【D2C/eコマース/OMO ビジネスモデル編】[零売]とは?メリット・デメリットと今後について
Written by 植島 寛子
医療用医薬品の購入に関する零売という制度をご存じでしょうか。古くからある零売という販売形態ですが、聞きなれない言葉で意味や制度を知らないという方もいるでしょう。今回は、零売についてご紹介していきます。
零売とは?
零売とは、医師の処方箋なしに医療用医薬品を購入できる制度です。分割販売と言われることもあります。零売で購入できる医療用医薬品は病院で取り扱っているお薬約15,000種類の内、制度にて認められた約7,300種類です。毒薬や劇薬、新薬といったリスクの高い医療用医薬品は利用できません。実際に利用するには、以下の手順を踏みます。
- 購入者が自分の症状をよく理解している
- 薬剤師の対面によるカウンセリングを受ける
- 薬剤師が販売できるか判断
- 購入者に必要な医療用医薬品や漢方薬を適量購入できる
零売のメリット
零売には、メリットが多いです。零売の3つのメリットをご紹介していきます。①手軽に医療用医薬品が手に入る
零売制度を利用すれば、ドラッグストアで販売されている一般用医薬品よりも効果の高い医療用医薬品を手軽に購入できます。仕事や育児で忙しくて病院に行けない、人混みを避けたい場合も、零売制度を採用している薬局に行けば欲しい薬が入手可能です。効果的な薬を簡単に入手したい時にぴったりでしょう。
②受診料を節約できる
通常医療用医薬品を処方してもらうためには、病院での診察が必要です。病院で診察すると、受診料がかかります。零売は、受診料がかかりません。受診料の支払いが家計を圧迫していると感じる時の心強い味方になってくれます。
③処方箋の期限を気にしなくてもいい
処方箋を受け取ると、4日以内に薬局で薬を購入しないといけません。4日を過ぎると、処方箋の有効期限が切れてしまいます。薬局が空いている時間に足を運びにくい人にとっては、不便です。しかし零売制度であれば、有効期限を気にする必要はありません。好きなタイミングで購入できるので、メリットを感じる人も多いです。
零売のデメリット
零売にはデメリットもあります。購入者がデメリットに感じやすいことを3つまとめてみました。①零売を行っている薬局が少ない
零売は、どの薬局でも行っている販売制度ではありません。零売は通常病院で販売されているような効き目の薬を販売しているので、薬局は守る必要のある細かな項目が多いです。
例えば販売する薬は調剤室か備蓄倉庫で保管しないといけません。そのためある程度の広さのある薬局でないと取り扱いが難しいです。さらに販売する薬剤師にも対面販売し、購入者に関する記録を取る手間が掛かるなど負担がかかります。零売薬局がお近くに無い場合は、利用自体が難しいでしょう。
②保健適応外
零売で販売されている医療用医薬品は、保険適応外です。販売している零売薬局が医療用医薬品の価格を設定できるので、病院で処方された時とは価格が異なる場合が少なくありません。安く手に入ることもありますが、反対に価格が高い薬もあります。受診料がかからない零売ですが、薬代が高くて大きな節約に繋がらないこともあるので注意です。
③安全性の問題
医療用医薬品は、基本的には医師の診断を受けて購入するものです。零売で購入できる薬は制度にて認められたものですが、薬の効果や副作用は利用者やその時の体調によって変わります。特に使用経験のない薬を購入する場合、慎重になることが望ましいです。薬を服用した後の相談先や対処方法は担当した薬剤師に確認しておくといいでしょう。
零売の今後について
日本では、零売は対面が制度として義務付けられています。日本でも世界的なパンデミックのこともあり、ネットで処方薬を調達したいという声も少なくありません。オンライン診療やオンラインで処方せんを受付する制度も増えている一方、零売に関しては以前対面が基本です。対面が基本の理由は、以下の3つを危惧していると考えられます重篤な副作用を防ぐ
偽薬が出回ること
買占めで転売される
今後オンラインでも零売が利用できるようになるには、いかに安全に届けられるかが課題になって来るでしょう。
海外では?
諸外国に目を向けるとオンライン薬局がネットで処方箋を受ける制度が日本よりも進んでいる印象です。例えば大手ECモールのアマゾンは処方薬のオンライン薬局「Amazon Pharmacy」を米国で展開しています。オンラインでジェネリックやブランド医薬品の詳細情報や仕様を確認して納得したうえで、通常のアマゾンでの買い物をするように処方薬を購入可能です。しかしAmazon Pharmacyも医師による処方箋が必要です。今後国内外でもオンラインで薬を購入する方法は見直しや改善が進むでしょう。