物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
モノ系のサブスクリプションで、利益の向上を目指すのであれば物流を最適化する必要があります。顧客ニーズに対応する施策や循環型の仕組みを担うのが、物流だからです。
一方で、こうしたサブスクリプションの物流には、手間やコストがかかりやすく、難しい側面があります。当記事では、サブスクリプションのLTVを高め、効率的に利益をあげるために必要な物流機能を紹介しますので、参考になさってください。
物流の構築が重要なモノ系サブスクリプション
昨今、さまざまな商品がサブスクリプションのビジネスモデルで展開されています。代表的なサブスクリプションとして、次の4種類が挙げられます。
種類 |
代表例 |
デジタル型サブスクリプション |
動画、音楽、本 |
シェアリング、レンタル型サブスクリプション |
服、バッグ、時計、家具、家電、自動車 |
売り切り型サブスクリプション(定期通販) |
健康食品、サプリメント |
通信型サブスクリプション |
携帯電話、プロバイダー |
<関連記事>「サブスクとは?メリットデメリット、ジャンル別サービス事例を簡単に解説」
この中でも物的流通が発生するモノ系のサブスクリプションが当記事の対象ジャンルになります。ここでは、以下2つのサブスクリプションの特徴と、物流が重要な理由を解説します。
- シェアリング、レンタル型サブスクリプション
- 売り切り型(定期通販)サブスクリプション
シェアリング、レンタル型サブスクリプション
シェアリング、レンタル型のサブスクリプションは、商品をお試ししたい時や、必要な時だけ安価で借りて、返却できるサービスです。顧客が借りた商品を気に入った場合、買取りも可能です。
大量生産、大量消費の世の中から、循環型社会への転換に向けて、シェアリングやレンタルの需要は高まっています。具体的なサービス例としてairCloset、Laxus、Rentioなどが該当します。
物流面では、従来の入荷、保管、出荷の工程に加え、返品回収(返品入荷)、検品、メンテナンスの工程が必要になることが特徴です。こうした循環物流を前提としながら、商品の回転率を高くするためにも、物流体制の構築が重要になります。
売り切り型サブスクリプション(定期通販)
売り切り型サブスクリプション(定期通販)は、購入者にとって買い忘れの防止や買う手間の削減に有効なサービスです。使用を継続することで効果が見込めるサプリメントやプロテイン、化粧品などの商品が該当します。
売り切り型サブスクリプションは、LTVを向上するために、アップセルやクロスセルの施策が重要です。物流面では、同梱対応が必要になります。
<関連記事>「サブスクビジネスの始め方7STEPと成功のコツ!【個人でもできる】」
サブスクリプションの物流に必要な4つの機能
次にモノ系サブスクリプションに必要な物流機能を詳しく解説します。物流の外注を検討する際や自社物流を構築する際にご活用ください。
- 【シェアリング、レンタル型】返却を前提としたオペレーション
- 【シェアリング、レンタル型】流通加工
- 【シェアリング、レンタル型】個体管理
- 【売り切り型(定期通販)】複雑な同梱対応
【シェアリング、レンタル型】返却を前提としたオペレーション
シェアリング、レンタル型のサブスクリプションには、生産者から消費者にモノを届ける流れ「動脈物流」と、消費者からモノを回収する「静脈物流」が含まれます。そのため、返却を前提としたオペレーションが不可欠です。
Recustomerの調査によると、一般的なECにおける日本の返品率は6.61%と、非常に低い数値を示しています。こうした背景から動脈物流と比べて、静脈物流のオペレーションを確立できていない物流会社は珍しくありません。
返却のしやすさはサービスの継続に繋がります。また回収から出荷できるまでの効率性は、利益に影響するでしょう。回収手段の検討や、良品に戻すまでの工程を含めた物流の構築が必須です。
参考:2023年度ECサイトの返品・交換調査レポート|Recustomer
【シェアリング、レンタル型】流通加工
シェアリング、レンタル型のサブスクリプションは、返品回収後の検品やメンテナンス、クリーニングが必須です。例えばアパレル商品では、クリーニングのほか、次のような作業が考えられます。
- プレス
