物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
ECや通信販売の普及により、ユーザーのニーズは多種多様となっています。ニーズに応えるために物流業務の品質向上が求められるようになり、今後も、物流のプロが担うフルフィルメントサービスの需要が高まることが予想されます。
とはいえ、単純に物流業務をアウトソーシングするだけで、品質向上が叶うとは限りません。委託できる業務範囲や倉庫環境、コストなど、依頼する企業によってサービス内容が異なるためです。自社に合ったサービスを利用するためには、事前に確認するべき点が多くあります。
本稿では、フルフィルメントのサービス内容を紹介し、利用のメリット・デメリット、導入時の確認ポイントを解説します。
EC・通販におけるフルフィルメントとは
フルフィルメントとは、主にECや通信販売においてユーザーが商品を購入したあとにおける物流業務のプロセス全般を指す言葉です。
商品を入荷してから発送までの物流業務だけでなく、決済や問い合わせ対応、返品対応まで含みます。フルフィルメントサービスは、ユーザーが商品を購入してからエンドユーザーが商品を受け取るまで、必要な業務すべてを委託できるサービスです。
EC・通販におけるフルフィルメントの業務内容
フルフィルメントの業務範囲は、サービスを提供する企業によってさまざまです。ここでは、フルフィルメントの基本的な業務内容を紹介します。
- 入荷検品・検収
- 商品保管
- 受注関連業務
- ピッキング
- 梱包業務
- 発送業務
- 決済業務
- 顧客対応および返品交換業務
入荷検品・検収
物流倉庫に商品が納品された後、検収・検品を行い、在庫管理システムにデータを反映するまでの一連の作業を入荷作業といいます。検収では、商品と数量が正しく納品されているか確認を行い、検品で商品の品質チェックを行います。
<関連記事>「検品作業とは?仕事内容と問題点・ミスなく効率化するコツを紹介」
商品保管
商品の保管は、在庫数の把握やスムーズな出庫作業が行えるように管理することが重要です。代行会社のなかには、リアルタイムで商品管理の状況を依頼者と共有できるシステムを活用するケースもあります。
商品の特性にあった適切な保管環境の整備も肝要です。たとえば、食品や医薬品を扱うケースでは、冷蔵や冷凍などの温度管理に対応した特殊な倉庫や、賞味期限を管理するためのシステムが必要な場合もあるでしょう。
<関連記事>「ロケーションとは?倉庫の在庫管理を効率的にするロケーションの付け方」
受注関連業務
通販サイトやECから注文を確認後、在庫管理システムと連携し出荷業務を進めます。注文を受け付ける方法は、Web上以外にコールセンターやファックスの場合もあります。
ピッキング
受注後、出荷指示の内容に沿って該当商品を保管場所から取り出す業務をピッキングといいます。ピッキングは、基本的には人が行う作業のため、ミスが起こりやすい業務です。正確な業務を遂行するために、ピッキング支援システムを導入する代行会社もあります。
<関連記事>「ピッキング作業ミスをなくす10の方法!【倉庫従事者がコツを直伝】」
梱包業務
梱包作業はユーザーに商品を安全に届けるうえで重要な業務です。梱包が雑な場合、配送中の衝撃で商品が破損するリスクがあるためです。また、顧客ニーズに合わせてラッピングやノベルティーの同封などを行うケースもあります。
発送業務
梱包完了後、運送会社に連絡して車両を手配します。ドライバーに商品を引き渡し、発送業務が完了します。必要に応じて、顧客に対して発送完了の旨と追跡番号をお知らせします。
決済業務
決済業務では、購入後に決済が問題なく完了しているかを確認をします。EC事業者と決済会社を仲介し、契約の手続きを行うケースもあります。
顧客対応および返品交換業務
顧客対応は、商品の不具合によるトラブル時に、返品や交換対応をする窓口業務です。諸問題の解決をサポートする役割を担います。
<関連記事>「返品・交換 物流フルフィルメントサービス のメリット」
フルフィルメントと3PLの違い
3PLとは、荷主の物流部門全体の業務を、物流専門業者(第三者企業)に委託できるサービスです。サードパーティーロジスティクス(Third Party Logistics)を省略して、一般的に「スリーピーエル」と呼ばれています。
