
近年、家具業界のEC市場は拡大しています。自宅で気軽に家具を選び、購入できる利便性が消費者に支持される一方で、家具特有の物流課題も多く存在します。
本記事では、家具業界が直面する主な物流課題を整理し、家具の取り扱いに適した発送代行業者の選び方を解説します。さらに、家具の保管や配送に強みを持つおすすめ発送代行サービス10選を紹介しますので、参考にしてください。
家具業界のEC市場動向は拡大傾向
家具やインテリア市場ではEC化が進んでおり、その市場規模は年々拡大しています。令和5年「電子商取引に関する市場調査」によると、2023年度の日本国内のBtoC向けEC市場規模は24.8兆円に達し、なかでも「生活雑貨、家具、インテリア」分野は2兆4,721億円(前年比5.01%増)と増加傾向です。
さらに、「生活雑貨、家具、インテリア」分野のEC化率は31.54%と高い水準を維持しており、オンラインで家具やインテリア雑貨を購入する消費者が増えていることが分かります。この成長の背景には、オンライン接客の普及やAR技術を活用した配置イメージの提供による利便性の向上が挙げられます。
また、在宅ワークの普及により快適な住環境を求める人が増えたことも、家具のEC需要を高める要因のひとつです。しかし、このように家具のEC化が進む一方で、大型商品特有の物流課題も見受けられています。
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家具業界の物流における6つの課題を解説
家具業界では大型商品ならではの物流面の課題があります。主な課題として、以下の6つを解説します。
- 家具の取り扱いには専門知識が必要
- サイズと需要変動合わせた保管スペースの確保
- 組み立て・設置サービスなどの技術的なハードル
- 品質劣化のリスク
- 梱包資材の品質管理
- 配送コストの増加
家具の取り扱いには専門知識が必要
大型家具には、ベッド・ソファ・テーブル・戸棚・本棚・ダイニングテーブル・クローゼットなどさまざまな種類があります。大型で重量がある特性上、輸送や保管には特別な配慮が求められ、専門業者でないと適切に取り扱うことが困難です。
また、家具にはさまざまな形状があり、ガラス製品を含むデザインの場合、破損リスクが高まります。加えて、組み立てが必要な家具は細かな部品が多く、適切な部品管理も欠かせません。
そのため、家具を適切に取り扱うには、高い専門知識と豊富な経験が必要です。
サイズと需要変動合わせた保管スペースの確保
大型家具は重量も重く取り出しや移動が難しいため、安全に作業ができる広い保管スペースが求められます。また、種類や形状が異なる家具は商品数が増えると、限られたスペースでは効率的な運用が難しくなります。
さらに、引っ越しや新生活に伴う需要の増加や、気温の変化による模様替えなど季節による需要変動が大きいことも家具物流の特徴の一つです。このような需要の波に対応するためには、家具の特性に応じた保管スペースの確保が不可欠です。
組み立て・設置サービスなどの技術的なハードル
家具の中にはベッドやテーブルなどの組み立てが必要なものがあり、複雑な構造の商品は組み立て作業に時間がかかります。また、家具を設置する際はレイアウトに応じて配置し、床や壁が傷つかないよう、慎重な取り扱いが求められます。
組み立てや設置サービスに問題があると、返品率の上昇や顧客満足度の低下につながるため、細心の注意が必要です。そのため、家具物流を行う際は、専門知識と高い技術力を持つプロのスタッフによる対応が不可欠です。
品質劣化のリスク
家具を取り扱う際は、品質劣化のリスクも重要な課題の一つです。特に、木材を使用した家具は、湿度や温度の変化に敏感です。
適切な環境で管理しないと、反りや割れといった品質劣化が進行します。また、湿度が高い環境で長期間保管すると、カビや虫食いが発生するリスクも高まります。
さらに、直射日光があたる倉庫での保管は、色あせや劣化につながるため、家具の材質に適した倉庫環境が求められます。
梱包資材の品質管理
家具はサイズが大きく重さや形状も多様なので、輸送の際は細心の注意が必要です。家具の特性に合った梱包資材で丁寧に梱包しないと、輸送中の衝撃や振動によって損傷を受ける可能性が高まります。
損傷や返品は、企業にとって大きなコスト負担になるため、適切な梱包による品質管理が求められます。顧客が期待する梱包状態で商品が届くことで、ブランドへの信頼感が高まり、リピーターの増加につながるでしょう。
