オガミキヨ
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国内外のECをはじめ、リユース、美容・健康、音楽などあらゆるジャンルで執筆中のフリーランスライター。中国への留学経験を生かし、13年間、繊維製品や楽器、雑貨の輸入業務に携わる。現在はライター業のかたわら、個人で越境ECのセラーとしても活動中。

循環型社会を目指すリコマースとは?事例や課題への対策を解説

リコマース
循環型社会を目指すリコマースとは?事例や課題への対策を解説

リコマースは、循環型社会の実現と経済成長を促す取り組みとして注目されています。

アパレル業界をはじめ各分野で取り入れられ、今後も市場が拡大していく見込みです。

本記事では企業の事例を紹介しながら、リコマースについて概念や拡大の背景、メリットと課題について総合的に解説します。リコマースの導入をお考えの方は、回収、買い取り商品の受け入れ体制や、煩雑化しやすい在庫管理の整備もあわせてご検討ください。

リコマースとは?3Rとの違い

リコマースとは?3Rとの違い

はじめに、リコマースについて理解するために以下3つの項目について解説します。

  1. リコマースの概念
  2. リコマースに含まれる5つの要素
  3. リコマースと3Rの違い

リコマースの概念

リコマースとは、再利用を表す「Re」と、商取引を表す「Commerce」が合わさった用語です。

かいつまんで言うと、人が所有していた商品を他の人が二次利用し、商品寿命を延ばすとともに、社会で循環させていく取り組みです。
一つの商品を長く使うことで新たに生み出す製品の量を最小限に抑え、資源の浪費を防ぎます。

同時に商品の修理やクリーニング、加工を通じて付加価値を高め、再利用を促進します。リコマースは、環境負荷軽減と経済成長を目指す取り組みです。

リコマースに含まれる5つの要素

リコマースを理解するうえで、おさえておきたい5つの要素について以下の表にまとめました。

リコマースには明確な定義付けはありませんが、おもに以下5つの要素のうちいずれか、もしくは複数が含まれています。

要素

説明

サービスの例

レンタル

商品を販売せずに貸し出し、契約期間に応じて使用料を課金するビジネス形態

●       DVDレンタル

●      着物レンタル

●      家電レンタル

シェアリングエコノミー

一般消費者がモノや場所、スキルなどを人に提供もしくは共有するビジネス形態

●      カーシェア

●      ライドシェア

●      民泊

●      クラウドファンディング

●      家事代行

リユース

使用済みの商品を作り替えたりせず、そのままの形で再利用する取り組みやビジネス形態

●      セカンドハンドショップ

●      フリーマーケット

●      フリマアプリ

 

リサイクル

使用済みの製品や廃棄物を利用し、新しい製品を生産する材料として再利用する取り組みやビジネス形態

●      廃食用油で石鹸を生産

●      古着の繊維を防音材として再生利用

●      使用済みPETボトルを繊維として再生

 

リペア

修理や加工で手を加えれば使えるものを、修理して寿命を延ばす取り組み

●      下取りしたパソコンを修理し再販する

●      傷んだデニムを修繕し寿命を延ばす

 

<関連記事>「サブスクとレンタルの違い|ビジネスモデル3つの分類と事例を解説

リコマースと3Rの違い

リコマースと似た取り組みに3Rがあります。3Rもリコマースも循環型社会の実現を目指す点では共通していますが、概念が若干異なります。

3Rとは、リユース、リサイクル、リデュースの総称です。

リユース、リサイクルについては前述の表をご参照ください。リデュースは、廃棄物の量を減らす取り組みです。身近な例では、マイバッグの利用や、買った物を修理しながら長く使うことなどがあげられます。

一方リコマースは、3Rを包括したさらに大きな括りで循環型社会の実現だけでなく、経済的価値の創出も目指す点において3Rと違いがあります。

<関連記事>サーキュラーエコノミーとは?3Rとの違いや企業の取り組み事例を紹介

リコマース市場が拡大している背景

リコマース市場が拡大している背景

リコマース市場拡大の背景には、大きくわけて以下の3つがあります。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

  1. 環境問題に対する意識の高まり
  2. 消費者の購入動機の変化
  3. フリマサイトの一般化

環境問題に対する意識の高まり

企業や消費者の環境問題に対する意識の高まりは、リコマース市場が拡大する最も大きな原因だといっても過言ではありません。

環境省の調査によると、2019年に日本が排出した温室効果ガスは約12億トン、そのうち衣類によるものは9,500万トンという結果が出ています。そのためアパレル業界ではいち早く、使用済みの衣料を回収し、クリーニングや修理をして再販する試みが始まりました。

