梅山茜
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物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

先入れ先出しとは何か?メリット・デメリット、円滑に運用するポイントを解説

EC物流 物流代行

先入れ先出しとは何か?メリット・デメリット、円滑に運用するポイントを解説

先入れ先出しとは、入荷時期が古い商品を先に出荷する「商品の管理方法」のことです。商品の劣化や不良在庫の発生を防げるなど、先入れ先出しでの在庫管理は多くのメリットがあります。

先入れ先出しの管理方法は、賞味(消費)期限などの販売期間が定まっている食品を中心に、さまざまな商品保管時に活用されています。

本稿では「先入れ先出し」について解説したうえで、メリット・デメリット、円滑な運用方法まで紹介します。

先入れ先出しとは?|定義

「先入れ先出し」とは、在庫商品の管理方法の一つです。その名のとおり、先に入庫した商品を先に出庫するため先入れ先出しと呼ばれています。英語表記での「First-In First-Out」の頭文字を取って「FIFO」と呼ぶケースもあります。

先入れ先出しは、在庫保管の長期化を抑えるだけでなく商品の劣化も防げるため、多くの企業で取り入れられている管理方法です。特に販売期限のある食品・飲料・医薬品などの商品を扱う場合は、非常に重視されています。

また、似た名称に「先入れ後出し」という管理方法があり、これは入荷時期の新しい商品から出荷する方法を指します。商品の補充作業が簡素化され、作業負担を減らせるなどのメリットがあります。

それぞれ管理方法やメリットなども異なるため、混同しないよう注意しましょう。

先入れ先出しの手順

先入れ先出しの手順

先入れ先出しで商品管理する場合、入荷段階で出荷体制を整えることが重要となります。具体的な手順はの一例を紹介します。

〇手順

  1. 在庫が入荷する
  2. 入荷日付の古い在庫を保管棚より取り出す
  3. 入荷日付が新しい在庫を倉庫棚の一番奥に置く
  4. 日付が古い在庫を手前に置く
  5. 手前の商品より出荷する

このほか、コンビニエンスストアのペットボトルコーナーのように後ろから充填する方法や入荷日付ごとに分けて保管する方法もあります。入荷時に手順を誤ってしまうと出荷ミスの発生リスクが高まるため、在庫商品の置き方の運用フローを明確にしておくことが大切です。

次の記事では先入れ先出し以外のピッキングの種類について触れています。あわせてご覧下さい。「物流における「ピッキング」の仕事とは?意味・種類・効率化のコツを解説

【先入れ先出し】メリット

【先入れ先出し】メリット

ここからは、先入れ先出しの運用メリットを解説します。

  • 品質維持が容易になる
  • 不良在庫の発生を防ぐ
  • 在庫管理が簡素化される
  • 出荷時間が短縮できる

1.品質維持が容易になる

先入れ先出しは、商品の品質維持が容易になるメリットがあります。古い商品から順番に在庫をさばいていくことで、長期保管による品質低下や鮮度低下を最小限に抑えられるためです。

保管期間の短縮によって「使用期間が過ぎた商品を誤ってユーザーに発送してしまった」などのトラブルを未然に防げるメリットもあります。

2.不良在庫の発生を防ぐ

先入れ先出しは、販売期間切れや賞味(消費)期限切れなどで販売できない在庫の発生を防ぐ効果があります。

不良在庫は販売機会の損失だけでなく廃棄コストもかかるため、企業にとってデメリットしかありません。

また、誤って不良在庫を発送してしまった場合、顧客満足度の低下だけでなく、ブランドイメージの低下につながるおそれもあります。

3.在庫管理が簡素化される

先入れ先出しには、日々の在庫管理が容易になるメリットがあります。商品入荷時に入荷時期の古いものを手前に配置し直す作業が、保管棚の整理整頓につながっているためです。

整理整頓された保管棚であれば、月末棚卸時の在庫チェックもスムーズになり、全体を通しての業務効率化も期待できます。

4.出荷時間が短縮できる

先入れ先出し保管が徹底できれば、出荷時間の短縮も図れます。「手前に置いてある商品からピッキングする」など手順が明確であり、誰でも迷うことなく作業できるためです。

出荷時間の短縮は、受注から発送までのリードタイム短縮にもつながります。顧客にいち早く商品を届けられるような作業体制が整えられれば、顧客満足度向上も期待できるでしょう。

【先入れ先出し】デメリット

先入れ先出しには、品質維持や在庫管理の簡素化などのメリットがある一方、次のようなデメリットも存在します。

  • 管理データ量の増加
  • 作業工数の増加

1.管理データ量の増加

先入れ先出しの運用では「商品名・品番・入荷日・製造年月日・賞味(消費)期限・出荷期限」などを明確に記録する必要があります。管理データ量の増加は業務負担につながるデメリットといえるでしょう。

