東ゆずほ
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アメリカ留学の経験を活かし、貿易事務員として9年間従事。商社・メーカー・フォワーダー・通関業者にて輸出入業務を経験。現在はIT系企業にて営業サポートとして働きながら複業ライターとして活動中。

コールドチェーンとは?3つのメリットと課題を徹底解説【市場規模は拡大傾向】

冷凍・冷蔵物流

コールドチェーンとは?3つのメリットと課題を徹底解説【市場規模は拡大傾向】

商品が生産されてから消費者の手に届くまで、一定の温度を保つことにより品質を維持するコールドチェーン。高齢化や独身世帯の増加、コロナによる巣ごもり需要などが背中を押し、市場は拡大しています。

一般社団法人日本冷凍食品協会によると、2012年〜2022年の間に増えた冷凍食品の国内生産額は約1,200億円以上でした。冷蔵・冷凍技術や物流技術の進化により、国内だけでなく世界的な市場規模の拡大が見込まれています。

本記事では、そんなコールドチェーンの仕組みやメリット、課題について詳しく解説します。コールドチェーンを支えている企業についても説明していますので、温度管理が必要な商品を取り扱っている方は参考にしてみてください。

コールドチェーンとは低温物流のこと

コールドチェーンとは低温物流のこと

コールドチェーンとは、一貫して低温を保持することで冷凍・冷蔵貨物の品質を保ったまま商品を消費者に届けるシステムです。

各物流工程をチェーンでつなげるように低温状態を保ち、貨物を流通させるため、コールドチェーンと呼ばれています。また、「低温ロジスティクス」や「生鮮SCM(サプライチェーン・マネジメント)」とも言われています。

コールドチェーンで運ばれる荷物は、冷凍食品・生鮮食品だけでなく、温度管理を必要とする医薬品や電子部品も対象です。

コールドチェーンの市場規模と重要性

コールドチェーンの市場規模と重要性

コールドチェーンの技術がなければ、生鮮食品や医薬品などの温度管理を必須とするモノは、限られたエリアにしか流通できません。

人口減少が叫ばれている国内において、今後の発展を懸念する方もいるかもしれませんが、コールドチェーンの市場規模は拡大傾向にあります。

一般社団法人日本冷凍食品協会の統計データによると、冷凍食品の国内生産量と国民一人当たりの消費量は増加し続けています。

<冷凍食品の国内生産と消費データ>

 

国内生産量

国民一人当たりの消費量

2020年

1,551,213トン

22.6kg

2021年

1,587,091トン

23.1kg

2022年

1,598,808トン

23.9kg

参考:般社団法人日本冷凍食品協会の国内消費量推移

日本人の人口は2020年〜2022年の間に128万人も減少していますが、独身や高齢者世帯が増えているため、冷凍食品やチルド食品の需要が増加傾向です。

買い物に行くことなく新鮮な刺身や生野菜を手に入れられる宅配需要も高まっています。また、ASEAN諸国などの海外においてもニーズが増大していることから、今後のコールドチェーンの市場は成長が見込まれています。

コールドチェーンの3つの仕組み

コールドチェーンの3つの仕組み

コールドチェーンの主な物流プロセスは以下のとおりです。

  1. 生産・加工
  2. 流通
  3. 消費

一つずつ詳しく見ていきましょう。

1.生産・加工

コールドチェーンは、生産段階から商品の特性に合わせて温度管理が行われます。農産物や水産物の鮮度を保つための適切な温度は、商品によって異なります。

たとえば、果物や野菜は低温状態にする前に「予冷」することで鮮度が保たれ、肉類は解凍時にうま味を逃さないために急速冷凍されます。それぞれの商品に適した加工処理を行うことが重要です。

2.流通

低温処理が完了すると、商品の輸送を行います。コールドチェーンにおける輸送は、商品の品質に大きく影響するため最重要プロセスです。

商品をトラックへ運んだり、遠方に輸送したりする間の温度管理を徹底する技術と設備が必要となります。外部委託する際は信頼性が高く、品質を確保できる業者に委託しましょう。

3.消費

コールドチェーンの最後のプロセスは消費です。消費者に商品が届くまでが消費ではなく、実際に消費されるまでが重要な過程です。

商品が消費者の手に渡っても、すぐに消費されない可能性があります。そのため、安全に消費されるための工夫が欠かせません。商品の劣化を防ぐ加工や、冷蔵庫や冷凍庫で保管がしやすい包装が工夫として考えられます。

<関連記事>「食品ECで失敗しないコツとは?課題と成功事例を紹介!