配送コストの増加
大型家具の配送では、2マン配送(ドライバーと助手の2人で行う配送)となるため、人件費も倍になりコストが増加します。また、狭小住宅やマンションへの配送は、クレーンを用いた搬入作業が発生するケースもあります。
さらに、道幅が狭い立地では搬入経路の確認作業も必要です。このように、配送場所や家具の大きさによって適正な配送方法を使い分ける必要があるため、物流コストが増加しやすい傾向です。
家具の物流に適した発送代行業者の選び方
家具業界にはさまざまな物流の課題がありますが、それらの業務を発送代行業者に委託することで効率的な運営を実現できます。ここでは、以下のポイントをもとに、適切な発送代行業者を選ぶ方法を詳しく解説します。
- 重量物の取り扱いに適した倉庫か
- 十分な保管スペースを確保できるか
- 顧客のニーズに対応したサービスが可能か
- 在庫管理が徹底しているか
大型商材の取り扱いに適した倉庫か
委託先の倉庫が、効率的な運用ができる設計かどうかは重要なポイントです。以下のような大型商材を扱うのに適した設備のある発行代行業者を選びましょう。
- パレットラック
- フォークリフト
- ハンドリフト
- コンベヤ
- ドックレベラー
例えば、パレットラックは、荷物をパレットに載せたまま保管できる大型の棚で、1段あたり1tから3tの重さに耐えられる機能があります。縦の空間を利用して家具を効率的に保管できるため、倉庫内のスペースを最大限に活用できる点が特徴です。
輸入品を取り扱う場合は、コンテナから商品をおろす設備にも着目しましょう。コンベヤやドックレベラー(トラックの荷台と倉庫の床の高さを合わせる設備)を用いると、安全かつ効率的な作業が可能です。
このような機能を備えた業者を選ぶことで、家具の取り扱いがより安全かつ効率的になり、配送の遅延や損傷のリスクを最小限に抑えられます。
十分な保管スペースを確保できるか
大型家具を扱う場合は、広い保管スペースの確保が必要です。そのため、委託先の倉庫の空きスペースを確認し、保管する家具の物量に適しているかを評価しましょう。季節変動も見越したうえで、キャパシティーオーバーにならない保管スペースが必要です。
加えて、倉庫内のレイアウトが効率的であるかも重要なポイントです。通路が広く棚やラックの配置が工夫され、作業動線が確保された倉庫なら商品を安全に保管できます。
顧客のニーズに対応したサービスが可能か
物流業務のなかでも、小型の家具やインテリア商品はギフト需要も高いため、ラッピングやメッセージカードの同梱作業などの流通加工に対応できるかも重要なポイントです。また、家具の特性に応じた梱包方法が可能かどうかもチェックしておくと良いでしょう。
例えば、ガラス製の家具や高価なインテリア商品は、特別な緩衝材を用いた丁寧な梱包が求められます。さらに、家具の組み立てや指定場所への設置だけでなく、不要となった家具の回収や廃棄処分のサービスに対応できる業者もあります。
このようなサービスを実施し顧客のニーズに対応できれば、顧客満足度の向上やリピーターの獲得につながるでしょう。
在庫管理が徹底しているか
在庫管理の徹底も委託先選びに欠かせないポイントの一つです。適切な在庫管理が行われていない業者に委託すると、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 欠品
- 過剰在庫
- 配送遅延
- 品質の低下
一方、最新の在庫管理システムを導入している業者であれば、在庫状況をリアルタイムで把握でき、欠品や過剰在庫のリスクを抑えた効率的な運営が可能になります。また、店舗とオンラインの在庫を同時に管理できるため、各チャネルでの欠品を最小限に抑え、機会損失を防げるでしょう。
<関連記事>「EC物流とは?仕組みや課題、解決策としておすすめの代行業者を10社紹介」
家具の物流におすすめの発送代行サービス10選
ここでは、家具の取り扱いが可能なおすすめの発送代行サービスを10選紹介いたします。
- 富士ロジテックホールディングス
- ホームロジ
- S-PAL(エスパル)
- SBSロジコム
- コイズミ物流
- プラスロジスティクス
- 関空運輸
- はぴロジ
- TASCO(タスコ)
- アートバンライン
富士ロジテックホールディングス
富士ロジテックホールディングスでは、インテリア雑貨やワイングラス等の食器、家具、玩具、日用品などの幅広い商材の取り扱いが可能です。大型家具の取り扱い実績もあり、商材ごとに適した保管場所を提供しています。
