物流業界の人手不足が深刻化!現状と原因、対策を解説【2023年最新】

Written by 梅山茜

近年、物流業界において人手不足が深刻な問題となっています。日常業務を行なううえで、トラックドライバーが見つからない、出荷業務の人員が確保できないなど、人手不足を肌で感じる企業も多いのではないでしょうか。

その背景には、日本の社会問題である少子高齢化による生産年齢の人口減少やトラックドライバーの賃金、労働環境の悪化による影響が原因に挙げられます。

本稿では、物流業界・運送業界における人手不足の原因、考えられる対策をくわしく解説します。

物流・運送業界の現状|市場の拡大と人手不足の深刻化

近年、ECサイトの普及や世界情勢によって、インターネット通販の利用者が増加しています。国土交通省「令和3年度 宅配便取扱実績について」の調査によると、令和3年度の宅配便取扱個数は、49億5,323万個と前年対比で約2.4%(+1億1,676万個)と増加している状況です。商品の出荷や配送を担う物流・運送業界の市場は拡大傾向にあります。

しかし、需要が高まる一方で、供給が追いつかない状態に陥っているのが実情です。厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和4年10月分)」によると、職業別の有効求人倍率は下表のとおりとなっています。

職業別

有効求人倍率

自動車運転の職業

2.46倍

包装の職業

2.62倍

職業計(平均)

1.23倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年10月分)参考統計表

有効求人倍率とは、企業が求めている労働者数を示す指標です。倍率が高いほど、多くの労働者が必要だと判断できます。

物流・運送業界に携わる職業の有効求人倍率は、平均である1.23倍よりも大きく上回っており、売り手市場であることがわかります。多くの企業で従業員が足りておらず、現場が疲弊している状況だといえるでしょう。

物流・運送業界の人手不足が深刻化する原因

物流・運送業界における人手不足の原因は、以下の内容が指摘されています。なかでもトラックドライバーの人員確保は急務です。なぜ人手不足が深刻化しているのか、具体的に確認していきましょう。

  1. 働き手の高齢化
  2. 労働生産性の低さ
  3. 給与水準の低さ
  4. 業界が抱える3Kのイメージ
  5. 長時間労働への懸念
  6. 力仕事への懸念

働き手の高齢化

日本の社会問題である少子高齢化により、生産年齢人口が年々減少している状況です。人口減少により、新たな働き手の確保が難しく、既存従業員の高齢化が人手不足に陥る原因の一つに挙げられます。

国土交通省が発表した「トラック事業の概要」によると、現行ドライバーの年齢層は約45.2%が40歳〜54歳となっています。一方、29歳以下の若年層は全体の10%以下という結果であり、高齢化が進んでいることがわかります。

現行ドライバーが定年に近づくにつれて、人手不足はさらに深刻な問題となるでしょう。

労働生産性の低さ

人手不足の原因の一つに、労働生産性が低いことも挙げられます。物流・運送業界では、いわゆる「アナログ文化」が残っており、現在においてもFAXや手書きなどの非効率なやり取りが中心の企業も少なくありません。

とはいえ、デジタル化移行への対応ができる従業員がいない企業は、すぐにデジタル化への取り組みが難しい現状もあります。自社で対応が難しい場合は、デジタル化移行のサポートが受けられるアウトソーシングサービスの利用も一つの手段でしょう。

給与水準の低さ

物流・運送業界は全産業平均よりも約1割~2割程賃金が低い現状があります。人手不足の理由の一つに給与水準が低く、就職先に選ばれにくいことも関係しているでしょう。給与水準が低い要因は「多重下請け構造」による賃金低下が影響しています。

「元請け→下請け→孫請け」と、元請けを頂点としたピラミッドのような多重下請け構造は、下に行くほど手数料が差し引かれた金額で依頼される仕組みです。

実際に業務を担う事業者へ支払われる金額は低くなり、利益率が低下し賃金が上げにくい体制が課題となっています。

業界が抱える3Kのイメージ

物流・運送業界における人手不足の原因の一つに「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが払拭できていない点が挙げられます。