参照元:環境省「令和2年度ファッションと環境に関する調査業務」

環境問題に対する意識の高まりは、日本だけに限ったことではありません。海外では、2020年にフランスで売れ残った衣服の廃棄を禁止する法令が公布されています。

消費者の購入動機の変化

商品を購入する際、環境配慮への取り組みを意識する人が増加しています。この流れもリコマースが拡大する大きな要因の一つです。

以下の表は「環境や社会に配慮した製品やサービスを取り入れたいと思うか」の問いに対する結果です。全世代では74.2%に対し、Z世代(調査では15歳~24歳としている)では82.5%もの人が「取り入れたいと思う」と回答しています。

消費者の購入動機の変化

画像出典:PR TIMES【購買行動とくらしにおけるサステナビリティ意識調査】

以下は、実際に購入する動機についての質問です。「環境に良いものを選ぶ」の項目で、Z世代のうち約73%もの人が「当てはまる」と答えています。

消費者の購入動機の変化

画像出典:PR TIMES【購買行動とくらしにおけるサステナビリティ意識調査】

調査の結果から、消費者の購買行動において企業が環境のためにどのような取り組みを実施しているかが、商品の機能と同様に重視されているといえるでしょう。

フリマサイトの一般化

リコマース市場が拡大している要因で最後にお伝えするのが、フリマサイトの一般化です。

メルカリやYahoo!オークションをはじめとするフリマサイトやオークションサイトは年々利用者が増加しています。2024年2月時点の月間利用者数は、メルカリが3,930万人、Yahoo!オークションは2,210万人という結果に。アプリのユーザビリティも日々更新されており、誰でも使いやすい簡便さが利用者数の増加を後押ししています。

インターネット上で商品の個人間売買ができるようになり、消費者の中古品への抵抗感が薄らいだことも、リコマースが拡大した要因だといえるでしょう。

リコマースに取り組むメリット

リコマースに取り組むメリット

次に、リコマースに取り組んだ場合のメリットについても見ていきましょう。

  1. 環境負荷を軽減し社会貢献できる
  2. 潜在顧客を獲得できる
  3. リピーターを獲得できる
  4. 自社ブランドのイメージが向上する

環境負荷を軽減し社会貢献できる

リコマースは製品の寿命を延ばし、廃棄物を削減できる取り組みです。廃棄物の埋め立てや焼却にともなう温室効果ガスの排出を削減できるため、環境への負荷を軽減できます。

リコマースは、企業だけでなく社会全体にとっても価値がある取り組みです。

潜在顧客を獲得できる

リコマースは、それまでブランドを認知していても利用に至らなかった潜在顧客を獲得する機会を増加させます。

なぜならリコマースの一部であるリユースやレンタル、シェアリングサービスでは、価格や利便性の面で商品を入手する障壁が下がるからです。

潜在顧客がリコマースで実際に商品を使用し、満足感を得ることで顕在顧客になる可能性が高まります。

リピーターを獲得できる

リコマースは、リピーターの獲得にも効果が期待できます。

商品の買い取りや下取り、回収など顧客との新たな接点が増えるからです。購入後にいったん疎遠になった顧客も、買い取りや下取りを機に戻ってくる可能性が高くなります。

その際、次の商品購入に使えるクーポンを配布すれば新品への買い替えも促進できるので、顧客との関係維持に効果的です。

自社ブランドのイメージが向上する

リコマース導入のメリットで最後にお伝えするのは、自社ブランドのイメージ向上です。

リコマースは循環型社会の実現を目指し、環境問題に貢献できる取り組みです。企業が目指す未来像を顧客に示すことで、ブランドのビジョンを確立できます。

若い世代を中心に環境問題への意識が高まるなか、環境に配慮したリコマースは顧客からの共感が得られやすく、ブランドイメージの向上につながります。

<関連記事>「返品・交換の物流構築が売上に繋がるワケ!顧客体験向上のメリットを解説

リコマースを実施する際の課題

リコマースを実施する際の課題

リコマースにはメリットだけでなく、課題もあります。

ここからは、リコマースを実施する際によくある課題について以下の通りお伝えします。

  1. 査定業務ができる人材の育成に時間がかかる
  2. 状態が異なる商品の在庫管理が煩雑化しやすい
  3. 返送品へのへの対応にコストと手間がかかる

査定業務ができる人材の育成に時間がかかる

リコマースの取り組みの一環としてリユースがあります。

リユースで買取り・販売価格を決めるには、商品の価値を需要や市場の動向、状態などから総合的に査定するスキルが必要です。

査定には商材に関する豊富な知識と経験を要するため、人材育成に時間がかかります。また査定はリユースビジネスの信頼性と顧客満足度に直結するため、知見のある人材の確保が重要です。

