静脈物流とは?動脈物流との違いや企業の取り組み事例を紹介

静脈物流
静脈物流とは?動脈物流との違いや企業の取り組み事例を紹介

サステナブルや循環型社会といった言葉を耳にする機会が増えるなかで、企業の物流のあり方にも変化が求められています。そのなかで注目されているのが、返品や回収、再利用といった「商品が使われた後」の流れを担う静脈物流です。

本記事では、静脈物流の基本的な考え方や動脈物流との違い、代表的なビジネスモデルを解説します。さらに、静脈物流が抱える課題や企業の取り組み事例を紹介します。

静脈物流とは?役割・動脈物流との違いを解説

静脈物流の役割や種類、動脈物流との違いをわかりやすく解説します。

  •       静脈物流とは消費者から生産者へ逆流する物流のこと
  •       静脈物流は回収・返品・廃棄の3種類
  •       静脈物流と動脈物流の違い

静脈物流とは消費者から生産者へ逆流する物流のこと

静脈物流とは商品が消費者の手に渡ったあと、生産者のもとへ逆流する物流を指します。英語ではリバースロジスティクス(Reverse Logistics)と呼ばれ、経済活動を人の血液循環になぞらえた考え方から、動脈物流と対になる言葉として使われています。

静脈物流の主な役割は、返品や回収を通じて資材を再利用・再流通させ、環境負荷を軽減しながら持続可能な社会を実現することです。

静脈物流は回収・返品・廃棄の3種類

静脈物流は主に、回収物流・返品物流・廃棄物流の3種類があります。それぞれの特徴や対象物は、以下の通りです。

種類

特徴

主な対象物

回収物流

リサイクル可能な商品や資材を回収し、資源の有効活用するための物流

・不要になった製品

・不具合・修理が必要な商品

・リコール製品

・業務で使用した機材・什器

・納品時に使用したパレット

返品物流

商取引上の理由で発生する返品商品の受け取り・再販・必要に応じた廃棄までを担う物流

・初期不良

・誤配送品

・注文ミス

廃棄物流

一般家庭や企業から出る使用済みの製品や廃棄物を適切に処理するために回収・運搬・処分をおこなう物流

・産業廃棄物

・一般廃棄物

・食品廃棄物

・物流現場の廃棄物:使用済みパレット・ストレッチフィルム・発泡スチロールなど

 

静脈物流は対象物や目的によって役割が異なり、それぞれに適した運用が求められます。

静脈物流と動脈物流の違い

静脈物流と動脈物流の違いは、「モノが流れる方向」と「目的」にあります。

動脈物流とは、生産者から消費者へ向かう物流を指します。原材料の調達から生産・保管・配送・販売までの一連の流れを担い、製品やサービスを需要に応じて供給することが主な目的です。

一方、静脈物流は商品が消費者の手に渡った後の逆方向の物流を指し、環境負荷の軽減や資源の有効活用を目的としています。両社は役割が異なりますが、どちらも欠かすことのできない物流の要素です。

2つをバランスよく管理することで、経済性と環境配慮への両立が実現します。

静脈物流の市場規模

環境庁の「令和6年度環境産業の市場規模推計等委託業務」によると、静脈物流の対象物となる産業物処理・資源有効利用の市場規模は、2023年時点で約64.3兆円(※1)です。

また、世界規模では2024年に約7,370億ドル、2029年には約9,550億ドル(※2)まで拡大すると予測されています。静脈物流を含む関連市場は今後も成長が見込まれています。

(※1)参照:環境庁|令和6年度環境産業の市場規模推計等委託業務

(※2)参照:三井物産戦略研究所「リバースロジスティクス(静脈物流)サプライチェーンにおける価値創出の可能性」

静脈物流の重要性が高まる3つの理由

静脈物流の重要性が高まる3つの理由

静脈物流の重要性が高まる背景には、主に以下の3つが影響しています。

  •       循環型社会への取り組みが世界的に広がっている
  •       最終処分場の限界が迫っている
  •       EC市場が拡大している

3つの要因を見ていきましょう。

循環型社会への取り組みが世界的に広がっている

2015年9月の国連サミットでは、SDGs(持続可能な開発目標)に向けて2030年までに達成すべき具体的な国際目標が立てられました。このように循環型社会への取り組みが世界的に加速していることも、静脈物流に注目が集まる理由の一つです。

