物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
医療機器は、人々の健康に関わる製品です。そのため、医療機器物流には一般的な製品とは異なる厳格な管理が求められます。
法令遵守に伴うトレーサビリティの確保や、クリーンな環境整備、責任技術者の配置など、考慮すべき点は多岐にわたります。しかし、これらの要求に対応できる物流体制を自社で構築するのは容易ではありません。
そこで上手に活用したいのが、専門知識と設備を持つ3PLサービスの活用です。当記事では、医療機器物流の基礎や倉庫に求められる業許可・登録を解説したうえで、医療機器物流に対応可能な物流会社を紹介します。
医療機器物流とは?
医療機器物流とは、人々の健康に関わる医療機器を扱う特殊な物流分野です。メディカル物流とも呼ばれ、その場合は医療機器の他に、医薬品の取扱いも含みます。
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)によると、医療機器の定義は以下の通りです。
人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等 |
医療機器物流には、業許可及び業登録、保管条件を満たす品質管理、そしてトレーサビリティの徹底が不可欠です。これらの要件を満たすために、医療機器物流は薬機法に基づいて厳格に管理されています。人命に関わる重要な役割を担うため、品質維持と安全性の確保に細心の注意を払った物流の構築が求められます。
医療機器物流が遵守すべき薬機法
医療機器物流に携わる事業者は薬機法を遵守しなければなりません。この法律の主な目的は、医療機器や医薬品等の品質、有効性、安全性を確保することです。医療機器等の製造、販売、保管、広告に関する詳細な規定が設けられています。
<関連記事>「医薬品や健康食品を扱う際に知っておきたい「薬機法」の基礎知識」
医療機器物流に関連する内容として特に注意すべきは、医療機器のクラス分類と、医療機器を扱う倉庫に必要な業許可・業登録が定められている点です。以下で詳しく解説します。
- 医療機器のクラス分類
- 医療機器物流を扱う倉庫に必要な許可と登録
医療機器のクラス分類
医療機器は、人体へのリスクの程度に応じて4つのクラスに分類されます。
クラスⅠは「一般医療機器」で、医療用ピンセットや視力補正用眼鏡、救急絆創膏など、人体へのリスクが極めて低いものです。
クラスⅡは、人体へのリスクが比較的低い「管理医療機器」で、家庭用電気マッサージ器や家庭用永久磁石磁気治療器などが該当します。
クラスⅢは人体へのリスクが比較的高いもの、Ⅳは生命の危険に直結する恐れがあるものを指し、両方とも「高度管理医療機器」です。コンタクトレンズや人工呼吸器、埋め込み型心臓ペースメーカーなどが含まれます。
視力補正用眼鏡や救急絆創膏やコンタクトレンズなど、一見すると医療機器と認識しづらい製品も含まれているため、注意が必要です。薬機法では、医療機器の分類に応じて許可の取得や登録を行った事業者のみが行える業務の範囲を定めています。
クラス |
分類 |
人体へのリスク程度 |
例 |
Ⅰ |
一般医療機器 |
極めて低い |
医療用ピンセット、視力補正用眼鏡、救急絆創膏 |
Ⅱ |
管理医療機器 |
比較的低い |
家庭用電気マッサージ器、体温計 |
Ⅲ |
高度管理医療機器 |
比較的高い |
コンタクトレンズ、人工呼吸器、 |
Ⅳ |
生命の危険に直結する恐れがある |
ペースメーカー、人工心臓弁 |
医療機器物流を扱う倉庫に必要な許可と登録
医療機器物流を取り扱う倉庫には、適切な許可と登録が不可欠です。倉庫に必要な許可(届出)と登録は以下の通りです。
許可・登録の種類 |
対象 |
医療機器製造業登録 |
包装、表示、保管等の工程を担う場合 |
高度管理医療機器販売業・貸与業許可 |
クラスⅢ、Ⅳの医療機器 |
管理医療機器販売業届出 |
クラスⅡの医療機器 |
まず、「医療機器製造業」の登録が必要となります。医療機器製造業の登録が必要な製造工程は、設計・開発、主たる組立等、滅菌、国内における最終製品の保管です。ここには、包装や表示を含みます。複数箇所で医療機器を取り扱う場合は、製造所ごとに登録をしなければなりません。医療機器製造業の登録には、知識と一定の学歴、従事経験を持つ責任技術者の配置が必須です。
また、医療機器の販売や貸与、それに伴う発送を行う場合、取り扱う機器のクラスに応じた許可及び届出が必要です。高度管理医療機器(クラスⅢ、Ⅳ)や特定保守管理医療機器には「高度管理医療機器販売業・貸与業」の許可が、管理医療機器(クラスⅡ)には「管理医療機器販売業」の届出が求められます。
これらの届出・許可・登録を受けずに規定の業務を担った場合、薬機法違反となり、罰則が科されます。
<関連記事>「 コンタクトレンズを取り扱い可能な倉庫の条件!物流会社の選び方も解説」
医療機器物流における品質管理基準
医療機器物流では、厳格な品質管理基準の遵守が不可欠です。ここでは、その基準となる以下2つの品質基準について解説します。
- ISO13485認証
- QMS省令
ISO13485認証
ISO13485認証とは、国際的に標準化された医療機器等の品質マネジメントシステムを指します。顧客要求事項と規制要求事項を満たす製品・サービスの提供を目的とし、品質を保証する認証制度です。以下の5つの項目で構成されています。
- 品質マネジメントシステム
- 経営者の責任
- 資源の運用管理
- 製品実現
- 測定、分析及び改善
日本国内で医療機器物流を担う際に、ISO13485認証の取得が必ずしも必要なわけではありません。しかし、医療機器物流に関する確かな品質を望むのであれば、ISO13485の認証を取得した事業者を選ぶのはひとつの手でしょう。
出典:一般財団法人日本品質保証機構「ISO13485(医療機器・体外診断用医薬品)」
