物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
物流倉庫における保管スペースの逼迫、作業効率の低下などが理由で、倉庫移転を考える事業者は少なくありません。
しかし、すでに稼働中の物流倉庫を移転する場合、移転タイミングや連携に不備があると、出荷ができなくなるおそれがあるため、注意が必要です。
物流倉庫の移転を円滑に進めるためには、余裕を持ったスケジュール調整や綿密な準備が重要です。本稿では、物流倉庫の移転手順、移転する際のリスク、移転時のポイントを解説します。
物流倉庫を移転するタイミングと理由
事業者が、物流倉庫を移転する理由はさまざまです。なかでも、事業規模の拡大によって、保管スペースの不足、作業効率の低下など、現状の倉庫では対応できない課題の改善策の一つとして移転を検討する事業者が多い傾向にあります。
事業規模の拡大
販売網を広げる、取り扱う商品を増やすなど、事業規模が拡大すると、今までよりも多く在庫を保管する必要があり、保管スペースが足りなくなる可能性があります。
また、保管量に見合わないスペースで運用してしまうと、倉庫への入荷在庫を小ロットで手配する必要があり、余計な手間が発生するおそれも。さらに、倉庫に保管できる量が少ないと、仕入れロット数を少量で手配する必要があるため、単価が高くなるリスクも伴います。
安定した商品提供のために、事業規模に合った倉庫確保が重要です。物流倉庫に商品が納まらない場合は、倉庫移転を検討しましょう。
作業効率の低下
商品数の増加によって十分な作業スペースが確保できない場合、出荷作業効率が低下するおそれがあります。
作業スペースが狭いと、「梱包資材などが十分に準備できず取りに行く手間がかかる」、「作業台に置く商品が乱雑になり出荷ミスが発生する」など、一つひとつの作業に負担がかかるためです。
作業効率の低下は、1日の出荷数にも大きくかかわります。作業スペースが確保できない場合は、スペースの確保ができる倉庫への移転を検討しましょう。
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物流倉庫の移転スケジュール
物流倉庫の移転期間は、一般的に最低3か月必要だといわれています。ここからは、具体的な物流倉庫の移転スケジュールを次の手順に沿って解説します。
- 現状の課題抽出
- 移転先の選定
- 移転スケジュールの作成
- 現在の委託倉庫を解約
- システム連携のテスト
- 在庫商品の搬入・搬出
- 業務オペレーションの確認
- 運用開始
現状の課題抽出
倉庫を移転する前に、まずは現状の運用課題を抽出することから始めましょう。自社の課題がわかっていれば、倉庫の移転先の選定時に、希望する運用ができる倉庫を見つけやすくなるためです。
以下のように、課題を具体的にしておくことが大切です。
● 保管スペースが少なく、在庫を多く保有できない ● 作業スペースが狭く、作業に必要な資材や道具を作業動線上に置けない ● 委託コストが高く、利益を圧迫している ● 現状の倉庫は、流通加工が対応できない など |
移転先の選定・契約
次に、抽出した課題を解決できる移転先を選定し、契約を行います。移転先の選定では、次の項目を確認し、自社の運用に合っているかを判断しましょう。
● 保管可能な坪数 ● 倉庫内の設備、環境 ● 移転コスト、運用コスト ● 立地条件 ● 作業の運用ルール |
なお、契約前に物流倉庫の移転期間の確認や、移転までのサポートがどの程度受けられるか把握しておくと安心です。
<関連記事>「EC物流とは?倉庫の選び方のポイントや物流代行会社10選を徹底解説」
移転スケジュールの作成
新たな委託先の決定後は、移転スケジュールの作成を行いましょう。まずは、移転する際に必要な作業の洗い出しをしたうえで、作業時間の概算を見積もります。
なお、作業時間は、搬入・搬出の対応者数、作業の熟練度、天候によっても変わります。概算の見積りを出す際は最短日程ではなく、さまざまな要因を考慮したうえで、算出しましょう。
その後、WMSシステムの運用テスト、設備の設置、在庫商品の搬入日、入荷日、入荷処理完了日、出荷テスト、運用開始日などを具体的な日程で設定します。
なお、物流倉庫の移転は、自社だけでなく複数企業と連携して移転を進める必要があるため、予期せぬトラブルに備えて余裕を持ったスケジュール設定にしておくと安心です。
現在の委託倉庫を解約
新たな委託先が決まり次第、現在の委託倉庫に解約通知を行い、解約の手続きに移りましょう。
なお、契約内容によっては解約の数か月前に告知が必要など、条件が設けられているため、注意が必要です。告知の期日が過ぎてしまった場合、解約時の違約金が発生するケースがあります。倉庫移転を検討する際に、あらかじめ契約書の内容を確認しておきましょう。
告知後は解約届の提出、最終出荷日、解約日、在庫商品の搬出日を、先方と相談しながら進めていきます。また、このタイミングで関係各所に倉庫移転についてお知らせをしましょう。一時的に出荷を止める必要があれば、必要に応じてECサイト上に出荷停止期間を記載しておくと、ユーザーの混乱を防げます。
保管棚や入出荷に使用していた端末などの資産関連、解約時に発生する諸経費の概算、支払い方法なども確認しておきましょう。
システム連携のテスト
出荷開始に向けて、新たな委託先と自社システムとの連携テストを行います。
