物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
在庫差異(棚卸差異)とは、実在庫数と帳簿在庫数が合っていないことです。在庫差異の発生は、原因追及に時間を要するだけでなく、正確な在庫管理が出来ていないことによる生産性の低下、販売機会の損失など、経営状況を悪化させるさまざまな悪影響を受けるリスクがあります。
本記事では、在庫差異の発生理由や影響を紹介したうえで、具体的な予防策を5つ解説します。対策を投じる際の参考にしてください。
在庫差異(棚卸差異)が起こる理由は?
まずは、在庫差異が起こる理由はさまざまです。そのなかでも発生しやすい6つの要因を解説します。
- 入荷時の処理ミス
- 出荷時のピッキングミス
- 伝票処理ミス
- 棚卸ミス
- 在庫計上のタイムラグ
- 原因不明
1.入荷時の処理ミス
入荷処理ミスとは、商品の入荷時に誤った情報で処理をしてしまうことです。数量の数え間違えや、商品の誤認識による処理ミスなどで在庫差異が発生する可能性があります。
特に1つのダンボールに複数商品が混在している場合や入荷予定外の商品、見た目が似ている商品がある場合に発生しやすいミスです。
また、入荷時の数量確認は商品を1ピース単位で数える「ピース検収」とケース単位で数える「ケース検収」の2通りがあることも在庫差異につながりやすくなります。
ピース検収はダンボールを開梱し、1点ずつ数量確認をして処理をしますが、ケース検収は、開梱せずに外箱に記載された数量で処理する仕組みです。この時に、ダンボールに入っている商品が「多い」もしくは「少ない」場合に、差異が発生するケースがあります。
2.出荷時のピッキングミス
出荷作業の一つであるピッキング時に、指示よりも多く商品をピックしてしまうミスや指示にない商品を誤ってピックしてしまうミスなどが差異発生の要因になります。
ピッキングミスは1件の受注で同じ商品を複数購入している場合や1件あたりのピッキング数が多い場合に発生しやすいといわれています。
梱包・発送時にミスに気付かないケースもあり、指示数とは異なる数で商品を発送してしまうことになります。その結果、在庫差異が発生してしまうのです。
3.伝票処理ミス
伝票処理時のミスも在庫差異が発生する要因の一つです。実際の入庫・出庫は正しく行われているものの、システムへの登録時に入力数を間違えることで在庫差異が起こります。
よくある原因として挙げられるのは、急な変更やキャンセルによる入出荷数量の訂正です。現場サイドで変更した旨の記載漏れがあったり、伝票処理自体を忘れてしまったりしやすい傾向にあります。
入荷数の変更や出荷キャンセルは、手作業で訂正処理をする必要があるため、注意が必要です。ミスが起こった際に都度対策を立てていく必要があります。
4.棚卸ミス
通常の入出荷には関係なく、棚卸ミスで差異が生まれるケースです。棚卸当日に起こるミスは、おもに「カウント・入力・集計」の3パターンが挙げられます。
内容 |
要因 |
在庫カウントミス |
・数量や品番の数え間違い ・重複カウント ・カウント漏れ |
入力ミス |
・システムへの転記間違い ・記入場所の間違い ・棚卸表自体の品番間違い |
集計ミス |
・集計漏れ ・過剰集計 |
基本的に棚卸はシステムではなく人が目視確認で実施します。事前に棚卸資料をチェックしたうえで、2名体制でカウントするなど、ミスのない体制の構築が重要となるでしょう。
〈関連記事〉「棚卸とは?棚卸の手法やミスをしやすい理由とは」
5.在庫計上のタイムラグ
商品の入荷日から数日後に納品書が届くなど在庫計上にタイムラグがある場合、在庫差異の発生リスクが高まります。
タイムラグによって「商品の動き」と「伝票の動き」が一致せず、実在庫と帳簿在庫に差異が生まれるためです。在庫計上のタイミングをいつにするか事前に取り決めをしておく対策が必要です。
月末の入荷は、処理漏れによる在庫差異が発生しやすいため、特に注意しましょう。
6.原因不明
原因の追及を行っても、差異の理由が分からないケースも少なくありません。原因を突き止められない差異の多くは、運用ルールの不徹底、盗難などが挙げられるためです。