また、日本国内でも、以下のようなさまざまな関連法が整備(※)されています。

  •       家電リサイクル法
  •       食品リサイクル法
  •       容器包装リサイクル法
  •       自動車リサイクル法
  •       資源有効利用促進法など

これらの関連法により、企業側は製品の回収や再利用を前提とした取り組みが求められています。

(※)参照:環境省|廃棄物・リサイクル対策

循環型社会は、サーキュラーエコノミーとも呼ばれます。「サーキュラーエコノミーとは?3Rとの違いや企業の取り組み事例を紹介」の記事もあわせてチェックしてみてください。

最終処分場の限界が迫っている

静脈物流への関心が高まる背景には、最終処分場の残余年数が限界に近づいていることが挙げられます。最終処分場とは、リサイクルやリユースされない廃棄物の最終処分(埋立処分)をおこなう施設です。

令和4年度末時点で、日本国内の最終処分場の残余容量は9,845㎥で、現在のペースで使用すると23.4年(※)で処理能力が限界を迎える可能性が示唆されています。特に、都市部ではこの問題が深刻化している状況です。

東京23区には使用できる最終処分場は2つありますが、新たな埋め立て処分場をつくるスペースは残されておらず、家庭ごみの有料化に向けた検討が進んでいます。このような状況から、リサイクルや再資源化を前提とした静脈物流の役割は、今後も重要性が高まるといえるでしょう。

※参照:環境省|一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について

EC市場が拡大している

EC市場の拡大も静脈物流の重要性を押し上げている要因のひとつです。

ECの返品率が上昇傾向にあるなか、「返品のしやすさ」を顧客体験価値(CX)として戦略的に活用する動きが強まっています。ここで重要となるのが、「戻ってきた商品を検品・補修し、再販売(リコマース)へと回せるか」という動脈物流へつなげる仕組みです。

他方、レンタルやリースなど、「モノを所有せずに利用する」ECサービスも一般化しました。静脈物流への重要性はこれまで以上に高まっている傾向です。利用後の製品を回収し、メンテナンスを経て再び別のユーザーへ届ける循環型ビジネスでは、静脈物流が欠かせません。

当メディアを運営する富士ロジテックホールディングスは、「返品・交換 物流フルフィルメントサービス」を提供しています。EC購入後の顧客体験を向上したい事業者はぜひ、チェックしてみてください。

 

<関連記事>「返品・交換の物流構築が売上に繋がるワケ!顧客体験向上のメリットを解説

静脈物流の代表的なビジネスモデル

静脈物流の代表的なビジネスモデル

静脈物流の代表的なビジネスモデルには、以下の4つが挙げられます。

  •       宅配回収ビジネス
  •       宅配修理ビジネス
  •       返品・お試し無料サービス
  •       シェアリング・レンタルサービス

それぞれの特徴を解説します。

宅配回収ビジネス

宅配回収とは、不要になった製品を消費者の自宅から回収するサービスです。以下のような小型家電リサイクル法の回収対象となる製品を宅配業者が集荷し、リサイクル業者へ引き渡すビジネスモデルです。

  •       使用済みのパソコン・タブレット・プリンター
  •       電動ミシン
  •       オーディオプレーヤー
  •       扇風機・炊飯器・アイロンなどの家電
  •       スマートフォン・電話機など(※)

消費者は回収ボックスへ持ち込む手間がなく、自宅から手軽に利用できる点が特徴です。専門業者を利用すれば、個人情報を含む機器も安心して処分できることから、消費者向けの静脈物流サービスとして利用が広がっています。

※参照:経済産業省|小型家電リサイクル法の概要について

宅配修理ビジネス

宅配修理ビジネスは、故障や破損した商品を宅配便で専門業者に送り、修理後に自宅に返送するサービスです。家電やパソコン、スマートフォン、靴など幅広い製品が対象です。

専門店が近くにない方や遠方の方でも手軽に利用でき、商品を買い替えずに長く使い続けられます。リユースを促進する取り組みとして、静脈物流の重要な役割を担うビジネスモデルといえるでしょう。

返品・お試し無料サービス

オンラインショッピングのお試し無料サービスも注目されています。顧客が実際の商品を試してから購入を判断でき、不要な場合は無料で返品できる仕組みです。

顧客満足度の向上やリピート率の改善が期待できるビジネスモデルといえるでしょう。

一方で、返品処理には検品や再販の判断、在庫管理といった作業が発生するため、業務の効率化が求められます。返品業務を専門事業者に一元管理してもらうことで、業務プロセスがスムーズになり、利便性の高いサービスの提供が可能になります。

