国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
リバースロジスティクスとは、消費者から生産者へと物が動く物流を指します。返品や交換などで発生する工程です。
日用品からアパレルまで、全てインターネット上で購入するのが当たり前になった現在、EC業界では返品や交換に対する意識の改革が急務です。
この記事ではリバースロジスティクスをどのように最適化し、売り上げ向上に繋げるかについて、事例も用いて詳しく解説します。
リバースロジスティクスとは
まずはリバースロジスティクスの考え方として重要になる
- 静脈物流
- 3R
について、より詳しく見ていきましょう。
リバースロジスティクス|静脈物流
リバースロジスティクスは、顧客の返品や交換により物がリバース(逆流)する物流です。「静脈物流」と近い意味で使われ、「還流ロジスティクス」とも呼ばれます。
「静脈物流」の役割は主に「返品」「回収」「廃棄」の3つです。
いったん消費者に届いた商品をリユースやリサイクルなどの目的で集荷、再資源化できる拠点に運搬するなどがこれにあたります。
対する「動脈物流」は生産者から消費者へ物が流れる物流を指す言葉です。血液の循環に例えられる通り、物流の循環はサプライチェーンに欠かせません。
廃棄だけではない|3R
リバースロジスティクスでは、廃棄だけでなく3R(リデュース・リユース・リサイクル)による付加価値を実現させるようなシステム構築が重要です。
たとえば修理や解体部品を再生するなど加工して2次販売したり、ECでの返品商品のディスカウント販売、良品戻しなどによるリユースも3Rに含まれます。
アメリカでは、James R.Stock教授が1992年に発表した「CLM白書」でいち早くその重要性が説かれ、静脈物流の考え方を吸収しました。
リバースロジスティクスの抱える問題点
リバースロジスティクスは生産者や小売業者にとって、よいことばかりではありません。代表的な問題点は以下の2つです。
- 手間がかかる
- コストがかかる
それぞれについて、解説します。
問題点1:手間がかかる
顧客から返品や交換の依頼があったときに、バックオフィスの業務が煩雑化するのが1つ目の問題点です。
まず基幹システムから在庫情報や販売実績のデータを抜き出し、Excelなどに貼り付けるところから検品や加工まで、手作業の場合は工程数が多くなりやすい傾向にあります。
さらには返送先のメモや、顧客とのデータ紐付け確認が取れるまでの一時保管などにも時間をとられてしまうでしょう。
問題点2:コストがかかる
リバースロジスティクスにおける2つ目の問題点は、返送料や返金手数料のコストが高くなる点です。
通常、毎月一定量の出荷がある企業は物流業者との契約で運送料が安く設定されています。個人から返品される場合はそのようなディスカウントがないため、出荷の配送料よりも高くなってしまうのです。
返品削減への取り組み事例
リバースロジスティクスにおいて、返品商品のリユースやリサイクルによる再利用が重要だとお伝えしました。しかしその前に、まずは無駄な返品自体を削減する取り組みを忘れてはいけません。
「返品商品の再利用」と「返品の削減」を同時におこなうことで、リバースロジスティクスの効果が最大化されます。
商品ページの最適化
イメージと違う、サイズが合わないなどで起こる返品を減らすには商品ページの最適化が重要です。
複数ブランドのアパレルを扱うZOZOTOWNでは、
- ブランドをまたいでサイズ表記を統一
- 着丈、袖丈、身幅などのサイズで検索できる機能を強化
- スタッフの着用画像やコーディネイトを掲載
するなどして、イメージやサイズ違いによる返品を減らす取り組みをしています。
アプリを活用したサイズ
アパレルEC業界では、バーチャル試着ツールの重要性が取り沙汰されています。
以下は、株式会社クロス・マーケティングがおこなった「アパレルECに関する調査」の結果です。アパレルで失敗したと感じる理由の32%が「サイズが合わない」になっています。
画像出典:Dream News
この問題を解決できるツールとして国内最多で導入されているのが、unisizeというアプリです。SHIPSやRight-on、AOKIやフェリシモをはじめとする有名アパレルメーカーがこぞってECサイトに導入しています。
