田中なお
田中なお

物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

物流における「ピッキング」の仕事とは?意味・種類・効率化のコツを解説

フルフィルメント 物流代行 発送代行


いくつかの意味を持つ「ピッキング」という言葉。物流業界および倉庫作業における専門用語でもあります。聞き慣れない物流用語の多さに困惑してしまっていませんか?

本稿では、物流における「ピッキング」の意味・種類・コツを解説します。最後まで読んで業務理解を深めてみてください。

倉庫作業のピッキングとは|意味・概要

物流における「ピッキング」とは、発送する商品を保管されている場所から取り出す倉庫内作業です。
以下のように呼ばれる帳票(意味あいはすべて同じ)を用い、指定の品番を指定の数量分ピックアップします。
・ピッキングリスト
・出荷指示書
・伝票

英語でpickは、「選び取る」「摘み取る」「採集する」といった意味です。基本的には人の手で行いますが、重量物や高い場所に保管されている商品はフォークリフトで行う場合もあるでしょう。ピッキングは数ある物流の工程の中でも、効率化や品質担保の面で最も重要な作業です。

ピッキング作業の方法2種類



ピッキング作業には2種類の方法があります。どちらの方法が適しているかピッキングリストの作成段階で決定しなければなりません。判断を誤ると非効率的な作業になってしまうため、注意が必要です。それぞれの方法のメリット・デメリットも含めてチェックしましょう。

シングルピッキング|摘み取り方式

「シングルピッキング」は顧客のオーダーごと、つまり納品先別に1件ずつピッキングをする基本的な方法です。「摘み取り方式」「オーダー・ピッキング」とも呼ばれます。

100件のオーダーがあれば、例えそのうちの50件に同じ商品が含まれていたとしても、50往復して商品を準備することになります。そのため、出荷件数が少なく、商品のバリエーションが多い場合に適したピッキング方法です。通常出荷では、シングルピッキングの手法を取るケースが多いでしょう。

メリット
・件数が少なく、商品のバリエーションが多い出荷が効率的
・シンプルでわかりやすい
デメリット
・移動距離が長くなる

トータルピッキング|種まき方式

「トータルピッキング」は2段階に分けた作業方法です。まず、複数オーダーにおける商品ごとの総数量を一次ピッキング。その後納品先ごとに仕分けをする二次ピッキングを行います。「種まき方式」「バッチ・ピッキング」と呼ばれるケースもあるでしょう。

100件のオーダーがあったとしても、商品が3種類であれば、保管場所まで歩くのは3回で済みます。仕分けスペースと2段階の工数が必要ではありますが、出荷件数が多く商品のバリエーションが少ない場合には効率的です。トータルピッキングは、キャンペーンや新商品のばら撒き出荷に適しています。

メリット
・出荷件数が多く、商品のバリエーションが少ない場合に効率的
・移動距離が少ない
デメリット
・納品先ごとに再仕分けするスペースが必要
・工数が増える

ピッキング作業の効率化のポイント・コツ



ピッキング作業を効率化するためには、正確、かつ素早い動作が求められます。ここでは効率化のポイント・コツについて解説しましょう。

品番・数量を正確にチェックする

品番や数量を誤ってしまいやり直しが発生することが一番非効率です。正確性を保つためのルールの策定として、以下のような例が挙げられます。
・読み上げ
・リストにレ点
・ダブルチェック、トリプルチェック
基本中の基本ですが、間違えない工夫を怠らず実践しましょう。

ロケーション管理をする

ピッキングを効率化するために、ロケーション管理は必須です。商品の保管場所に住所をつけましょう。例えば棚Aの1段目の一番左端を「A-1-1」とし、ラベリングします。ラミネートを活用した看板やロケーションマップの作成も「見える化」に貢献するでしょう。

事務方も商品とロケーションを紐付けて管理すれば、ベテランの勘に頼らず、標準化が可能です。

出荷頻度に応じたレイアウト

出荷頻度を考慮したレイアウトの作成も、ピッキングの効率化のコツです。たかが一歩、されど一歩。出荷頻度の高い商品はなるべく荷捌き場に近い位置に配置しましょう。

遠い場所や手の届きづらい場所には、出荷頻度の低い商品をレイアウトします。移動距離や手間を考慮した小さな積み重ねが、ピッキングを効率化します。

動線の確保

移動がしやすい状態を作ることもピッキング効率化に繋がります。
・動線に荷物が置かれている
・フォークリフトと歩行者が同じ動線
・十分な道幅が確保されていない
上記は効率化の観点だけでなく、事故を招く原因にもなります。作業動線を妨げる要因がないか、定期的にチェックしましょう。

時間を意識する

作業時間に意識を向けるのも重要です。
・目標を立て作業者全員に共有する
・進捗状況をホワイトボードに記載するなど「見える化」する
といった対策をし、怠慢を抑止します。倉庫内は単調な作業が多いため、特に閑散期や人数の多い現場は意識が低下しがちです。正確さも担保しながら、時間も意識できる工夫をすると良いでしょう。

紙以外のピッキングシステム・ツール



紙ベースのピッキングリストのみに頼る方法の他に、システムやツールを利用したピッキング方法もあります。ここでは3つご紹介します。

デジタルピッキングシステム

「デジタルピッキングシステム」は、デジタル表示器を利用したシステムです。ピッキングする商品の棚についたランプが光り、数量が表示されます。作業者は光った棚に向かい、示された数量をピッキングするのみ。商品を探したり、伝票にチェックをいれたりする手間が削減されるため、紙と比較したときに平均して2倍以上の効果が出るとされています。

ハンディーターミナル

「ハンディーターミナル」のツールを用いたピッキングでは、ピッキングリストに表示されたバーコードを読み取ることで、商品の保管場所や詳細を確認できます。

ピッキングの際には、商品のバーコードを読み取れば照合も可能です。作業者の経験に頼ることなく、正確性を担保できるため、人材育成のコスト削減にも有効でしょう。

タブレットピッキング

「タブレットピッキング」では、紙のピッキングリストの代わりに、タブレットを使用します。商品画像を確認しながら、ピッキングができるため、作業スピードの向上が見込めるでしょう。

また、在庫管理システムとの連携でリアルタイムな在庫の反映ができたり、商品状態確認のための画像共有がスムーズに行えたりと、ピッキング面以外でのメリットも同時に享受できます。

ピッキングの意味や適切な方法を理解して業務効率化!