シェアリング・レンタルサービス

シェアリングやレンタルサービスは、製品を所有せず必要な時に「共有・利用」する仕組みです。家具・家電・衣類・スポーツ用品など幅広い製品が対象で、消費者は購入する代わりに一定額を支払うことで手軽に利用できます。

このビジネスモデルでは、使用後の製品を回収・点検・清掃・再配達までを一貫して管理することが求められます。そのため、静脈物流に強みを持つ物流業者へ外部委託する動きが広まっています。

静脈物流が抱える4つの課題

静脈物流が抱える4つの課題

静脈物流は循環型社会の実現に欠かせない仕組みですが、運用面ではさまざまな課題も抱えています。静脈物流を導入するうえで押さえておきたい4つの課題を整理します。

  1. 回収や返品によって業務工程が複雑化する
  2. コストがかかる
  3. 物流量の予測が難しい
  4. 環境負荷が増大しやすい

回収や返品によって業務工程が複雑化する

静脈物流では、通常の配送とは逆方向の流れを扱うため、業務が複雑化しやすいことが課題です。回収や返品された製品は、検品・分類・修理・再梱包・廃棄など、商品の状態に応じて個別対応が必要です。

例えば、返品された衣料品の場合、汚れや破損の確認をはじめ、再販可否の判断、洗濯、アイロンがけ、タグの付け替え、再梱包などの多くの工程が発生します。さらに、返品理由の記録や返金処理、在庫状況の把握など、細かな情報処理も求められます。

また、回収や廃棄物の処理には複数の業者や部門間の連携が必要で、企業規模が大きくなるにつれ、業務フローが煩雑化しやすいことも問題点の一つです。

コストがかかる

静脈物流の課題として、コストがかかりやすいことが挙げられます。回収品の検品や仕分け、状態確認などの作業は通常の物流業務よりも多くの工程が必要になり、人手不足になりがちです。

さらに、返品された商品を一つひとつ開封し、破損や汚れのチェック、再販可能かを判断するには熟練したスタッフの人員確保が必要です。また、動脈物流では大量の商品を一括で配送できますが、静脈物流では少量多品種の回収が中心となり、輸送効率の低下を招きやすい傾向があります。

加えて、回収品を一時的に保管する倉庫スペースや在庫管理システムの導入など、設備投資が必要になるため、コストが増加しやすい点も念頭に入れておきましょう。

物流量の予測が難しい

動脈物流では、販売計画や生産計画に基づいて配送量を事前に把握できますが、静脈物流では回収や返品がいつ、どれだけ発生するかを正確に予測することは困難です。物流量の変動によって返品処理の遅延や問い合わせ対応が不十分になり、顧客満足度が低下する恐れもあります。

多量の返品が同時に発生すると、過剰在庫を抱えるリスクもあり、リアルタイムでの在庫管理が欠かせません。返品の物流量を抑えるには、返品そのものを減らす取り組みが重要です。

環境負荷が増大しやすい

静脈物流では回収や返品などの逆方向の輸送が増えるため、通常の配送に比べて輸送量が増えやすいという特徴があります。その結果、トラックや配送車によるCO2や温室効果ガスの排出量が増加しやすく、環境負荷が増大しやすいことも問題点です。

静脈物流を導入する際は、配送ルートの最適化や回収量の集約、再配達の削減など環境負荷を抑える工夫が必要です。

静脈物流の課題を解決する具体策

静脈物流の課題を解決する具体策

静脈物流の課題を解決する具体策を解説します。

  •       業務オペレーションの効率化
  •       無駄な返品・廃棄の削減

業務オペレーションの効率化

静脈物流では工程が多いため、業務オペレーションの効率化が必要です。例えば、以下のような対応が求められます。

  •       品質評価基準の設定
  •       在庫管理システムによる商品のステータス管理(良品、不良品、良品戻し等)
  •       静脈物流に特化した外部事業者への委託

返品された商品を良品か、不良品か判断するに際して、品質評価の基準が必要になります。ここが曖昧では、判断に時間が要し、コストがかさむ原因になります。

また良品、不良品、加工後良品戻しなど商品の状態を判断した後は、混同しないように在庫を管理しなければなりません。こうしたオペレーション全体を効率化するために、外部委託をする選択肢も静脈物流の課題解決に有効です。

