
物流業界歴15年以上。港湾の職業訓練校卒業後、港湾荷役作業会社にてRORO船等への本船荷役に従事。フォークリフト、クレーン運転士、大型特殊など現場必須の資格を多数所持。Amazonのセラーとして出品経験あり。長年の経験と専門知識を活かし、現場目線でのリアルな記事執筆が得意。物流以外に自動車関連の執筆実績も多数。

アパレル物流における「検品」とは、製品を入荷した際に、その品質や数量、状態などを確認する作業です。検品の質が顧客満足度やブランドイメージに直結するため、重要な工程となります。
しかし、これからアパレルブランドの立ち上げやEC事業を始めようとする人の中には「具体的に何をすれば?」「怠るとどうなる?」「自社でやるべき?外注すべき?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
結論として、アパレル事業成功には適切で質の高い検品体制が不可欠であり、特に立ち上げ期においては外部への委託をおすすめします。アパレル物流における検品作業は、工程が多く複雑です。さらに設備の準備やスタッフの教育など、時間とコストがかかってしまいます。
この記事では、アパレル検品の基礎を解説します。さらに、外注するか自社で行うか、あなたのブランド、企業にとって最適な選択肢がどちらかを選ぶ基準について解説します。
この記事でわかること ● 検品不足が招くリスク ● アパレル検品の基本 ● アパレル検品を始める具体的な流れ ● 自社と外注それぞれのメリットデメリット ● 外注先、物流倉庫の選び方 |
ぜひ最後まで読んでいただき、アパレル事業のスムーズな運営の参考にしてください。
アパレルにおいて検品不足が招く3つのリスク
消費者庁の調査によると、「おおむね高評価でも否定的な口コミ情報で購入をためらうことがある」という人は全体の63.9%であるとの調査結果が出ています。
このことから、顧客からの信頼を守り、ネガティブな評価を避けるためにも、検品は不可欠です。
検品を怠った際の具体的なリスクとして、以下の3つが挙げられます。
- 不良品による直接的な損失
- 顧客満足度とリピート率の低下
- ブランドイメージの低下
不良品による直接的な損失
検品不足だと、不良品が顧客の手に渡ってしまいます。
それにより被るのは、以下のような直接的な損失です。
- クレーム対応、返品・交換の送料や手間、代替品コスト、廃棄コストが増える
- 不良品対応に追われ、コア業務(販売促進、商品開発など)に時間を割けなくなる
- ECサイト等での悪いレビューにより、新規顧客の獲得、売上の妨げになる
<<関連記事>「アパレル 返品対応(近日公開予定)」
顧客満足度とリピート率の低下
不良品が顧客の手元に届いてしまうと、期待を裏切り満足度を低下させます。
検品の技術が向上している現代の取引では、異常のない商品が提供されて当然です。そのため、一度の不良品がブランドへの不信感につながり、リピート購入の機会を失わせる可能性があるでしょう。
リピート率の低下は、長期的な売上減を意味する上に、不満を持った顧客によるネガティブな口コミがあると、さらなる顧客離れを招きます。
ブランドイメージの低下
検品の不備により不良品がたびたび発生するようであれば、ブランドの価値は大きく損なわれます。
「安かろう悪かろう」「管理がずさん」といったネガティブイメージが一度定着すると、失った信頼を取り戻すのに多大な時間とコストが必要です。
ブランドイメージが低下すると、短期的な売上だけでなく、将来的な事業展開にも悪影響を及ぼします。
<関連記事>「アパレルECの市場規模と成功事例!5つの課題と対策も紹介」
アパレル検品4つの基本作業と検品項目
「検品」といっても、具体的にどういったことをするのか分からない方も多いでしょう。
アパレル検品の基本作業は、大きく以下の4つに分類されます。
- 外観チェック
- 縫製チェック
- 寸法チェック
- 検針作業
外観チェック
商品を台の上に広げたり、ハンガーに掛けたりして外観から不具合がないかチェックします。
具体的には、以下のようなポイントを目視でチェックします。
検品項目
- 汚れ、シミ、傷、色ムラ、日焼け跡の有無
