
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

近年、ふるさと納税制度は全国的に広がりを見せ、寄付額や利用者数は年々右肩上がりに成長しています。
その一方で、返礼品を届けるための物流コストや発送手続きが、自治体・生産者・事業者の大きな負担になっています。特に年末は寄付件数が集中し、受注と出荷を短期間でこなさなくてはならないため、手配が追いつかないケースも少なくありません。
本記事では、ふるさと納税の物流課題を整理するとともに、物流アウトソーシングを活用して効率化・コスト削減を図る方法を解説します。返礼品の保管・出荷における問題解決のヒントをお届けしますので、参考になさってください。
ふるさと納税における物流課題
ふるさと納税は、その特性ならではの物流課題を抱えています。以下の通りです。
- ふるさと納税の成長と物量増加
- 年末の繁忙期と出荷集中
- 従来の直送モデルと運賃高騰
- 今後も続く物流コストの高騰
解決策を探るためにも、まずは、課題を要点ごとに理解しましょう。
ふるさと納税の成長と物量増加
ふるさと納税は、2008年の制度開始以降、寄付額が急増してきました。総務省の資料によれば、2023年度の寄付総額は約1.1兆円に達し、自治体や事業者にとって大きな収益源となっています。その結果、返礼品の発送件数も右肩上がりに増加し、物流の負荷が高まっている状況です。
出典:ふるさと納税に関する現況調査結果_自治税務局市町村税課
年末の繁忙期と出荷集中
特に11月〜12月は、年末調整や住民税控除を意識した駆け込み需要により、繁忙期を迎えます。2023年1月〜12月にふるさと納税を利用した人を対象とした調査では、12月に寄付をした人の割合が最も高く、41.1%でした。注文が殺到し、発送までのリードタイムを維持するのが難しくなります。
- 在庫の確保が追いつかない
- 一時的なスタッフ確保や作業スペースが足りない
上記のような課題により、年末における返礼品の配送遅延や欠品が深刻な問題となる自治体・事業者が顕在化しています。
出典:もっと知りたい!ふるさと納税 いつにする?どこにする?なににする? ~ふるさと納税実態調査④~_独立行政法人経済産業研究所
従来の直送モデルと運賃高騰
ふるさと納税では、従来、地域活性化の観点から産地直送の形式が主流でした。しかし、近年の燃料費・人件費の上昇や人手不足の影響を受け、宅配便や郵便の値上げが続いています。特に遠方への発送は、運賃が高くなりやすい傾向です。
一方で、2023年10月から「募集に要する費用を寄付金額の5割以下とする」基準が厳格化され、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行なども対象になる旨が明示されました。返礼品競争の激化により、寄付金に占める経費の割合は上昇しており、発送費の増加も自治体・事業者にとって看過できない問題といえます。
今後も続く物流コストの高騰
燃料費や人件費が下がる見通しは薄く、宅配便各社も定期的に運賃改定を行っています。特に人件費は、少子高齢化が進む一方であり、労働力人口の不足が懸念されているのが現状です。ドライバーや倉庫スタッフの人件費は少しずつ上昇していくでしょう。
従って、物流コストの高騰は今後も続く見込みです。効率化によるコスト削減がふるさと納税の継続的な発展には不可欠といえます。
ふるさと納税の返礼品に関する物流業務を倉庫に委託するメリット
こうしたふるさと納税に関する物流課題を解消するために、物流業務の委託は有効です。
ここでは、自治体や生産者が返礼品の発送をアウトソーシングすることで得られる主なメリットを解説します。
配送コストを削減できる
物流業務を倉庫に委託すれば、輸配送コストを削減できる可能性があります。
物流倉庫は毎日、さまざまな荷主に関わる大量の荷物を発送しています。そのため、宅配事業者および郵便事業者と特別契約が適用され、運賃の優遇が期待できるのです。
また、これまで地方から商品を直送していて、かつ出荷量が多い場合は委託を検討する余地が大きいといえます。物流拠点を分散することで、全体の輸配送費を削減できる可能性が高いからです。あわせてリードタイムも短縮できます。地方からの輸送に際しては、共同輸送やモーダルシフトの提案を受けられるケースもあるでしょう。
個別に直送するよりもトータルコストを大幅に削減できる可能性があるため、一度相談してみてください。
出荷量の増加に対応できる