コールドチェーンの3つのメリット

コールドチェーンの3つのメリット

冷凍・冷蔵貨物を温度管理することにより鮮度を保ち、保存期間を延ばせるコールドチェーンのメリットは以下の3つです。

  1. 食品ロスの削減
  2. 遠方への輸送を実現
  3. 医療インフラの整備

一つずつ詳しく説明します。

1.食品ロスの削減

コールドチェーンのメリットは、食品ロスの削減に大きく貢献していることです。商品はそれぞれ品質を保つための温度帯が厳密に定められているため、低温状態を保つことで賞味期限や消費期限を延長できます。

実際に、各食品会社もコールドチェーン機能を活用し、食品ロスの削減に努めています。食品ロスの削減ができれば、廃棄によるコストカットや、企業のイメージアップが期待できるでしょう。

2.遠方への輸送を実現

コールドチェーンは、今まで届けられなかった範囲において、温度管理が必要な商品の輸送を実現しました。

コールドチェーンが普及する前は、品質の観点から遠方に冷蔵・冷凍貨物を輸送することは難しい状況でした。輸送エリアを広げるには、中継地点に適切な設備を整えた倉庫が必要であり、大きなコストがかかります。

コールドチェーンの技術が広まった現在では、国内だけではなくASEAN各国に向けてのビジネスも展開されています。

3.医療インフラの整備

コールドチェーンは、医療インフラを整える役割も担っています。たとえば、ワクチンや輸血に使われる血液パックは、厳密な温度管理が義務付けられているため、コールドチェーンの技術が必須です。

また、日本政府は、南アフリカなどにおいて新型コロナウイルスワクチンを安全に配布するために、コールドチェーンインフラを整える支援をした実績もあります。

一貫した温度を保ちながら各地にモノを輸送できるコールドチェーンは、食品や医療などさまざまな分野で重要な役割を担っています。

コールドチェーンの3つの課題

コールドチェーンの3つの課題

日々の生活に重要な役割を担っているコールドチェーンの課題は、以下の3つが挙げられます。

  1. 流通体系の整備にコストがかかる
  2. 冷蔵・冷凍庫や物流施設が不足している
  3. 輸送リソースが不足している

それぞれの課題と解決策について詳しく見ていきましょう。

1.流通体系の整備にコストがかかる

1つ目の課題は、生産者から消費者へ商品が移動する際に大きなコストがかかることです。一定の温度を保たなければならない流通体系のため、小売店や生産・加工施設において温度管理ができる設備が必要になります。

また、温度管理には技術が必要なため、設備だけではなく知識を持った人材の確保も必要です。加えて、冷凍・冷蔵貨物に適した保管倉庫やコンテナの利用にもコストがかかります。

設備を整備するのが難しい方は、物流サービスの利用を検討するとよいでしょう。

<関連記事>「ECの商品発送業務を発送代行業者に切替えることでのメリット 」

2.冷蔵・冷凍庫や物流施設が不足している

2つ目の課題は、全国的に冷蔵・冷凍庫や物流施設が不足していることです。

特に水産物を生産している地方部は、冷凍庫が不足しています。その一方で、大都市部では寄港が集中する傾向があるため、冷蔵・冷凍庫が足りていません。

対策としては大容量の冷蔵庫を新設したり、業者に地方港の利用を促したりといった工夫をしています。また、保冷効果の高い包材を活用することで、保管の工夫を行っている事業者もいます。

東南アジアでも輸出先の現地空港で冷蔵・冷凍庫が不足しているため、輸送過程でコールドチェーンを確保するのが難しい状況です。

海外の対策としては、日系の物流業者を利用することにより、品質の高いコールドチェーンを確立しているケースが見られます。

3.輸送リソースが不足している

3つ目の課題は、物流需要の増加に伴い輸送リソースが不足していることです。

一定の距離を走るトラックやドライバーの供給が、需要に対して確保できていません。さらに、人手不足の影響により、海運業者の荷受けや倉庫作業の速やかな対応も難しい状況です。

