田中なお
田中なお

物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

化粧品の在庫管理における5つの基本!課題解決に向けたシステムも解説

化粧品の発送代行
化粧品の在庫管理における5つの基本!課題解決に向けたシステムも解説

化粧品の取扱いには、詳細な在庫管理が求められます。直接、肌につけて使用する特性から、使用期限が定められているため、品質の担保やトレーサビリティ、適正在庫維持が重要になるからです。

当記事では、化粧品の在庫管理において基本的な5つの要素と課題を解説したうえで、その解決策としてのシステムを紹介します。

なぜ、化粧品の在庫管理が重要なのか

まずは、なぜ化粧品の在庫管理が重要なのか理解しましょう。以下の3点を解説します。

  • 品質の担保
  • 顧客満足度の向上
  • 販売機会の損失の回避

品質の担保

化粧品には、使用期限が定められているため、使用期限を過ぎれば、廃棄しなければなりません。誤って使用期限切れの商品を市場に出荷してしまった場合、顧客からの信頼を損なう原因になってしまいます。化粧品の品質を担保するうえで、在庫管理が重要です。

顧客満足度の向上

化粧品の在庫管理における精度は、顧客満足度に影響します。

発注に対する欠品や誤出荷は、口コミの低評価やブランドの悪評を招くからです。正しい在庫数を顧客に提示し、正しい商品を店舗や消費者に届けることが顧客満足度の向上に寄与します。

販売機会の損失の回避

化粧品の在庫管理には、売上機会の損失を防ぐ効果があります。

在庫があるにも関わらず、在庫管理が不十分で誤って欠品と判断すれば、在庫を現金化する機会を逸してしまいます。そのため、常に正しい在庫を把握することが重要です。

また、日々の在庫管理で蓄積したデータから需要予測を行い、適正在庫や安全在庫を判断すれば、欠品の予防にもつながります。

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化粧品の在庫管理における5つの基本

化粧品の在庫管理における5つの基本

問題が生じないように化粧品の在庫管理を行うには、基本を抑えることが有効です。事業が拡大してから、整備を行うとなれば、余計な手間がかかってしまいます。ここでは、化粧品の在庫管理について5つの基本要素を解説します。

  1. 使用期限管理
  2. ロット管理
  3. 数量管理
  4. 先入れ先出し
  5. 商品マスタ管理

使用期限管理

化粧品の在庫管理には、使用期限管理による品質の担保が求められます。

そのため商品の使用期限を在庫情報に紐づけて管理しなければなりません。

使用期限が短い商品の誤出荷や、誤出荷による返品を予防するためにも、化粧品には厳密な使用期限管理が必要です。

ロット管理

化粧品の在庫管理において、ロット番号(製造番号)の管理も必要です。ロット番号は、「同じ日時」「同じ生産ライン」「同じ原料」などの同一条件で製造された最小単位のまとまりを表しています。

万が一、商品に不具合があった場合、同一ロットの製品を返品・回収し、原因の把握と事態の収集に努めます。一方、ロット管理を行っていない場合、すべての商品が返品・回収の対象になる可能性があります。ロット管理によって、リスクヘッジが可能です。

数量管理

化粧品の在庫管理において、数量管理も極めて重要です。

まずは入出荷の数量を記帳(入力)し、正しい在庫の数量を把握します。「日付」「入庫数」「出庫数」「残在庫数」を、都度記帳します。必要に応じて棚卸しを実施し、帳簿上の理論在庫と実在庫を照合しましょう。需要予測から、適正在庫を保持することも重要です。

先入れ先出し

化粧品には、先入れ先出しの在庫管理方法が適しています。先入れ先出しとは、先に入荷した古い商品から、出荷する方法です。

出荷する順番があべこべになり、古い商品が残ってしまうことを避けるための在庫管理手法です。長期保存による化粧品の劣化や、無駄な廃棄を防ぎます。

<関連記事>「先入れ先出しとは何か?メリット・デメリット、円滑に運用するポイントを解説

商品マスタ管理

ある程度の規模感がある場合や、いくつもの販売経路を活用する場合、物流代行の利用を見据えている場合は、商品マスタの管理も必要です。

商品コード、商品名、JANコード、サイズ、販売価格、仕入れ価格など、商品の具体的な情報を整理し、管理します。化粧品は、カラーバリエーションや、内容量の違い、パッケージの違いなど、必要に応じて分けて管理することで、より効率的な在庫管理が可能になります。