物流作業に携わるにあたっては、表面的ではなく根本的な業務理解が必要です。倉庫内作業での「ピッキング」が意味する内容は、オーダーにのっとり保管場所から商品を取り出すことでした。
そのための方法は「シングルピッキング」と「トータルピッキング」の2種類があります

尚、さまざまな工夫を凝らしたり、システムの活用で効率化が望めます。
・なぜそのような方法で行うのか
・もっと効率化するにはどうすればいいのか
業務理解を深め、実践に取り組んでいきましょう。

 

<関連記事>

検品作業とは?仕事内容と問題点・ミスなく効率化するコツを紹介

出荷とは?発送との違いは?出荷と発送の業務内容を比較

殿堂入り記事
発送代行完全ガイド

発送代行完全ガイド

発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。

田中なお

ライター

田中なお

物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

あなたはこちらのコラムにもご興味がおありかもしれません おすすめコラム

流通加工とは?主な2種類やアウトソーシングするメリット・注意点を解説
流通加工とは?主な2種類やアウトソーシングするメリット・注意点を解説
流通加工を導入しようと考えている方で、以下のようなお悩みはありませんか? 「流通加工にはどのような種類があるの?」「外部に任せたいけれど、どのようなメリットや注意点があるんだろう?」 本記事では、流通加工の基本から外部委託(アウトソー...
続きを読んでみる
物流業務を効率化することによる3つの魅力とは?方法や求物流業務を効率化することによる3つの魅力とは?方法や求められる理由を解説められる理由を解説
物流業務を効率化することによる3つの魅力とは?方法や求物流業務を効率化することによる3つの魅力とは?方法や求められる理由を解説められる理由を解説
物流業界関係者の方で、以下のようなお悩みはありませんか? 「物流業務をスムーズに進めたい」「物流業務を効率化するメリットは?」「ウチに合う効率化の方法は?」 コスト削減や人手不足のカバーなどを目的に、物流業界でも業務の効率化が求められ...
続きを読んでみる
通販に便利なECモールとは?利用のメリットや大手3社の特徴を解説
通販に便利なECモールとは?利用のメリットや大手3社の特徴を解説
「通販で商品を買いたいけど、どのサイトを使えばいいの?」「Amazonや楽天市場以外にも便利な通販モールってあるのかな?」「ECモールって聞くけど、具体的にどのようなメリットがあるんだろう?」 さまざまな店舗が集まる「ECモール」は、...
続きを読んでみる
物流でITを活用するメリットは?IT導入の3つのポイントや活用事例を紹介
物流でITを活用するメリットは?IT導入の3つのポイントや活用事例を紹介
物流にITを導入する点に関し、以下のようなお悩みはありませんか? 「物流にITを導入するメリットやデメリットとは?」「失敗しないIT導入のポイントを知りたい」「物流現場での具体的なIT活用例が気になる」 物流業界に関わる中で、こんな疑...
続きを読んでみる
アパレル業界の検針とは?検針機の種類や基準となる感度を解説
アパレル業界の検針とは?検針機の種類や基準となる感度を解説
アパレルの品質を確保するうえで「検針」は欠かせない工程のひとつです。万が一、折れ針や金属片などの異物が混入したまま出荷されてしまうと、消費者に危険を及ぼすだけでなく、ブランドの信頼にも大きな影響を与えます。 アパレルの検針にはさまざま...
続きを読んでみる
ふるさと納税の物流コスト削減と品質向上を実現する倉庫活用ガイド
ふるさと納税の物流コスト削減と品質向上を実現する倉庫活用ガイド
近年、ふるさと納税制度は全国的に広がりを見せ、寄付額や利用者数は年々右肩上がりに成長しています。 その一方で、返礼品を届けるための物流コストや発送手続きが、自治体・生産者・事業者の大きな負担になっています。特に年末は寄付件数が集中し、...
続きを読んでみる
【物流担当者必見】コンテナ入庫とは?効率化のコツ4選|デバンニング作業をプロが徹底解説
【物流担当者必見】コンテナ入庫とは?効率化のコツ4選|デバンニング作業をプロが徹底解説
海外からの輸入をしている、あるいは、これから始めようとしている企業の物流担当者の中には、以下のような悩みを持つ方もいると思います。 「コンテナ入庫はどう始めればいい?効率化の方法は?」 「デバンニング作業とは?」 コンテナでの輸入およ...
続きを読んでみる
家具業界の物流の課題とは?発送代行業者の選び方とおすすめ10選
家具業界の物流の課題とは?発送代行業者の選び方とおすすめ10選
近年、家具業界のEC市場は拡大しています。自宅で気軽に家具を選び、購入できる利便性が消費者に支持される一方で、家具特有の物流課題も多く存在します。 本記事では、家具業界が直面する主な物流課題を整理し、家具の取り扱いに適した発送代行業者...
続きを読んでみる

タグ一覧

カテゴリー