状態が異なる商品の在庫管理が煩雑化しやすい

リコマースでは、同じ商品でも回収した2次利用品と売れ残った新品など状態と価格が異なるものを別管理する必要があります。

通常の在庫に加え、中古品、再生品、再販品などの在庫カテゴリを個別に管理する体制が必須です。煩雑化しやすい在庫管理を、どう実施するかが大きな課題です。

対策としては、在庫管理システムを利用した新しいカテゴリの追加や単一SKUごとの管理を導入する方法があります。自社での管理が難しい場合は、物流代行会社に管理を委託するのも一つの方法です。

返送品への対応にコストと手間がかかる

リコマースには顧客から返送された商品をクリーニングや修理、加工によってリユースする工程が含まれます。返送品を管理する一連のプロセスに対応するには、人件費や手間がかかります。

企業は商品の返品回収のための送り状発行から商品の受け取り、検品、仕分けまで効率よく処理する物流体制を整備しなければなりません。

自社で物流システムの構築が難しい場合、物流を一部もしくは全てアウトソーシングするのがおすすめです。

<関連記事>「リバースロジスティクスとは?ECで返品物流に取り組む重要性を解説

リコマースの導入事例

リコマースの導入事例

ここからは、リコマースに取り組む企業の事例をいくつかご紹介します。

  • 事例1)UNIQLO
  • 事例2)SHEIN
  • 事例3)Levi’s
  • 事例4)COACH
  • 事例5)Apple

事例1)UNIQLO

ユニクロは「UNIQLO 古着プロジェクト by RE.UNIQLO」という古着プロジェクトを展開し、リサイクルやリユースのリコマースに取り組んでいます。

顧客から回収した古着は染色とリメイクにより新たに生まれ変わり、リサイクルされます。またスウェーデンのバイオリストア社が開発した酵素洗剤により、古着を新品のように蘇らせたリユース品の販売もスタートさせました。

ユニクロは古着販売により利益の一部を寄付、もしくはRE.UNIQLOの活動費に充てています。

事例2)SHEIN

中国発のファッションブランドSHEIN(シーイン)は、リコマースの取り組みとして「SHEIN Exchange」をアメリカ、ヨーロッパで展開しています。

顧客が再販プラットフォームに同社の使用済み商品を出品し、ユーザー間で直接売買できる仕組みです。

SHE INは低価格と大量生産を売りにした販売戦略により急成長を遂げましたが、近年は環境問題や低賃金での雇用問題が非難されることもありました。現在はリコマースの取り組みにより2030年までに温室効果ガスの排出量を事業全体で25%削減する計画を発表し、ブランドイメージの回復に努めています。

事例3)Levi’s

デニムブランドの老舗、リーバイスは「リーバイス・セカンドハンド(Levi’s® SecondHand)」という自社商品の古着買い取り販売事業を立ち上げました。デニムブランドとしては世界初となる試みです。

各店舗に持ち込まれた古着はオンラインショップに掲載され、割引価格で購入できます。

リユースと並行して、着古したジーンズをリペアやカスタマイズにより新たに生まれ変わらせる「The Levi’s® TAILOR SHOP」を展開しています。

事例4)COACH

アメリカのファッションブランドCOACHでは「COACH (Re)Loved」というリコマースプロジェクトを展開しています。

顧客から同社のバッグを引き取り、修理やクリーニング、リメイク、リデザインなどの加工により付加価値をつけて再販する取り組みです。

ヴィンテージとして希少価値のあるものや、職人の手によって個性豊かに生まれ変わったCOACHのバッグをオンラインで購入できます。

事例5)Apple

iPhoneやMac、iPad、Apple Watchを販売するAppleは、「Apple Trade In」と称するリコマースの取り組みを実施しています。

消費者が新しいApple製品を購入する際、手持ちのApple製品を下取りに出せば新製品を割引価格で購入できます。もしくは、下取り額をAppleギフトカードで受け取ることも可能です。

下取りの対象にならない製品は、Appleが無料で引き取り、アルミニウムなどの素材を新しい製品に再利用します。Appleは将来的に、すべての製品を100%再生素材または再生可能な素材で生産することを目標に掲げています。

富士ロジテックホールディングスの「返品物流フルフィルメントサービス」でリコマースをスムーズに!

リコマースを導入するにあたり、顧客から回収した商品の受け入れや検品、仕分けなどの物流管理体制の整備が不可欠です。

受け入れた商品をリユース、リサイクルする際もそれぞれ状態が異なるため単一SKUで管理する必要があります。

富士ロジテックホールディングスの「返品物流フルフィルメントサービス」は、リコマースで煩雑になりがちな商品回収に関する一連のプロセスと適切な在庫管理をサポートするサービスです。当社ではリユース品の取扱も可能でございます。

リコマースの展開を検討中の企業様は、ぜひいちど弊社にご相談ください

サービスの詳しい紹介は以下をご覧ください。

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