物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
近年ECサイトの普及により、物流業界の需要拡大が加速している状況です。市場が拡大傾向にあるものの、人手不足やコスト増加などの影響もあり、需要に対して供給が追いついていないことが課題に挙げられます。
物流業界において輸配送にかかるコストは全体の50~60%を占めています。経営を存続させるうえでコスト削減は企業の重要課題の一つです。コスト削減や人手不足を改善するためには、物流の効率化が有効であり、その手段の一つとして物流拠点の最適化が注目されています。
本稿では、物流拠点を最適化する方法を解説し、ポイント・取り組み事例を紹介します。
物流拠点を最適化する方法
物流拠点の最適化には、物流拠点の立地を見直すことが第一歩となります。最適化ができれば、輸配送コストの削減や輸送距離の短縮がかないます。
しかし、残念ながら現時点では最適化を図るための定量的な分析方法や判断基準が確立されておらず、根拠が曖昧であるのが実情です。
そのため、実業務に即した物流拠点を見つけるために、輸配送コストや必要在庫量、キャパシティ、オペレーションなどを加味した「輸配送ネットワークの設計」が重要視されています。輸配送ネットワークの決定ができれば、より精度の高い試算が可能となるためです。
物流拠点を最適化する手段
物流拠点を最適化する具体的な手段は、拠点を「集約する方法」と「分散する方法」があります。
たとえば、売上が低迷している企業が複数拠点を保有する場合で考えてみましょう。
商品が売れないと、各倉庫の利用率や稼働率、車両積載率が低下します。複数拠点あることで、倉庫利用料や保管料、車両手配などで発生する運用コストやリソースが大きな負担となり、経営を圧迫するおそれがあります。
こうしたケースの場合、拠点を集約することで無駄なコストの削減が期待できるでしょう。
ただし、拠点を集約する場合も注意が必要です。どの拠点を廃止するか、すべての拠点を廃止して新たに拠点を建設すべきかなど、拠点を集約するうえでもさまざまなパターンを想定する必要があるためです。
単純に拠点を「増やす」「減らす」だけでは、物流拠点の最適化・効率化にはつながらないため、注意しましょう。
物流拠点の最適化が必要な理由
キャパシティを超える物量が日々山積みになっている物流業界は、すでに限界に近い状況です。そのため、今後物流業務を維持・継続していくためには、より効率的な物流の構築が、大きな課題となっています。
さらに2024年より、自動車運転業務における時間外労働の上限を規制する「働き方改革関連法」が運送業界に適用される予定です。労働時間が減ることで、1人のドライバーが運べる荷物数の減少や長距離輸送ができなくなり「荷物が届かない」など、サービスの質の低下が懸念されています。
効率的な輸配送を行うための改善が必要であり、人手不足や物流コストの課題を改善できる「物流拠点の最適化」が重要視されているのです。
<関連記事>「2024年問題とは?物流業界の課題に挑む働き方改革とその対応策を解説」
物流拠点最適化のポイント
ここからは、実際に物流拠点の最適化を行う際のポイントを解説します。
- 物流サービスの軸を決定する
- 拠点候補の洗い出し
1.物流サービスの軸を決定する
物流戦略は拠点配置によって骨組みが決定されると言われています。
物流拠点を最適化するためには、自社の物流サービスの顧客分布を分析する必要があります。商品の納品先や出荷条件が定まっていない場合、どこの拠点が適切なのか判断できないためです。
自社の物流サービス軸が決定できるよう、以下の決定要素を定めることが大切です。
<軸の決定要素>
● リードタイム(いつ届けるのか) ● 顧客の分布 (どこに届けるのか) ● 物量 (どのくらい輸送するのか) ● 配送網 (誰が輸送するのか) ● 付帯条件 (どのように輸送するのか) |
2.拠点候補の洗い出し
物流サービスの軸を決定することによって、物流拠点の配置エリアやカバーできる顧客数、物流倉庫の規模など、ある程度の配置場所の想定が可能になります。軸の決定と同時に物流拠点が保有すべき機能も検討し、拠点候補を洗い出すことで現実に則した拠点が見つけやすくなります。
また、今後の倉庫作業員の不足を見越して、省人化できるロボットの導入の決定なども事前に検討しておくと、倉庫内のスペースに悩むことなくスムーズに導入できるでしょう。
最適な拠点配置は、物流のサービス軸によって異なり、絶対の解はありません。自社サービスに合ったエリアを選定できるようシミュレーションを行い、最適な拠点を見つけることが大切です。
また拠点を決定するうえでは、自社倉庫の保有エリアだけではなく、保有していないエリアの物流倉庫に保管業務や出荷業務を委託する手段も選択肢の一つです。
集約型の物流拠点戦略メリット・デメリット
物流拠点戦略の集約型とは、複数ある物流拠点を1か所に集約させる方法のことです。保管料や賃料などの固定費が1つになるため、コストを抑えられる戦略の一つです。
ここからは、集約型の物流拠点戦略のメリット・デメリットを解説します。
【メリット】運用コストの削減
拠点を集約した場合、運用コスト削減につながるメリットがあります。複数ある拠点を一つの拠点にまとめることで、人件費や賃料などの設備にかかるコストも集約できます。
毎月発生する固定費を抑えられるため、最小限のコストで物流業務を行えるでしょう。
【メリット】配達効率の向上
拠点の集約により、消費者から注文された商品の発注~納品までの一連の作業を1つの拠点で行えるため、配送効率向上が期待できます。