<関連記事>「化粧品物流の特徴とアウトソーシングする物流倉庫の選定ポイント

化粧品の在庫管理によくある課題

化粧品の在庫管理によくある課題

化粧品の在庫管理における基本要素を抑えたうえで、それでも残ってしまう課題があります。ここでは以下4つの課題について解説します。

  • 多品種小ロットによる在庫管理の難しさ
  • トレーサビリティの確保
  • オムニチャネル化における在庫の一元管理
  • パーソナライズ化に対応する同梱物の在庫管理

多品種小ロットによる在庫管理の難しさ

化粧品は、商品の種類が多く、在庫管理が煩雑化しやすい点が課題のひとつです。

表計算ソフトなどを用いたアナログな在庫管理では、記帳漏れや思い込みによるチェック漏れを理由に、在庫差異が発生しやすくなります。また、現品の保管場所を厳密に管理していない場合、属人化してしまう可能性もあるでしょう。

多品種小ロットであるほど、在庫管理の手間がかかるため、アナログ管理に無理が生じたタイミングで、デジタル管理への切り替えをおすすめします。

トレーサビリティの確保

化粧品の在庫管理には、トレーサビリティの確保も重要となります。トレーサビリティとは、調達から生産、消費、廃棄に至るまでのプロセスが追跡可能な状態を指します。

同一ロット商品の識別に加え、すでに出荷されている商品は、いつ、どこに届けられたか確認できるように履歴を残すことが求められる点も課題のひとつです。

オムニチャネル化における在庫の一元管理

化粧品の販売経路は、実店舗、卸、自社ECカート、ECショッピングモールと多種多様です。ECショッピングモールには、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、@cosme、Qoo10、ZOZOTOWNなど、販売経路の選択肢が多くあり、オムニチャネル化が進んでいます。

販売経路ごとに分けて在庫管理をすれば、欠品の心配は少なくなりますが、過剰在庫や機会損失が生じる可能性は高くなります。オムニチャネルの実現には、欠品を起こさず、効率的に在庫管理ができる仕組みが必要です。

<関連記事>「オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違い・導入のメリットデメリットも解説

パーソナライズ化に対応する同梱物の在庫管理

化粧品販売では、商品の他にサンプル品や、ノベルティ、チラシなどの同梱物も在庫管理をするケースが多いでしょう。

特にECでは、顧客の購入回数や誕生月、購入金額などの条件に応じて同梱物を変更するマーケティング施策が有効です。同梱物の在庫管理と出荷条件を紐付ける必要がありますが、アナログ管理では難易度の高い課題といえるでしょう。

<関連記事>「ecサイトでの同梱物・梱包資材の重要性とは?物流管理の視点から

化粧品の在庫管理におけるポイント

複雑な化粧品の在庫管理を、整然と行うには、どのような工夫をすればよいのでしょうか。ここでは以下、2つのポイントを解説します。

  • ラベリングや在庫管理表などの見える化を実施する
  • システムを導入する

ラベリングや在庫管理表などの見える化を実施する

見える化の実施は、正確に在庫管理をするためのポイントです。

例えば以下のような方法があります。

  • 保管場所に商品名やロケーション(棚番号)のラベリングを施す
  • 商品とともに在庫管理表を配置する

記載の文字が小さく、見た目では瞬間的に判別しづらい商品も多くあります。誤出荷が生じないよう、誰が見てもわかりやすく保管する工夫が必要です。

システムを導入する

システムの導入も、化粧品の在庫管理におけるポイントです。

使用期限やロット管理や、先入れ先出し、トレーサビリティの確保、多品種小ロットの管理など、化粧品の在庫管理には複雑な要素が多い特徴があります。

そのため、事業の規模によって、アナログ管理には限界があるでしょう。以下の2つは、在庫管理を効率化するシステムです。

  • 在庫管理システム
  • ハンディスキャナー

人の感覚だけに頼らない在庫管理によって、正確性と作業スピードが向上します。

在庫管理システムを導入するメリット

在庫管理システムを導入するメリット

次に、在庫管理システムの導入によって得られるメリットを、さらに掘り下げてみましょう。

  • リアルタイムで在庫の把握ができる
  • トレーサビリティの実現が容易になる
  • 複数拠点の在庫を一元管理できる
  • 複数店舗の在庫を一元管理できる
  • 同梱施策を自動化できる

リアルタイムで在庫の把握ができる

在庫管理システムでは、入荷情報や受注情報にもとづきデータの在庫処理を行い、そのデータにもとづき入出荷作業をします。リアルタイムで在庫反映されるため、常時、在庫の把握が可能です。