3PLは、物流業務の効率化を図るだけでなく、より効率的な運用ができるよう、物流業務の見直しや改革の提案、物流戦略の考案など、業務全般の包括的なサポートが受けられることが特徴です。
フルフィルメントと3PLは、包括的なサポートが受けられる点では同じですが、委託できる業務範囲に違いがあります。3PLは、物流業務全般を委託できる仕組みに対して、フルフィルメントは物流業務全般の業務に加えて、商品購入時の決済や問い合わせ対応、返品業務まで広い範囲の業務を担います。
フルフィルメントは、バックヤード業務を一元化できるため、ユーザーに対してスムーズに商品を届けることが可能です。フルフィルメントによる業務効率化は、顧客満足度向上につながるだけでなく、企業のブランディングにもよい影響を与えられるでしょう。
フルフィルメントサービスを利用するメリット
フルフィルメントサービスには、以下のメリットが挙げられます。
- 業務の効率化
- 顧客満足度の向上
- コスト削減
業務の効率化
フルフィルメントサービスを導入することで配送業務の負担がなくなり、業務効率化につながります。これまで、配送業務に充てていた時間を削減できるため、本来のコア業務である、マーケティングや商品開発に集中できるようになります。
顧客満足度の向上
プロのフィルフィルメントサービスに依頼することで、物流業務がスムーズになり梱包やラッピングなど、より質の高いサービスが提供可能です。そのため、顧客満足度の向上につながり、売上アップが期待できます。
ECや通信販売で商品を扱う店舗や企業は年々増加傾向です。物流をプロに任せて、ミスの削減や配送スピードの向上を実現することで、競合他社との差別化を図れます。
コスト削減
フルフィルメントサービスの利用により、固定費のコスト削減ができます。具体的には、商品を保管する倉庫や物流業務の人材が不要になるため、倉庫の賃料や、水道光熱費、人件費などの削減が可能です。削減できた固定費は、物量に応じた変動費に変わるため、コストの無駄を減らせます。
<関連記事>「EC事業者必見!物流コストを削減するコツ」
フルフィルメントサービスを利用するデメリット
フルフィルメントサービスには、次のようなデメリットが挙げられます。
- ユーザーの声を拾いにくい
- 物流ノウハウが培われない
ユーザーの声を拾いにくい
ユーザーが商品を購入してから受け取るまでのサービスを、代行会社がすべて行います。そのため、直接的なユーザーの声を拾いにくい環境になり、ニーズをつかみづらくなるデメリットがあります。
SNSやホームページなどでアンケートを取るなど、ユーザーからの声を集める工夫が必要です。
物流ノウハウが培われない
物流業務を完全に委託するため、自社における物流業務のノウハウ蓄積が難しくなります。
ECバックヤード業務を把握するスタッフを育成するために、また物流業務を丸投げにしないためにも、代行会社との積極的なコミュニケーションが不可欠です。現場視察や定期的なミーティングを通じて、自社内でも物流業務を把握できるように努めましょう。
フルフィルメントサービス導入時の確認ポイント
フルフィルメントサービスを導入する場合は、自社に合ったサービスを利用するために次のポイントを事前に確認しておきましょう。
- 導入目的を明確にする
- サービス範囲を確認する
- 倉庫環境を確認する
- 委託コストを確認する
導入目的を明確にする
フルフィルメントサービスの業務範囲は、委託する会社によってさまざまです。自社に合った最適なサービスを受けるためには、「バックヤード業務の品質向上」「梱包・発送業務の効率化」など、フルフィルメントサービスを導入する目的を事前に明確にしておくことが重要です。
サービス範囲を確認する
委託先によっては、依頼したい業務が対応できないケースが少なくありません。委託したいサービスを請け負っているか、事前に確認しておくことも重要です。
特に、人手が必要な流通加工や同梱作業などを依頼する場合、繁忙期などの依頼時期によっては委託できない可能性があります。返品・交換や土日祝日の対応も確認が必須です。依頼内容を明確にしたうえで、複数社を比較・検討しましょう。
倉庫環境を確認する
委託先の倉庫環境を確認することも大切です。商品の保管場所や温度管理の有無など、自社商品が適切に保管できる環境であるか事前に確認しておくと安心です。
温度管理が必要な場合は、別途料金が発生することもあるため、注意しましょう。