原因不明の棚卸差異は、管理者を設ける、在庫チェックを毎日行うなど、管理方法を変更し、早期対策が必要です。
在庫差異(棚卸差異)の種類
在庫差異は「棚卸差益」「棚卸差損」の2種類に分かれます。2つの違いは、帳簿在庫数が実在庫よりもプラスであるか、マイナスであるかによって変わります。
- 棚卸差益
- 棚卸差損
棚卸差益
棚卸差益とは、帳簿上の在庫数より実在庫数がプラスとなっている状態です。棚卸差益が発生すると帳簿上では在庫がない、もしくは少なくなっているため、過剰に在庫を発注してしまうおそれがあります。
過剰在庫の発生は商品価値の低下にもつながりやすく、SALE価格での販売・廃棄によって、収益悪化につながるリスクも伴います。
棚卸差損
棚卸差損とは、帳簿上の在庫数よりも実在庫数がマイナスの状態を指します。ECサイトの在庫と連携している場合、在庫のない商品を販売してしまうリスクがあり、避けなければなりません。
在庫のない商品が売れた場合、販売機会の損失(売上低下)につながるだけでなく、顧客からの信頼度が低下する可能性も高まります。
在庫差異(棚卸差異)による影響
続いて、在庫差異が起こることで企業が受ける影響について具体的に解説します。
- 販売機会の損失
- キャッシュフローの悪化
- 原因追及によるコストの発生
販売機会の損失
在庫差異の発生は、販売機会の損失につながるケースがあります。
たとえば、帳簿上の在庫が「30個」となっているのにかかわらず、実在庫は「50個」と差異が発生しているケースで考えてみましょう。
ECサイト上に帳簿在庫が連携される場合、在庫数が「0」になった時点で、サイト上では「売り切れ」となります。まだ20個販売できる在庫を保有しているにもかかわらず、販売できず、販売機会の損失につながるのです。
反対に、帳簿上の在庫数が多く実在庫数は少ないケースでは、在庫がない商品を販売してしまうリスクが伴います。入荷予定のない商品であれば、購入者に対してキャンセル依頼をする必要があり、販売機会損失だけでなく、顧客満足度の低下につながるおそれがあります。
キャッシュフローの悪化
在庫差異は、キャッシュフローの悪化にもつながるといわれています。帳簿在庫に差異が発生しているまま商品を発注してしまうと、過剰在庫になるリスクがあるためです。
過剰在庫は管理コストが増加するだけでなく、販売できずに不良在庫となるリスクが高まります。不良在庫になった場合、廃棄コストが増大するなど大きな損害につながる可能性も。
キャッシュフローを円滑に回すためには、在庫数を正確に把握することが重要です。
原因追及によるコストの発生
発生原因を突き止めるために、作業者へのヒアリングや処理内容の確認をする必要があり、人件費が発生します。
また、在庫差異の理由がテレコ発送などによる誤発送だった場合、商品の送り直しや商品の弁済などでコストが発生することも珍しくありません。
差異発生日から時間が経つほど、原因調査に時間を要するため、早期発見できるよう棚卸時期の見直しなどの対策が必要となります。
このように在庫差異の発生はデメリットが大きく、適切な在庫運用ができるよう慎重な在庫管理が重要です。
在庫差異(棚卸差異)を予防する5つの対策
在庫差異は、ルールの見直しなどによる在庫管理の適正化によって改善ができます。具体的な対策方法を確認していきましょう。
- 在庫管理ルールの見直し・徹底
- 日次棚卸の実施
- みなし出庫の活用
- 在庫管理システムの導入
- アウトソーシングの利用
1.在庫管理ルールの見直し・徹底
手作業による人的ミスを「0」にするのは難しいですが、ルールの見直し・徹底によりミスの削減につなげられます。
在庫管理のルールが曖昧な場合、作業自体が正しいのか判断できません。入荷・出荷・保管・棚卸など、各工程でルールを明記したマニュアルの作成が効果的です。
たとえば、入荷時の検収では「納品時に注文書と商品が一致しているか、同封書類に間違いがないかを確認してから処理する」などより具体的に記載します。伝票ミスによる商品間違いや未着商品は、入荷時に気付けるため、在庫差異の原因を早期に発見できます。
