受発注・在庫管理システム「LOGILESS」と提携しています。また物流業務をさらに効率化、自動化させたい方にはフルフィルメントサービスの提供が可能です。相談を承っておりますので、ぜひお問い合わせください。
オムニチャネルの課題についてこちらの記事でも解説しています。
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ライター
田中なお
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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