田中なお
田中なお

物流ライター。青山女史短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。

【最新】冷凍倉庫とは?種類や市場規模、課題から見る打ち手

冷凍・冷蔵物流
【最新】冷凍倉庫とは?種類や市場規模、課題から見る打ち手

冷凍倉庫は、冷凍製品を保管する際に活用されています。食品を長期保存できるため、冷凍倉庫の需要は拡大する一方で、設備の老朽化やカーボンニュートラルの要請を受けて、課題を抱えています。

冷凍倉庫の利用を検討するにあたり、この課題感を知っておくことで、リスクを避けられるかもしれません。当記事では冷凍倉庫市場の現状や、冷凍倉庫の選択肢を解説します。冷凍倉庫を選ぶ際の参考にご覧ください。

倉庫業法に基づく冷凍倉庫とは?

まずは、冷凍倉庫の基礎知識を確認しましょう。

他者の荷物を預かる倉庫業者に向けた法律に「倉庫業法」があります。そもそも冷凍倉庫とは、どのような温度帯を指し、どのような設備が必要なのでしょうか。以下に沿って解説します。

  • 冷凍倉庫の温度帯の定義
  • 冷凍倉庫が満たすべき基準と必要な設備

冷凍倉庫の温度帯の定義

2024年4月に改正された倉庫業法では、冷蔵・冷凍倉庫を10の区分に分けて定義しています。以下は、旧区分と新区分を比較し、温度帯を示した表です。

冷凍倉庫の温度帯の定義

画像出典:「倉庫業法第三条の登録の基準等に関する告示」の改正について

Cは冷蔵、Fは冷凍、SFは超低温を指す区分です。つまり倉庫業法に基づけば、冷凍倉庫とは、マイナス18度以下の温度帯で製品を保管できる倉庫を指します。

冷凍倉庫が満たすべき基準と必要な設備

倉庫業法では、前述の温度設定に加え、冷凍倉庫が満たすべき基準として以下が定められています。

  • 防水性能
  • 耐火(防火)性能
  • 通報機の設置
  • 消化器具の設置 など

参考:「倉庫業法施行規則等運用方針

また、エアコンや温度計が必要なほか、外気の影響を最小限に抑えるためにドックシェルターの設置も有効です。床、壁、天井、扉に、防熱性の素材を使用することで、霜や湿気を抑えられる効果があります。

冷凍倉庫による保管が適した製品

マイナス18度以下の冷凍倉庫に適した製品は、大きく分けて以下の通りです。

  • 冷凍食品
  • 魚介
  • 畜肉
  • アイスクリーム
  • パン生地 など

またマイナス40度以下の超低温倉庫には、マグロなどの保管が適しています。

食品衛生法に基づいて厚生労働省が定めた告示では、細かい製品ジャンルごとに保存温度の基準が示されています。「食品、添加物等の規格基準」も参考になさってください。

冷凍冷蔵倉庫の種類

冷凍冷蔵倉庫は、立地や利用目的別に大きく3つに分けられます。必要とする冷凍倉庫はどのタイプか、確認しましょう。

  • 流通型冷凍冷蔵倉庫
  • 港湾型冷凍冷蔵倉庫
  • 産地型冷凍冷蔵倉庫

流通型冷凍冷蔵倉庫

流通型の冷凍冷蔵倉庫は、高速道路のICや消費地のほど近くにあります。

スーパーやコンビニ等、各店舗へ効率よく配送できることが特徴です。食品の卸業や小売業に活用されています。

<関連記事>「3温度帯とは?4温度帯との違いや冷凍・冷蔵倉庫の温度について解説

港湾型冷凍冷蔵倉庫

港湾型の冷凍冷蔵倉庫は、貿易港の近くに位置しています。

主に輸入製品の保管を目的としていることが特徴です。食品メーカーや食品輸入会社に利用されています。

産地型冷凍冷蔵倉庫

産地型の冷凍冷蔵倉庫は、野菜、果物の産地や漁港の近くに位置しています。

鮮度を落とさずに保管し、必要な分だけ出荷することが主な利用目的です。農協や漁協などに活用されています。

冷凍倉庫の市場規模|需要は拡大傾向

冷凍倉庫の市場規模|需要は拡大傾向

年によって多少の増減はあるものの、冷凍倉庫の市場規模は緩やかに拡大傾向です。背景には、冷凍食品のニーズ増加が挙げられます。共働 きや単身、高齢の世帯が増加し、店舗に買い物にいく手間の削減ができて、簡単に食べられる冷凍食品のニーズが高まっているのです。