- 生地の織りキズ、ネップ(異繊維混入)、毛玉の有無
- プリントや刺繍のズレ、かすれ、ほつれ等の状態
縫製チェック
縫い目のほつれや糸切れがないかチェックします。
具体的には、以下のような点を目視や手で触って確認します。
検品項目
- 縫い目のほつれ、糸飛び、縫い縮み、縫いズレ
- 縫い終わりの糸始末の状態(長く飛び出ていないか等)
- ボタン付けの強度、ファスナー開閉のスムーズさ、付属品の状態
寸法チェック
製品を台に乗せ、しわを伸ばし、平らな状態でメジャーを使用し製品の寸法を測ります。
仕様書やサイズ表記通りの仕上がりかを確認します。試着ができないEC事業においては、特に重要な工程です。
検品項目
- 主要箇所(身丈、身幅、袖丈、ウエスト等)を採寸
- 仕様書の寸法に対し、許容誤差範囲内かを確認
安全のために不可欠な「検針」
「検針」とは、アパレル製品の製造工程で使用された針(ミシン針、まち針など)や、その折れた破片、ピンなどの金属異物が、商品の中に残っていないかを確認する検査のことです。
縫製過程で検針を行っていても、異物が残っている場合があります。そのため、出荷前も検針を行うことが多いです。
検針の最大の目的は「消費者の安全確保(怪我の防止)」であり、加えて「PL法(製造物責任法)への対応」や「ブランドイメージ維持」の観点からも実施が推奨されます。
作業方法は、検針機(X線、ハンディ式など)を使用し、1点ずつ確認するのが一般的です。
<関連記事>「アパレル業界の検針とは?検針機の種類や基準となる感度を解説」
出典:検品の基礎知識|一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)
アパレルの検品方法|具体的な流れと必要な道具
実際にアパレル商品の検品作業を行うには、どのような手順で進め、何を準備すればよいのでしょうか。ここでは、アパレルの検品方法として以下の2つを解説します。
- 検品作業の基本的な流れ
- 検品作業に必要な道具
検品作業の基本的な流れ【7ステップ】
効率的かつ、正確に検品を進めるための基本的な手順は、以下の7ステップです。
Step 1:検品場所と環境の準備
まず、正確な検品を行うための土台となる作業環境を整えます。商品を十分に広げてスムーズに作業できるよう、ゆとりのあるスペースを確保しましょう。
細かい汚れや縫製不良を見逃さないためには、自然光や照明を利用して十分な明るさを保つことが重要です。また、商品を汚さないように、清潔で平らな作業台(テーブルなど)を用意してください。
Step 2: 検品基準の明確化と共有
次に、検品品質のばらつきを防ぎ、作業者全員が一貫した判断を下せるように、検品の基準を明確にし、作業員に共有します。
具体的には、確認すべき項目をリスト化したチェックリストの作成や、どこまでを良品とし、どこからを不良品とするかの判断基準となる限度見本(OK/NGサンプル、写真でも可)を用意すると良いでしょう。
Step 3: 商品の受け入れと開封
検品対象となる商品を受け入れ、作業を開始できる状態にします。
まずすべきは、届いた商品の品番、色、サイズ、数量などが、添付されている納品書の記載と一致しているかの確認です。
その後、商品を開封します。その際、カッターなどで中の商品を傷つけてしまわないよう、細心の注意を払って丁寧に行いましょう。
Step 4: チェック項目に基づき検品実施
Step2で明確にした検品基準とチェックリストに基づき、商品の品質を一つひとつ丁寧に確認していきます。
外観の汚れやキズ、縫製の状態、寸法の正確さなどを、リストの項目に従ってチェックします。見落としを防ぎ、効率的に作業を進めるためには、例えば「前面→後面→内側」のように、確認する順序を決めておくのがおすすめです。
Step 5: 不良品の仕分けと記録
検品中に不良品を発見した場合、良品と分別し、今後の品質改善に役立てるために情報を記録します。
具体的には、不良の内容(汚れ、縫製不良、寸法違いなど)や、修正が可能か不可能かなどを正確に記録しておきましょう。
この記録は、仕入先へのフィードバックや原因究明、再発防止策の検討に不可欠な情報となります。
