オガミキヨ
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国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。

ユニファイドコマースは顧客の購買体験を向上させる注目のマーケティング

ユニファイドコマース
ユニファイドコマースは顧客の購買体験を向上させる注目のマーケティング

ECサイトの競争が激化する中、ユニファイドコマースは顧客に寄り添う施策として注目を浴びています。

本記事ではユニファイドコマースについて、混同されやすい「オムニチャネル」や「OMO」との違いから成功事例まで、詳しく解説します。

記事を読めばユニファイドコマースについて、全体像を把握できます。これから導入を検討されている方は、ぜひ最後までご一読ください。

ユニファイドコマースとは?オムニチャネル、OMOとの違い

ユニファイドコマースとは?オムニチャネル、OMOとの違い

まずはユニファイドコマースの概要と、区別がつきにくいオムニチャネルやOMOとの違いについて以下の順に解説します。

  1. オムニチャネルの次のステップとして注目される「ユニファイドコマース」とは
  2. ユニファイドコマースとオムニチャネルの違い
  3. ユニファイドコマースとOMOの違い

それぞれの取り組みの違いを大まかにまとめると、表の通りです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

オムニチャネル

OMO

ユニファイドコマース

企業目線でチャネルを連携、最適化

-

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顧客目線でチャネルを連携、最適化

-

 

ユーザーの利便性の向上

 

顧客一人ひとりに向けたユーザー体験の向上

 

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オムニチャネルの次のステップとして注目される「ユニファイドコマース」とは

ユニファイドコマース(Unified Commerce)とは、直訳すると「統合された商取引」という意味です。ECサイトやスマートフォンアプリなどのオンラインコマースと、実店舗やポップアップストアなどのオフラインコマースを連携させ、それぞれから得た顧客データを統合します。

顧客データには、性別や年齢、氏名、住所をはじめ商品購入履歴や行動履歴などが含まれます。データをもとに、各顧客の興味や関心に合わせてアプローチするOne to Oneマーケティングを講じれば、サービスのパーソナライズが可能です。

ユニファイドコマースは、いわば、複数の販売チャネルの垣根をなくすオムニチャネルと、One to Oneマーケティングを組み合わせた販売手法だといえるでしょう。このことから、オムニチャネルの次のステップとしても注目されています。

ユニファイドコマースを導入すれば顧客の購入体験が充実し、顧客満足度を高められます。

ユニファイドコマースとオムニチャネルの違い

オムニチャネルは、ECサイトやSNS、アプリのオンラインとコールセンター通販カタログなどあらゆる販売チャネル(顧客との接点)間の境界をなくし、一連の流れとしてつなげる取り組みです。
実店舗とECサイトの在庫データを連携するので、企業側は在庫切れによる販売機会の損失を防げます。

チャネルの垣根をなくして連携する点は、オムニチャネルとユニファイドコマースで共通しています。両者の違いは、企業目線か顧客目線かという点です。

オムニチャネルは、顧客行動を通して企業目線でチャネルを最適化する施策です。一方ユニファイドコマースには、チャネル連携で得た消費者データにより同一顧客の購買体験を最適化し、満足度を上げる目的があります。

ユニファイドコマースは、あくまで消費者目線で購買体験を最適化する施策だといえるでしょう。

<関連記事>「オムニチャネルとは?マルチチャネルとの違い・導入のメリットデメリットも解説

ユニファイドコマースとOMOの違い

OMO(Online Merges with Offline)を直訳すると、オンラインとオフラインの融合です。各チャネルを連携させ、顧客目線でユーザーの利便性を向上させる目的があります。

ユニファイドコマースにも顧客の利便性を向上させる意図がありますが、両者の大きな違いは最終目的です。

OMOは顧客が購入しやすいようにオンラインとオフラインの垣根をなくす取り組みです。一方、ユニファイドコマースは顧客の購買体験の向上を目的としています。

<関連記事>「OMOとは? オムニチャネル・O2Oとの違いや施策事例をわかりやすく解説

ユニファイドコマースが注目される背景

ユニファイドコマースが注目される背景

ユニファイドコマースが注目されるようになったのには、2020年のコロナ禍で消費者の購買行動が大きく変化したことが背景にあります。

コロナ禍を契機に、それまでECサイトでの購入に抵抗があった消費者が、ECサイトでモノを買う快適さを知ることになりました。同時に消費者のECリテラシーも年々高まり、使いやすさやより良いサービスを提供する企業やブランドを選ぶ傾向にあります。