令和5年における国民一人当たりにおける冷凍食品の消費量は23.2kgを示しており、30年前の平成5年における13.6kgと比較して約10kgも増加しています。

参考:「国内消費量推移|一般社団法人日本冷凍食品協会

これに伴い、冷凍冷蔵倉庫の所管容積(荷物を保管できるスペース)も増加傾向です。コールドチェーン全体の市場も、今後さらに成長していくと予測されています。

<関連記事>「コールドチェーンとは?3つのメリットと課題を徹底解説【市場規模は拡大傾向】

冷凍倉庫業界の課題と今後|老朽化と自然冷媒への切り替え

冷凍倉庫業界の課題と今後|老朽化と自然冷媒への切り替え

一方で、冷凍冷蔵倉庫の業界には、課題が潜んでいます。2023年時点で築年数40年以上の倉庫が約33%を占めており、老朽化が進んでいるのです。

加えて、環境保護の観点から冷媒機器の転換も求められています。現存倉庫の約6割で使用されている特定フロン(HCFC)はオゾン層を破壊するとして、2020年に生産中止となりました。その後、代替フロン(HFC)に切り替えられてきましたが、これも温室効果ガスにあたるため、削減が要請されています。自然界に存在する物質を使用した自然冷媒への転換が必要です。

しかし建築費や電力費が高騰する昨今、冷凍冷蔵倉庫への設備投資やメンテナンスの負担が倉庫事業者に大きくのしかかります。そのため、今後改廃が進み、冷凍冷蔵倉庫が不足する懸念が高まっているのです。

こうした課題を念頭におきつつ、冷凍倉庫を選択し、早めの確保に動くとよいでしょう。

冷凍倉庫を利用する3つの手段

次に冷凍倉庫を利用する手段を3つ紹介します。先述する2つは、冷凍倉庫を保有している物流会社と、不動産デベロッパーを前提としています。

  • 物流会社に物流業務をアウトソーシングする
  • 不動産デベロッパーの賃貸物件に入居する
  • 自社で冷凍倉庫を保有する

物流会社に物流業務をアウトソーシングする

1つ目は、冷凍倉庫を保有する物流会社に物流業務をアウトソーシングする手段です。

保管だけでなく、次の業務を委託できます。

  • 入荷
  • 検品
  • 流通加工
  • ピッキング
  • 仕分け
  • 出荷
  • 在庫管理
  • 上記に要する人材の確保

3PLと呼ばれる業態では、物流戦略の設計・提案を担う物流会社もあります。ボリュームディスカウントにより、冷凍配送の運賃が安くなるメリットも。

冷凍倉庫に必要な温度管理や衛生管理も任せられるため、一番手軽な手段といえるでしょう。当社、富士ロジテックホールディングスは、冷凍倉庫の物流業務を承っております。

<関連記事>「冷凍配送とは?|適切な発送方法・梱包資材、注意点を解説

物流不動産デベロッパーの賃貸物件に入居する

2つ目は、不動産デベロッパーの冷凍倉庫に入居する手段です。不動産デベロッパーには、マルチテナント型施設とBTS型施設の2種類があります。

  • マルチテナント型施設ー複数のテナントに向けて賃貸する汎用性の高い施設
  • BTS型施設ー特定のテナントに向けて、オーダーメイド設計で建設する施設

需要増加に伴いマルチテナント型の冷凍倉庫が増加しつつあります。商材の特性や運営の仕方に合わせて、倉庫内のレイアウトを自社で設計したい場合は、BTS型施設を選ぶとよいでしょう。

