オガミキヨ
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国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。

EC物流の仕組みとは?課題・改善策も分かりやすく解説!

物流代行 発送代行

EC物流という用語は聞いたことがあるものの、

「具体的にどこまでの業務が含まれるのか」

「どのような課題を抱えているのだろう」

という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事ではEC需要の高まりとともに重要視されているEC物流について、仕組みから今後の課題・改善策までをまとめて解説します。

EC物流とは仕入れから配送までを指す

EC物流とは、EC(Electronic Commerce)におけるネット通販やネットショップに関する物流全般をさすことばです。

具体的には、商品の仕入れ、入庫〜顧客への配送までのプロセス全体が含まれます。

この一連の流れを「フルフィルメント」とよび、ネット通販事業者のなかには、EC物流のみを外注している企業が数多く存在します。

アフターコロナで物流の市場規模は拡大

コロナ禍の巣ごもり需要、非接触の買い物ニーズで年齢を問わずEC需要が高まりました。

これまでECを一度も利用したことがない消費者がスマホで買い物をするきっかけとなり、EC通販は買い物の新常識になっています。アフターコロナでもECの市場規模が拡大を続けている一因です。

これにともない宅配業者の取扱物量が右肩上がりになっているのが、以下のグラフからも見てとれます。

引用元:経済産業省 「電子商取引に関する市場調査の結果

引用元:国土交通省「令和3年度 宅配便取り扱い実績について」

EC物流業務の仕組みと流れ

EC物流業務のおおまかな流れは以下の通りです。

  1. 仕入れ・入庫
  2. 検品・保管
  3. 流通加工
  4. ピッキング
  5. 梱包
  6. 出荷

それぞれの流れと仕組みを詳しく見ていきましょう。

仕入れ・入庫

まず仕入れた商品を入庫するところから、物流業務が始まります。

ECとひとくちに言っても、商品は化粧品などのごく小さなものから家具などの大型の商品まで多岐に渡ります。そのため入庫形態はダンボール1個からコンテナ単位にいたるまでさまざまです。

検品・保管

商品を正しく管理するためには、まず入庫後の品名や数量、ケースに応じて品質まで検品する作業が必要です。バーコードリーダーやWMS(在庫管理システム)を用いて、確実性のある情報を捉え、記録する仕組みを作ります。

その後、商品を棚などに配置します。品質管理がしっかりおこなえるよう紛失や破損が起こらない状態を確保しながら保管することが重要です。

流通加工

EC物流では、流通加工の作業がおこなわれるケースが少なくありません。

ラベルや値札の貼り付けのほか、商品に付加価値をつけるような作業も流通加工に含まれます。

たとえば商品と一緒にサンプルやサンクスレターを同梱したり、いくつかの商品をアソートしたりする作業などが該当します。ギフトラッピングも流通加工の一つです。

ピッキング

受注が入ると、棚に保管しておいた商品をピッキングします。

出荷指示に基づき正確かつスピーディーに商品を集めることが、誤配などの返送による余分なコストの削減にも繋がります。昨今では、ロボットを活用したピッキングの仕組み化も進んでいます。

梱包

輸送中に商品が破損しないよう、緩衝材などで保護して梱包をおこないます。

保護する目的以外にも、購入体験を重視するサブスクリプションサービスでは梱包資材自体をカスタマイズし付加価値をつけることもあります。

出荷

梱包が終わったら、商品を発注者に向けて出荷します。

この際、宅配業者のシステムに注文ごとの配送先を登録し、送り状を添付のうえ宅配業者に引き渡すのが一般的です。即日出荷の注文が多いEC業界では、宅配業者の集荷時間までに迅速に出荷準備を整えることが求められます。

EC物流4つの特徴

EC物流の特徴で代表的なものを、以下4つの項目に分けて解説します。

  1. 個人宛ての荷物が中心
  2. アイテム数が多い
  3. 梱包や同梱物のカスタマイズが必要
  4. 返品が発生しやすい

個人宛ての荷物が中心

EC物流の1つ目の特徴は、個人宛の荷物が中心である点です。

小口配送の増加にともない再配達が増え、業務の非効率性を生み出す原因にもなっています。

トラックの積載効率が低下するのも、問題の一つです。

また個人のEC需要の高まりにともない、ポスト投函やコンビニ、宅配ロッカー、置き配といった受け取り場所の増加も特徴としてあげられます。

アイテム数が多い

EC物流における2つ目の特徴は、アイテム数が多いことです。

前述のようにEC物流は基本的に個人宛てに商品を配送するため、品目(SKU)が多いのに対し出荷数は少ないのが特徴です。

そのため、商品の在庫管理や出荷に伴う作業が煩雑になります。

梱包や同梱物のカスタマイズが必要

EC物流の3つ目の特徴は、梱包や同梱物のカスタマイズにより付加価値をつける作業が必要な傾向にある点です。

ショップ名を印刷したりメッセージを手書きしたりといった、特別なオリジナルデザインの梱包資材は消費者の記憶に残りやすく再購入のきっかけにもなります。サンプルやパンフレットの同梱物により、他の商品への興味を促すこともリピーター獲得のための重要な施策です。

オリジナル梱包資材の準備やCRM(顧客関係管理)に応じた同梱物を封入する作業は、EC物流特有です。

返品が発生しやすい

EC物流の特徴、4つ目は返品が発生しやすい点です。

EC需要の高まりと競争の激化により、返品を受け入れるのも顧客獲得のために重要な施策と考える事業者が増えました。それにより顧客の返品率が一定数発生し、ある調査ではEC通販の返品率は約5〜10%という結果が出ています。