現在では商品管理のデジタル化やAI・IT化が進んでいます。従業員の業務負担を軽減させるための改善が進んでいる企業も多くあるのが現状です。

とはいえ、トラックドライバーでいえば日をまたぐ労働や事故など、改善すべき点も残っています。また定着したイメージの影響は大きく、すぐには変わらないものです。業界全体をよいイメージに変えるためには、働きやすい職場環境へ向けた継続的な改善が重要でしょう。

長時間労働への懸念

人手不足が原因で、既存従業員が長時間働かなければ業務が回らない環境に陥ってしまっている企業もあるのではないでしょうか。労働環境の明確な改善策がない場合、人が集まらないだけでなく既存従業員が離職してしまうこともリスクとして考えられます。

国土交通省の「トラック運送事業の働き方をめぐる現状」によると、物流・運送業界の労働時間は全職業平均より2割ほど長く、人手不足が原因で今後さらに労働時間が増えることが懸念されます。

賃金が低い、労働時間が長い企業に就職したいと考える労働者はいないといっても過言ではありません。人手不足を補うためには、労働環境を改善するための取り組みが必要でしょう。

力仕事への懸念

物流・運送業界の仕事は、商品の保管〜入出荷準備・配送・荷受け・荷下ろしなどさまざまです。業務のなかには、大量の荷物を運ぶことや長距離運転などもあり、体力面で負担が大きい場面は少なくありません。

そのため、体力に自信がない人や女性の場合、物流・運送業へチャレンジしたくとも躊躇してしまうため、新たな働き手の確保が難しい点が挙げられます。

働き手を増やすためには、力仕事をサポートする自動化・機械化へ向けた取り組みを積極的に検討することも大切でしょう。

※以下の記事でも物流業界の人手不足問題を深堀りしています。

「物流2024年問題」

海外の動向を含めた物流業界の将来性などを解説しています。

「ドライバー不足」

物流・運送業界の人手不足に対する国の取り組み|ホワイト物流

人手不足対策の一つとして、国土交通省が推進する「ホワイト物流」という取り組みが注目されています。

ホワイト物流とは、物流に携わる関係者が連携して相互に改善提案を行ない、協力して物流の効率化を推進する国民運動を指します。

具体的には、人手不足の原因とされる労働環境や生産性の低下に着目し、テコ入れを行ない、働きやすい環境調整や生産性の向上を目指すものです。

物流にかかわるすべての人の連携が必要であるという考えのもと、荷主企業をはじめ物流事業者・事業者団体・国民までそれぞれの立場での行動推進、協力依頼を行なっています。

「ホワイト物流」推進運動へ参加することが、人手不足解消への一歩となるかもしれません。

物流・運送業界の人手不足への対策6つ

物流・運送業界における人手不足を補う対策として、業務フローの見直しや職場環境の改善などの企業努力が必須です。今後は、AIやロボットの活用による人手不足を補う新しい解決策も注目されています。ここでは、人手不足への対策方法を6つ解説します。

  • 業務の標準化
  • IT・AIの活用
  • 多様な人材の活用
  • 労働環境の改善
  • ロボットの活用
  • 給与水準の改善

業務の標準化

物流・運送業界の課題解決を行なうためには、一連の業務の標準化が重要と指摘されています。国土交通省は標準化を次のように表現しています。

“物流の機械化・デジタル化を通じた、既存のオペレーション改善や働き方の改革の実現により、経験やスキルの有無だけには頼らない、ムリ・ムラ・ムダがなく円滑に流れる「簡素で滑らかな物流」の実現“

引用:国土交通省「最近の物流政策について」14P

標準化の実現には、企業・業種の垣根を超えた情報やコストの可視化を進め、作業内容を単純化させるフローの確立が重要です。こうした取り組みにより業務内容にムラが出ることを防ぎ、誰でも対応できる物流体制の構築が目指せるでしょう。

