梅山茜
梅山茜

物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。

物流DXとは|物流業界の課題やDX推進へのポイント、事例を解説

物流DX
物流DXとは|物流業界の課題やDX推進へのポイント、事例を解説

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、物流業務の機械化・デジタル化を図り、物流全体の運用見直し・変革をさせる取り組みのことです。

近年、コロナ禍の外出自粛をきっかけに、EC市場が拡大傾向にあります。その影響により、小口配送量が増加しており、需要に対して供給が間に合っていない状況です。物流現場においては、人手不足や労働環境の悪化など、さまざまな課題が顕在化しています。

物流DXは、物流業界の課題を解決する手段の一つであり、多くの企業で推し進められています。本稿では、物流DXの基礎知識や物流業界の課題、DX推進へのポイントを解説します。

物流DXとは

物流DXとは

物流DXとは、機械やデジタル技術の導入によって、既存オペレーションから物流業のビジネスモデルそのものまでを革新させることです。

物流DXを推進する手段は、次のように「物流分野の機械化」と「物流のデジタル化」の2つに分けられます。2つの手段を相互に連携させることによって、情報やコストが可視化され、業務プロセスが標準化される効果が期待できます。

<物流分野の機械化>

●      自動配送ロボ

●      自動運航船

●      倉庫内作業の自動化

●      ドローン配送

<物流のデジタル化>

●      手続きの電子化

●      点呼や配車管理のデジタル化

●      トラック予約システムの導入

●      AIを活用したオペレーションの効率化

参考:国土交通省 総合政策局物流政策課「最近の物流政策について」(2021年1月22日)

物流DXは、物流業界が抱える課題を解決する糸口となる手段であり、多くの企業でDXに向けた取り組みが実施されています。

なお、物流DXを進めるうえで注意すべき点が、機械化・デジタル化との混同です。システムや機械の導入が目的となってしまうケースがよく見受けられます。あくまで、機械化やデジタル化は、DX実現の手段だと理解しておきましょう。

物流業界の課題とは

ここからは、物流業界の課題を3つ解説します。

  • 小口配送の増大
  • 物流2024年問題への対応
  • 人手不足の2030年問題への対応
  • 労働環境の悪化

小口配送の増大

経済産業省が公開する「電子商取引に関する市場調査の結果」によると、国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、令和3年度は20.7兆円、令和4年度は22.7兆円と前年比9.91%の増加となっています。

参考:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果

EC市場の急成長によって、個人向けの小口配送の需要は年々高まっています。しかし、小口配送の増加によるトラック積載量の低下やドライバー不足などにより、急増した荷物量への対応が十分ではないのが実情です。

今後も増え続ける小口配送に対処するためには、物流現場のオペレーション最適化や効率化を図り、供給体制を整えることが急務でしょう。

物流2024年問題への対応

働き方改革関連法の施行によって、時間外労働時間の上限規制が適用されました。業種によって移行猶予期間が設けられており、物流業は2024年3月に猶予期間が終了し、2024年4月より「時間外労働時間:年960時間の上限規制」が適用されています。

猶予期間があったものの、ドライバーの確保や人員配置などの対応が十分ではなく、大きな課題となっています。物流現場では「時間内に業務を終えられるよう、予定を詰めるなど、ドライバーの個人努力でなんとか運用している」といった声も挙がっています。

時間外労働の上限規制は、ドライバーの負担軽減のための措置でしたが、物流現場の一部では、ドライバーの負担が増加してしまっているのが実情です。

<関連記事>「2024年問題とは?物流業界の課題に挑む働き方改革とその対応策を解説

人手不足の2030年問題への対応

人手不足の2030年問題への対応

内閣府「令和5年版高齢社会白書」を参考に作成

また、人手不足の「2030年問題」も大きな課題です。2030年問題とは、高齢化に伴う労働人口の減少により、企業全体で人手不足や人件費上昇などの問題が顕在化する社会問題のことです。

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2030年には日本総人口の約30%が65歳以上の高齢者となり、さらに労働人口が減少する、と予測されています。