年末に寄付件数が急増しても、人員やスペースを柔軟に確保しやすい点も、物流業務を倉庫に委託するメリットです。
物流倉庫は、複数の荷主と契約しています。各荷主の出荷量や保管量の増減に対応するために、他の現場のスタッフから応援を要請したり、保管場所を融通したりといった調整が得意です。
それでも人員や保管スペースが不足する場合に備え、協力会社との連携を図っている事業者もあります。生産者や自治体が自前で倉庫や人手を準備するよりも迅速な対応が可能になり、機会損失を防ぐ効果が期待できます。
固定費を変動費にできる
自社・自治体で物流拠点を構えると、倉庫賃貸料やスタッフの人件費などを月々の固定費として支払わなくてはなりません。一方、物流業務を委託するケースでは、実際の出荷数に応じた費用(変動費)で済みます。
物量が少ない時期に無駄なコストを抱えるリスクを軽減できることはメリットのひとつです。
物流品質を向上できる
物流のプロが作業を担当することで、出荷漏れ・発送遅延・破損・在庫差異などのトラブルが減少します。特に温度管理やロット管理が必要な食品は、専門ノウハウを持った倉庫ほど安心です。
物流品質の向上は、クレーム件数の減少や寄付者の満足度向上につながります。結果として良い口コミが集まれば、注目が集まるきっかけになるでしょう。
ふるさと納税の物流業務委託に適した倉庫
次に、ふるさと納税の返礼品に関する物流業務を委託するのに、適した倉庫の条件を5つ紹介します。外部倉庫を選ぶ際のチェックリストとしてお役立てください。
- 冷凍・冷蔵に対応可能な物流倉庫
- 該当する商材の取り扱い実績がある物流倉庫
- ギフトに対応可能な物流倉庫
- アソートなどの流通加工に対応可能な物流倉庫
- 物量の波動に対応できる物流倉庫
冷凍・冷蔵に対応可能な物流倉庫
肉・魚・野菜などの生鮮食品やスイーツ、冷凍惣菜などを商材とするケースでは、温度管理の可否について確認が必要です。
特に温度帯の異なる複数の商品を委託する場合、冷凍(-18℃)・冷蔵(10℃以下)・定温・常温など複数温度帯に対応できる倉庫であれば、保管拠点を分けずにすみます。
食品を扱えるクリーンな環境が整備されているかどうかも、視察の際にチェックしましょう。
該当する商材の取り扱い実績がある物流倉庫
食品だけでなく、地酒やワイン、工芸品、雑貨など、ふるさと納税の返礼品は多岐にわたります。自社の返礼品と同種・類似の商材を扱った実績がある倉庫なら、リスク管理やノウハウが確立されているため安心です。
例えば、常温品であっても食品や飲料であれば、ロット管理や賞味期限管理、先入れ先出しが不可欠です。割れものや工芸品は、丁寧な梱包が求められます。家具やアウトドア用品などのうち大きなサイズの商材は、取扱い不可の倉庫もあります。
取扱いが可能かどうかだけでなく、実績を確認しましょう。
ギフトに対応可能な物流倉庫
ふるさと納税の返礼品はギフト需要も高く、「お中元・お歳暮として利用する」「友人や家族へのプレゼントにする」などの利用者が増えています。以下のようなギフトサービスを行える倉庫を選ぶと「別送」に対応できます。
- お礼状やメッセージカードの同梱
- のし紙や包装紙のアレンジ
これらを倉庫で一括して対応できると、自治体や生産者側の手間を大幅に削減できるでしょう。同時に利用者満足度を高められます。
アソートなどの流通加工に対応可能な物流倉庫
ふるさと納税では、複数の商品を組み合わせて作る返礼品が人気です。例えば「A商品とB商品の詰め合わせセット」「スイーツのアソートボックス」「地域の特産品を数点まとめたギフト」などが挙げられます。
このような返礼品には、アソート(ギフトボックスへの詰め合わせ作業)やラベル・シール貼りなどの流通加工に対応できる倉庫が適しています。細かなカスタマイズを加えながら迅速に商品を出荷できるため、返礼品の魅力を高めながら、ラインナップの拡充も可能です。
<関連記事>「流通加工とは?その種類と課題、物流倉庫に外注するメリット・デメリット」
物量の波動に対応できる物流倉庫
季節による物量の波動に対応可能な倉庫は多いものの、中には事業の拡大にキャパシティが追いつけない倉庫もあります。
トラブルが頻発し、せっかく委託したにも関わらず、さらに移転を余儀なくされるケースが後をたちません。
ふるさと納税市場は、継続して成長を続けており、事業拡大に備えた準備が必要です。倉庫事業者の規模の大きさや、1日の最大出荷キャパシティを確認しましょう。
富士ロジテックホールディングスの発送代行サービス
