田中なお
田中なお

物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

返品・交換の物流構築が売上に繋がるワケ!顧客体験向上のメリットを解説

物流代行 発送代行 返品・交換


顧客にとって返品・交換が可能であることが、ECサイト選定のポイントになりつつあります。この風潮に適応できないECサイト・通販事業は、売上が上がらなくなる可能性もあるでしょう。本稿では物流における返品・交換の概要と返品・交換の工程で顧客体験を向上させるメリットについて解説します。
EC先進国のアメリカでは返品・交換が既に当たり前です。マイナスと捉えず、顧客体験の向上を目的としてプラスに対応することが売上向上に繋がります。

返品・交換とは?



返品とは、顧客から商品が返品・回収され、製造者または事業者に戻る流通の工程を指します。また返品と同時に新しい商品を希望され納品するケースを、返品・交換と呼ぶこともあるでしょう。

返品・交換の工程は物流用語で「静脈物流」や「リバースロジスティクス」とも呼ばれ、リサイクルや顧客体験向上の観点から近年注目が高まっています。

返品・交換の理由



返品・交換が希望される理由は様々ですが、大きく見て顧客側に起因する理由と販売者側に起因する理由の2つに分かれます。

販売者側に起因する返品理由

販売者側に起因する返品は主に以下のような理由が考えられます。
・商品に外装破損があった
・誤出荷・誤配した
・商品そのものに不具合が発見された(故障や賞味期限切れ)
販売元の責任以外にも、顧客に納品されるまでに携わった保管倉庫や運送会社の責による返品もあるでしょう。

いずれにしても、顧客にとってみれば欲しい商品がスムーズに手に入らなかった事実だけが残ります。返品・交換にストレスがかからないよう十分に配慮し、丁寧かつ迅速に対応しなければなりません。

顧客に起因する返品理由

顧客側に起因する返品理由もあります。
・思っていた色や雰囲気と違った
・サイズが合わなかった
・誤って重複して注文した

顧客側の都合とはいえ、ECサイトの内の表記の仕方や商品の説明不足により、誤った購入に導いてしまった可能性も考えなくてはなりません。柔軟に対応しつつ、サイトの仕様に改善の余地はないか検討するのがよいでしょう。


EC・通販の返品率



EC・通販事業の返品率は国内外に大きく差があります。
株式会社エルテックスが全国300社に行った「通信販売事業関与者の実態調査2021」の調査によると、EC・通販事業における返品率は5〜10%ボリュームゾーンであり、5%以上と答えた企業が全体の過半数を占める結果となりました。一方でForbesによると、米国におけるEC返品率は25〜40%が標準とされています。

ところが国内においても例外はあり「自宅で試着、自由に返品」をコンセプトに謳うファッション通販会社「LOCOND(ロコンド)」の2020年の返品率は22%。米国の標準値に近い割合です。

返品率の差は「理由に関わらず返品・交換を当たり前としているかどうか」の企業側のポリシーが影響しているとも考察できるでしょう。

EC物流における返品・交換処理のフロー



EC物流において返品・交換が当たり前になってきたとはいえ 、手続きが煩雑で人的コストがかかりやすい工程です。フローを明確にし、効率的に処理を行わなければなりません。
返品・交換処理のフローは以下の通りです。

1.返品・交換申し出への対応

返品理由・内容の確認。要望の聞き取りと場合によっては謝罪を行います。

2.商品の引き取り

顧客から郵送、もしくはEC事業者側で商品引き取りの配送手配を行います。
販売者側に起因する返品の場合、顧客手配でも着払い伝票などで返送料を負担するのが一般的です。

3.商品の検品

返品された商品を外観から検品。商品によっては通電検査などを行う場合もあるでしょう。傷や使用感により良品・不良品の仕分けし、再販売可能かどうかの判断を行います。

4.返金もしくは交換品の発送

顧客の要望に基づき、返金であれば返金方法の確認と社内経理の処理。交換を要望の際は商品の発送を行います。

返品・交換物流がもたらす顧客体験向上のメリット3つ



ではなぜ面倒で煩雑な工程にリソースを割いてまで、返品・交換の顧客体験を向上させなければならないのでしょうか。ここでは、返品・交換の対応がもらたすメリットを3つ解説します。

迅速な返品対応で固定ファンの獲得

メリットの1つ目は固定ファンの獲得に繋がる点です。試着や手にとって試す購入体験ができないeコマースでは「万が一、買い物に失敗しても返品対応してもらえるから安心」「とりあえず買ってみよう」と安心して気軽に購入できる仕組み作りが欠かせません。

万が一、理由が顧客側にあったとしても、返品・交換対応を快く迅速に行えば顧客の満足度は向上します。インターネット上では少しの不安・不満があれば、検索ですぐに競合他社の購入先に切り替えられてしまうのです。商品の質や価格競争だけでなく、顧客中心主義を貫くことが、リピート購入の後押しをします。

返品・交換に対する好意的なレビューが新規顧客の開拓に繋がる

時には返品・交換の対応に好意的なレビュー・口コミをもらえることもあるでしょう。メリットの2つ目はこういった良い口コミが新規顧客の開拓に繋がることです。

ある調査※では口コミが購入決定に影響すると答えた人が全体の50.6%。良い口コミによる購入決定の経験が一度でもある人が全体の98.4%。また一方で悪い口コミによる購入辞退の決定経験がある人は全体の98%にも及ぶという結果が出ています。販売者側に返品の理由があった場合には、悪い口コミがつきやすいため、慎重な対応が必要です。口コミの影響は多大であり、顧客の獲得・顧客離れ、どちらへの影響も大きいといえるでしょう。

株式会社KDDIエボルバ「EC・通販ユーザー動向調査レポート“速報版”」

再購入の提案で顧客を離さない

返品対応で顧客満足度を上げつつ、やり方によっては再購入も促せるのが3つ目のメリットです。返品理由をデータとして蓄積し、パーソナライズ化した提案ができれば再購入の可能性は高くなります。
例えばシルエットが気に入らずTシャツが返品されたのであれば、別のTシャツ再購入時には15%OFFになる、といった具合のクーポンを返金時に発行するのです。仕組み構築は必要になりますが、損失を回収しながらも、顧客との長期的な関係を維持するのに有効といえるでしょう。

面倒な返品・交換は物流のアウトソーシングで解決!



返品・交換はますますニーズが高まっていくでしょう。なるべくコストやリソースをかけず、返品・交換に適切に対応する物流の仕組み構築が必須となるのは間違いありません。

これからのフルフィルメントセンター(通販物流)は、購入体験できるサービスを拡張していかなければなりません。返品・交換物流のプラットフォームを構築している富士ロジテックは対応できます。リピーターの獲得、ひいては売上向上のために積極的に返品・交換の課題に取り組んでいきましょう。

富士ロジテックのフルフィルメントサービス詳細は以下をご覧ください。
https://fujilogi.net/pages/returns

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ライター

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