一方実店舗では、実際に商品を手に取り店内の雰囲気や対人の接客を楽しめる点で、ECにはない価値を提供し続けています。両者は今後もそれぞれの特長を伸ばしつつ共存していくものと考えられ、オンラインとオフラインの情報連携が急務とされてきました。

さらにSNSやアプリ、ECモールなど販売チャネルが多様化し、インターネット上の競争も激化しています。売上を伸ばすためには、これまでの利便性に加え、顧客ごとに異なるアプローチでサービスを提供することが求められています。

多様化する販売チャネル間の情報連携と、顧客それぞれに合わせたサービスが必要とされるなかで、ユニファイドコマースが注目されるようになったのは必然ともいえるでしょう。

ユニファイドコマースを導入するメリット

ユニファイドコマースを導入するメリット

ユニファイドコマースの概要と背景が分かったところで、メリットについても見ていきましょう。大きく分けて、以下3つのメリットがあります。

  1. 売上の向上が期待できる
  2. リピーターを獲得できる
  3. 業務の効率化ができる

売上の向上が期待できる

ユニファイドコマースを導入すれば、ユーザーの行動・購買履歴に基づいた精度の高いマーケティングが可能です。その結果、売上の向上が期待できます。

売上につながる具体的な例は、以下の通りです。

  • 蓄積された顧客データを分析し、ターゲットごとに精度の高い広告を配信できる
  • ポイントをオンライン・オフラインで一元管理できるので顧客の来店やサイト訪問の回数が増える
  • 顧客の購買履歴から、的確なおすすめ商品を提案できる
  • 商品の使い切り時期を予測し、最適な時期に購入を促せる

ユニファイドコマースのデータ活用により、より的確な顧客へアプローチが実現します。

リピーターを獲得できる

ユニファイドコマースは、リピーターを増やす効果も見込めます。

上質な購買体験を提供することでブランドのファンを増やせる可能性が広がり、競合との差別化が図れます。

またリピーターを獲得するには、購入後も顧客との接点を持ち続けることが重要です。たとえば、

  • ECサイトでおすすめ商品の表示
  • 購入品の消費前にスマートフォンアプリへのプッシュ通知

など、購買履歴や行動データにより最適なタイミングでアフターフォローができます。

業務の効率化ができる

ユニファイドコマースで各システムを統合することで、業務効率化や管理コストの削減につながります。

ECと実店舗の在庫情報を統合し、データを活用するユニファイドコマースでは一連の商品管理プロセスの自動化が可能です。

作業プロセスが最適化されるため、時間を節約し、ヒューマンエラーも回避できます。その結果、業務全体の効率化が図れるメリットがあります。

ユニファイドコマースを成功させるポイント

ユニファイドコマースを成功させるポイント

ここからは、ユニファイドコマースを成功させるためのポイントについて、以下3つに分けてお伝えします。

  1. 顧客データを一元管理する
  2. 在庫情報をリアルタイムで共有する
  3. 3PL企業を活用し物流業務を外部委託する

顧客データを一元管理する

ユニファイドコマースを成功させるポイントとして必須なのが、顧客情報と在庫の一元管理です。

CRM(顧客関係管理)ツールなどを活用し、購入情報や閲覧情報を含む顧客情報を1カ所に統合します。

精度の高い顧客のニーズ分析には、顧客の購買行動を複数のチャネルから取得してまとめる必要があります。同時に、各チャネルから取得したデータの形式を統一するなど、一貫性のある形で管理することも重要です。

<関連記事>「ユニファイドコマース向けAI活用ガイド

在庫情報をリアルタイムで共有する

ユニファイドコマースでは各チャネル間で在庫をリアルタイムで共有できる体制が求められます。

多くの企業では、店舗の在庫管理はPOSシステム、ECサイトの在庫管理はその他のシステムで管理され、それぞれが独立しているのが現状です。

クラウドなどのシステムを利用すれば、実店舗とEC、物流センターを含めた情報をリアルタイムで取得可能です。在庫の一元化により、販売機会の損失を防ぐと同時に、顧客の利便性も向上します。

3PL企業を活用し物流業務を外部委託する

ユニファイドコマースの導入とともに、効率的な物流体制も整える必要があります。

3PL(サードパーティーロジスティクス)を活用することで、在庫の一元管理や、物流センターと実店舗など複数の物流拠点をつなぐ体制の構築が可能です。

複数の物流拠点を効率的につなぐ体制を自社で一から整えるには、時間や知識が必要で、投資額も大きくなってしまう問題があります。3PL企業は物流のプロなので、自社のニーズに合わせた最適な物流改革を提案してくれるでしょう。