主な物流不動産デベロッパーには、日本GLPや、プロロジス、大和ハウス工業、霞ヶ関キャピタルなどが挙げられます。

自社で冷凍倉庫を保有する

3つ目は、冷凍の自家用倉庫を保有する手段です。自家用倉庫であれば、倉庫業法は適用されないため、設備の法定耐用年数や細かい基準に縛られません。立地や広さなどの制約も受けないため、自由度は高いといえます。

一方で、イニシャルコスト、ランニングコスト共に負担が大きくなる点を踏まえると、物量が確保された大手企業に限る選択肢でしょう。初期投資を回収できる見通しが立つ場合に、検討する余地があります。

冷凍倉庫の選ぶ際のポイント3つ

冷凍倉庫の選ぶ際のポイント3つ

では、冷凍倉庫を選ぶ際、どのようなポイントに着目して選択肢を絞れば良いのでしょうか。ここでは、3つのポイントを紹介します。

  1. ランニングコスト
  2. 過酷な作業と人材の確保
  3. ノウハウの必要性

ランニングコスト

冷凍倉庫の設備は耐用年数が短く、メンテナンスも必須です。また24時間監視体制があることが望ましいといえます。そのため設備費、電力費、人件費などのランニングコストが、常温倉庫と比較して高い傾向です。

物流業務をアウトソーシングする場合、割高に感じられるかもしれませんが、自社で運用する場合も試算して、比較するべきでしょう。

過酷な作業と人材の確保

冷凍倉庫は、マイナス18度以下の過酷な環境で作業しなければなりません。加えて、2030年に向けて労働力不足が加速します。そのため、作業者の人材確保が困難になる可能性があるでしょう。

人材の確保は、倉庫の立地に左右される側面があります。冷凍倉庫を選ぶ際には、交通の利便性などをチェックしてみてください。また、人材の確保を物流会社に任せてしまうことも、ひとつの手です。

<関連記事>「2030年問題が物流に及ぼす影響と荷主企業ができる対策

ノウハウの必要性

冷凍倉庫の設計や運用には、ノウハウが必要になります。

  • 温度帯ごとに異なる結露対策
  • 効率的な倉庫内の動線
  • 温度管理、衛生管理 など

こうしたノウハウを自社内で確立できるかどうか判断してみてください。これにより冷凍倉庫の選択肢が変わってくるでしょう。

富士ロジテックホールディングスの冷凍倉庫

富士ロジテックホールディングスは、物流代行を承っております。4温度帯(常温、定温、冷蔵、冷凍)の倉庫を保有しており、冷凍とその他温度帯の商品を一緒に保管することが可能です。

冷凍倉庫では、24時間365日温湿度をモニタリング。万が一異常が発覚した際は、即座に対応措置を講じます。また防鼠管理、防虫機器設置、防塵塗装床によりクリーンな倉庫環境を維持しております。衛生管理もお任せください。

在庫管理には、自社開発のWMSとOMS・WMS一体型クラウドシステムの両方を活用していますので、ニーズに沿ったご提案が可能です。

富士ロジテックホールディングスは、創業以来100年以上にわたる実績と共に培った、ノウハウとコールドチェーンのネットワークを活かし、お客様の物流をサポートしております。

ぜひ、冷凍倉庫の逼迫が本格化する前にお問い合わせください。

富士ロジテックホールディングスの冷凍・冷蔵倉庫発送代行サービスを確認する

冷凍倉庫が不足する前にご検討を!

冷凍倉庫が不足する前にご検討を!

冷凍倉庫には、倉庫業法上、満たすべきさまざまな基準が設けられています。他社の製品を預かる営業倉庫は、その厳しい基準を満たし、国土交通大臣の登録を受けた倉庫です。そうした冷凍倉庫は、老朽化や環境問題の影響でこの先、不足が懸念されてます。

一方で、世界的に見てもコールドチェーンの市場は拡大傾向にあり、ビジネスチャンスが眠っているともいえるでしょう。

先々を見据え、ご検討はお早めに進めることをおすすめします。

<関連記事>「発送代行サービスとは?メリットやデメリット、おすすめの発送代行業者5選を徹底解説!

 

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ライター

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