国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
クラウドファンディングにおいて、リターンは支援者の意思決定を後押しするものだといえます。
今回はリターンの種類や設計の秘訣を、実際の事例を交えて紹介します。リターン設計の秘訣を知り、プロジェクトを成功させましょう。
クラウドファンディングのリターンとは|成功を握る「お返し」
クラウドファンディングにおいて、リターンとは支援者が支援を決定するときの決め手になる重要な要素です。
リターンは支援者に対するお礼の意味を込めた「お返し」であると同時に、支援してもらうための最後のひと押しにもなります。支援者に喜んでもらえるもの、出資したくなるものを選ぶことが重要です。
支援者はプロジェクトを応援するのが目的なので、必要以上に高額なものでなくても構いません。ただし、なるべくプロジェクトに関連したものを選ぶのが、支援者が求めるものだといえるでしょう。
クラウドファンディングの基礎知識、種類やメリット・デメリットは「クラウドファンディングとは?意味や仕組み、6つの種類を簡単に解説」の記事で詳しく解説しています。
クラウドファンディングにおけるリターンの種類
クラウドファンディングにおけるリターンの種類は商品や食事券など有形のものから、イベント体験やセミナー参加券などの無形のものまでさまざまな形態があります。
ここからは、代表的なリターンの形態を以下8種類に分けて見ていきましょう。
- リターンの種類1.現品
- リターンの種類2.お礼の手紙・動画
- リターンの種類3.体験・経験
- リターンの種類4.クレジット
- リターンの種類5.イベント・講演会
- リターンの種類6.記念品
- リターンの種類7.チケット
- リターンの種類8.現金
リターンの種類1.現品
現品のリターンは、おもに購入型のクラウドファンディングに多い形態です。
たとえば、新商品の開発や海外から初仕入れする商品の支援をつのり、商品そのものをリターンとして提供するのもこの種類に当てはまります。
支援者には先行特典として、安価で購入できる権利や商品にオプションをつけるなどしてお得感を出すケースもよく見られます。
リターンの種類2.お礼の手紙・動画
おもに寄付型に多いのが、この形態です。
支援してもらった側は、お礼として手紙やメッセージ動画などを支援者にお返しし、感謝の意を表します。
動画はこのほかにも、起案者がプロジェクトの進行や制作風景を撮影したものを支援者限定で公開する場合なども含まれます。
リターンの種類3.体験・経験
体験・経験型では、農業体験や漁業体験など、プロジェクトに関する題材を実際に経験してみる権利がリターンになっているものが多いです。
たとえば、過疎化した島に滞在施設を作るプロジェクトで支援者に日帰り漁業体験をしてもらうリターンなどがこれに該当します。
リターンの種類4.クレジット
クレジットとは、たとえば映画制作を支援した場合、エンドロールに支援者や団体の名前を入れてもらえる権利などをいいます。
寄付型プロジェクトで、途上国の学校建設で教室の壁に名前を刻んでもらうリターンもあります。支援者にとってはサポートした記録が残り、特別感があるのが特徴です。
リターンの種類5.イベント・講演会
起案者が著名人や起業家などの場合は、イベント参加権や講演会への招待券などもリターンになります。
ミュージシャンやアイドルを支援する場合に、一緒にイベントに参加できる権利などもこれに該当するでしょう。
リターンの種類6.記念品
プロジェクトに関連するロゴなどを印刷したTシャツやキーホルダーなどの記念品も、リターンとして広く採用されています。
寄付型でも、ちょっとした記念品をリターンとして支援者に送るプロジェクトがあります。
リターンの種類7.チケット
施設利用の回数券やサービス券など、チケットのリターンもあります。
たとえば老舗ホテルを支援するプロジェクトで温泉・宿泊券をリターンとして設定する場合や、事業投資型で、関連するサービスの割引券が提供される場合もこれに該当するでしょう。
リターンの種類8.現金
事業投資型のクラウドファンディングでは、売り上げの出資額に応じて分配金がリターンとして支払われます。
また貸付型は、クラウドファンディング事業者がインターネット上で投資家から資金を集め企業に現金を貸し付ける形態です。
リターンのなしの寄付型クラウドファンディングもある
寄付型のクラウドファンディングは、基本的には寄付なのでリターンがありません。
おもに国際支援や食糧支援、医療支援、自然保護など社会的貢献度の高いクラウドファンディングとしてNPO法人、公益財団法人、自治体などが起案者になります。
寄付型でもプロジェクトによっては、お礼としてちょっとした記念品や手紙などがもらえる場合もあります。
クラウドファンディングのリターン相場はいくら?