在庫保管では「保管棚に採番したうえで指定在庫以外を置かない」「種類に応じて色分けする」などのルールを細かく定め、誰でも同じ作業ができるように徹底するとよいでしょう。
また、マニュアル作成だけでなく、定期的にルールを確認する機会を設けるとさらに効果的です。
〈関連記事〉「倉庫の作業を効率化する9つの方法!課題から見る改善のアイデアを解説」
2.日次棚卸の実施
日次棚卸とは、当日の入出庫分を差し引いた在庫数を出荷後に確認する作業のことです。
毎日の棚卸作業は手間や時間がかかるものの、差異の発見が早まり、ミスに対しての対策や差異の原因を明確にできるメリットがあります。
ただし、在庫量によっては棚卸に時間がかかりすぎてしまうケースもあるため、出荷量の多い品番に絞るなど、状況に応じた対応が必要です。
3.みなし出庫の活用
みなし出庫は、使用したとみなして出庫処理をする簡易的な方法です。1つの商品を組み立てるうえで、多くの部品を使用する工場などで活用されています。
商品の組み立てる際に、リアルタイムで数百・数千個の出庫処理を行うのは物理的に難しく、一括で処理できるみなし出庫は、人的ミス・漏れを防げるといわれています。
みなし出庫によって、日々の手間が省けるため、作業効率化につながる点もメリットです。
ただし、手作業による出庫処理は数量を誤ると在庫差異の発生につながるため注意が必要です。みなし出庫で作業をする場合は、正確さを保った状態で入力できるようシステム導入をするなど、環境整備も必要となります。
4.倉庫管理システム(WMS)の導入
在庫差異を防ぐには、倉庫管理システム(WMS)の導入も有効な手段の一つです。
倉庫管理システムは、商品や資材の入出庫管理や在庫管理などの機能を搭載したシステムのことであり、ハンディターミナルなどで読み取った在庫データは、システム上で一元管理も可能です。
入出荷時は、ハンディターミナルでコードを読み取る処理によって、誤入荷・誤出荷を防ぐ効果があります。さらに、伝票の作成や処理を自動化できるため、入力ミスや処理漏れなどの人的ミスを防ぐことにつながります。
〈関連記事〉「ECサイトを成功へ導く最新在庫管理術 - API連携とWMSの活用法」
5.アウトソーシングの利用
自社で在庫差異の改善が見込めない場合、物流業務のアウトソーシングも有効です。専門業者であれば、在庫の保管や管理、入出荷まで委託可能であり、差異を発生させないノウハウを持ち合わせているためです。
さまざまなケースの在庫差異を経験していることもあり、在庫差異の発生時には、原因の追及はもちろんのこと、解決に向けての対応まで早期の対処が可能です。
また、物流のプロに委託することで適切な在庫数の検討や提案が受けられることで、過剰在庫・過少在庫を防げます。業務効率化も図れるため、EC事業者側は商品の開発や販売など、本来の業務に集中できるメリットもあるでしょう。
アウトソーシングの利用は、在庫管理に人員を割けない、差異を徹底的になくしたいと考える企業に向いています。
在庫差異の改善にはアウトソーシングの利用がおすすめ
在庫差異とは、実際の在庫数と管理上の在庫数が異なる状態を指します。入出荷ミスや棚卸の入力ミス、カウントミス、記入漏れなど発生理由はさまざまです。
在庫差異は販売機会の損失だけでなく、顧客満足度・生産性の低下など、経営状況を圧迫する要因になるため、解決すべき重要な課題です。差異をすべてなくすことは難しいものの、事前の対策や差異発生時の対応など、あらかじめ準備しておくことが大切でしょう。
富士ロジテックホールディングスでは、システム連携による在庫管理を徹底しております。在庫差異率は0.002%以下と限りなく「0」に近く、常に改善活動に注力しています。在庫差異の改善に悩む企業様は、お気軽にお問い合わせください。
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ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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