さらに情報入力の手順をはじめとするオペレーション体制が確立されていない場合、データの信頼性が低下し出荷ミスの発生や作業効率の低下も懸念されます。

実稼働する際には、マニュアル作成や在庫管理システムの導入などの対策が必要となるでしょう。

2.作業工数の増加

先入れ先出しの運用では、入庫時に在庫を入れ替える作業が発生し、作業工数もその分増加します。作業工数が増えると、コスト増加や人的ミスなどが発生するリスクも高まるため注意が必要です。

作業工数を少しでも減らすには、先出し用の保管場所を複数設けるなど入荷日によって商品が混在しないようにする保管方法の導入も有効です。

先入れ先出しのコツ!円滑に運用するポイント

先入れ先出しのコツ!円滑に運用するポイント

ここからは、先入れ先出しを円滑に運用するためのポイントを5つ解説します。

  • 先入れ先出しのマニュアルを作成し周知する
  • 商品の状態をひと目でわかるようにする
  • 3Sを徹底する
  • 在庫数を適正化する
  • 定期的に商品状態をチェックする

1.先入れ先出しのマニュアルを作成し周知する

先入れ先出しを円滑な運用には、明確なルールが必要となります。ルールが定まっていない場合、誤った作業手順に気付かずに思わぬミスが発生するおそれがあるためです。

作業内容を明確にするには、マニュアルの作成が有効です。作業に不慣れな新人スタッフが対応する場合にも的確な指示ができるため、業務効率化にもつながります。

先入れ先出し管理の開始前に運用マニュアルを作成し、作業者全員の認識を統一できるよう準備を怠らないようにしましょう。

2.商品の状態をひと目でわかるようにする

先出し商品が倉庫内のどこに置かれているか、誰が見ても商品状態を一目で認識できるような保管体制を整えることが大切です。

具体的には、商品の入荷時期がひと目でわかるようにシールを用いて仕分けることや、先出し用の保管棚の設置などが有効です。

シールの使用例としては「入荷日・使用期限を明記したシールを商品に貼る」「入荷時期をカラーシールで仕分けし、判別できるよう可視化する」などの方法が多く活用されています。

先出し用の保管棚には、ロケーション管理の徹底はもちろんのこと、どの棚から商品をピッキングすればよいかをひと目でわかるよう、棚番号を設置する対策も有効です。

3.3Sを徹底する

在庫管理を適切に行うためには、3Sの徹底が重要な役割を持ちます。3Sとは「整理・整頓・清潔」のことを指し、倉庫作業をスムーズに進めるために必要なことです。

整理

適切なピッキングをするために古い商品・新しい商品が明確にわかる状態

整頓

誰でもミスなく必要な商品を取り出せる状態

清潔

埃などの汚れがない清潔な状態

3Sの徹底ができていないと「保管場所がわからない」「商品が汚れていて出荷できない」などのトラブルにつながりかねません。先入れ先出しの円滑な運用には、3Sの徹底が基本となるでしょう。

4.在庫数を適正化する

過剰な在庫を抱えることは保管期間の長期化につながり、品質低下や使用期限の超過による不良在庫を生み出してしまうリスクが伴います。

データ管理や入出荷作業も煩雑になるため、在庫数の見直しを行い、適正在庫を見極める作業が重要です。

倉庫管理システム(WMS)は、入出荷の時期や保管在庫数、ロケーション管理などが容易になり、在庫数の適正化に役立ちます。現状の運用で管理が難しい場合は、システム導入の検討も重要でしょう。

5.定期的に商品状態をチェックする

先入れ先出しのスムーズな運用には、倉庫内の商品を定期的にチェックすることが有効です。

先出し在庫が適切な場所に置かれているかの確認はもちろんのこと、商品状態のチェックも大切です。長期間在庫保管をすると、箱潰れや商品の劣化などによって不良在庫化する可能性があるためです。

こうした定期的な状態チェックを行うことで、不良品を販売してしまうなどの、トラブルを未然に防げます。

効率的に検品をするコツは「検品作業とは?仕事内容と問題点・ミスなく効率化するコツを紹介」の記事で紹介しています。

先入れ先出しに課題があれば、物流業務の委託も一つの手段

先入れ先出しに課題があれば、物流業務の委託も一つの手段

先入れ先出しとは、入荷日が古い商品を優先して出荷する商品管理方法の一つです。保管期間の長期化を防げるため、商品の品質維持や不良在庫の発生抑止、在庫管理の簡素化など、多くのメリットがあります。

とはいえ、先入れ先出しを円滑に運用するには、膨大なデータを正確に管理する必要があり、経験が浅い物流倉庫では、スムーズな導入が難しいことも課題に挙げられます。

富士ロジテックホールディングスでは、創業100年を迎えるなど豊富な経験があり、在庫管理に関しても経験に基づいたノウハウを保有しております。自社での在庫管理が難しい場合は、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

<関連記事>「発送代行のおすすめ業者8選!依頼できるサービスや料金・選定のポイント

 

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