クラウドファンディングのプラットフォーム「キャンプファイヤー」の調査によると、支援額は〜10,000円が最も多く全体の7割以上を占めています。
相場はあくまでも参考なので、実際にはプロジェクトの目標金額と支援者数のバランスを想定して決めるとよいでしょう。
画像出典:CAMPFIRE統計データ
クラウドファンディングの成功を握るリターン設計の秘訣
クラウドファンディングにおけるリターンの設計について、最低限おさえておきたいポイントを以下の通り3つ紹介します。
- 「松竹梅の法則」を活用した価格設定
- 写真とタイトルでリターンをわかりやすく提示
- リターンを複数用意
「松竹梅の法則」を活用した価格設定
リターンの価格設定は、3択で中間の選択肢にお得感のあるものを用意するのがポイントです。
「松竹梅の法則」とは、価格や質が異なる3つの選択肢(高いものから松→竹→梅)を用意した場合に、多数の人は中間の竹を選ぶ傾向にあるという法則です。その比率は松:竹:梅=2:5:3ともいわれています。
高い商品は失敗したときのダメージが大きく、安い商品はあと少し出せば質の良いものが買えるという心理が働くためです。もし選択肢が二択しかない場合はどちらも極端な選択肢になるので、購入自体をあきらめる人が増えてしまいます。
リターンは二択よりも、価格や質が異なる三択で設定するのがより効果的です。
写真とタイトルでリターンをわかりやすく提示
リターンの内容は購入者が最後に購入を決める際に見るので、タイトルと画像で視覚的にわかりやすく見せることがとても重要です。
リターンの画像は基本的に小さいので、数字、付属品、大きさがイメージできるサイズなどの情報も忘れずに入れておくとよいでしょう。
メインの画像ばかりに注力するとリターンの画像がおろそかになることもあるので、注意が必要です。
リターンは複数用意
クラウドファンディングのリターンは、複数用意するのが効果的ですが選択肢は多くても10〜20通りほどが最適でしょう。
CAMPFIREの調査によると、リターンの数が5個以下の場合は目標到達率が約30%だった結果に対し、21個以上のリターンを用意した場合には約60%に達しました。2倍近く高い成果です。
一方でマーケティングの分野でよく知られている実験に「ジャムの実験」というものがあります。
スーパーマーケットのジャムの試食販売で、6種類のジャムと24種類のジャムを出したところ、6種類の方がよく売れるという結果が出ました。このことから分かるのは、人は選択肢が多すぎると選ぶ意欲が薄れてしまうということです。
クラウドファンディングのリターンにも同じことがいえます。年齢層や居住地などニーズに合わせた選択肢が必要なため「ジャムの実験」よりは必要数が増えますが、多すぎず、ほどよい数で複数のリターンを設けることが成功の秘訣です。
「クラウドファンディング やり方」の記事では、クラウドファンディングの起案者として行うべき手順の全体像を解説しています。あわせて読んでみてください。
画像出典:CAMPFIRE統計データ
キンコン西野氏のクラウドファンディングから見るリターン事例
クラウドファンディングといえば、漫才コンビ「キング・コング」のお笑いタレントであり、絵本作家としても活動する西野亮廣さんが2016年に実施した「えんとつ町のプペル展を入場無料にする」プロジェクトが話題となりました。
このプロジェクトでは、国内のクラファン史上(2016年11月時点)最高の6,257人から46,373,152円の支援が集まり、無料開催が実現したのです。
その成功事例から、実際にどんなリターンが用意されていたのかを一部抜粋して紹介します。
- 朗読動画【寄付金3,000円】
- 作者サイン入り版画【寄付金35,000円】
- LED内蔵の光る絵【寄付金110,000円】
- トークショー付き展覧会を開催できる権利【300,000円】
朗読動画【寄付金3,000円】
動画の事例としてご紹介するのが、西野さん本人が朗読する動画のリターンです。
動画をYouTube上に限定公開し、支援者限定がURLを告知され閲覧する権利を得られるというもの。絵本と合わせて楽しめる内容で使いやすく価格も選びやすいので、支援者全体の約6分の1となる1,019人の支援者がこちらを選択しています。
作者サイン入り版画【寄付金35,000円】
こちらは現品リターンの事例です。
絵本に登場するキャラクターや風景などのイラストを、作者のサイン入りの*ジークレー版画にしてリターンにしています。
イラストは絵本のいくつかの選択肢から選べ、全イラスト合計で84人が選択しています。
*ジークレー版画とは:デジタルデータを版画として起こす、150〜250年もの耐久性を持つ上質なプリント。
LED内蔵の光る絵【寄付金110,000円】
こちらは現品の事例ですが、前述の版画に比べると高額になるので支援者は少なめの7人でした。
好きなイラストにLEDが内蔵された「光る絵」を購入できるリターンで、サイズは約30cm✕30cmと、展示されているものよりは小さめです。
トークショー付き展覧会を開催できる権利【300,000円】
こちらはイベントがリターンになっている事例で、絵本「えんとつ町のプペル展」を自分の好きな場所で開催できる権利に、西野亮廣のトークショーがつくというもの。
43人が支援しているので最低でも43箇所で開催が可能だということになります。
展示会の開催を直接的に支援できるリターンです。
リターンの設計の注意点
リターンを設計する際には、コスト計算が重要です。
リターンにかけるコストは、プロジェクトに支障のでない範囲で設定する必要があります。
商品の生産は、発注数が少ない場合は単価が高くなり、多い場合は単価が安くなるのが一般的です。支援者数が予想を下回ると集まる支援金が少なくなり、リターンのコストだけで支援金がなくなってしまうこともあるでしょう。
そうなると、プロジェクト遂行のために使える金額がリターンのコストに圧迫されてしまいます。支援者の多くは、支援金をプロジェクトに有意義に使って欲しいと考えるので、この結果ではコストが無駄に使われたと受け取られるかもしれません。
支援者に求められていないようなコストの高いリターンを設定しないよう、注意しましょう。
またリターンを送付する際の送料も支援金を圧迫する一因となります。たとえばポストに投函できるものを設定するなど、工夫をして送料を抑えられないかどうか検討しましょう。
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クラウドファンディングは魅力的なリターンが成功の鍵!
クラウドファンディングにおいて、支援者にとって魅力的なリターンを設定することが成功の鍵だといえるでしょう。
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ライター
オガミキヨ
国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
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