無駄な返品・廃棄の削減

無駄な返品や廃棄を減らすことで、課題のひとつである静脈物流にかかるコストの抑制につながります。具体的な方法として、以下が挙げられます。

  •       返品ポリシーの明確化
  •       商品情報の充実
  •       再販・再利用の促進

返品ポリシーでは、条件・期限・返金基準・手順を明確にして判断ブレを防ぎます。商品情報は、サイズや仕様、注意点を具体化して購入ミスを抑止しましょう。回収品は、再販・修理・部品取りへ回せるルートを整備して廃棄を減らします。

静脈物流に取り組む企業事例

静脈物流に取り組む企業事例

静脈物流に取り組む企業事例を4つご紹介します。

  •       オンワード樫山
  •       ブラザー
  •       CLAS
  •       LOCOND

オンワード樫山

アパレル大手のオンワード樫山は、衣料品の回収・リサイクル・リユースとして「オンワード・グリーン・キャンペーン」を展開しています。以下のような取り組みが特徴的です。

  •       全国百貨店内のショップで衣料品の回収が可能
  •       回収参加者にオンワードグリーンポイントの付与
  •       回収衣料品をリサイクルして再利用

また、回収した衣料品からリサイクル糸を作り、軍手や毛布として被災地に支援するなど社会貢献活動にも活用しています。店舗回収による効率的な回収体制と、ポイント付与によって顧客参加型の静脈物流を構築している事例です。

ブラザー

ブラザーでは、「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」や「ベルマーク活動」などを通じ、使用済みの消耗品回収を積極的におこない、循環型社会に貢献しています。不要になったインクカートリッジをローソン店内に設置されたSmariボックスに投函することで、ローソン納品後の戻り便で回収される仕組みです。

回収ルートを効率的に運用し、静脈物流コストの抑制と再資源化の促進につなげています。

CLAS

CLASは、家具や家電をレンタルできるサブスクビジネスを展開する企業です。メーカーから仕入れた旧型モデルやアウトレット品、店頭展示品など、通常では新規販売が難しい商品をレンタル品として提供しています。

利用後に返却された商品は、リペアやクリーニングを施して再生活用することで、商品のライフサイクルを延ばし、廃棄削減に貢献しています。CLASを運営するクラスは、返却品回収の物流体制構築と倉庫管理のDXを推進し、これまでに11万4,000点(※2025年2月時点)の家具や家電の廃棄を回避してきました。回収・再利用を組み込んだ静脈物流の成功事例といえるでしょう。

LOCOND

LOCONDは約5000ブランドの靴やファッションを取り扱う通販サービスです。サイズ交換や返品無料のビジネスモデルを構築しています。

アパレル商品で発生しやすいサイズ違いやイメージの違いの心配がなく、消費者が気軽に購入できる仕組みが特徴です。物流システムを自社で開発し、返品商品の静脈物流体制を整えました。顧客満足度を高め、再販可能な商品の流通を確保し、廃棄を抑制する物流運営を実現した事例です。

静脈物流で返品対応を効率化!顧客体験を高めるフルフィルメントサービス

静脈物流で返品対応を効率化!顧客体験を高めるフルフィルメントサービス

静脈物流は、商品が消費者のもとから生産者や販売者へ逆流する物流を指し、動脈物流と組み合わせることで循環型社会の実現に貢献できます。しかし、EC事業で導入する際には業務工程が複雑化しやすく、人的負担や管理コスト増加などの課題が生じます。

これらの課題を解消するには、物流代行サービスへの委託がおすすめです。ECの返品対応から再販、レンタル・シェアリングサービスの回収・再配達まで、静脈物流を組み込んだフルフィルメントサービスを活用すれば、顧客満足度の向上と廃棄削減の両立が可能です。

富士ロジテックホールディングスでは、ECの返品や交換の受付、個体管理が可能な在庫管理までを一貫して対応するフルフィルメントサービスを提供しています。また、顧客からヒアリングした返品・交換理由をデータ化し、商品改善に活用できる仕組みも構築しています。

静脈物流の導入を検討している方は外部事業者への委託も視野に入れ、効率的かつ持続可能な物流運営を実現しましょう。

 

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発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。

森恵

ライター

森恵

貿易事務と物流代行営業の経験を活かし、専門知識に基づいた記事作成を行っています。お客様に寄り添い、分かりやすく役立つ情報を提供します。

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