QMS省令
医療機器物流を担う倉庫では、QMS(Quality Management System)省令に適合する必要があります。QMS省令とは、医療機器製造業等における品質管理基準に関する省令のことです。この省令は、ISO13485「相当」の内容と旧GQP省令、日本独自の要求事項から成り立っています。
医療機器の製造販売業者は、医療機器そのものの承認や認証を受ける際に、QMS省令に準拠した製造管理と品質管理が求められるため、保管する倉庫も同様の対応が必要になります。
出典:厚生労働省「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」
医療機器物流に適した倉庫の特徴
医療機器物流では、薬機法で定められた保管条件や在庫管理が求められます。ここでは以下の2点を詳しく解説します。
- 保管条件|クリーンな環境
- 在庫管理方法|トレーサビリティの確保
保管条件|クリーンな環境
薬局等構造設備規則の第四条では、高度管理医療機器と管理医療機器の販売業及び貸与業における営業所の構造設備の基準及び保管条件を以下のように定めています。
一 採光、照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること。 二 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。 三 取扱品目を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。 |
クリーンルームやクリーンブースは、換気が適切で清潔かつ衛生的な環境を構築するために有効です。これらの設備では、空気中の微粒子や微生物などの量を一定以下に管理し、清浄な環境を維持できます。また、必要に応じて温度や湿度の管理も可能です。
特に、高度管理医療機器や使用者の皮膚、粘膜などに触れる医療機器においては、クリーンルームやクリーンブースが必要になるケースがあります。
そのほか、床面防塵塗装、防虫防鼠などへの対応が考えられます。
在庫管理方法|トレーサビリティの確保
医療機器物流では、トレーサビリティを確保するためにシリアル・ロット管理、有効期限管理を行う必要があります。トレーサビリティとは、「追跡可能な状態」を指す言葉です。
こうした情報を確実に管理するために、薬機法の第六十八条の二の五では、次のようにバーコードの表示を義務付けています。
医薬品、医療機器又は再生医療等製品の製造販売業者は、厚生労働省令で定める区分に応じ、医薬品、医療機器又は再生医療等製品の特定に資する情報を円滑に提供するため、医薬品、医療機器又は再生医療等製品を特定するための符号のこれらの容器への表示その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。 |
なお、細やかな在庫管理には、在庫管理システムの活用も不可欠です。バーコードによって、個々の製品を識別・管理することで、医療機器の入荷から出荷、届け先までの過程を追跡し、在庫管理システムで製品の所在や状態を正確に把握します。リコール時の迅速な対応や不良品の早期発見が可能になります。
医療機器物流を扱える3PL・物流会社の選び方
医療機器物流を委託する3PLや物流会社を選ぶ際には、必要な許可の取得や登録を行っている事業者であることが大前提です。加えて、次のような観点で比較すると良いでしょう。
- 付帯業務の対応範囲
- ISO13485認証の取得状況
- 医療機器のクラス分類別取扱実績
- 在庫管理システムの有無
必要に応じて外観検査や法定表示貼付、添付文書封入、動作確認、出荷可否判定の対応ができるかどうかもチェックしてみてください。自社のニーズに合致したサービスを提供しているかを見極めましょう。
<関連記事>「発送代行サービスとは?おすすめの発送代行業者24選を徹底解説【2024年最新版】」
富士ロジテックホールディングスは医療機器物流のエキスパート!
富士ロジテックホールディングスは、各種業許可・業登録のもと、高品質な医療機器物流を提供しています。
分 類 |
許 可 |
医療機器 |
● 医療機器製造業(国内における最終製品の保管) ● 医療機器販売業・貸与業 |
動物用医療機器 |
● 動物用医療機器製造業(国内における最終製品の保管) ● 動物用医療機器販売業・貸与業 |
薬機法を遵守し、QMS省令に適合したサービスを展開。ISO13485認証を取得しているため、品質の高さが裏付けられています。
富士ロジテックホールディングスの強みは、充実した施設設備と専門チームです。薬剤師や責任技術者を中心とした専門チームと以下の設備環境により、お客様のニーズに柔軟に対応します。
- 品質保全:空調庫、温湿度管理(モニタリング)、クリーンブース、自家発電機
- 衛生:床面防塵塗装、防虫防鼠、スピードシャッター
- セキュリティ:指紋認証/静脈認証鍵、カードキーによる入退室管理、遠隔カメラによる監視システム、ボーダー警備
またEC事業のサポートにも力を入れており、動物用医療機器のEC物流をサポートした事例もございます。詳細は以下の事例記事をご参照ください。
「【EC物流】動物用医療機器(動物用デジタル聴診器)への対応」
外観検査や法定表示貼付、添付文書封入、動作確認、出荷可否判定も可能です。
医療機器物流の委託先をご検討の方は、クラスⅠからⅣまでの多様な医療機器を取り扱ってきた富士ロジテックホールディングスをぜひ、ご検討ください。
発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。
ライター
田中なお
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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