分散型と比べると在庫商品を転送する必要がなく、スムーズな出荷がかないます。
また、商品の在庫管理も容易になり、ミスなく在庫管理が行えるため、在庫不足などによる販売機会損失も防げるでしょう。
【デメリット】リスク分散が難しい
集約型の物流戦略はコスト削減や効率化などのメリットが大きいものの、リスク分散が難しい点がデメリットに挙げられます。
拠点を1か所にまとめるため、自然災害などによる影響で、物流拠点が機能しなくなった際に、対処方法を用意していなかった場合、物流業務が停止してしまうリスクがあります。災害の規模によっては、経営が成り立たなくなることも。
拠点を集約する場合は、あらゆるリスクを想定し、対策を事前に決定しておくことが大切です。
分散型の物流拠点戦略メリット・デメリット
分散型の物流拠点戦略とは、複数か所に拠点を配置させる戦略を指します。リードタイムの短縮やリスク分散を図れることが特徴です。
ここからは、分散型の物流拠点戦略のメリット・デメリットを具体的に解説します。
【メリット】物流コストの削減
複数拠点を設置することにより、注文者の住所により近い拠点から発送が可能になるため、物流コストが抑えられるメリットがあります。
たとえば、物流拠点が関東のみの企業が関西地方に荷物を届ける場合、関東から関西まで荷物を運ぶ人件費などの輸送費用が発生します。関西に拠点を保有する企業の場合は、関西の物流倉庫より発送できるため、その分のコスト削減が可能です。
ただし、拠点間の在庫調整が必要です。横持ち輸送にコストがかかる点は考慮しましょう。
【メリット】リスクの分散ができる
分散型の物流拠点戦略には、災害などによって拠点が稼働できなくなった場合に、リスクが分散できるメリットがあります。
物流拠点が集約されている場合、物流業務を継続できない事態が起こったときに、対処が難しくなります。業務が機能しなくなった場合、経営が続けられなくなり経営破綻に陥るリスクも。
複数拠点あれば、拠点の1つが業務停止した場合も、他の拠点で業務のカバーが可能です。
【デメリット】リソース負担の増加
拠点を分散した場合、リソース負担が増加するデメリットも存在します。拠点を増やすと、その拠点が運営できるよう人員の確保や設備投資、メンテナンス費用などさまざまなコストが発生します。
また、拠点ごとに在庫管理が必要となるため、リソース負担は1拠点よりも増加するでしょう。分散型の物流拠点戦略を取り入れる場合は、コスト・リソース負担がどの程度発生するのかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。
物流拠点の見直し事例
ここからは、実際に行われた見直し事例を3つ紹介します。
- 地方都市に拠点変更
- 東西分散拠点化
- 出荷倉庫の統合化
1.地方都市に拠点変更
日本の人口は、関東~関西までの距離に約70%が集中しています。全国に商品を発送する場合、日本の中心地点である東海地方に拠点を集約させると配送コストの削減が期待できます。納品リードタイムも東海地方であれば、翌日配送エリアは関東・関西とほとんど変わらずに運用可能です。
さらに配送コストだけでなく、立地にもメリットがあります。都心部の場合、坪単価が高く、保管倉庫の規模感によっては毎月の保管コストが高くなります。
地方都市であれば、都心部に比べて坪単価が安い傾向にあり、保管コスト削減が期待できるでしょう。
2.東西分散拠点化
物流拠点を東西に分けて配置する分散拠点化も有効な手段とされています。配送料の削減だけでなく、翌日配達エリアの拡大により即日配達が可能になった例も。
さらに、拠点を分散することで地震や台風などによる自然災害のBCP対策にも有効です。BCP対策とは、緊急事態が起こった際に、企業が事業を継続する手段を決定しておくことを指します。
拠点を増やすことで保管料や賃料などのコスト増加はあるものの、出荷件数の規模感によっては、出荷量に応じて割引が受けられるメリットもあります。結果的に配送料が抑えられるため、全体の物流コストを抑えられるでしょう。
3.出荷倉庫の統合化
BtoB・BtoCの出荷対応倉庫を分けている場合、在庫管理や出荷指示などの日常業務が煩雑化し、物流効率が低下してしまうことも。出荷倉庫を統合することで、効率化が図れた例があります。
在庫保管場所が1か所になるため、在庫管理が容易になるだけでなく、保管スペースやコスト削減にもつながります。
海外輸送を扱っているEC事業者様の場合も、国内と海外を同時に対応できる物流倉庫を選択することで、同様のメリットを享受できるでしょう。
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物流拠点の最適化は、2024年問題を乗り越える手段の一つでもあります。物流拠点の最適化によって、コスト削減や配達効率の向上が目指せます。物流拠点を最適化するためには、自社の物流サービス軸を定めて、適切な戦略の実践が大切です。
富士ロジテックホールディングスでは、コスト削減とリスク分散が実現できる二拠点化支援サービスを提供しています。現状の課題をヒアリングしたうえで、最適なプランを提案し、効率のよい物流サービスを確立するサポートを行います。
拠点配置に悩むEC事業者様は、まずはお気軽にご相談ください。
<関連記事>「サプライチェーンとは」
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ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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