参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書

労働人口の減少により、今後は物流業界だけでなく、日本全体で労働者不足が加速していきます。業務効率化や運用フローの見直し(荷待ちや荷役)、人材確保・定着の促進、労働環境の改善などの取り組みが急務となるでしょう。

<関連記事>「物流業界の人手不足が深刻化!現状と原因、対策を解説【2023年最新】

労働環境の悪化

物流業界では、人手不足による労働環境の悪化も課題の一つです。

国土交通省「最近の物流政策について」の資料によると、2019年は約7割の企業がトラックドライバーが不足していると回答しています。また、労働時間は全職業平均より約2割長く、年間賃金は全産業平均より約1割~2割低い、という結果が出ています。

参考:国土交通省「最近の物流政策について

さらに時間外労働の上限規制も重なり「業務負担が大きい」「賃金が低い」という労働環境の悪化が深刻な課題です。

このように、物流業界は多くの課題が山積みとなっており、国内外の市場動向や消費者のニーズの変化に対応が間に合っていない現状があります。物流DXによる機械化やデジタル化の推進は、課題を解決するための重要な手段となるでしょう。

物流DX導入事例

物流DX導入事例

ここからは、物流DXの導入事例を2つ紹介します。

福岡運輸:バース予約・受付システムの導入

福岡運輸では、2019年1月より「バース予約・受付システム」の導入を行っています。同社では、荷物の搬入が重なった際に、倉庫への受付や荷下ろしなどに「待機時間」が発生していることが課題でした。

そこでバース予約・受付システムを導入。携帯電話などを利用して、搬入の事前予約や受付、バースへの誘導連絡、進捗確認が行えるようになりました。

受付後は、SMSやメールによってバースへの呼び出しや誘導の指示を受けたり、作業の進捗状況を確認したりできるため、業務を計画的に行える効果があります。

ドライバーの労働時間の短縮にも繋がり、人手不足の解消に大きな手助けとなっています。

参考:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集

<関連記事>「なぜドライバー不足が加速しているのか、物流崩壊危機の現状と対策

トランコム:保管・ケースピッキング業務の自動化

トランコムが行った取り組みは「保管・ケースピッキング業務の自動化」です。同社では、物流センターにおける、労働力不足が課題に挙げられていました。

労働者不足の改善を図るために、導入した技術が「搬送ロボット」です。同社では、アイテムを保管ロケーションへ移動する業務を、ロボット搬送に切り替えたことで、作業が自動化され、作業量30%の削減を実現しました。

ピッキング業務の自動化は、システム導入に一時的なコストが発生するものの、省人化が叶い、人件費のコストダウンや人手不足解消に役立ちます。また、商品の取り間違いなどの人的ミスをなくせるため、作業効率向上にも大きな手助けとなるでしょう。

参考:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集

富士ロジテックホールディングスのDX活用事例

ここからは、弊社(富士ロジテックホールディングス)で導入・実施する物流DXの活用事例を紹介します。

物流自動化ロボット「t-Sort」

物流自動化ロボット「t-Sort」とは、無人搬送車のことです。従来、手作業で行っていた仕分け・搬送作業をロボットが代替して作業します。

弊社では「t-Sort」を導入したことで生産性が大幅に向上しました。具体的な数値は以下のとおりです。

作業内容:「100SKU、10,000pcsの返品仕分け」

●      手作業

作業員30人で、1時間あたりの仕分け量「41.7pcs」

●      物流自動化ロボット「t-Sort」

作業員5人で、1時間あたりの仕分け量「250pcs」

物流自動化ロボット「t-Sort」を利用すると、配置人数を25人減らしているにもかかわらず、仕分け量は手作業の約6倍という結果が出ています。作業効率・生産力の高さが圧倒的であることが分かります。

また「t-Sort」で処理できる作業は、返品仕分けだけではありません。SKU仕分けや品番仕分け、カテゴリ仕分け、再出荷別仕分けなど、さまざまな仕分けに対応可能です。

物流自動化ロボット「t-Sort」の活用により、作業員が倉庫内を行き来する必要がなくなり、作業時間短縮や人手不足解消に大きく役立っています。

自動認識技術「RFID」

RFIDとは、自動認識技術の総称のことです。電波・電磁波を活用し、情報が記録される「RFタグ」の読み取りや書き込みをすることで、商品情報の管理が行える仕組みです。