Step 6: 検針作業の実施
製品の安全性を最終確認するために、検針作業を行います。
専用の検針機(X線、ハンディ式など)を使用して、製品内部にミシン針の破片やピンなどの危険な金属異物が残っていないかをチェックします。
Step 7: 良品の処理(保管・出荷準備)
全ての検品・検針作業を終えた良品を、次の工程(保管、流通加工、出荷など)に進められる状態に整えます。
必要に応じて商品をきれいに畳み直したり、新しい袋に入れたりします。
出典:検品の基礎知識|一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)
アパレル検品に必要な道具・ツール例
検品作業を効率的かつ正確に行うためには、以下のような道具やツールがあると便利です。
- メジャー、定規:寸法チェックに必須です。生地の厚みによっては金属製の定規が適している場合もあります
- 色見本帳(必要な場合):商品の色が指定通りか、色ブレがないかを確認するために使用します
- 検品用ライト(卓上ライト、ペンライトなど): 細かい汚れやキズ、縫い目などを確認する際に、手元を明るく照らすために役立ちます
- チェックリスト、筆記用具:検品漏れを防ぎ、不良内容を記録するために必要です。
- 検針機:X線またはハンディタイプの検針機。導入にはコストと設置スペースが必要です
- 作業台、ハンガーラック:商品を広げたり、一時的に掛けたりするのに使用します
- その他:はさみ(糸切り用)、ピンセット(異物除去用)、シミ抜き剤(軽微な汚れ対応用)、手袋(商品を汚さないため)など
「自社」か「外注」か|それぞれのメリットデメリット
検品を「自社で行う」か「外部に委託(外注)」するかは重要な選択です。
ここでは、あなたの企業やブランドに合うのがどちらか比較検討しやすいよう、以下について解説します。
- 自社で検品を行う場合のメリット・デメリット
- 検品を外部に委託(外注)する場合のメリット・デメリット
- 費用感の比較
自社で検品を行う場合のメリット・デメリット
まずは、自社で設備や人材を揃えて検品作業をおこなうことのメリットとデメリットを解説します。
自社で検品を行うメリット
- 緊急時や特殊な要望にスピーディーに対応できる
- 商品知識や品質に関する知見が社内に溜まる
- 指示や報告事項が社内で完結するので連携がスムーズになる
自社で検品を行うデメリット
- スタッフの雇用・教育にコストと時間がかかる
- スペースや設備確保にコストと時間がかかる
- 繁忙期に追いつかない、閑散期に人員が余るなどの問題に常に対応しなければならない
- トラブル対応のノウハウがない
- 特に立ち上げ期は、検品にリソースを取られ、本来注力すべき業務に支障が出る可能性がある
検品を外部に委託(外注)する場合のメリット・デメリット
次に、検品を委託できる物流業者に外注する場合のメリットとデメリットを紹介します。
検品を外部に委託(外注)するメリット
- プロによる専門的な検品で、品質が安定しやすい
- 人材・設備確保の初期投資や手間が不要
- 煩雑な検品業務から解放され、売上につながる業務に集中できる
- 繁閑差に合わせて委託量を調整でき、コスト効率が良い
- X線検針機など、自社導入が難しい設備を利用できる場合がある
- 検品だけでなく流通加工や保管・出荷まで一括で任せられる場合が多い
検品を外部に委託(外注)するデメリット
- 委託コスト(検品料、基本料など)が発生する
- 検品に関する知見が社内に溜まりにくい
- 指示の正確な伝達や情報共有が比較的遅くなる
初期コスト面で外部委託はメリットが大きい
上記のメリットでもご紹介したように、「初期コスト」を抑えられることは外部委託の大きなメリットです。
自社で物流業務を行う場合は以下のような初期費用が必要になります。
- 設備にかかる費用(作業台、検針器など)
- 検品作業のスペースにかかる費用(テナントの敷金など)
さらに、費用以外にも作業員への「教育コスト」も忘れてはいけません。検品は、顧客満足度やブランドイメージに直結する業務であるため、作業員の教育は重要な項目です。