最後に、ふるさと納税の物流課題解決に適した、富士ロジテックホールディングスの物流代行サービスの強みを紹介します。
- 物流改善のご提案が可能
- 多くのシステムと連携可能
- 4温度帯の倉庫
- 賞味期限やロット管理が可能
- 物量の増加に対応可能
物流改善のご提案が可能
富士ロジテックホールディングスは、分析と提案力に強みがあります。
物流拠点の統廃合や分散、輸配送の元請け化などによって、コスト削減を実現した事例も多数ございます。関東、関西、九州の主要都市に自社拠点を保有しており、柔軟なご提案が可能です。
コスト削減にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
多くのシステムと連携可能
富士ロジテックホールディングスでは、自社WMSをお客様別にカスタマイズしてご利用いただけます。さとふると連携しているOMS「ネクストエンジン」とWMSのAPI連携も可能です。
そのほか、OMS(受注管理システム)+WMS(倉庫管理システム)一体型システムの導入を積極的に行い、スムーズな受注~出荷フローを実現しています。
誤出荷や欠品リスクを最小するために、在庫状況や出荷指示をリアルタイムに共有。お客様のニーズに合わせて、システム連携にできる限り対応いたします。
<関連記事>「受注管理システム(OMS)の導入メリットとポイントを解説!」
4温度帯の倉庫
富士ロジテックホールディングスは、生鮮食品や冷凍食品を安全に保管できるよう、冷凍(-20℃程度)・冷蔵(5℃程度)・定温・常温の4温度帯の倉庫を保有しています。
- 肉や魚介、乳製品など要冷凍・冷蔵商品も対応
- ワインやチョコレートなど定温管理が必要な商材にも実績
ふるさと納税で人気の高い食品ギフトの品質保持・鮮度維持を徹底して行うことで、利用者の満足度向上に寄与します。
<関連記事>「冷蔵倉庫を利用する3つ方法と大手おすすめ5選」
<関連記事>「【最新】冷凍倉庫とは?種類や市場規模、課題から見る打ち手」
賞味期限やロット管理が可能
ふるさと納税に多い食品を扱ううえで欠かせないのが、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保と、先入先出の運用です。富士ロジテックホールディングスでは、賞味期限やロット番号をWMS上で一元管理し、期限切れを防止する仕組みを整えています。
万が一、不良品やリコールが発生した場合でも、どのロットから何件出荷されたかを迅速に特定します。リスク管理が高水準で可能です。
<関連記事>「先入れ先出しとは何か?メリット・デメリット、円滑に運用するポイントを解説」
物量の増加に対応可能
富士ロジテックホールディングスは、1日あたり2万件の出荷にも対応可能です。
自動化設備やマテハン導入を積極的に進めており、大量出荷でも安定した発送スピードと品質を維持しています。例えば、物流ロボット「t-Sort」の活用がそのひとつです。t-Sortは、仕分けやピッキングに活躍し、波動への対応力を強化しています。
ふるさと納税の駆け込み需要に滞りなく対応できるため、寄付者へのお届けが遅れにくくなるのが強みです。
ふるさと納税の返礼品は物流倉庫を活用しよう!
ふるさと納税は今後も利用者数・寄付額ともに増加が見込まれます。返礼品の発送件数もますます増加するでしょう。しかし、その一方で物流コストや人件費は上昇傾向にあり、自治体や生産者が自力で対応し続けるのは難しい状況です。
本記事で紹介したように、専門の物流倉庫や発送代行サービスを活用すれば、温度帯管理やギフト対応、波動への柔軟対応など、多岐にわたる課題を一挙に解決できます。さらに、固定費を抑え、変動費化することで財務面のリスクも軽減可能です。
「自前の倉庫での保管・梱包が限界を迎えつつある」「年末の大量出荷に対応しきれない」「食品の衛生管理に不安がある」などの課題をお持ちの方は、ぜひ富士ロジテックホールディングスをはじめとする専門企業にご相談ください。効率的な倉庫活用が、ふるさと納税の更なる発展と寄付者の満足度向上につながるはずです。


発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。

ライター
田中なお
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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