相模原に新たに開設した「GLP ALFALINK相模原」は、約3,500坪の広さを誇る流通拠点です。倉庫内には高床式フロアを採用しており、コンテナからの荷下ろし作業が効率的に行えるため、重量やサイズの大きい大型家具の搬入や出荷が可能です。
構内には、佐川急便と西濃運輸が設置されており、BtoB、BtoC、eコマースに対して効率的に対応できる発送代行サービスを提供しています。
ホームロジスティクス
ホームロジは、ニトリから分社化された物流会社です。全国46都道府県に営業所を構え、倉庫業と配送業を兼ね備えた発送代行サービスを提供しています。
ホームロジでは、ニトリグループで培った豊富なスキルを持ったスタッフが、家具を丁寧に取り扱うサービスが特徴です。2マン配送による家具配送を実施し、配送中の傷や破損のリスクを最小限に抑え、家具を顧客のもとへ確実に届けます。
さらに、家具の組み立てや設置、梱包材の回収まで一貫して対応するほか、家具のリペアサービスも提供し、配送からアフターサービスまでトータルでサポートします。
出典:ホームロジスティクス
S-PAL(エスパル)
S-PALは、船橋と綾瀬に物流拠点を持ち、関東を中心に展開している物流代行サービスです。25kg以上の大型家具にも対応しており、ソファやダイニングテーブルを効率的に配送します。
S-PALでは、独自の物流ノウハウを活用した倉庫レイアウトが特徴的です。形状が異なる大型家具も柔軟に対応できる設備で、ピッキング精度も高く、配送、出荷スピードの向上が実現できます。
また、万が一の返品時には、きめ細やかな対応が可能です。返品の理由に応じた柔軟な対応ができるため、信頼性の高いサービスを提供できます。
出典:S-PAL
SBSロジコム
SBSロジコムでは、個人の引っ越しやオフィス移転の実績を基に、長年培ったノウハウを活かした物流サービスを提供しています。3PL(サードパーティ・ロジスティクス)サービスを強みとしており、ニーズに応じた物流システムを提供し物流コストを抑えることが可能です。
家具を配送する際は、専門スタッフ2名による2マン配送を採用し、大型家具の運搬を安全に行います。配送時の家具の組み立てサービスでは、完成度の高い状態で家具を提供できる点が魅力です。
古い家具を回収し適切に処分するサービスも提供しており、余計な手間をかけることなくすぐに新しい家具を設置できます。
出典:SBSロジコム
コイズミ物流
コイズミ物流は、デスクからマットレス、ベッドなどの小型家具から大型家具まで幅広いサイズの取り扱いが可能です。一般家具の配送だけでなく、商業施設や介護施設、個人宅への搬入、組み立て、設置にも対応しています。
また、ECサイト向けの個人宅配用の加工作業にも対応し、手作業によるきめ細やかな仕上がりを提供しています。倉庫内には在庫管理システムを導入し、入出庫から加工作業、発送、返品処理まで一括管理が可能です。
さらに、庫内では自動仕分け機を活用しており、納品先ごとの条件に応じた仕分けを行うことで、迅速な配送を実現しています。
出典:コイズミ物流
プラスロジスティクス
プラスロジスティクスは、オフィス家具の 回収・買取、リサイクル処理など、運営ノウハウを活かした発送代行サービスを行います。移転をともなう家具の移動や、家具の適切な保管、オフィスのレイアウトを意識した家具の設置が可能です。
物流面では、独自の全国配送ネットワークを活かし、個人向けの大型家具の配送やEC物流にも対応しています。家具の特性に応じた拠点を選定し、組み立てや設置サービスの提供も可能です。
さらに、社内にコールセンターを設置し、家具の配送や組み立てに関する問い合わせにも丁寧に対応できる体制を整えています。購入後のサポートも充実しており、顧客の安心感につながります。
出典:プラスロジスティクス
関空運輸
関空運輸は、オフィス家具を中心に商品の入出庫、保管、加工、検品、配送までをワンストップで対応する発送代行サービスです。大型家具では、コンテナドレーの手配からデバン作業、入庫、保管を効率的かつ安全に管理する体制を整えています。
例えば、海外メーカーの輸送では、不具合がないか抜き打ち検品を行い、顧客に安心、安全な商品を届けています。関空運輸では配送スピードにも強みを持ち、全国への配送手配を一手に行うことで、関東、関西、中部、九州といった広い商圏エリアへの翌日配送が可能です。