顧客が1分ほどの簡単なアンケートに入力すると、アプリが身体サイズを推測し、適切なサイズを割り出してくれます。ほかにも、購入履歴データから他の洋服とのサイズ比較ができる機能もあります。
このアプリの導入によりサイズ交換や返品が減少したという企業の声が多く見られ、購入率も約2.5倍に上昇したというデータがあるほど効果的です。
リバースロジスティクスの重要性
では次に、リバースロジスティクスがなぜ重要なのかについて、以下5つの項目に分けてお伝えします。
- 返品の市場規模拡大
- 顧客購入後の体験を向上
- 交換・再購入の促進
- 「ファン」の構築
- マーケティングへの活用
返品の市場規模拡大
まずはリバースロジスティクスの重要性を物語る資料として、返品の市場規模が世界的に拡大傾向にあると示す以下のグラフをご覧ください。
画像出典:株式会社グローバルインフォメーション
上記の市場調査レポートによると、リバースロジスティクスの世界市場規模は2022年には6,130億米ドルであることが確認できます。その後成長率は5.5%と順調に推移し、2028年までには8,588億米ドルに達すると予測されています。
また以下のグラフは、2014年に20歳以上の男女を対象におこなった返品に関するアンケートの結果です。
この結果では、商品に不満がある場合に「返品する」という人が28%にものぼり、「我慢してそのまま使う」に次いで多いということが示されています。
またどんなサービスがあれば返品したいと思うかについての回答をみると「どんなサービスがあっても返品したいと思わない」と答えた人はわずか0.4%にとどまっています。それ以外はサービスがあれば返品したいという結果になりました。
画像出典:リバリュー消費者調査「通販での商品購入者への返品に関する調査結果」
これらの調査結果からも、今後返品におけるサービスの向上にともない、返品の市場は拡大していくことが予想できるでしょう。
顧客購入後の体験を向上
リバースロジスティクスを最適化することで、顧客の購入後の体験の質を向上させられます。
前述のアンケート結果から、顧客はおもに
- 送料無料
- 商品の交換
- 販売店への返品代行
などのサービスがあれば、返品したいという人が圧倒的多数であることが分かりました。
このようにリバースロジスティクスでは顧客に寄り添い、返品・交換の送料無料サービスや返送手段の選択肢を用意すれば、顧客の購入後の体験を向上させられます。
交換・再購入の促進
リバースロジスティクスの最適化により、交換や再購入も促進できます。
返品、返金よりもアイテムの交換や再購入を促すほうが、顧客とのつながりを保つうえで理想的です。
「ファン」の構築
リバースロジスティクスは自社のファンを獲得するためにも有効です。
顧客が購入した後に企業側がどう対応するかにより、リピート購入の機会増加が期待できます。つまり、ECサイトのファンになってもらいやすくなるのです。
実際に返品体験をした顧客はリピーターになる確率が高く、長期的にみて売り上げがプラスになります。
顧客のECに対する不安を取り除き、失敗しても交換や返品で対応することで自社の継続的なファンになってくれる確立が上がるでしょう。
マーケティングへの活用
リバースロジスティクスで得たデータを活用し、マーケティングに活かすことも可能です。
交換、返品時は常に顧客の理由を明確化しデータとして蓄積します。
データを分析することで顧客に提供する商品や売り方を修正し、返品を減らし余計なコストをカットできます。
同時に顧客のニーズが知れるチャンスでもあるため、マーケティングにとってもリバースロジスティクスは重要であるといえるでしょう。
「EC通販における返品処理とは?返品処理の重要性と流れ」の記事でもECの返品処理について詳しく解説しています。
より良いリバースロジスティクスのサービスを提供
ここからは、よりよいリバースロジスティクスのサービスを提供するために、効果的な施策を5つ紹介します。当社富士ロジテックホールディングスと提携企業でEC事業者様に提案している施策は次の通りです。
- セルフで返品できるようシンプルなUI/UXを提案
