物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
商流とは、生産者から消費者へ「商品の所有権」が移動する一連の流れのことです。
近年ECサイトが普及し、ニーズの多様化や物量・配送コストの増加が課題となっており、物流フローの最適化を目指す企業が増加傾向にあります。
最適化を目指すためには、物流の運用フロー把握はもちろんのこと、流通全体の流れを把握することが重要です。
本稿では、商流定義や物流・金流との違い、商流理解の重要性、商品分離についてわかりやすく解説します。
商流とは|定義
商流とは、商的流通を省略した言葉であり、商品が流通する過程において「所有権が移動する」商取引のことです。取引流通とも呼ばれており、所有権の移動に付帯して、金銭や情報に関する移動も行われます。
また、商品と所有権は同時に動くこともあれば、動きが別になることもあります。
たとえば、EC事業を展開する企業が、在庫確保のためにメーカーに商品を発注したケースで考えてみましょう。
発注段階では、商品の所有権はメーカー側にありますが、売買契約が成立した段階で商品と所有権は、EC事業者へ移行します。その後、消費者から商品が購入されると、所有権は消費者へと移動する流れです。
こうした移動を伴う取引の流れを商流といいます。
「商流」「物流」「金流」の違い
商流と混在しやすい言葉に、物流・金流が挙げられます。3つの違いを知っておくと、商流理解がより深まるでしょう。
生産者が商品を消費者に提供する流れを「流通」といいます。流通を構成する要素が商流・物流であり、金流は消費者から生産者へと移動する「お金の流れ」を指しています。
● 商流:流通において商品の移動が発生する「所有権の流れ」 ● 物流:消費者に商品を届けるまでに発生する「物の流れ」 ● 金流:売買取引によって発生する「お金の流れ」 |
商流・物流は「生産者→消費者」と流れる方向が同じですが、必ずしも同時に発生するわけではありません。商取引に応じて同時進行するケース、片方のみ発生するケースなどさまざまです。
一方で、金流は「消費者→生産者」へと、商流・物流とは逆方向に流れます。決済方法によって発生時期がバラつくため、商流と移動タイミングが異なることも少なくありません。
商流・物流・金流は役割が異なるものの、密接にかかわり合っています。
物流については「物流とは何か?基礎知識や機能、ロジスティクスとの違いを解説」の記事でさらに詳しく解説しています。
「商流」の理解が重要な理由
ここからは、商流の理解が重要とされている理由を具体的に解説します。
- 取引先と良好な関係が築ける
- 受注処理に商流要素が多い
- リスクヘッジがとれる
取引先と良好な関係が築ける
ビジネスを行う際に商流の理解は必須です。商流を理解していれば、売買取引時に発生する所有権や金銭、情報の流れが正確に把握でき、自社の経営状況が明確になるためです。
経営状況が明確であれば信用が得られやすいため、新たな取引先の確保や金融機関から融資を受けられやすくなるメリットがあります。曖昧さをなくすことで、取引先に安心感を与えられるため、良好な関係が築けるでしょう。
受注処理に商流要素が多い
商流理解が必要な理由の一つに、受注処理に商流要素が多く含まれる点が挙げられます。商流への理解が曖昧な場合、所有権の移行でトラブルが発生するリスクもあるため、注意が必要です。
受注処理には入金の管理や個人情報を扱うなど、さまざまな商流要素が含まれます。適切に受注処理をするために、物流だけでなく商流要素が含まれていることを理解しておく必要があるでしょう。
<例>受注データをもとに、ピッキング作業を行ったケース
① 受注内容 支払い方法:後払い決済 ● 受注時に金銭移動はなかった ● 出荷準備のために、ピッキング作業を行った(物流) →支払い方法が後払いの場合、 受注・発送準備段階で所有権が移動していないため「物流のみ発生」
②受注内容 支払い方法:クレジットカード決済(金流) ● 受注時に所有権・金銭・情報の移動があった(商流) ● 出荷準備のために、ピッキング作業を行った(物流) →すでに支払いが完了しており所有権が移動しているため 「商流+物流+金流が発生」 |
上記のように売買取引の種類によって、同じ受注においても「物流」だけでなく「商流」「金流」が同時発生するケースもあります。