家具のネット通販では、オーダーから短期間で納品できる体制を整えています。また、組み立てや検品が必要な配送、返品対応にも丁寧に対応し、多様な物流ニーズに柔軟に対応します。
出典:関空運輸
はぴロジ
はぴロジは入荷から出荷、在庫管理まで物流業務をトータルで請け負う発送代行サービスです。大型家具から家電、温度管理が必要な商品まで幅広い商品に対応しています。
特徴的なのが、物流業務のサポートを行うクラウド型システム「logiec」を活用している点です。このシステムは、各ECサービスやBtoB、店舗納品からの受注データを自動で抽出し、リアルタイムで物流現場に連携する仕組みです。
このシステムにより、入荷から発送、在庫同期までのプロセスを自動化し、業務の効率化を図ります。さらに、全国に200拠点を超える倉庫と提携しているため、需要変動に応じた分散出荷にも柔軟に対応できます。
出典:はぴロジ
TASCO(タスコ)
TASCO(タスコ)は、名古屋を中心に東海エリア、関東、関西の配送サンタ―を運営する発送代行サービスです。家具や家電の輸送に強みがあり、大型商品の輸送では、パレットだけではなく手作業の積み降ろしを行い、商品の特性や形状に応じた対応ができます。
顧客が希望する場所に家具を設置する開梱設置便では、荷物の開梱から組み立て、設置、梱包資材の持ち帰り、不要家具の引き取りサービスも提供しています。さらに、航空・海上輸送における通関代行も可能です。
輸出入の経験を持つ通関士が、家具の国際輸送に必要な手続きを代行するため、スムーズで安全な配送を実現しています。
出典:TASCO(タスコ)
アートバンライン
アートバンラインは、引越サービスのリーディングカンパニーであるアート引越センターが100%出資する発送代行サービスです。東京と大阪といった大規模な拠点を中心に、全国規模で物流事業を展開しています。
アートバンラインの強みは、引越しのノウハウを活かした搬入・組み立て・設置サービスです。大型家具の配送時には2マン配送を実施し、高度な納品技術と接客スキル、身だしなみに至るまで徹底したサービスを提供しています。
また、倉庫内の在庫商品管理や入出庫管理には最先端のITシステムを導入し、入庫から発送までの業務をスピーディーかつ正確に行います。
出典:アートバンライン
家具物流を発送代行サービスに切り替えるタイミング
自社の物流業務を効率化し、コストを削減するためには発送代行サービスへ委託するタイミングも重要です。主に以下のような状況になった際は、発送代行サービスの導入準備を進めておくとよいでしょう。
- 年末商戦や新生活シーズンなどの需要が高まる時期
- 輸入した商品を国内で販売したいとき
- 配送コストの削減を検討したいとき
- 人手の確保が難しくなったとき
- 保管スペースが不足したとき
- 品質管理や梱包のクレームが増えたとき
- 組み立てや設置作業への対応が困難になったとき
発送代行サービスの導入は、需要の高まる時期や新規市場への進出時、保管スペースが不足する場合など、需要が増加した時が効果的です。特に、配送コストの上昇や人手不足により企業の負担が求められる場面では、誤発送やミスを防ぐためにも導入を検討するタイミングといえるでしょう。
家具物流の課題に向けて、発送代行サービスを活用しよう
家具業界ではEC市場の拡大にともない、物流面でもさまざまな課題が浮き彫りになっています。特に、大型家具は品質劣化を防ぐための適切な保管や、配送時には細心の配慮が求められます。
このような課題を解消するためには、適切なタイミングで発送代行サービスへ委託するのが効果的です。富士ロジテックホールディングスでは、大型家具に対応できる物流代行サービスを展開しています。
庫内では大型商材を荷下ろしするためのマシンを導入し、業務の効率化を実現しています。デバンニングも承っており、個人宅への配送は260サイズまで宅配料金で対応可能です。物流の課題や自社負担を見据えて、家具に特化した発送代行サービスを活用しましょう。
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発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。

ライター
森恵
貿易事務と物流代行営業の経験を活かし、専門知識に基づいた記事作成を行っています。お客様に寄り添い、分かりやすく役立つ情報を提供します。
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