梅山茜
梅山茜

物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

食品サブスクとは?メリットや課題、ジャンル別事例と参入のポイント

サブスクリプション サブスクリプション コマース ケーススタディ

サブスクリプション(以下、サブスク)とは、固定料金を毎月支払うことで、契約期間中は商品やサービスが利用できる仕組みです。

従来は、新聞や動画・音楽配信サービスなどが商材の中心でしたが、現在は世界情勢による生活習慣の変化も影響して「食品」を商材としたサブスクが注目されています。

本稿では、食品サブスクのメリットや課題、サービスの参入ポイントを解説します。

食品サブスクとは?

 

食品サブスクとは、契約期間に応じて定期的に食品を届けるサービスのことです。

人々の生活に欠かせない「食品」は、料理をつくる時間のない方や買い物の手間を省きたい方など、多くの需要があります。

サブスクは、継続した売上が見込めることもあり、食品業界からも多くの企業が参入をしている状況です。

食品サブスクのジャンル・種類

食品サブスクで提供される商材は、肉や魚、野菜などの食材そのものから、お弁当・お菓子・飲料水・健康食品など豊富な種類が揃っています。

2021年にフードロスを防ぐことを目的とした初の食品サブスク「ロスゼロ不定期便」が登場し、広く話題になりました。

ロスゼロ不定期便では、イベント商品や規定外商品など、賞味期限までに期間がある廃棄食品を商材に選択。14万点を超えるフードロスを防ぐことができ、高く評価されました。

食品サブスクの市場規模

引用元:サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)

株式会社矢野経済研究所が行なった「2021年度における国内のサブスクリプションサービス国内市場規模(6市場計)」調査によると、サブスク利用者の支払い額は前年度比10.6%増の9,615億5,000万円となっています。

サブスク市場規模は今後も拡大していくと予想されており、伸び率の高い市場といえるでしょう。

引用元:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

また、経済産業省が調査した「物販系分野のBtoC-EC市場規模」によると「食品、飲料、酒類」の分類は、2兆5,199億円と市場規模が年々拡大傾向にあります。

「食品、飲料、酒類」のEC化率は3.77%と、他分類よりも低いものの、全体の市場規模は、全体の約19%を占めている状況です。そもそもの市場規模が大きく、需要が高いため、新規参入しやすい市場といえるでしょう。

食品サブスクを始めるメリット

 

食品サブスクを始めるメリットは、おもに次の3つが挙げられます。具体的に確認していきましょう。

  • 売上げ予測がしやすい
  • 購入のハードルを下げやすい
  • 横展開しやすい

メリット1.売上げ予測がしやすい

サブスクは定期購入サービスであり、契約済みのユーザー数に応じて売上げ予測がしやすい点がメリットです。

たとえば、1か月のサブスク利用料金が1,000円、契約者が200人いるとします。計算式は「利用料金×契約者数=売上」で算出できるため、毎月の固定売上は20万円だと算出できます。

目標売上が50万円だった場合、残りの30万円を達成させるための施策を検討するなど、より明確な数値を追うことが可能です。

また、売上予測をした数値をもとに収支のバランスの調整も可能であり、リスクヘッジをしながら販売促進ができることは大きなメリットでしょう。

メリット2.購入のハードルを下げやすい

サブスクは、新規顧客に向けた「初回お試し用」の割引キャンペーンを投じることで、購入ハードルを下げやすく、購入につなげやすいメリットがあります。

また、長期契約で「通常購入より10%割引」といったように、サブスク利用のメリットを新規顧客に発信することで、継続顧客の獲得も望めます。

サブスクは売上予測が可能であり、回収を見越して初回割引や定期割引、施策などにコストがかけられるため、新規顧客を獲得しやすい点も魅力です。

メリット3.横展開しやすい

食品サブスクは、横展開しやすい点もメリットです。すでに扱っている食材をもとにして開発を行なうため、新商品が作りやすい傾向があります。

また、品質管理のノウハウが活かせるため、設備投資などのコストも抑えられます。既存顧客に対してメルマガやDMなどで新商品の情報を配信することで、顧客単価の向上も期待できるでしょう。

食品サブスクに参入するうえでの課題

 

食品サブスクはメリットの大きいビジネスですが、EC化率が伸び悩んでいるなどの課題も挙げられます。食品サブスクへ参入するうえで知っておくべき課題を確認しておきましょう。