商品が手元にあるからといって、所有権が自社にあるとは限りません。トラブルが発生しないよう、商流を正しく理解しておく必要があるでしょう。
商流と物流をスムーズにつなげるシステムを以下の記事で紹介しています。チェックしてみてください。
「【ロジレス連携倉庫が語る】システム活用によるEC受注〜出荷自動化のススメ」
リスクヘッジがとれる
ビジネス継続には、需給バランスの見極めが必要です。需要がないものを供給した場合、不動在庫を大量に保有するリスクがあるためです。商流の知識があれば、こうした需給バランスが崩れないよう、さまざまなリスクヘッジがとれます。
たとえば、アパレル事業のケースで考えてみましょう。取引先である小売業者に買取仕入で商品を卸したものの、商品が売れ残ってしまい、次回の注文がストップした例です。
この場合、小売業者が保有する在庫商品が売れない限り、次回発注は期待できないでしょう。小売業者側は、仕入れ段階で商品代金を支払っているため、新たに商品を仕入れるにはさらなるコストがかかり、経営に大きなリスクとなってしまうためです。
次回の発注がしやすいよう、委託仕入の提案をするなど、アパレル事業者側での検討が必要となります。
委託仕入とは、小売業者側が生産者から商品を預かり、店舗に商品を置いておく契約のことです。仕入時点で売買契約が成立していないため、仕入コストが発生しません。
所有権は生産者のままであり、消費者に商品が売れた段階で、生産者→販売者→消費者に所有権が移ります。
商流を理解していれば、小売業者側の負担を考慮した提案ができるため、販売促進を促すきっかけにもつながります。
商物分離が推奨される理由
「商物分離」とは、商流・物流を切り離して、それぞれの専門に分けて業務を行うことです。従来は、商流・物流の業務がまとまっていましたが、商物分離のメリットが大きいこともあり、現在では多くの企業で商物分離が主流となっています。
ここからは、商物分離が推奨される理由を解説します。
- 専門分野に特化できる
- QCD(品質・コスト・納期)が明確になる
- 物流業務を委託できる
専門分野に特化できる
商業者、物流業者の業務を分けることで、それぞれの専門性に特化できるメリットがあります。
商業者は物流業務を行う時間を商品の仕入れや販売、マーケティングに多くの時間を割けるでしょう。それにより、トレンドをおさえた商品の仕入れや販促活動に注力でき、より商品が販売しやすい環境が整えられるメリットがあります。
物流業者は商品の入出荷、保管、輸送などの物流サービスに注力できるようになり、資材や梱包方法など、運用フローの課題や改善にも目を向けられます。
QCD(品質・コスト・納期)が明確になる
商物分離がされていない場合、QCD(品質・コスト・納期)が曖昧になる傾向があります。商流・物流に要した工数などの切り分けができず、細かな算出が難しいためです。
たとえば、営業担当が商品の在庫管理・入出荷など、物流業務も担っている場合、物流に要した時間やコストも販売活動に含めてしまうケースも少なくありません。結果、線引きが曖昧になり、正確なQCDの把握が難しくなるのです。
商物分離をすることで、明確なQCDが把握できるため、現状の運用方法が適正なのか判断できるようになります。現状がわかれば、QCDのバランスが悪い、低水準など、改善が必要な箇所が明確となるため、対策への取り組みもスムーズにできるでしょう。
物流業務を外部委託できる
商物分離によって業務が明確にわけられるため、物流業務を発送代行会社に委託可能です。
商流・物流をすべて自社で行う場合、業務量過多になっているケースも少なくありません。業務を委託することで、業務負担軽減だけでなく、製造・商品開発・販促活動などの本来行うべきコア業務に注力することによって、売上げアップも期待できます。
たとえば、弊社(富士ロジテックホールディングス)では、受発注業務から代行できる物流サービスを用意しています。自社が抱える課題を解決できるサービスを選択することでさらなる業務効率化を目指せるでしょう。
発送代行については次の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
「発送代行とは?人気の理由やサービス内容・メリットを徹底解説」
物流を外部委託するメリット