- 汚れ落とし
- 補修
- リパッケージ
物流の外注を検討する場合に、このような機能を有していない企業もあります。流通加工にどのような実績があるか確認しましょう。
【シェアリング、レンタル型】個体管理
シェアリング、レンタル型のサブスクリプションの物流では、商品一つひとつを個体管理することが望ましいといえます。
なぜなら同一商品であっても、良品、修理品、レンタル中などの詳細なステータス管理が必要になるからです。ロット単位の管理では、個体ごとの状況やレンタル回数が把握できません。
一方で個体管理は在庫管理が煩雑になりやすい特徴があります。WMS(倉庫管理システム)とQRコードやRFIDと呼ばれるタグを連携した効率的な運用がおすすめです。
【売り切り型(定期通販)】複雑な同梱対応
前述の通り、売り切り型サブスクリプション(定期通販)では、同梱対応が重要になります。例えば以下のような同梱物です。
- 挨拶状
- お客様の声
- 使い方の説明書
- 関連商品の紹介
- ブランドブック
- キャンペーンチラシ
- 無料サンプル
一方で、一度に大量の同梱物を発送してしまうと、印象が悪くなったり、目に留めてもらえなくなったりする可能性があります。そのため、「初回購入の顧客には挨拶状と使い方の説明書」「複数回購入者にはキャンペーンチラシと無料サンプル」など購入回数に応じて、同梱物を変更する施策が有効です。
効率を重視する大手フルフィルメントサービスは、同梱物対応が不可な場合があるので注意しましょう。
<関連記事>「レンタルコマース&レンタルサブスクを展開するメリットと物流フルフィルポイント」
サブスクリプションサービスを運営する注意点と将来性
ここまで紹介したようにモノ系サブスクリプションの中でも、特にシェアリング、レンタル型のサブスクリプションは、一般的なECよりハードルが高い側面があります。往復の配送費や商品のメンテナンスにかかる費用も考慮したうえで、サービス価格を決定するよう、注意してください。
一方でサブスクリプション市場は、将来性が期待できるでしょう。株式会社矢野経済研究所の調査によると、サブスクリプションの国内市場規模は、2021年の実績で約7875億円、2022年実績約8,965億円、2023年見込み実績約9,430億円と伸長傾向です。今後も市場は拡大すると予想されています。
また気候変動や天然資源の枯渇、生態系の破壊などの環境問題を解決するために、循環経済(サーキュラーエコノミー)が注目されています。そのため、資源の無駄使いを抑制できるシェアリングやレンタルビジネスは、今後もさらに勢いを増していくでしょう。
富士ロジテックホールディングスはサブスクリプションの物流を支援!
富士ロジテックホールディングスは、サブスクリプションの物流を支援できる物流会社です。
ecforce、W2 Repeat、サブスクストア、楽々リピートなど、リピート通販に強いカートシステムと連携が可能です。柔軟な同梱対応を承っているだけでなく、OMS+WMS一体型システムを活用しているため、複雑な同梱指示も簡単にお送りいただけます。業許可を取得済みなので、化粧品やコンタクトなど、医療機器の取り扱いも可能としています。
また、返品物流にも取り組んできました。返品回収は、自宅からのピックアップや、配送会社の営業所、コンビニなどへの持ち込みを選択できます。
在庫管理には、RFIDを用いた個体識別が可能です。レンタルユニフォームの取り扱い実績もございます。ぜひ、サブスクリプションの物流構築にお悩みの際、ご連絡ください。
スムーズな物流体制を構築し、利益向上を目指そう!
モノ系サブスクリプションの物流は、返品対応や詳細な在庫管理、流通加工、同梱対応などが求められます。その特徴を掴んだオペレーションの構築が欠かせません。
商品の回転率を高めながら、顧客に対して優れた顧客体験を提供することで、利益の向上が期待できます。必要に応じてシステムの活用や物流会社と連携をして、スムーズな運用を目指しましょう。
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ライター
田中なお
物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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