さらに、顧客によって異なるニーズに合わせた同梱物の封入作業なども委託できます。

〈関連記事〉「EC物流代行サービスとは?おすすめの代行会社15選を紹介

ユニファイドコマースの成功事例

ユニファイドコマースの成功事例

実際にユニファイドコマースを活用し、成功した事例を以下の3社を例にあげてご紹介します。

  1. 事例1:ヒマラヤ
  2. 事例2:TSIホールディングス
  3. 事例3:アーバンリサーチ

事例1:ヒマラヤ

ヒマラヤはスポーツ用品を取り扱う企業です。全国に約100店舗を展開しています。自社アプリのリリースによってユニファイドコマースを推進し、リアル店舗とEC事業の融合を加速させている注目の企業です。

メンバー会員の顧客データをもとに、各顧客の関心や購買履歴に応じたサービスやアフターフォローを実施しています。

たとえば「お気に入り商品」の値下げ・再入荷情報をお知らせする機能や、使用中の用品の消耗度を予測し、再加工をリコメンドするなどパーソナライズされた提案を可能にしています。

さらには商品選びをAIチャットや接客予約によりサポートして、顧客との信頼関係をより強固にしているのが特徴です。

これらの取り組みにより、同社の2023年EC売上高は、前期比10.9%増の160億円に達しました。

徹底的に顧客目線に立った、ユニファイドコマースのお手本だといえる成功事例です。

事例2:TSIホールディングス

TSIホールディングスは、アパレルブランドのROSE BUD(ローズバッド)やナノ・ユニバース、コスメブランド「Laline(ラリン)」を展開する大手アパレル企業です。

日本有数のIT企業グループ、TISインテックグループ傘下のクオリカと提携し、ユニファイドコマースを実施しています。

具体的にはビーコンシステムを導入し、顧客が来店して30秒滞在すると自動的にアプリにポイントが入る仕組みを構築。その結果、会員一人あたりの年間平均来店回数が、1.2回から1.4回に上昇しました。

また実店舗やECでの行動・購買履歴のデータを活用し、商品の使い切りの時期を予測、買い足しを促す施策を取り入れています。

そのほか、各店舗の店員がウェブサイト上で顧客の質問にチャット形式でリアルタイムに応える「ウェブ接客」を実施。販売スタッフの指名から在庫確認、コーディネート相談まで可能です。

顧客一人ひとりに丁寧に接客するユニファイドコマースにより、満足度の高いサービスを提供しています。

事例3:アーバンリサーチ

アーバンリサーチは、関西を中心に約250店舗のセレクトショップを展開する企業です。

実店舗とECの両方からのデータを適切に活用できる取り組みを実施しています。たとえば、来店前にウェブ上で商品を確認するウェブルーミングや、顧客データにもとづき商品をレコメンドするパーソナライズの強化がその一例です。

そのほか、購入者のレビューをサイズや身長などのデータとともに蓄積し、他の顧客が購入する際に自分の体型に近い人のレビューを絞り込めるシステムを導入しています。さらにレビューをもとにしたレコメンド機能を活用し、完売した商品と似た商品を検索結果にあわせて表示するなど、ユニークな取り組みにより顧客満足度の向上に成功しています。

顧客体験の向上には物流加工によるパーソナライズも不可欠!

ユニファイドコマースにより顧客満足度を向上させるには、パーソナライズされたサービスの提供が不可欠です。顧客データを活用した販売戦略はいうまでもなく、物流面でも顧客一人ひとりの興味・関心に合わせた物流加工が求められます。

たとえば、顧客ごとに異なるチラシやサンプルなどの同梱物の封入も、サービスのパーソナライズには欠かせない作業です。これらの煩雑な作業は物流代行会社に委託することで、人員の補充によるコスト上昇を抑えられると同時に、作業の効率化も実現します。

富士ロジテックホールディングスのフルフィルメントサービスでは、きめ細かい梱包作業や同梱物の封入作業にも柔軟に対応しております。ユニファイドコマースの重要な目標である、顧客に寄り添ったサービス実現のお手伝いが可能です。

ユニファイドコマースへの取り組みをお考えの方は、あわせて導入をご検討ください。

 

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