梅山茜
梅山茜

物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

体験型店舗による新しい購買体験が拡大!意味と事例、メリットを解説

OMO オムニチャネル ビジネスモデル

体験型店舗とは、商品を実際に体験できる実店舗のメリットを強化したお店のことです。商品の販売をおもな目的としない点が特徴です。

近年、ECサイトの普及によって、お店に行かなくてもインターネットでいつでも商品購入ができるようになり、モノを販売するだけの実店舗は需要が低下し、淘汰されつつあります。そんななか、実店舗の新しい取り組みとして「体験型店舗」が注目を集めています。

本稿では、体験型店舗の概要やメリット、体験型店舗の事例を具体的に紹介します。

購買体験の新しい形を提供する「体験型店舗」とは

前述したとおり、体験型店舗とは単にモノを販売する場所ではなく、購買体験を提供するお店を指します。

購買体験の一役を担うのが、OMO(Online Merges with Offline)と呼ばれる手法です。OMOとは、直訳で「オンライン(ECサイト)・オフライン(実店舗)の融合」を意味しており、双方のメリットを掛け合わせることで、消費者に価値ある購買体験を提供しやすくなる仕組みです。

具体例としては、ECサイト上で購入した商品を、実店舗で受け取れるサービスもOMOの一つです。在庫がなくとも商品を購入できることや、待ち時間がない点がメリットです。

反対に、実店舗で試着した商品をECサイト上で購入し、自宅に配送する方法もあります。購入を検討したい場合や自宅にある洋服との組み合わせを購入前にチェックできるため、満足度の高い買い物が可能です。

このように、OMOを駆使した「体験」は、消費者にとってメリットが大きく、需要が高まっています。

新しい購買体験の重要性|モノ消費からコト消費へ

インターネット通販の普及により、消費者の行動にも変化が出てきています。

以前までは、商品やサービスそのものに価値を見出す「モノ消費」と呼ばれる消費活動が一般的でした。

しかし現在は、商品・サービスの利用によって得られる体験に価値を見出す「コト消費」と呼ばれる消費活動が一般的になりつつあります。

コト消費に値するサービスは、旅行やイベント、リラクゼーションなどが挙げられます。

特に、ミレニアル世代と呼ばれる2000年以降に成人を迎えた世代は、情報リテラシーに優れており、生活を豊かにする「経験」を求める傾向があります。

では一体なぜ、消費スタイルが変化しているのでしょうか。以下では2つの要因を解説します。

モノの価値低下

消費者行動が変化した要因の一つが、消費の成熟化によるモノの価値低下です。

三種の神器と呼ばれる、冷蔵庫や洗濯機、テレビなどの家電が出回り始めた時代は、生活を豊かにする機能が評価されており、モノ自体に価値がありました。

しかし現在は、さまざまな便利な商品が飽和状態になり、高性能という特徴だけでは、消費者に選ばれなくなっていることが実情です。

消費者に「購入したい!」と思ってもらうには、商品を手に取ることで得られる「驚き」などの体験の提供が必須となるでしょう。

インバウンドの需要増加

2つ目の要因は、インバウンドの需要増加が挙げられます。

2019年に観光庁が行なった「訪日外国人旅行者(観光・レジャー目的)の訪日回数と消費動向の関係について」調査によると、2016年以降の訪日リピーターの割合は、6割前後で推移しています。2019年の訪日リピーターは、2016年と比較して約1.6倍と、年々増加傾向です。

また、観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向に関する2019年の年次報告書」によると、訪日目的の第一位は「日本食を食べること(96.6%)」となっており、体験を重視した「コト消費」の需要が高いことがわかります。

世界情勢の影響で訪日外国人が減っているものの、規制緩和が進むにつれて、以前のような活気が戻りつつあります。

ミレニアル世代やインバウンドの消費者を獲得するには、形には見えない「心」を満たす経験・体験の提供が必要です。

体験型店舗の事例7選!