新委託先のWMS(倉庫管理システム)との連携テストは、テストデータを利用します。入出荷指示、出荷完了報告、在庫反映、チラシ・ノベルティの同梱指示、ピッキングリスト出力、返品処理など、物流業務が問題なく処理できるか確認しましょう。
テスト段階で、エラー対処方法や不明点を確認しておくと安心です。また、処理に不安がある場合は、操作方法の研修を実施することで、円滑な移行につながります。
在庫商品の搬入・搬出
現状の倉庫での最終出荷を終えたあと、棚卸を依頼し、保管在庫をすべて搬出します。在庫搬出後に在庫差異が出ないように、搬出前に必ず棚卸を依頼しましょう。
在庫状況が不明瞭なまま搬出してしまうと、後々欠品や不良在庫があった場合に、責任の所在がわからなくなり、損失につながるためです。
トラブルを防ぐためにも、搬入・搬出時は、次の内容を確認しておくとスムーズです。
〇搬出時
● 最終出荷後、棚卸の実施(理論在庫と実庫数の差異がないか確認) ● 入荷予定の商品リスト、商品コード、数量データを移転先倉庫へ送付 ● 搬出作業の立ち合い ● 貸し出し物品、在庫が残っていないか最終確認 |
〇搬入時
● 移転先での入荷作業立ち合い ● イレギュラー対応(商品マスタ未登録商品・入荷予定リスト未登録商品など) |
業務オペレーションの確認
円滑に運用できるよう、開始前にオペレーションの確認が大切です。おもに以下の内容を中心にチェックしましょう。
● 商品の入出荷がスムーズに行えているか ● 商品在庫の配置・作業員の動線・作業方法に問題ないか ● 保管棚の配置・機械設備が適切に機能しているか ● 作業員が作業内容を理解し、業務を行えているか |
業務オペレーションに不安が残る場合は、必要に応じて教育・トレーニングを実施すると安心です。
運用開始
移転先倉庫で、問題なく作業できているかチェックを行います。運用開始当日は、現場に立会い、手順通りに梱包・入荷作業ができているか、実際の目で確認しましょう。
また、稼働後も作業の確認や在庫量、スペース使用状況などは、日々の入出荷で変わるため、定期的に倉庫訪問して直接確認するとよいでしょう。非効率な業務があった場合に、即座に修正対応ができるため、より効率的な運用が叶います。
物流倉庫を移転するリスク
物流倉庫の移転は、事業規模に合った在庫保管ができる、作業効率が上がるなどの、多くのメリットがあるものの、リスクも伴います。
物流倉庫を移転する際には、新たな倉庫に現状の運用を引き継ぐために、業務フローの洗い出し・検証などの準備が必要です。現状の業務を行いながら、準備するため、手間や労力がかかり、十分な準備ができないおそれがあります。また、在庫を移すことで、実在庫と帳簿在庫とのズレが発生することも。
移転の際は、人員体制を整えるなど、従業員への負担を考慮する必要があるでしょう。
物流倉庫の移転を円滑に進めるポイント
倉庫移転を成功させるためには、十分な準備が必要です。ここからは、物流倉庫移転を円滑に進めるポイントを解説します。
- 関係機関へ移転スケジュールを共有する
- トラブルへの対策を準備しておく
関係機関へ移転スケジュールを共有する
移転スケジュールを関係各所へ共有することで「どこで」「何を」「いつ行うのか」を明確に把握できるため、必要な準備を前もって行えるメリットがあります。
また、情報共有が不十分だと、作業の行き違いやミスなどのトラブルを引き起こす可能性も。次の内容を、細かく共有することで、倉庫移転を円滑に進められるでしょう。
● 倉庫の移転スケジュール ● 移転先での作業内容 ● データ管理の方法 ● 現状の進捗 |
トラブルへの対策を準備しておく
倉庫移転は、ミスやトラブルが起こりやすくなります。運用開始当初は、作業員が業務内容に不慣れであり、認識違いや思い込みなどの人的ミスが起こる可能性があるためです。
トラブルは起こるものと想定したうえで、予測と対策を事前に準備しておくと安心です。具体例として、以下を参考にしてください。
<具体例>
「移転作業の遅延」→余裕を持ったスケジュールで調整する、人員を確保する 「出荷ミス」 →開始前に研修を設ける、作業者への十分な説明、 マニュアルを作成し、配布する |
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物流倉庫の移転に要する期間は、一般的に3か月程かかるといわれています。移行期間にトラブルが発生すると、移行作業がさらに長期化し、商品が出荷できなくなるおそれがあります。物流倉庫を円滑に移転するには、トラブル対応も含めた綿密なスケジュール調整が必要となるでしょう。
手間なく倉庫移行を完了させたい場合は、倉庫移転の受け入れノウハウや経験を持つ物流倉庫に委託する方法も有効です。
富士ロジテックホールディングスでは、ご契約後、システム設定、資材・商品搬入、検品、テスト運用、本番稼働まで、おおよそ10日~20日の短期間で完了できます。他社よりもスピーディな対応が可能なため、販売の機会損失も防げます。費用については、規模によって異なりますので、まずはご相談ください。
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ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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