参照元:PR TIMES 「通信販売調査レポート2021」

ストレスのない返品サービスは、消費者からのショップの口コミでも高く評価され、購買を決める大きな要素でもあります。今後のEC物流では、返品対応までが業務に含まれるのが主流だと考えてよいでしょう。

<関連記事>「EC 物流倉庫」(公開予定)

EC物流における課題

ここからは、EC物流における以下4つの課題についてご説明します。

  1. オムニチャネル対応を含む在庫の管理が複雑
  2. 物流コストが上昇し続けている
  3. 物流ミスがEC事業者の評価に直結する
  4. 災害によって発送が止まるリスクがある

オムニチャネル対応を含む在庫の管理が複雑

EC物流の課題の1つ目としてお伝えするのが、在庫管理が複雑な点です。

個人向けのEC物流では、商品の種類が多く小ロット販売なので在庫の管理が複雑です。

とくにオムニチャネルを採用しているEC事業者は、在庫管理がより複雑化します。オムニチャネルとは、ECサイトやリアル店舗などさまざまなチャネルをつないでどこからでも垣根がなく購入できる仕組みのこと。たとえばECサイトで検索した商品を店舗で決済し、自宅で受け取るのも可能です。
そのためネットショップ、リアル店舗、物流センターにある在庫をすべてリアルタイムで把握する必要があります。

物流コストが上昇し続けている

EC物流における2つ目の課題は、物流コストの上昇です。

原因はEC需要が急激に増えたことによるドライバー不足です。

ほかにも近年のガソリン価格の高騰、小口配送が多いことによる積載効率の低下も物流コスト上昇の原因としてあげられます。

物流ミスがEC事業者の評価に直結する

EC物流の課題、3つ目は物流でのミスがEC事業者の評価を下げてしまう点です。

EC通販では、購入者が物流の工程を含めて事業者を口コミなどで評価します。

物流で誤配や遅配などのミスを起こすと、事業者のサービス全体に対する評価を下げる結果になるので細心の注意が必要です。

災害によって発送が止まるリスクがある

EC物流における課題として最後にお伝えするのが、災害によって発送が止まるリスクについてです。

近年、地震や水害が頻発しています。輸送経路の遮断や倉庫自体の機能の停止といった原因で発送が止まるリスクも高まりました。

EC物流でも、こうした災害に備えるため課題感を持って取り組む姿勢が求められています。

EC物流を改善するための対策法

前述したEC物流が抱える課題に対して、対策法を以下4つに分けて解説します。

  1. 物流管理システムを導入
  2. 外注により人件費・物流コストを削減
  3. 業務を細分化してミスを防ぐ
  4. 拠点を増やしてリスクを分散する

倉庫管理システムを導入

EC物流の改善対策1つ目は、在庫管理システムの導入です。

倉庫管理システムの導入で、在庫の管理が一元化できます。受注と在庫管理のデータの一元化によりリアルタイムで店舗やECサイトの在庫情報が把握できるため、欠品ミスを防げます。また顧客情報と受注〜出荷も一元管理できるシステムもあります。人の手が介在しないため、誤配送を減らせるのもメリットの一つです。さらに倉庫管理をデジタル化することで作業コストの見える化、削減もできます。

受注から出荷までを包括できる物流管理システムの代表的なものに「ロジレス」があります。詳しく知りたい方は、「【ロジレス連携倉庫が語る】システム活用によるEC受注〜出荷自動化のススメ」の記事もご覧ください。

外注により人件費・物流コストを削減

EC物流の改善対策として2つ目にお伝えするのが外注による人件費と物流コストの削減です。

物流コストを削減する方法として、物流の作業を外注する選択肢もあります。

物流のアウトソーシングサービスでは、宅配業者の運賃表が安く設定されています。さまざまな顧客を抱え、大口の物量を確保できるからです。外注により、割安の運賃表の恩恵を受けられます。また商品保管倉庫、人材なども自社で確保する必要がなく、結果的にコスト削減が可能です。

EC物流アウトソーシングのメリット・デメリット!おすすめ企業3選も紹介」で外注について詳しく解説しています。

業務を細分化してミスを防ぐ

EC物流の改善対策4つ目は、業務の細分化による人的ミスの防止です。

作業プロセスを細分化すれば、各作業が単純化、定常化できます。
結果、それぞれの工程でミスの発生率が減少します。

拠点を増やしてリスク分散する

EC物流の改善対策として最後にお伝えするのが、拠点を増やすことでリスクを分散する方法です。

災害が多い日本では、物流の拠点を関東や関西で分けるなどしてリスクを分散させるのも得策です。

全国発送に対応する事業者なら、拠点を分けることで送料を削減できる可能性があります。場所によっては人件費の削減も可能なので、拠点を分けることでコストの削減効果も期待できるでしょう。

リソース不足にお悩みならEC物流の外注がおすすめ

自社でEC物流業務をおこなう上で、リソース不足や保管場所にお困りなら物流代行業者の利用もおすすめです。

物流のプロに業務を任せることでミスが減り、細やかなサービスが可能です。たとえば商品に付加価値(手書きメッセージ、丁寧で迅速な梱包・発送など)をつけられるので、競合と差別化できるメリットがあります。

EC物流の外注により生まれた時間を、商品計画や商品化計画(マーチャンダイズ)にかけることで業務の効率化も図れるでしょう。

富士ロジテックホールディングスでは物流管理システム「ロジレス」を導入し、顧客管理から在庫情報までを一元管理しています。

EC物流すべて、もしくは一部の業務だけでも柔軟に対応させていただきます。まずは、お気軽にご相談ください。

 

<関連記事>「ec物流 比較」(公開予定)

 

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