- 選択できる返送・配送方法が豊富
- パーソナライズデータとしての活用を後押し
- 交換・再購入を促す施策を提供
- 3Rへの取り組み
セルフで返品できるようシンプルなUI/UXを提案
リバースロジスティクスでまず重要なのが、顧客が返品・交換する際の手続きや方法を簡素化することです。
これまでの返品の手続きは煩雑なことが多く、顧客が返品をあきらめる要素の一つとなっていました。
ユーザーが使い勝手のよいように返品の入力システムを簡素化するなどして、気軽に返品できるシステムを構築することで顧客体験の向上が図れます。
顧客体験の向上が、結果的にはファンの獲得や、売り上げ向上にもつながるのです。
選択できる返送・配送方法が豊富
よりよいリバースロジスティクスのサービスを提供するには、ユーザーが返送・配送方法を選べるよう選択肢を設けましょう。
これまでの通販では返送の場合、配送方法に指定がありユーザーが面倒に感じ返品を思いとどまる原因の一つにもなっていました。
たとえば、
- 配送業者を選択できる
- 自宅に集荷に来てもらえる
- 無人DEPOから発送ができる
- リアル店舗からの返送ができる
などバリエーションを持たせることで、ユーザーがどの地域からでも積極的にリバースロジスティクスのサービスを活用できるでしょう。
パーソナライズデータとしての活用を後押し
リバースロジスティクスで得たデータは、パーソナライズにも大いに役立ちます。
パーソナライズとは、顧客ごとに個別にサービスを提供することです。
たとえば、返品理由から個別の顧客にあったよりよい商品の提案やレコメンドができるでしょう。
またデータを、返品・交換システムを悪用する顧客とそうでない顧客とに分離し、後者により多くのサービス体験を提供することも可能です。
交換・再購入を促す施策を提供
リバースロジスティクスでよりよいサービスを提供できれば、返品や返金をなるべく避けて交換・再購入を促せます。
たとえば、返金ではなくストアポイントを付与することで、次回の再購入につながります。
返品は返送料がかかる設定にし、交換は送料無料にするなども効果的です。
3Rへの取り組み
3R(リデュース・リユース・リサイクル)への取り組みは、リバースロジスティクスでよりよいサービスを提供するために重要な施策です。
たとえば、
Reduce(リデュース)
例)返品された商品で再販売、利用できないものを環境にやさしい廃棄物として処理
Reuse(リユース)
例)返品商品を再販可能なら在庫に戻し、素材だけ再利用可能なものは再利用修理。加工して再生、再販売する
Recycle(リサイクル)
例)顧客の商品をリアルな店舗や物流センターで回収してリサイクル
コスト削減やSDGsへの取り組みのため、リバースロジスティクスでは資源の有効利用、廃棄物の削減、環境への配慮が今後重要となるでしょう。
リバースロジスティクスの最適化で新しい価値の創造を!
これまで見てきたように、リバースロジスティクスとは単に消費者から返品・交換によって生産者へと物が還るだけの物流ではありません。顧客に寄り添った返品・交換システムに最適化することで顧客が定着化し、売り上げの向上が期待できる施策です。
さらに社会の潮流と連動し環境に優しい取り組みや、無駄なコストと廃棄を減らし再利用を促すシステムを構築することで、競合他社との差別化にもなるでしょう。
富士ロジテックホールディングスでは、顧客の購買後体験を最適化する「返品・交換物流フルフィルメントサービス」を提供しています。
顧客の返品・交換の受付から受け入れ、発送・在庫管理まで返品と交換に関する業務を自動化しリピート顧客を増やすことにより、売り上げの向上をお手伝いします。
リバースロジスティクスについて詳しくご相談したいかたは、まずは無料のお問い合わせからご連絡ください。
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ライター
オガミキヨ
国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
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