IT・AIの活用

IT・AIの活用は、人手不足をシステムによって補える有効な手段の一つです。次のような最新システムを導入することで、効率化が進み従業員の負担軽減を実現する企業も増えています。

○RPA(Robotic Process Automation)

・RPAとは、人が手作業で行なう定型的な入力業務を、ソフトウェアロボットが代行して行なう自動ツール

・データの集計や伝票作成・集荷受付・入出荷指示などのバックオフィス業務を中心に自動化ができる

 

○OCR

・OCRとはFAXや紙の情報を文字データに変換できるシステムのこと

・手入力で行なっていた文字起こしを自動化できる

・PRAと連携して活用することで、アナログ業務が一括で自動化できるため、業務効率が向上する

 

○自動運転

・ADAS(先進運転支援システム)は、完全自動運転ではないが、部分的なドライバーサポートが行なえるシステム

・自動車に搭載されたシステムが周辺状況を分析したうえで、警告を行なったり、自動で自動車を制御したりするなど、ドライバーの安全をサポートできる

多様な人材の活用

人手不足解消には、多様な人材を確保することも重要です。総務省が発表した「労働力調査 産業別就業者数、雇用者数」によると、2021年の運輸業・郵便業の就業者数は350万人であり、そのうち女性は76万人(27%)という結果でした。

全産業平均でみると、女性の就業者は約45%となっており、物流・運送業界は女性の働き手が確保できていない状況といえます。

女性の労働者が少ない背景には「物流・運送業界は、力仕事が多くて大変」というイメージが残っている点が挙げられます。女性労働者を増やすためには、イメージを払拭できるような働きやすい環境整備が必須でしょう。

また、労働環境の改善が進んでいる企業は、働き方の変化を知ってもらうために、SNSやWebサイトを利用した情報発信が重要です。

労働環境の改善

人材確保には、労働環境の見直しが必然です。先述したとおり、物流・運送業界は3Kのイメージが根付く残っており、労働環境が悪い印象があるためです。

有効な改善策として物流DXが注目されています。物流DXとは既存オペレーションの改善や働き方改革を実現するものです。機械化・デジタル化を推進し、情報やコストを可視化し、作業内容を簡素化させることで、効率的で働きやすい環境を整える方法を指します。

業務効率化により、一人ひとりの業務負担が軽減され、休暇の取得や労働時間適正化が目指せます。より良い労働環境の提供ができれば、従来のイメージを改善しやすくなるでしょう。

ロボットの活用

ロボットの導入は、人手不足の対策で注目される取り組みの一つです。具体的には、ドローンを活用した配送や倉庫内における作業ロボットなどが挙げられます。

ロボットを利用し単純作業を自動化することで、従業員の業務負担軽減や時間短縮、ミスの軽減が期待できるメリットの多い方法です。

とはいえ、ロボット導入はコスト負担が大きく、早急な導入判断が難しいのも事実です。購入だけでなく、レンタル利用も含めて導入メリットを把握して検討するとよいでしょう。

給与水準の改善

給与面での改善も重要な取り組みの一つです。前述したとおり給与水準の低さは、多重下請け構造が大きな要因となっています。

そのため、給与水準を上げるには、利益率を向上させる取り組みが重要です。従業員へ還元できるよう資金を確保する必要があるためです。

利益率向上には、AI導入による効率的な配送を目指す、デジタル化・システム化によるコスト削減など、複合的な取り組みが有効でしょう。

物流・運送業界の人手不足を乗り越えるために

世界情勢やECサイトの普及により、インターネットでの購入需要が増加しています。年々宅配便の取扱い個数が増加しており、供給側の人手不足が課題となっています。

人手不足解消には、アナログ業務の改善や、手間や負担の大きい業務を自動化・機械化させるなど、各企業の労働環境整備に向けた積極的な取り組みが必要となるでしょう。

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【ライター】梅山茜

物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。
好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。
カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。
趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。