【物流コラムシリーズ】荷主と物流会社のコンフリクト(衝突)



荷主会社から委託している物流会社に対する不満の声を聞く機会があります。そこには物流コストに関わる問題から、入出荷のリードタイムの問題、さらに物流会社からの提案がないなどの多岐にわたるケースが多いです。今回のブログでは、荷主会社と物流会社との間で起こるコンフリクト(衝突)の原因とその解決策について解説したいと思います。

企業が売上拡大だけでなく、利益を考えた時に、物流にかかるコストは経費で、少しでも安く抑えたいと考えるのは必然で、特にモノがなかなか売れない時代に物流コスト削減は、経営者にとってもすぐにでも着手したいと考えているのではと思います。

ただ、物流会社も荷主会社の物流業務を受託することで売上や利益を上げたいと考えており。そこには、少しでも物流コストを安く抑えたいと考えている荷主会社と、物流売上を上げたいと考えている物流企業との間では二律背反となりコンフリクトが発生します。

そのように考えると、店頭や卸先の要望に応え、なるべく早く届けてほしい、それも安価な物流コストを要望され、さらには「物流会社から提案がない」と荷主会社から不満の声が上がるのは、かなりわがままな話ではないかと感じます

第1回目のブログで「物流会社を変えても無駄!」と、自社の物流のことを理解しないまま、物流会社に依頼し、物流コストだけで評価している点について触れましたが、ではどうすれば荷主企業と物流会社は有効関係を築けるのでしょうか。

物流会社のことを3PL(サードパーティロジスティクス)とも言いますが、その3PLの定義を調べてみると、「荷主企業のロジスティクスを物流改革の提案から運営までを包括的に委託し、3PL事業者自身が荷主企業の立場・視点から物流効率化(物流費削減、供給の迅速化、売上の拡大など)を実現する物流形態」としており、自社物流における戦略パートナーとも言えるのではと思います。

この点から、荷主会社のわがままだけを聞いて、物流コストが上がるのは物社会者としての役割を果たしていないとも言えます。物流会社は自社の利益を確保しつつ、荷主会社の物流効率化を実現するためには、どうすることがよいのでしょうか?

では、具体的に荷主会社が抱える不安と物流会社が抱える不安について考えて見たいと思います。

■荷主会社から物流会社への不満の声
 ① 物流コストの増加要因がわかりにくい
 ② 自社の物流費は適正なのか判断できない
 ③ 店舗や営業の要望に応えてくれない

これ以外にも、リードタイムの問題や、誤出荷など納期や物流品質に関する不満があります。荷主会社からすると、毎月の物流会社からの請求書を見て、初めて先月の物流コストを知る会社も多いのではと思います。

■物流会社の荷主会社への不満の声
 ①入出荷の物量などの正確な情報がもらえない
 ②突発的なイレギュラーな要件が多い
 ③専門性の高い業務や曖昧な指示が多い

物流会社としても、効率的に業務を行うためには、正確な情報と的確な指示がないと、無駄に作業人員を投入することになり、人件費が増え、その結果荷主への物流コストの見直しを依頼しないと物流会社としての赤字になってしまうことがあります。

2017年に起きたヤマト運輸をはじめとする配送会社の一斉値上げは、これまで配送会社が荷主の過度な要求応えるために過度な価格競争によって、地殻変動のように起きましたが、倉庫事業においても、高齢化や労働人口の減少、ネット通販での小口配送の増加などを考えると、その地殻変動はこの先も続くことが予想されます。

その荷主会社と物流会社のコンフリクト(衝突)の解消のひとつが、当たり前のことではありますが、円滑なコミュニケーションではと思います。その円滑なコミュニケーションを実現するための、共通の目標となるのが、物流業務における生産性の見える化です。

荷主会社は事前に正確な入出荷の物量に関する予定情報を渡し、そこにはキャンペーンなどの販促計画などもなるべく詳細な情報が必要です。さらには、荷主企業の事業部やブランドによって、担当者が異なり、予定情報などのフォーマットがバラバラなのも、物流会社が混乱する理由になるので、なるべく標準化された共通のフォーマットでの指示を行います。時にはその業務を依頼する目的なども物流会社に相談することで、倉庫での効率的な運用を提案してもらうことも可能になります。物流もシステムと同じで、正しいインプットがあれば、正しいアウトプットになります。正しくないインプットをして、アウトプットの間違いを指摘するのは、そもそもは間違っています。

そして、物流会社は、物流業務の見える化が重要になります。中でも、物流業務の生産性をそれぞれの作業単位で数値化して、物流を効率的に進めるためのボトルネックになっているところはどこなのか? その阻害要因はなんなのか?それを解決するために、物流会社だけでなく荷主会社も含め、何ができるのかを議論することが大切です。

物流費を下げたい荷主会社と物流売上を確保したい物流会社の二律背反する目的を解決する方法が、「生産性」です。荷主会社は生産性が改善されることで、物流にかかるコストが削減されます。物流企業は生産性が上がることで、その業務にかかる人件費を下げることで、利益を確保することができます。

物流コストを適正に下げて、物流会社の利益も確保するための、両社にとってのKPI(最重要評価指標)は「生産性」になります。作業単位で目標とする生産性を数値設定し、その目標に対して両社がコミットした上で、毎月や日々の生産性改善のPDCAを回すことが有効ではと考えます。

荷主会社に生産性を開示することに躊躇する物流企業もあるかと思いますが、戦
略的パートナーとして、物流効率化や物流改革によって創出した利益(ときには損失)を両社で成果按分するゲインシェアの考え方を、荷主会社にも理解してもらった上で、進めることができればと思います。

いかがでしたでしょうか?自社の物流の生産性は把握されていますか?物流会社に不満を言う前に、何が原因で物流費の増加や、誤出荷などの問題が発生しているのかを考えてみてはいかがでしょうか? その原因は物流会社ではなく、荷主会社に起因している可能性があるかもです。

また、物流会社もその事を荷主会社に理解してもらうためのコミュニケーションが大切です。男は黙って仕事!・・・そんな高倉健のような物流マンだと今の時代には不向きかも。物流の価値は伝えていくことが、今の時代を良くするひとつの方法だと思います。


【コラム連載】

株式会社リンクス 代表取締役 小橋 重信
https://www.linkth.co.jp/

アパレル会社在職中に上場から倒産までを経験し、在庫が滞留することの怖さを知る。その後IT企業での実務経験を経て、物流会社にて100を超える企業のEC物流の立ち上げや物流現場のマネジメントを行い、現在は、物流コンサルとし企業の物流戦略見直しや、物流会社の業務支援、オムニチャネル協会の 物流アドバイザリーやセミナー講師として活動中。企業ミッションは「物流ですべての企業を元気にする!」