化粧品ECの構築を考えている方のなかには、
「自社で化粧品を保管できるのか?」
「化粧品を保管する倉庫には、特別な資格が必要なのか?」
このように疑問を抱いている方もいるでしょう。
化粧品は特性上、適切な環境での保管や管理が不可欠です。そのため、「化粧品製造業許可」が必要になります。本記事では、化粧品EC事業を進めていくうえで、倉庫管理に必要な要件を解説します。
さらに、保管時の注意点や外部委託するメリットもお伝えします。安全で高品質な商品を届けるために、ぜひ、参考にしてください。
化粧品の倉庫管理に必要な要件
化粧品を倉庫内で管理する場合は、特定の要件を満たす必要があります。ここでは、以下の内容を詳しく解説します。
- 化粧品を倉庫で保管する際は「化粧品製造業許可」が必要
- 化粧品製造業許可は2種類の区分がある
- 「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」の違い
- 「化粧品製造業許可」を取得しないと罰せられる
化粧品を倉庫で保管する際は「化粧品製造業許可」が必要
化粧品を取り扱う倉庫には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)で「化粧品製造業許可」の取得が定められています。「化粧品製造業許可」とは、化粧品を製造する際に必要な許可であり、この許可を得た事業者は、主に以下の作業が可能になります。
- 化粧品の製造
- 梱包
- 詰め合わせ
- ラベル貼り
化粧品製造業許可は2種類の区分がある
化粧品製造業許可は、次の2種類に分類されます。
一般区分(1号区分) |
化粧品の製造工程の全部または一部を行うもの |
包装・表示・保管区分(2号区分) |
化粧品の製造工程のうち、梱包・表示又は保管のみを行うもの |
化粧品製造業許可を取得する際、倉庫内での作業目的に合わせて区分を選択する必要があります。
一例として容器への充填を含む一次包装を行う事業者は、一般区分の許可が必要です。一方で、包装・表示・保管区分では以下の作業が行えます。
- 包装:商品の包装や梱包作業
- 表示:法定表記を製品に貼る作業
- 保管:製品検査の結果が出るまで、または市場へ出荷するまでの保管業務
例えば、スキンケア商品と専用コットンの詰め合わせや、複数商品をひとつにまとめるセット作業は、包装にあたります。また輸入品の表示ラベルを、日本語表示のラベルに貼り替える作業は、表示にあたります。化粧品の保管業務を請け負う倉庫では、2号区分の許可が必要です。
「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」の違い
化粧品製造業許可と混同しやすいものに「化粧品製造販売業許可」があります。この2つには以下の違いがあります。
化粧品製造業許可 |
● 化粧品の製造を行うために必要な許可 ● 梱包・表示・保管も含む |
化粧品製造販売業許可 |
● 化粧品の販売を行うための許可 |
「化粧品製造業許可」は製造専用の許可であり、化粧品を流通することはできません。化粧品を外部の倉庫に委託する場合にも、販売事業者は「化粧品製造販売業許可」の取得が必要です。
「化粧品製造業許可」を取得しないと罰せられる
化粧品製造業許可を取得せず、製造、保管、包装作業を行った場合は、薬機法により罰せられます。
- 許可を得ないで化粧品を製造した場合:薬機法第13条違反により、1年以内の懲役もしくは100万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科される
- 許可を得ないで化粧品を製造販売した場合:薬機法第12条違反により3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科される
許可のない状態での化粧品の製造や販売は罰則が伴うため、注意が必要です。
参照:e-Gov 法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
薬機法による化粧品の定義
化粧品ECを構築する際は、薬機法による化粧品の定義を理解しておくことが大切です。化粧品は法律により、以下のように定義されています。
”この法律で「化粧品」化粧品とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。” |
具体的な用途と化粧品の種類は以下のとおりです。
用途 |
化粧品の種類 |
人の身体を清潔にするもの |
ボディーソープ・シャンプー・歯磨き粉 |
人の身体を美化するもの |
口紅・ファンデーション |
魅力を増進するもの |
香水・デオドラント |
容貌を変えるもの |
ヘアカラー剤・つけまつげ |
皮膚や毛髪を健やかに保つもの |
保湿クリーム・ヘアオイル |
シャンプーや歯磨き粉、香水なども化粧品に分類されるため、注意が必要です。
出典:e-Gov 法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」法第2条第3項
化粧品製造業許可に必要な要件
化粧品製造業許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 責任技術者の配置
- 構造設備要件
- 人的要件
順番に解説します。
責任技術者の配置
化粧品製造業許可を取得するためには、製造所ごとに責任技術者の配置が必要です。責任技術者には、化粧品の製造工程を管理し、商品の品質や安全性を確保する役割があります。
