国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
見積もり書に記載されている「MOQ」「SPQ」「SNP」について、正しい使い分けを理解できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、それぞれの用語の違いから見積書の読み方や注意点までを網羅的に解説します。用語を正確に把握し、正式発注で行き違いによる問題が発生するのを防ぎましょう。
MOQとは最低発注数量
MOQとはMinimum Order Quantityの略で、最低発注数量を指します。
海外との取引において、見積もり書に記載されることが多い用語です。
基本的に生産者側が設定するもので、企業によってはMPQ(Minimum Purchase Quantity)と記載することもあります。意味はMOQと同じです。
生産者がMOQを設定する理由
MOQが設定されているおもな理由について、大きく以下3つに分けて解説していきます。
- 生産者の利益を守る
- 単価交渉の基準になる
- ビジネスパートナーを選定できる
生産者の利益を守る
生産者がMOQを設定する1つ目の理由は、利益を守るためです。
アパレルメーカーを例に説明しましょう。生産者も製品を作るために、原材料や部品を下請け工場が定めたロット単位で買い取っています。同じ柄のプリント生地で洋服を複数生産する場合、数量が少なくても生地は反物単位でまとめてプリントします。
反物の最小単位から取れる洋服の数が100着とすると、発注者が30着だけオーダーすれば、残り70着分の生地を生産者が買い取らなければなりません。残り70着分の洋服がその後も売れなければ、生産者の損益になってしまいます。
この場合MOQをあらかじめ100着と設定しておけば、生産者が残った分を買い取る必要がなく利益が守られるということです。
単価交渉の基準になる
生産者がMOQを設定する2つ目の理由は、それより少ない数で発注をする業者に対し、スムーズな単価交渉ができるからです。
たとえばMOQ:1,000の製品における開発費・原材料費・物流経費その他諸々の合計が20,000ドルだった場合、あん分すると商品単価は20ドルです。
仮に発注者がこの商品を800個だけ発注する場合、単純計算では1個あたり25ドルです。生産者はこの単価を根拠にして、調整をしながら単価交渉をします。
このように、MOQを設定しておけば、少量の発注に対しても価格を高く見積もる基準になるので、正当に価格交渉ができます。
ビジネスパートナーを選定できる
生産者がMOQを設定する3つ目の理由は、ビジネスパートナーを選定するためです。
MOQを設定していれば少量のオーダーをあらかじめ拒否し、受注者をふるいにかけられます。生産者は日々、さまざまな国の発注者から見積もり依頼を受けています。そのなかで発注量が極端に少ない発注者の場合、見積もりを取るだけでビジネスに繋がらないケースも多いのが実情です。
今後ビジネスとして継続取引していきたい発注者は、最初はMOQより少ない量の発注で単価を上げてでも交渉する可能性が高い傾向にあります。
このようにMOQは、今後継続して取引関係が築けるかどうかの選定基準になります。
MOQとSPQ・SNPとの違い
MOQと似ている用語に、SPQとSNPとがあります。
見積書にすべて一緒に記載されていることも多いので、それぞれの違いを把握し、見積もり書の読み間違いを防ぎましょう。
SPQ(Standard Packing Quantity)とMOQの違い
SPQとは、梱包単位での最小発注数です。
たとえばMOQが100の場合は100個以上なら103個などの細かい単位で発注ができます。
一方SPQ:100と記載がある場合、発注の最小単位が100なので発注は100の倍数でなければならないという違いがあります。
つまり103個発注したい場合でも、200個の発注が必要ということです。
SNP(Standard Number of Package)とMOQの違い
SNPとは、1カートンあたりの梱包数量を指します。
海外取引では、カートンが輸送に使用するコンテナにぴったりと収まるよう設計されていることがほとんどです。
コンテナに隙間なく詰めて効率よくかつ安全に運べるよう、1カートンあたりの数量が決められています。
MOQ・SPQ・SNPの記載がある見積書の読み方
MOQ・SPQ・SNPの違いがわかったところで、見積書に記載されるパターンから発注数量の読み取り方を解説していきます。
例1)
MOQ / SPQ:2,000 / 100と記載のある場合
最低発注数が2,000個以上、かつ100個単位での発注が可能という意味です。
たとえば、2,100個、2,200個……など。
例2)
MOQ / SPQ / SNP:2,000 / 100 / 50
2,000個以上かつ、100個単位で発注が可能で、1カートンに50個入りという意味です。
例3)
SPQ:250
このようにSPQのみ記載している場合は、状況によってはMOQ、SNPと同じ意味として使われるケースがあります。
最小発注数が250個からで、250、500というように250個ごとに発注が可能ということです。
とはいえ間違いを防ぐために、生産者がこの認識で記載しているのかどうかは、必ず確認しましょう。
MOQについての注意点
MOQに関して、発注者側が注意すべき点を大きく以下の3つに分けて解説します。
- 見積もり段階でMOQの有無を確認する
- 長期保管できる商品かどうかで発注数を調整する
- MOQより数量を減らしたい場合は単価交渉する
見積もり段階でMOQの有無を確認する
見積もりの段階でMOQの記載や設定がない場合、必ず設定があるかどうかを確認しましょう。
とくに数社に対し同じ商品で見積もりを取る際、1社だけ単価が低い場合には要注意です。他社に比べてMOQが多い可能性があります。
同時にSPQ、SNPも確認しておくことで、出荷数の間違いも防止できます。
長期保管できる商品かどうかで発注数を調整する
長期保管できる商品は、MOQで発注するかどうかの基準になります。
長期的に品質が変化せず在庫スペースを取らない商品は、MOQが多くても一度に仕入れた方がコストを抑えられるからです。たとえば、ネジなどの部品が該当します。
反対に長期保管ができない商品は、MOQとは関係なく自社の適正数量で発注が可能かどうかを交渉してみるとよいでしょう。
MOQより数量を減らしたい場合は単価交渉する
MOQの設定が自社の希望数量に合わない場合は、単価を上げて数を減らせるかどうか交渉してみましょう。
設定されているMOQの数量で発注をかけてしまうと、過剰在庫になるリスクがあるからです。
また初めての発注で品質に不安がある場合にも、単価を上げてMOQを減らした方が、不良在庫を抱えるリスクが減少します。
<関連記事>「EC物流でビジネスを飛躍させる在庫管理の秘訣」
見積もり段階で販売戦略にあわせた交渉をしよう
発注者側はMOQが需要や自社の販売戦略に合っているかを考慮し、端数の発注やバラ梱包の可否も含めて生産者と交渉してみましょう。
とはいえ、そもそもMOQは生産者側の利益を守る前提で設定されています。数量を減らす交渉の際は、生産者側の利益と自社の受け入れ可能な条件との妥協点を探りながら、慎重におこなうことが今後のビジネスを発展させる鍵になります。
重要なのは見積もりの段階で不安要素をなくし、正式発注の際に行き違いや数量間違いを防ぐことです。
MOQやSPQ、SNPそれぞれの用語の違いを理解しておけば、交渉をスムーズに進められますね。
<関連記事>「売り越しを防ぐ在庫管理の方法と事例を解説!【EC担当者必見】」
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Pro-D-useは、「答えが無い」「独自性の強い」「難解な仕事」を得意とする、中小企業専門の経営コンサルティング会社です。特に、新規事業の”開発者”、2代目・3代目社長の”並走者”、事業領域の”転換者”、業績・組織の”再生者”という4つの役割が得意です。
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オガミキヨ
国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。
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