「どの商品が」「どこに」「いくつ保管されているか」をデータ上で、共有できます。問い合わせに柔軟に対応できるほか、作業者も迷わず作業にあたれます。

トレーサビリティの実現が容易になる

在庫管理システムを利用すると、トレーサビリティの実現が容易になることもメリットです。

アナログ管理では、「どの届け先に」「どのロット番号・使用期限の商品を」「いくつ出荷したか」をさかのぼるために、紙の帳票を確認しなければならないケースもあるでしょう。

在庫管理システムを導入すれば、入出荷時にロット番号や使用期限、数量、仕入れ先(届け先)を入力するだけで、いつでも履歴を追えます。急なトラブル対応も可能です。

複数拠点の在庫を一元管理できる

在庫管理システムの利用によって、複数拠点の在庫の一元管理が可能です。

複数の保管拠点をお持ちの場合、アナログ管理では、各拠点でそれぞれ在庫管理を行わなければなりません。在庫管理システムによって、すべての拠点の在庫を一元管理することで、在庫の見える化が可能です。適正在庫の維持に役立ちます。

複数店舗の在庫を一元管理できる

在庫管理システムの中には、受注管理システムと一体型のシステムや、受注管理システムとスムーズに連携できるシステムがあります。

実店舗や複数のECモール、自社ECカートなどのオムニチャネルを展開する場合、こうした在庫管理システムを活用して在庫を一元管理すれば、欠品を起こさず、ほとんどの出荷を自動化できます。

加えて、1つの画面で複数店舗の管理ができるができるため、生産性が向上するメリットもあります。

同梱施策を自動化できる

マーケティングの一環として、パーソナライズされた同梱物施策を実施する場合、一部の在庫管理システムを利用すれば、出荷指示の自動化を実現できます。

アナログ管理の場合、人の記憶を頼りに指示書に同梱物の記載をするなど、人為的なミスが起きやすい工程です。在庫管理システムにより、商品マスタと条件を紐づけて在庫管理をすれば、自動的に必要な同梱物が判別され、出荷指示書に記載されます。

在庫管理システムを導入するデメリット

在庫管理システムの導入には、多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。

  • 操作に慣れるまでに時間や労力がかかる
  • 費用が発生する

操作に慣れるまでに時間や労力がかかる

初めて操作するシステムは、慣れるまでに時間や労力がかかる人がほとんどです。在庫管理システムも同じです。

特に初期導入では、誰がオペレーションを行っても同様のプロセスを踏めるように標準化する必要があります。一つひとつ手順を確認しながら、トレーニングをする時間が必要になることはデメリットといえます。

費用が発生する

在庫管理システムの導入には、費用が生じるデメリットもあります。

インターネット上で利用できる「クラウド型」の在庫管理システムは、一般的に月額数万円の費用がかかります。一方、ネットワークやサーバーを自社で調達し、運用する「オンプレミス型」の在庫管理システムは、初期導入に高額なコストがかかります。数百万以上にのぼることが珍しくないことに加え、保守員の配置が必須です。

費用対効果を検証し、導入を検討してみてください。

物流代行会社に在庫管理を委託する手段も

物流代行会社に在庫管理を委託する手段も

ここまで紹介したように、化粧品の在庫管理には、さまざまな留意点があります。

在庫管理システムの導入により、解決できるポイントは多いものの、機能を十分に使いこなせずに、宝の持ち腐れになってしまう事業者もいらっしゃるようです。

そのため、在庫管理にお悩みの方は、物流代行を利用するのもひとつの手段といえます。物流代行会社には、ノウハウがあるため、物流の仕組みを構築する際も、伴走してくれます。

もちろん委託できるのは、在庫管理だけではありません。入出荷に関わる日次業務や受注業務も委託できます。売上アップの施策に注力していただけるため、事業の拡大も見込めるでしょう。

富士ロジテックホールディングスは、「化粧品製造業」の許可を取得している物流会社です。高品質な在庫管理を実現しながら、以下のような対応も可能です。

  • 輸入製品の出荷判定
  • ラベリング
  • パッケージ変更
  • セット組作業
  • フルフィルメント対応

<関連記事>「化粧品 倉庫」 (近日公開予定)

豊富な化粧品の取扱実績の中には、月100件の出荷から支援をスタートし、月1,000件以上の出荷に至るまで継続的にサポートをさせていただいている事例や、月40,000件の出荷をサポートした事例もあります。 

D2Cスタートアップ展開

化粧品の在庫管理に関するお悩みは、富士ロジテックホールディングスまで、お気軽にご相談ください。今ならスタートアップ限定プランとして、特別限定料金で物流サービスをご提供しています。

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ライター

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