また、委託先の拠点数や場所も重要です。商品の入出荷のタイミングにかかわるため、全国発送が多い場合は、全国に拠点を設けている企業のフルフィルメントサービスを利用するなど、納品地域のボリュームゾーンを想定して検討する必要があります。
委託コストを確認する
フルフィルメントサービスの料金は、委託先によってプランがさまざまです。たとえば、保管料の場合、坪数・ピース数で請求する企業もあれば、ひと月の出荷数に応じて変動する企業もあります。保管料だけでも多くの料金形態が存在するため、注意が必要です。
商品の保管料や入出荷料のほかに、導入時に発生する「初期費用」や基本料金に含まれない「オプション料金」なども発生するケースがあります。委託を検討する際には、月額のシミュレーションの提示を依頼すると安心です。
フルフィルメントサービスを提供する企業3選
ここからは、フルフィルメントサービスを提供する3つの企業を紹介します。
- 富士ロジテックホールディングス
- ヤマト運輸
- Amazon
富士ロジテックホールディングス
富士ロジテックホールディングスは、EC事業に必要な受注処理から在庫管理、梱包・出荷、返品交換対応業務など、すべての物流業務を一括代行するサービスを提供しています。
代行するだけでなく、既存のEC物流や発送業務の課題やブランド戦略の悩みに対して、物流のプロである専門コンサルタントが適切な策を検討・提案を行い、解決に向けたサポートまで担います。
全国各地に出荷拠点を設けており、事業拡大により出荷量が増加した場合でも、スムーズな出荷が可能です。商品ピッキング料は10円から、入庫料は15円からと、低価格かつ柔軟な対応ができる仕組みが整っています。
ヤマト運輸
ヤマト運輸が提供するフルフィルメントサービスは、ヤマト運輸保有の倉庫に商品を保管し、物流業務(入庫・保管・受注・梱包・出荷・配送・代金回収)をすべて代行する仕組みです。顧客のニーズに合わせて流通加工やFBA向けの納品代行など、オプション利用も可能です。
また、ヤマト運輸の運送ネットワークの利用により、24時間365日出荷できる体制が整います。関東・関西(一部地域)であれば、当日配送も可能です。スピーディな対応ができるため、顧客満足度の向上にもつなげられるでしょう。
なお、料金体系は、配送代行手数料+在庫保管手数料となっており、登録料や月額料は0円で利用できます。配送代行手数料は全国どこでも統一料金と、シンプルな料金設定で初めてでも安心です。
Amazon
Amazonが提供する「フルフィルメントサービス by Amazon(FBA)」は、Amazonの配送ネットワークを活用して、注文の受注から梱包、発送、カスタマーサービス、返品対応まですべて代行できるサービスです。
FBAを利用すると、その商品は当日配送やお急ぎ便が利用できる「Amazonプライム対象商品」として扱われるため、急ぎで商品が欲しいと考える層の需要が高まりやすくなるメリットがあります。
出品点数に応じて次の2種類のプランがあり、登録時に選択可能です。配送料・在庫保管手数料は出荷する商品のサイズによって異なるため、FBAシミュレーターで平均コストを算出すると安心です。
<販売手数料>
- 小口出品プラン:1商品ごとに100円
- 大口出品プラン:月額4,900円
<関連記事>「AmazonFBA納品の手順や料金、禁止商品、梱包ルールを徹底解説!」
富士ロジテックホールディングスの特徴
ここからは、富士ロジテックホールディングスのサービスの特徴を紹介します。
- データ連携ができる
- 独自でシステムを開発している
- OMS・WMS一体型システムで自動出荷できる
- 365日出荷できる
- 冷蔵・冷凍商品が扱える
- 流通加工ができる
データ連携ができる
- 受注があるのに発送が遅れている
- 出荷ミスでリピートユーザーが減っている
上記のようなミスがあると、よい商品を提供していたとしても、リピーター顧客の獲得が難しくなります。
そこで、これらのミスを減らすためにも富士ロジテックホールディングスでは、既存のシステムとデータ連携を円滑に行える環境を整えました。データ連携により、顧客管理や受注管理などをスムーズに進められます。
独自でシステムを開発している
通販物流において、顧客に商品を正確に届けるために受注管理・在庫管理などのシステムの活用が必須となっています。