  • 商品単価の安さ
  • 実店舗の充実
  • 品質管理の徹底が必要

商品単価の安さ

基本的に食品は商品単価が安い商材です。なかには高級品もありますが、それでも単価は数百円~数千円が平均相場となっています。

単価が安い商品で利益を出すためには、販売顧客数を増加させることが重要です。リピーターが増えれば、広告宣伝費にコストをかけずに、購入数の底上げができるでしょう。

食品サブスクは商品単価が安いものの、顧客獲得への施策次第では利益が上げられるビジネスといえます。

実店舗の充実

実店舗の充実は、食品業界のEC化率が停滞する要因の一つです。都心部であれば、24時間営業のスーパーやコンビニが揃っており、通販で購入しなくとも食品が手に入る環境のためです。

食品サブスクビジネスを軌道に乗せるためには、取り扱う商材が重要です。実店舗では販売していないものやブランド商品など、希少性の高い商材を選択するとよいでしょう。

品質管理の徹底が必要

食品の品質管理の徹底は、最重要項目といっても過言ではありません。食品サブスクは商品を届けるだけでなく、鮮度を保った状態で届ける必要があるためです。

とくに野菜や魚、肉などの生鮮食品を扱う場合は、鮮度が落ちないよう保管庫の環境を整えたり、冷凍・冷蔵便の手配を行なったりと、コストや手間がかかります。

品質管理が徹底できる環境の準備ができないうちは、参入ハードルが高いといえるでしょう。

食品ECの成功事例は「食品ECで失敗しないコツとは?課題と成功事例を紹介!」の記事で紹介しています。

食品サブスク商材の選び方

食品サブスクの成功には、商材選びが重要です。商材によっては、品質管理や配送費など、コストがかさむことが少なくありません。

また、契約を続けてもらうためには、魅力的な商材を選ぶことも大切です。サブスクは、利用者に利用価値がないと判断された時点で解約となってしまうシビアな面があるためです。

食品サブスクはプロテインやスムージーなど、継続が必要な健康を重視したものが人気です。近年では、お酒や冷凍弁当など自宅で快適に過ごすための商材の需要も高まっています。

食品サブスクは価格だけでなく、利便性や希少性の高い商品も人気があるため、さまざまな観点で商材を選択するとよいでしょう。

次章から需要にマッチした食品サブスクのサービス事例を紹介していきます。商材選びの参考にしてください。

健康食品・サプリメントのサブスクサービス事例:FUJIMI(フジミ)

画像出典:FUJIMI

パーソナライズされたサプリメント・フェイスマスク・プロテインを扱うFUJIMI(フジミ)は、「個」を重視することで成功したサブスクの一つです。 

Webサイトにて19個の質問に答えるだけで、簡単に美容分析が可能であり、一人ひとりの身体の調子や悩みに合わせたオーダーメイドの提案が受けられます。

定期購入することで、商品価格が20%割引が受けられたり、30日間全額返金保証があったりと、初めてでも利用しやすい仕組みとなっています。

冷凍食品のサブスクサービス事例:nosh(ナッシュ)

画像出典:nosh

「冷凍食品なのに、本格的で美味しい料理が食べられる」とSNSで話題となったnosh(ナッシュ)が提供するのは、健康に配慮されたお弁当です。

一般的な配食サービスではなく、栄養管理が徹底されたメニューが特徴です。自社シェフと管理栄養士がメニュー開発をしており、すべてのメニューが糖質30g以下・塩分2.5g以下と健康を維持したいと考える層に多く利用されています。

自社工場を保有しており、ISO9001国際基準の品質管理をクリアするなど、安心・安全が守られている点も人気の理由です。

食事宅配のサブスクサービス事例:Oisix(オイシックス)

画像出典:Oisix

Oisix(オイシックス)は、食材を配達するだけではなく、使い切り食材・レシピがセットになって届きます。

手間がかかる下準備がすべて終わっており、焼くだけ・揚げるだけなど、調理時間が短縮できる利点があります。メニューが豊富にあるため、今まで食べたことがなかった料理に出会えることも魅力の一つでしょう。

入会金・年会費が無料であり、キャンセルや解約もいつでも可能です。新規ユーザーに選んでもらいやすい仕組みが整っています。

ダイエット食品のサブスクサービス事例:CRAS(クラース)