ここからは、物流業務を外部委託することによって企業が得られるメリットを解説します。
- 業務効率の向上
- 品質の向上
- コストの削減
- 企業間の協力体制の確立
業務効率の向上
物流を外部委託するメリットは、専門知識や経験を有する物流のプロに依頼できる点にあります。
物流業務のノウハウを持たない、経験が浅い企業の場合、適切な運用ができていないことも少なくありません。第三者の目が入ることで、効率化に向けた最適な提案が受けられ、業務効率の向上につながるでしょう。
品質の向上
物流作業の経験豊富な企業が作業を担うため、正確な物流業務が期待できます。
商品に合わせた最適な梱包や発送、保管を行うため、商品の品質を落とすことなく、顧客に商品を届けられるでしょう。品質の良さは企業への信頼度が上がり、顧客満足度向上にもつながります。
コストの削減
物流業務の外部委託によって、自社への設備投資や人材確保が不要となるため、コスト削減につながるメリットがあります。
また、想定外に出荷量が増加するなど、イレギュラー時の対応にも柔軟に対応できるため、安心して依頼できるでしょう。
企業間の協力体制の確立
物流の業務委託は、単に物流業務を担うだけではありません。商流・物流のを担う企業間で意見交換できる機会を設けられるため、円滑に作業を行うための、改善提案が受けられるメリットがあります。
第三者が入ることで、消費者の目線に立った梱包方法の改善提案など、自社だと気付きにくい細かな点の提案があることも。
パートナー企業として、互いに協力できる体制が整えられることは、物流最適化をするうえで心強いでしょう。
物流の外部委託を利用する際の注意点
物流業務の外部委託はメリットが大きいものの、次のような注意点もあります。利用する前には、自社に合ったサービスであるかをよく検討するとよいでしょう。
- 柔軟な対応が難しい
- 委託先によって費用が異なる
- 実績やノウハウの蓄積が難しい
柔軟な対応が難しい
物流業務を委託することで、自社物流で対応できていた細かな対応が難しくなるケースがあります。
たとえば、ギフト用に手書きメッセージカードを同梱していたとしましょう。委託先や出荷件数によっては、今までと同様の対応ができなくなることもあります。
もちろん、すべてが対応できないのではなく、手書きから印刷メッセージへの変更など、代替案の提示はあるため、契約前に自社体制や依頼したい作業内容を提示し、作業可否を明確にしておくと安心です。
委託先によって費用が異なる
依頼する委託先によって、費用が異なるため注意しましょう。物流コストの算出方法が異なり、依頼内容や月の出荷件数によっても費用が変わるためです。
提示された価格が安くとも「質が悪い」「オプション料金が高額」などの落とし穴もあるため、複数社で比較検討することをおすすめします。
実績やノウハウの蓄積が難しい
物流業務の外部委託によって、高品質なサービスが受けられる一方で、自社に物流ノウハウ・実績の蓄積が難しくなるデメリットがあります。
今後も物流業務を自社で行わない方針であれば問題ありませんが、自社で担う可能性がある場合は、委託前に方向性を決定しておきましょう。
物流体制を整えるなら外部委託も有効な手段!
商流とは、商品が流通する過程において「所有権が移動する」商取引のことです。商流理解があれば、所有権や金銭、情報の流れが正確に把握できるため、自社の経営状況が明確になるメリットがあります。取引先と良好な関係を築けるだけでなく、ビジネス運用時のリスクヘッジにも役立ちます。
物流業務の最適化を目指すうえで、商物分離は有効です。物流体制を整えるために物流業務を外部委託する方法も一つの手段でしょう。
富士ロジテックホールディングスでは、受注や顧客対応、発送対応まで一括で依頼できるフルフィルメントサービス、物流業務全般を担う3PLサービスなど、さまざまな代行業務を展開しています。現状の運用体制に合わせて、代行内容のご提案も可能です。まずはお気軽にご相談ください。
発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。
ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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