対策としては、トラック輸送から鉄道や船舶の利用に変更すること(モーダルシフト)が推進されています。

鮮度を保持できる期間が短い農林水産物や食品は、少量かつ多頻度で輸送をしていたため、積載率が低くリソースを圧迫していました。

そこで開発されたのが、鮮度保持機能をもつ保冷コンテナです。これまで3日程度しか鮮度保持ができなかった農林水産物や食品は、鮮度保持コンテナによって約2週間も鮮度を保てるようになりました。

輸送リソースの解決策として、コールドチェーンのモーダルシフトが促進される動きが出てきています。

コールドチェーンを支援する企業 

コールドチェーンを支援する企業

私たちの生活に必要不可欠なコールドチェーンを支援する企業を紹介します。

  • 富士ロジテックホールディングス
  • 菱重コールドチェーン

コールドチェーンの参入を検討している方はぜひチェックしてください。

【4温度帯完備、EC対応発送代行】富士ロジテックホールディングス

株式会社富士ロジテックホールディングスは、物流サービスを提供している業者の中でも創業100年を超える老舗企業。「EC物流」をはじめ、企業の多様なビジネスニーズを実現しています。

 

4温度帯(常温・定温・チルド・冷凍)を完備しており、商品の特性に合わせた温度帯で衛生的かつ正確な商品管理を行っています。

常温倉庫はもちろん、定温倉庫や冷蔵・冷凍倉庫を所有しているため、厳しい温度管理が必要な食品や医薬品の品質を維持しながら輸送できます。

富士ロジテックホールディングスは、大手通販企業などの多くの事業者のコールドチェーンを支援している実績がある信頼できる企業です。

今なら「倉庫保管料が2ヶ月無料のキャンペーン」を行っています。コスト削減を検討している方は、ぜひお気軽に相談してみてください。

 <関連記事>「食品通販物流会社3選!課題から見る発送代行の選び方と事例

【冷蔵・冷凍設備の販売】菱重コールドチェーン

菱重コールドチェーン株式会社は、冷蔵・冷凍設備の販売でコールドチェーンを支援している企業です。大型の冷凍装置において、業界で7割の圧倒的なシェアを占めており、以下のようなさまざまな商品の輸送をサポートしています。

  • 食品
  • 観葉植物
  • 医薬品
  • 電子部品

また、菱重コールドチェーン株式会社は、『ISO14001環境 』 認証を取得している企業です。コールドチェーンは、冷蔵・冷凍に用いられる冷媒が地球温暖化に深く関連しています。積極的に環境保全に取り組むことで、持続可能なコールドチェーンを支援しています。

環境に配慮しながら、多岐にわたる商品の品質を保つ重要な役割を担っているのが菱重コールドチェーン株式会社です。

コールドチェーンの課題はアウトソーシングで解決しよう

コールドチェーンの課題はアウトソーシングで解決しよう

コールドチェーンは、冷蔵・冷凍貨物を生産から消費者に届けるまで一貫して温度を保ちながら輸送する方法です。

市場規模の拡大が期待される一方で、需要に対する物流施設や輸送リソースが不足しています。そのため、自社でコールドチェーンを行う場合は、リソースの確保や商品の厳密な温度管理の難易度が高まるでしょう。

富士ロジテックホールディングスは、生産された商品の品質を保ったままスピーディに消費者に届けるための最適な設備や管理体制、配送ネットワークを完備しています。

ケース・ボール・ピースなどの多様な出荷形態に対応しているため、出荷数が少なくても心配ありません。難易度の高いコールドチェーンを受注から配送まで包括してサポートできますので、まずはお気軽にご相談ください。

 

<関連記事>「冷凍冷蔵食品の発送代行も対応可能なおすすめ業者を一挙紹介

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東ゆずほ

ライター

東ゆずほ

アメリカ留学の経験を活かし、貿易事務員として9年間従事。商社・メーカー・フォワーダー・通関業者にて輸出入業務を経験。現在はIT系企業にて営業サポートとして働きながら複業ライターとして活動中。

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