ここからは、注目を集めている体験型店舗を7つ紹介します。

  1. プロのスタイリングで似合うを体験「niaulab by ZOZO」
  2. 試着・撮影を体験、拡散性を狙う「SHEIN TOKYO」
  3. ECと実店舗を融合「NIKE HARAJUKU」
  4. 買い物体験型スーパー「マックスバリュ関東」
  5. D2Cブランドの認知を拡大「CONTACT STORE」
  6. 「買わなくてもいい」を体験「b8ta」
  7. ネットで選んですぐ受け取り「ORDER & PICK」

体験型店舗1:プロのスタイリングで似合うを体験「niaulab by ZOZO」

大手アパレルECサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOは、プロのスタイリングが受けられる「niaulab by ZOZO」の体験型店舗を展開。同社初の実店舗であり、充実したサービスが多くの注目を集めています。

「niaulab by ZOZO」で受けられる体験は、自分の「似合う」を見つけること。プロのスタイリストやAIによるコーディネート提案を受けながら、700点以上の洋服のなかから選択できる仕組みです。

さらに、プロによるヘアメイク・写真撮影まで、すべて無料で体験できるなど、「思い出に残る」体験を提供しています。

体験型店舗2:試着・撮影を体験、拡散性を狙う「SHEIN TOKYO」

アパレル通販サイト「SHEIN(シーイン)」を運営するROADGET BUSINESSは、ショールーム「SHEIN TOKYO」をOPENしました。

「SHEIN TOKYO」は、通販サイトで販売する商品を豊富に取扱い、実際に試着やコーディネートを楽しめる体験型店舗です。展示アイテム総数は350点と幅広い品揃えとなっています。

店内には、写真映えするオシャレなフォトスポットの用意があり、店内の小物やバッグなどを使って自由に撮影が可能です。まるで自宅のクローゼットでコーディネートをしているような擬似体験が可能に。

さらに、店内で撮った写真をSNS投稿すると、人気のシーイングッズやギフトカード(5,000円・1万円分)が当たる「シーインガチャ」を回せるサービスもあり、オシャレを楽しんでもらいながら、店舗の魅力を拡散させる仕組みを構築しています。

SHEINのビジネスモデルを「SHEIN のビジネスモデルを参考に D2C・オムニチャネルコマースをグロースさせる方法」の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

体験型店舗3:ECと実店舗を融合「NIKE HARAJUKU」

ナイキジャパンは、体験型店舗として「NIKE HARAJUKU」をリニューアルオープンしました。同店では「NIKEアプリ」と連動したサービスの提供が豊富であり、商品の在庫確認や取り置きなど、便利なサービスが多数利用可能です。

店内に展示される商品のバーコードを読み取るだけで、商品情報を確認できるなど、アプリ連携によるメリットが享受できます。

さらに、予約制のエキスパートセッションを受けることも可能です。約30分間、ナイキエキスパートが専属で対応してくれるサービスであり、希望する商品のヒアリングからアドバイスまで、手厚いサポートが受けられます。

体験型店舗4:買い物体験型スーパー「マックスバリュ関東」

マックスバリュ関東株式会社が運営する「マックスバリュ」では、買物体験型スーパーマーケットへの転換を強化しています。

同社では、以下4つの価値提供を重視しています。

  • 滞在時間を楽しむスーパーマーケット
  • 五感を刺激するスーパーマーケット
  • 自分好みのスーパーマーケット
  • 買い物以外の目的のあるスーパーマーケット

具体的な取り組みとしては、従業員と顧客のコミュニケーションを重視したガラス張りの「対面売場」の設置や、試食販売の充実、レジに並ぶことなく清算ができるスマホアプリの開発などです。

日々新しい取り組みに挑戦し、ニーズに応えることで「楽しんで買い物ができる」体験型スーパーへと転換しつつあります。

体験型店舗5:D2Cブランドの認知を拡大「CONTACT STORE」

ECサイトのプラットフォームを運営するPATRA inc.は、D2Cブランドを展開する企業向けに、体験型店舗を全国の小売店で出店できるサービス「CONTACT STORE」の提供を開始しました。

同社のサービスは、無在庫店舗システムであることが特徴です。

アパレルD2Cブランドの多くは、1商品の在庫数が少なく、機会損失が懸念されます。「CONTACT STORE」では、サンプル品のみを展示し、商品購入はECサイトを通して行なう仕組みのため、機会損失が防げるメリットがあります。

「CONTACT STORE」では、スマートフォンを活用しQRコードを読み取ることで商品の情報やコーディネートが閲覧可能です。試着だけでなく、客観的な着用イメージを確認するために併設のフォトスポットで写真撮影も可能です。

美容院やカフェの空きスペースなどに、すぐに出店が可能であり、企業側も手軽で利用しやすいサービスとなっています。

体験型店舗6:「買わなくてもいい」を体験「b8ta」

「b8ta(ベータ)」とは、先進的なloT家電から日用雑貨まで、さまざまな企業の商品をブース型で設置し、体験型店舗を運営する企業です。豊富な商品を扱い、消費者が出会う場所を提供しています。