これらの初期投資は、大きな負担となります。そのため、初期費用の負担を減らし、すでにアパレル入出荷のノウハウを持つ物流業者のスキルを活用できる委託は有力な選択肢だといえます。
アパレル検品代行業者の選び方5つのポイント
検品の外注先を選ぶ際には、いくつか重要なポイントがあります。
安心して任せられる外注先を見つけるために、以下の5つの点をチェックしましょう。
- アパレル商材の取扱実績と専門知識
- 明確な検品基準と徹底した品質管理体制
- 検品以外のアパレル物流業務への対応力
- 分かりやすい料金体系とコストパフォーマンス
- 事業フェーズに合わせた柔軟な対応力
アパレル商材の取扱実績と専門知識
アパレル製品は、アイテムや素材で注意点が異なるため、業者のアパレルに関する実績と専門知識は必須です。
自社の商品カテゴリー(婦人服、雑貨など)の取り扱い経験が豊富か、素材や縫製、検針に関する知識を持っているかを確認しましょう。
実績が乏しいと、品質の見落としにつながる可能性があります。
明確な検品基準と徹底した品質管理体制
安定した品質を保つには、明確な検品基準とそれを維持する管理体制が不可欠です。
具体的には以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 自社の基準を反映できるか
- 作業マニュアルの有無
- スタッフ教育の質
- 不良品発生時の報告フローの明確さ
これらが曖昧であれば、品質のばらつきが生じやすくなり、コミュニケーションも十分ではない可能性が高く、おすすめできません。
検品以外のアパレル物流業務への対応力
検品だけでなく、タグ付け、プレス、袋詰めといった流通加工にも対応できるかを確認しましょう。
これらの作業を一括で依頼できれば、業務効率が大幅に向上します。自社が必要とする作業範囲をカバーしているか、将来的なニーズにも応えられそうかを見極めることが重要です。
さらには、商品の保管から出荷までを一括で委託できる倉庫であれば、発注や商品開発などのコア業務に集中でき、事業拡大のチャンスを逃しません。
分かりやすい料金体系とコストパフォーマンス
外部への委託は継続的な費用が発生するため、料金体系の明確さとコストパフォーマンスは重要です。
検品単価や基本料金、オプション料金などが分かりやすく提示されているか、追加料金のルールは明確かを確認しましょう。
注意点として、安さだけでなく品質やサービス内容を含めた総合的な価値で判断することが大切です。
事業フェーズに合わせた柔軟な対応力
ビジネスの変化に対応できる柔軟性も重要なポイントです。
物量の増減に対応できるキャパシティがあるか、ECシステムとの連携は可能か、そして困ったときに相談しやすい体制があるかを確認しましょう。
事業の成長に合わせて伴走してくれるパートナーを選ぶ視点が大切です。
<関連記事>「アパレル物流とは?特徴と課題、おすすめの物流会社3選」
アパレル検品の外注は「富士ロジテックホールディングス」がおすすめ
アパレル物流における「検品」は、工程が多く非常に煩雑で、専門知識を有する作業です。
さらに、設備の導入やスタッフの教育など初期コストがかかるため、これからアパレル事業を展開する企業やブランドにとっては大きな負担となってしまいます。
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- 検品だけでなく、店舗への安定供給と最適な輸配送ラインの構築など、ゼロからの物流構築~運営をスムーズに実現
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ライター
イノウエ
物流業界歴15年以上。港湾の職業訓練校卒業後、港湾荷役作業会社にてRORO船等への本船荷役に従事。フォークリフト、クレーン運転士、大型特殊など現場必須の資格を多数所持。Amazonのセラーとして出品経験あり。長年の経験と専門知識を活かし、現場目線でのリアルな記事執筆が得意。物流以外に自動車関連の執筆実績も多数。
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