責任技術者は、下記の4つの要件のうちいずれかを満たす必要があります。
|
出典:e-Gov 法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」法第91条の2
構造設備要件
構造設備に関しては、一般区分と包装・表示・保管区分で、それぞれ要件が異なります。
一般区分の構造設備要件
一般区分の場合は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
”1.当該製造所の製品を製造するのに必要な設備及び器具を備えていること。 2.作業所は、次に定めるところに適合するものであること。 イ.換気が適切であり、かつ、清潔であること。 ロ.常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。 ハ.作業を行うのに支障のない面積を有すること。 ニ.防じん、防虫及び防そのための構造又は設備を有すること。 ホ.床は、板張り、コンクリート又はこれらに準ずるものであること。 ヘ.廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。 3.製品、原料及び資材を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。 4.製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。” |
包装・表示・保管区分の構造設備要件
包装・表示・保管区分では、以下の設備要件が必要です。
”1.製品等及び資材を衛生的かつ安全に保管するために必要な構造及び設備を有すること。 2.作業を適切に行うのに支障のない面積を有すること。 3.製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。” |
人的要件
化粧品製造業許可を申請する際は、申請者に対して欠格事由、つまり許可を受ける資格がない具体的な事柄が定められています。例えば、規定により化粧品製造業許可が取り消された場合は、その取り消しから3年が経過していない人は、新たに申請を行うことができません。
また、以下に該当する申請者は、化粧品製造業許可の申請を行うことができません。
- 禁固以上の刑に処せられた人
- 薬事法令に違反した経歴のある人
- 成年被後見人
- 麻薬、大麻、あへんまたは覚せい剤中毒者
- 心身に障害があり、製造販売業務を適切に行えない人
出典:e-Gov 法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第5条
化粧品製造業許可の取得方法と費用
ここでは、以下の2つを解説します。
- 化粧品製造業許可の取得方法
- 化粧品製造業許可にかかる費用と有効期限
化粧品製造業許可の取得方法の手順を解説します。
- 各要件を確認
- 業者コードの登録
- FD申請ソフトで必要書類を作成
- 申請書を都道府県に提出
- 都道府県の実地調査
- 許可証の発行
まず、「厚生労働省令」に定められた申請に必要な要件を確認します。申請の前にe-Gov電子申請サービスを利用し、業者コードの登録を行います。
申請の際はFD申請ソフトが必要になるため、FD申請ソフトをダウンロードしておきましょう。書類作成後、該当する都道府県に提出します。
都道府県による実施調査を受けた後、化粧品製造の許可証が発行されます。
化粧品製造業許可にかかる費用と有効期限
化粧品製造業許可にかかる費用は、申請書を提出する都道府県によって異なります。また、有効期限は5年間と定められており、更新する際は別途手数料が必要です。
参考までに一般区分の場合、東京都と神奈川県では以下の費用となっています。
|
東京都 |
神奈川県 |
申請手数料 |
39,000円 |
44,500円 |
更新手数料 |
25,600円 |
31,000円 |
※2024年10月28日現在
化粧品の保管に適した倉庫の特徴
化粧品の保管に適した倉庫は、以下のような特徴が求められます。
- 適切な温度・湿度管理
- 消費期限・先入れ先出し・ロット管理
- 徹底した衛生管理
- 直射日光を避けた保管場所
適切な温度・湿度管理
化粧品を保管する場合は、適切な温度や湿度管理が必要です。管理が不十分な場合、液漏れや容器の破損につながる可能性があります。
高温多湿や温度変化の激しい場所を避け、常温での保管が適しています。なお、商品の種類や成分によって管理方法が異なるため、十分注意が必要です。
<関連記事>「3温度帯とは?4温度帯との違いや冷凍・冷蔵倉庫の温度について解説」
消費期限管理・先入れ先出し・ロット管理
化粧品の保管では、消費期限を守り、先入れ先出しのロット管理を徹底することが重要です。化粧品は長期間の保管によって、酸化の影響により成分に変化が起きる可能性があります。
また、化粧品には製造番号や製造記号の表記が義務付けられており、製品の製造時期や製造場所が特定できる仕組みになっています。そのため製品にロット番号を付けて一元管理するロット管理を徹底することで、万が一、化粧品にトラブルが生じた際も、迅速に原因を特定し対策を取ることが可能です。
<関連記事>「化粧品の在庫管理における5つの基本!課題解決に向けたシステムも解説」
徹底した衛生管理
化粧品は細菌やカビ、微生物の影響を受ける可能性があるため、徹底した衛生管理が必要です。防塵・防虫・防鼠などの対策を行い、倉庫内を清潔に保ちましょう。
また、従業員の手洗いや身だしなみのチェックなど、個々の衛生管理も必要です。