SNSを中心に注目を集めているのが、CRAS(クラース)が提供するソイプロテインです。ダイエットを目的とした商材であるものの、美味しさにこだわって作られており「プロテインの常識が覆った!」と話題となりました。

初回限定価格が1,480円(67%OFF)と、誰でも挑戦しやすい価格設定も魅力です。また、リピート率が96.7%となっており、高品質な商品提供により需要にマッチした事例といえます。

お菓子のサブスクサービス事例:snaq.me(スナックミー)

画像出典:snaq.me

snaq.me(スナックミー)は、お菓子をメイン商材としたサブスクです。コンビニやスーパーで買えるお菓子とは異なり、人工甘味料や着色料は一切使われていません。

余分なものが入っていない素材にこだわった質のよいお菓子が楽しめるサービスとなっています。

甘いおやつは、心をホッとさせるアイテムであり、仕事や家事で疲れたときや、自分へのご褒美など、質の高い休息時間を求める方に人気です。身近では買えない希少性の高い商材といえるでしょう。

飲料のサブスクサービス事例:Otomoni(オトモニ)

画像出典:Otomoni

Otomoni(オトモニ)は、世界各国・日本全国のクラフトビールが楽しめるサブスクを提供しています。旅先の記念に地ビールを嗜む楽しみを、自宅にいながら味わえる点が魅力です。

コロナ禍による外出自粛により、旅行や外にお酒を飲みに出かけることが難しくなり「家でもお酒を楽しみたい」と考える層の需要にマッチしたサービスといえるでしょう。

また、お酒を嗜むだけでなく、届いたビールがアプリに自動記録されるため、自身のレビューをつける楽しみがある点も魅力です。

食品サブスクに参入するためのポイント

今後、食品サブスクに参入するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。参入を検討するうえで参考にしてください。

  • 健康食品は薬機法に注意
  • 定期購買向けシステムの利用
  • 鮮度を意識した物流の構築

健康食品は薬機法に注意

健康食品をサブスクの商材に選択する場合、薬機法に注意しなければなりません。薬機法とは、「品質と有効性及び安全性を確保するために、製造、表示、販売、流通、広告などについて細かく定めた」法律のことです。

たとえば、自社の健康食品を広めたいと考え、ECサイト上に広告を掲載したとします。その広告に、商品の効果が保証されないまま「○○が改善する」「○○が治る」などの表現を用いた場合、薬機法に抵触するため注意が必要です。

具体的には、以下の第六十六条(誇大広告等)の違反に該当し、行政機関からの指導だけでなく、罰則を科される可能性があります。広告宣伝をする際には、医薬品等適正広告基準をチェックしておきましょう。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

薬機法については「医薬品や健康食品を扱う際に知っておきたい「薬機法」の基礎知識」の記事で詳細を解説しています。

定期購買向けシステムの利用

食品サブスクを開始する際には、会員情報の管理やクレジットカードの自動引き落としが行なえる定期購買向けのシステム導入をするとよいでしょう。

一般的な購入システムの場合、定期購入を想定されていないこともあり、詳細な顧客情報管理や自動引き落としに対応していないケースがあるためです。

あらかじめ目的に合わせたシステム導入をすると、スムーズに開始できます。

鮮度を意識した物流の構築

先述したとおり食品サブスクは、安全性を担保するためにも品質管理の徹底が必須です。配送地域を限定しない場合は、全国に配送ができる体制を整える必要があります。

とくに生鮮食品や生ものは、冷蔵・冷凍保管ができる物流確保をしたうえで、配送地域に合わせて複数の拠点を配置するなど、鮮度が保てる運用フローの確立が重要です。

各地に拠点配置が難しい場合は、冷凍・冷蔵・定温の各温度帯に対応する物流倉庫が提供するアウトソーシングサービスの利用も有効です。

継続活用される食品サブスクを目指そう!

食品サブスクとは、契約期間に応じて定期的に食品を届けるサービスのことです。コロナ禍による生活習慣の変化に伴い、需要が高まっている状況です。

しかし、食の安全を担保するためには厳密な品質管理が必要となり、体制構築にはコストがかかります。自社で品質管理体制の構築が難しい場合は、アウトソーシングサービスの利用を検討することも一つの手段でしょう。

富士ロジテックホールディングスでは、商品特性に応じて賞味期限管理・温度管理ができる在庫管理体制を整えています。品質管理から配送まで一連の業務をすべてバックアップ可能です。まずはお気軽にご相談ください。

 

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物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

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