<RFIDの構成>

●      「RFタグ」情報を記録する小型のICチップとアンテナを搭載する

●      「リーダー」RFタグ内のデータの読み取り・書き込みをする

●      「システム」情報管理をする

株式会社富士ロジテック浜松の西浜松倉庫では、RFID導入以前は50万~60万点にも及ぶ在庫の棚卸を、目視確認やバーコードによる作業を行っていました。棚卸に要する時間は、約1カ月間と長期間に及び、さらに2日間の出荷停止をする必要がありました。

RFIDは、バーコードの読み取り作業のように、リーダーをタグに接触させる必要がなく、商品に向けるだけで読み取りが可能です。RFIDを10台導入したことで、棚卸の作業時間は約1/7と大幅に短縮され、出荷停止をせずに作業が行える環境も整いました。

RFIDの導入により、大幅な省人化を実現しています。

自動出荷「OMS・WMS一体型システム」

OMS・WMS一体型システムとは、受発注管理が一体となったシステムのことです。受発注システムが異なると、受注管理~出荷指示までの処理を手作業で行う必要があります。

弊社が利用するOMS・WMS一体型システムでは、ほとんどのカートやモール、EC関連システムとAPI連携が可能です。連携することで、受注の約90%以上(※)の自動出荷を実現できています。

※特定のシステムを利用した場合

また、OMS・WMS一体型システムの活用により、出荷指示などの人的作業の省人化や手作業による指示の抜け漏れを防ぐ対策にも有効です。

自動出荷により、物流業務負担が軽減されるため、EC事業者様は商品の施策検討や新商品の開発など、本来の業務に集中できるメリットも享受できます。

<関連記事>「ECの発送の手間を簡素化!自動出荷システムで解決できることと代表的なシステムを紹介

【物流DX】システム導入のポイント

【物流DX】システム導入のポイント

ここからは、物流DXに向けてシステムを導入する際のポイントを3つ解説します。

  • 全社的に取り組む
  • DX推進に精通した人材確保
  • 段階的に進めていく

全社的に取り組む

物流DXを進めるには、経営者層から現場の従業員まで会社全体で取り組むことが重要です。システムを活用した実業務を担うのは、現場の従業員であるためです。物流DXに向けた機械化・デジタル化への理解や納得を得られなければ、運用が難しくなる可能性があります。

物流DXに向けて動き出す際は、現状の課題やシステム導入の目的、物流DXによって期待できる効果を事前に従業員に周知しておくことで、円滑に移行できるでしょう。

DX推進に精通した人材確保

物流DXの推進には、DXの知識を有する人材の確保が重要です。DXは業務全般の見直し(変革)をすることであり、DX推進に精通した人材を中心に各部門のシステム構築や業務内容の見直しを検討するプロセスが必要になるためです。

自社で人材の確保が難しい場合は、DX推進へ向けたサポートを担う外部サービスの活用も有効です。

段階的に進めていく

物流DXへ円滑に移行するには、段階的に進めることが大切です。一度に大きな変更をすると、予期せぬトラブルが発生した際に、通常業務に支障が出るおそれがあるためです。

また、突然の方針転換は従業員のモチベーション低下につながるケースもあるので、短期間で効果が実感できる業務から取り組むなど、慎重に進めましょう。

物流DXに向けたシステム導入は富士ロジテックホールディングスにお任せください

物流DXに向けたシステム導入は富士ロジテックホールディングスにお任せください

物流業界は、EC市場の急成長による小口配送量の増加や人手不足、労働環境の悪化などが課題であり、業務効率化に向けて運用フローの見直しや労働環境の改善が急務となっています。

物流DXは、物流の機械化・デジタル化を通して、業務全般の変革を図ることを指し、物流業界の課題を解決する手段の一つとして注目されています。

富士ロジテックホールディングスでは、物流自動化ロボットや自動認識技術、自動出荷を行える環境が整っており、物流業務を最適に運用できるよう日々改善を行っています。自動化に向けてのサポートも対応しているため、人手不足や業務フローの改善に悩む事業者様は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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梅山茜

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梅山茜

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