しかし、既存のシステムで対応できる範囲は限られるため、取り扱う商品によっては、システムを活用できていない例は少なくありません。企業の業務内容や商品に合うシステムの選択が必要ですが、多数あるシステムから、適切なシステムを選ぶことが難しいのも現状です。
富士ロジテックホールディングスでは、物流経験のあるSEが企業のニーズに合わせて独自にシステムを開発しています。そのため、企業ごとにカスタマイズした最適なシステムを提供できます。
OMS・WMS一体型システムで自動出荷できる
富士ロジテックホールディングスでは、OMS(注文管理システム)・WMS(倉庫管理システム)が一体となった、受発注管理一体型のクラウドシステムも活用しています。
受発注管理一体型システムを活用すると、受注~発送までの業務をすべて自動化できます。受注の段階から自動的に出荷が完了する仕組みのため、大幅な業務改善につながります。
すでに利用中のECサービスとのシステム連携も対応できるため、自動出荷に移行を検討中の場合も安心です。
<関連記事>「EC自動出荷の仕組みとは?一般的な物流代行との違い、メリット、注意点を解説」
365日出荷できる
楽天市場をはじめ、Yahoo!ショッピングなどの大手ECモールで売上を向上させるためには「365日出荷できる柔軟性」と「配送品質の高さ」が重視されます。
EC事業者のなかには、出荷対応が間に合わず店舗売上が約90%減少した例もあるなど、ユーザーのニーズに応えるためには、柔軟な出荷体制が重要となっています。
富士ロジテックホールディングスでは、365日出荷対応はもちろんのこと、お客様のニーズに合わせて依頼内容をカスタマイズできます。たとえば「平日は発送代行のみを依頼する」「土日は受注処理からフルフィルメントを依頼する」などのケースにも柔軟に対応可能です。
冷蔵・冷凍商品が扱える
富士ロジテックホールディングスでは常温保管だけでなく、温度管理が必要な冷蔵・冷凍商品も保管可能です。商品特性に応じた温度帯で、衛生的で正確な商品管理を行っています。
また、温度帯の管理だけでなく、商材によっては賞味期限の管理も担います。独自のWMSを活用することで、原材料・製造工場の違いなどによる、多品種小ロット管理も可能です。先入れ先出しや出荷製品のトレース機能まで兼ね備えているため、さまざまなニーズに対応できる仕組みが整っています。
流通加工ができる
流通加工とは、アパレル商品の検針・プレス加工・縫製や値札・タグ付け・ラベル貼り・ラッピング・ギフトアソートの作成などが挙げられます。流通加工は、商品価値を向上するだけでなく、商品の安全性の証明になるため、多くの企業で重視される作業です。
富士ロジテックホールディングスでは、アパレルや食品、日用雑貨品、精密機器、通信機器、医療機器など、幅広い商品の流通加工に対応しています。実績や経験が豊富なため、質の高い流通加工の技術を提供できます。
フルフィルメント業務を外注して、EC運営の物流を効率化しよう!
フルフィルメントサービスは、物流業務全般を第三者企業にアウトソーシングできるサービスです。物流のプロが物流業務を代行するため、配送までの業務効率化や梱包の品質向上が期待できます。また、EC事業者様は物流業務の負担がなくなり、業務効率化を進められるメリットがあります。
ただし、フルフィルメントサービス業者は複数あるため、自社に合ったサービスを利用するには、サービス範囲の事前確認が重要です。
富士ロジテックホールディングスでは、既存の運営システムとデータ連携が可能であり、フルフィルメントサービス利用への移行がスムーズに行えます。現状を把握したうえで、最適なサービス提案が可能なため、まずはお気軽にお問い合わせください。
発送代行完全ガイド
発送代行に関しての基礎知識が全てわかる徹底ガイドです。発送代行サービスを検討されているEC事業者様は是非ご覧下さい。
ライター
梅山茜
物流会社でEC発送代行のバックオフィス業務に従事する複業ライター。好奇心旺盛な性格で、過去に営業職や販売職、医療ソーシャルワーカーなどを経験。豊富な経験を活かして物流、医療・福祉、資格、ライフスタイル記事など幅広い分野の執筆を担当する。カテゴリー問わず、便利で使いやすい商品やサービスを求めて、ネットサーフィンを繰り返す日常を送る。趣味は旅行とレトロモダンなカフェ巡り。
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