ベータは、商品の販売を目的としていないため、出店企業や商品の魅力を最大限に引き出し、伝えることに特化しています。

さまざまなトレンド商品との出会いが1つの店舗で体験できるため、消費者にとって魅力ある店舗と言えるでしょう。

体験型店舗7:ネットで選んですぐ受け取り「ORDER & PICK」

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリング株式会社は、インターネットから購入した商品を最短2時間で店頭受取ができる「ORDER & PICK」のサービスを開始しました。

具体的には、アプリで在庫状況の確認ができ、事前注文しておくことで、レジに並ばずに商品が受け取れるサービスです。

「商品を探す手間を省きたい」「時間を有効活用したい」と考える層のニーズにマッチしており、新しい買い物体験を実現できている例です。

新しい購買体験「体験型店舗」のメリット

ここからは、体験型店舗を展開するメリットを5つ解説します。

  • 顧客満足度の向上
  • コストの削減
  • 新規顧客の開拓
  • マーケティングに役立つ
  • 在庫コスト削減

顧客満足度の向上

体験型店舗で得られるメリットの一つに、体験を重視する消費スタイルに対する「顧客満足度の向上」が挙げられます。

たとえば「新しいドライヤーが欲しい」と考える消費者は、製品の機能が一覧でわかる資料を見たり、説明を聞いたりするよりも、実際に使えるレンタル品や試供品などを求めます。

体験型店舗を運営することで、「乾かす速度」や「仕上がりの質」などを、消費者が体験できるため、顧客満足度の向上につながりやすくなるでしょう。

コストの削減

実店舗で商品を販売する場合、在庫発注・検品・在庫管理・接客など、運営にかかわるさまざまな業務が発生し、それを担うスタッフを雇う必要があります。

体験型店舗であれば、商業施設の一区画や小売店の空きスペースなどにも出店できるため、低コストで実店舗を持てます。

たとえば、共同出店型のショールーミングストア「INSEL STORE」では、販売スタッフや集客情報データを取得する機材など、運営に必要なものがすべてパッケージ展開されているため、人件費の削減など、コストを抑えた運営が可能です。

新規顧客の開拓

体験型店舗の運営は、D2Cなどのインターネット通販を中心に展開する中小規模事業者にとって、新規顧客の開拓につながるメリットがあります。体験型店舗は「消費者と新たな商品が出会える」場所であるためです。

体験型店舗の出店による認知度向上だけでなく、価値ある体験を提供することで、消費者の購買意欲向上にもつながります。

また、出店場所をシェアできる体験型店舗であれば、コストを抑えながら新規顧客の開拓につなげられるでしょう。

マーケティングに役立つ

実店舗のメリットはECサイトでは収集が難しい、商品に対しての意見や要望などの消費者の声を直接聞ける点にあります。

リアルな消費者ニーズの情報収集が可能であり、得られた情報をもとにデータ分析を行ない、ニーズを深堀りすることで、顧客体験・顧客満足度を向上させる糸口になります。

また、購買行動を分析することは、商品開発や販売戦略の立案など、新たなビジネスのマーケティングにも活用できるでしょう。

在庫コスト削減

消費者の購入アクションの一つに、ショールーミングと呼ばれる行動があります。

実店舗をショールームととらえて、商品のサイズ感や手触りなどを確認し、購入するかを決定するための行動です。商品を購入する場合は、実店舗では買わずに価格の安いECサイトなどで購入する傾向があります。

実店舗の場合、ショールーミングだけされてしまうと、商品が売れずに存続の危機となり得る事態ですが、体験型店舗ではあえてショールーミングを推奨した運営を行ないます。

体験型店舗には、サンプル品のみを陳列するため、利用スペースが最小限で済むなど、出店費用が抑えられるメリットがあります。ショールーミングを狙った体験型店舗では、在庫を用意する必要がなく、在庫コストも大幅に削減できるでしょう。

ECと店舗の融合による新しい購買体験が欠かせない時代

「体験型店舗」とは、商品やサービスの魅力を「体験」できるお店のことです。ECサイトと実店舗のメリットを組み合わせるOMOを駆使することで、新しい購買体験を提供できるでしょう。

体験型店舗にて、価値ある体験を提供できれば、ECサイトだけでは得られなかった顧客満足度の向上や新規顧客の獲得などが期待できるため、企業側にとっても大きなメリットがあります。

富士ロジテックホールディングスでは、OMOの運用を支援する物流フルフィルメントサービスを請け負っています。返品・交換サービスは顧客購買体験を向上させるうえで重要なサービスの一つであり、スムーズな対応が顧客満足度の向上につながっています。まずはお気軽にお問い合わせください。

 

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梅山茜

ライター

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