物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
検品作業とは、消費者に正しい商品を質の良い状態で届けるために重要な工程です。企業やサービスへの信頼に関わる作業であり、ミスは致命的です。一方で単調な作業が多く、人的ミスが起こりやすい面もあります。本稿では、検品作業の基本からミスなく効率化するコツまでを解説します。理解を深め、物流業務に役立ててください。
検品作業とは「商品の数量・状態の確認」
検品作業とは、対象商品の数量や状態を確認する作業です。物流の一工程として、倉庫や工場で実施されます。状態の確認方法は、扱う商品によってまちまちです。
・不良品検品・・・外装に傷や汚れ、へこみなどの破損がないか
・開梱検品・・・梱包された商品の中の状態確認。返品商品など
・計量検品・・・商品の重さが規定通りか。食品、医薬品など
・作動検品・・・商品が正常に作動するか。機械類の通電検査など
・混入検品・・・異物が混入していないか。袋ものなど
倉庫で行う作業としては外装不良や数量の検品が基本です。製造業の工場では、加工した製品に対して混入物・作動などの細かい検品が行われます。しかし最近では外部倉庫への物流のアウトソーシングが進んでいるため、一概に倉庫と工場の検品作業を分けては考えられません。
検品作業の仕事内容と流れ
倉庫での検品作業は、少なくとも2回行われます。「入荷検品」と「出荷検品」です。さらに外装箱を開梱し、中の商品を検品する場合もあります。
工場や仕入れ先から商品が届いたタイミングで行うのが、入荷検品です。納品書と照合し、
品番・数量・外装箱の汚損・破損の有無を確認。異常があった際に入荷検品の段階で発見できれば、配達ドライバー及び出荷元と確認し、スムーズに返品処理が行えます。
入荷後、場合によっては外装箱を開梱し検品を行います。前述の通り、どこをどう確認するかは商品により様々です。またピースで商品管理をするケースでも、開梱ののち、さらに数量や状態の確認を行います。
そして最終段階の出荷検品です。倉庫に格納されている商品をピッキング後、梱包前に発注書と照合、検品します。ピッキングに誤りがある可能性があるので、注意が必要です。保管中に傷が付いたり、ホコリが付着したりするケースも想定して、確認しなければなりません。
検品作業が重要なワケ|企業の信頼に直結
小売業において、届ける商品=企業の信頼といっても過言ではありません。不良品や外装箱がひどい状態の商品、注文したものと異なるモノが届いたらどう感じるでしょうか。
入荷検品の1工程だけをとってみても、数量の誤りや破損を見落としたまま在庫を計上すれば、欠品を引き起こす原因にもなります。検品作業のミス一つによって、企業の努力を無駄にしないよう、対策を講じる必要があります。
検品作業における課題・問題点
検品作業は慎重に行わなければならない分、課題や問題点があります。大きく2つに分類できます。
1.ヒューマンエラーへの対策
まず考えたいのが人的ミスをどう防ぐかについてです。大量に商品を扱う場合、検品作業員として、軽作業のアルバイトを雇うケースは珍しくないでしょう。
つまり経験のない人が、単調な検品作業に携わる可能性があるため、何の対策もないままではミスのリスクが高まります。指導・管理の徹底が不可欠です。
2.人件費・システム導入費のコスト
コスト面も課題になります。検品作業は緻密な作業です。目視の作業では、人件費が必要になります。質の高い検品を目指すのであれば、ダブルチェック・トリプルチェックというように、見落としのないよう、2〜3人で重ねてのチェックが必要なケースもあります。
一方で、システムを活用すればヒューマンエラーを避けられますが、導入費用の負担増が問題です。
人件費・システム導入費、いずれも閑散期であってもコストが発生してしまうため、無駄を生んでしまう可能性が考えられます。
検品作業におけるミス削減のコツ
続いて検品作業でミスをなくすコツを確認しましょう。検品の見落としは、すなわちクレームの処理や、検品のやり直しなどの余計な工程の発生を意味します。まずはミスをなくす工夫をし、徐々に効率化を目指していきましょう。
1.チェック項目と作業手順を決める
まずはどの項目を確認するか明確にしておきましょう。手順書に落とし込み、人の記憶に頼らない仕組みを作ると、業務標準化に役立ち、引継ぎ漏れや誤認も防げます。
チェックシートや伝票にレ点を打つなどのルールを策定し、確実に一つずつチェックしていきましょう。
2.作業手順書通りに進める
作業手順書通りに進めるよう、スタッフを教育しましょう。作業に慣れが出てくると、手順の一部をサボりがちになってしまう人がどうしてもいます。
高品質を保つためのダブルチェックのはずが、「一人目が確認しているから大丈夫」といった心持ちで集中力のないまま作業をしてしまうケースもあるでしょう。定期的な責任者の現場視察や検品方法の確認により、ムラを防ぐ工夫をすると良いですね。
3.品質の判断は責任者に指示を仰ぐ
品質の判断基準に迷うときは、責任者に確認するよう促しましょう。検品作業の品質基準は扱う商品により、大きく異なります。個々の判断はクレームを招いてしまうので、注意が必要です。
写真や事例をもとに、おおよその品質基準を周知し、それでも迷う場合は確認を取れるようコミュニケーションを図りましょう。
検品作業を効率化するシステムを紹介
目視だけでの検品が非効率だと感じた場合、設備や機器の導入を検討すべきでしょう。商品の取扱量や特性にマッチすれば、飛躍的に生産性が向上する可能性があります。
ハンディーターミナル
多くの企業が取り入れているのがハンディーターミナルです。商品知識の乏しい人でも、バーコードまたはRFIDタグをスキャンするだけで、品番や数量の照合が容易に行えます。
入荷検品時から出荷検品時まで一貫してハンディーターミナルを使用し、在庫管理システムと連携すれば、二重登録や在庫差異を防ぐことも可能です。
画像認証AI-OCR
最近では画像認証のAI-OCRも検品作業に取り入れられています。対象物を撮影した画像からAIが特徴を抽出。予め登録した画像と照合し、正しい商品と一致しているか確認する画像認証システムです。
バーコードがついていない商品やダメージ品の判別、賞味期限やコードの読み取りにも有効です。
課題の解決が難しければアウトソーシングの活用も
検品におけるヒューマンエラーへの対策やシステムを検討したものの、いまいち効率化に結びつかない場合には物流のアウトソーシングも検討してみましょう。
物流のノウハウを持ち合わせるプロに任せることで、検品の見落としが減る効果が期待できます。
また、検品だけに留まらず入庫・出庫・保管も含めた人件費やシステム導入費の固定費もコスト削減できる可能性があります。商品の取扱い量に応じた従量課金制になるため、閑散期の固定費、スタッフの採用・教育などもコスト削減ができるからです。
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検品作業の精度を上げ、企業の信頼も高めよう
検品作業は、物流の品質を高く保つために重要な作業です。物流をコストセンターと捉え、疎かにしてしまっては、企業の信頼も脅かしかねません。
しかしながら、精度を高めるためには、人件費やシステム導入費などの懸念事項もあるでしょう。品質面・コスト面を考慮しながら、商品の特性や取扱い量に適した検品作業を模索してください。慎重に取り組んだ分だけ、企業の信頼も高まっていくはずです。
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ライター
田中なお
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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