直射日光を避けた保管場所
化粧品を保管する際は、直射日光を避けた保管場所を整えましょう。化粧品は紫外線の影響で成分の変性により品質が低下し、肌トラブルの原因になる可能性があります。
窓がある倉庫を使用する場合は、遮光カーテンやフィルムなどで遮光対策を行うか、または直射日光の当たらない場所で保管しましょう。
倉庫で化粧品を保管する際の注意点
倉庫で化粧品を保管する際には、以下の点に注意しましょう。
- 危険物の取り扱いに注意
- 繁忙期によるスペース不足
- 業務の複雑化
危険物の取り扱いに注意
化粧品の中には、法令で定められた危険物に該当する成分が含まれる場合があります。例えば、香水、クレンジングオイル、ヘアオイル、除光液などのアセトン製品や、スプレー缶などのエアゾール製品が該当します。
このような化粧品を保管する際は、危険物の取り扱いが可能な一定の基準を満たした施設での保管が必要です。
繁忙期によるスペース不足
化粧品業界では、クリスマスや新作発売時などの繁忙期があります。この時期は需要が急増するため、保管場所のスペース不足が課題になります。
保管スペースが圧迫されると、出荷作業がスムーズに進まず出荷の遅延につながります。特に出荷の遅れは、リピート率の低下や顧客離れを引き起こす原因になるため注意が必要です。
そのため、繁忙期を見越して十分な保管スペースを確保しておきましょう。
業務の複雑化
化粧品EC分野では、セット商品やギフト包装、サンプル品の同梱など多様な発送パターンがあり、業務が複雑化しやすい傾向です。そのため、誤発送のリスクが増加します。
また、繁忙期には人員不足も影響し、人件費がかさむことも考えられます。このような課題を解決するためには、専門業者への外部委託もおすすめです。
<関連記事>「化粧品の流通加工とは?業務委託先を選ぶポイントと実績豊富な企業を紹介」
化粧品の倉庫管理を外部委託するメリット
化粧品の倉庫管理の外部委託には、以下のようなメリットがあります。
- 物流コストの削減につながる
- コア業務へ集中できる
- 商品の品質が向上する
物流コストの削減につながる
化粧品倉庫管理を外部委託することで、物流コストを削減できる可能性があることがメリットです。自社で倉庫を管理する場合、設備投資や維持費、人件費など、高額なコストがかかります。
物流を外部の倉庫に委託して、固定費を変動費に変えることでで、トータルの物流コストを抑えて効率的な運営ができるでしょう。
コア業務に集中できる
外部委託することで、コア業務に集中できることもメリットのひとつです。物流や在庫管理にかかる時間を削減することで、商品開発やマーケティング、販促活動など本業に専念できます。
これにより業務効率が改善し、企業全体の成長が期待できます。
商品の品質が向上する
専門業者に倉庫管理を委託することで、商品の品質が向上します。専門業者では適切な環境下での管理や、生産ロットに基づいた正確な在庫管理が徹底されるため、一定の品質を保った状態で顧客に化粧品を届けられます。
高品質な化粧品の提供は顧客満足度も高まるため、売上の向上にもつながるでしょう。
<関連記事>「化粧品物流の特徴とアウトソーシングする物流倉庫の選定ポイント」
化粧品物流会社に外部委託するときの4つのポイント
化粧品物流会社に外部委託する際は、以下の3つのポイントを押さえて委託先を選びましょう。
- 受託実績はあるか
- 倉庫環境は整っているか
- オムニチャネルに対応可能か
受託実績はあるか
化粧品物流会社に外部委託する際は、受託実績も重要なポイントです。受託実績のある物流会社であれば、化粧品特有のニーズに対する対応力も高く、安心して依頼できます。
万が一、回収が必要なトラブルが発生した際も、迅速な対応ができるでしょう。
倉庫環境は整っているか
倉庫環境が整っているかも受託先を選ぶ際の判断基準のひとつです。温度や湿度管理、防塵・防虫・防鼠などの衛生管理、従業員への教育が行き届いているかも重要なポイントです。
また、出荷ボリュームのある地域から離れた場所にある倉庫は、配送費が無駄にかかる場合があります。主要な都市圏からアクセスしやすい倉庫を選びましょう。
オムニチャネルに対応可能か
オムニチャネルに対応できる受託先を選ぶことで、実店舗とECサイトで在庫を一元管理でき、販売の機会損失を軽減できます。また、さまざまなチャネルの顧客データを入手できるため、販売戦略を展開しやすくなり、売上向上も期待できるでしょう。
<関連記事>「化粧品の発送代行も対応できるおすすめ業者を一挙紹介」
化粧品の倉庫管理は富士ロジテックホールディングスにお任せしよう
化粧品の倉庫保管は、富士ロジテックホールディングスにお任せください。富士ロジテックホールディングスでは、化粧品製造業(包装・表示・保管区分)を取得しており、適切な温湿度管理やギフト対応、同梱作業などさまざまな発送パターンにも対応しています。
また、立地条件の良い場所に全国50拠点の倉庫を所有しており、スムーズな発送作業を実現します。オムニチャネルに対応した倉庫管理システム(WMS)を活用することで、効率的な在庫管理が可能です。
化粧品ECでの市場シェア拡大に向けて、管理倉庫の外部委託を検討しましょう。
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ライター
森恵
貿易事務と物流代行営業の経験を活かし、専門知識に基づいた記事作成を行っています。お客様に寄り添い、分かりやすく役立つ情報を提供します。
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