【中山茂マーケティングデザイン】EC歴25年 元運営責任者が語る「ECに投資する前にこれだけは知ってもらいたいこと」第一章

オムニチャネル

Written By 中山茂マーケティングデザイン株式会社 代表 中山茂

第一章 オムニチャネルという言葉の功罪

私はネット社会黎明期だった1996年に千趣会にてネット上通販の仕組みであるイーコマース(EC)を手作りで構築して以来、ネットマーケティング中心に業務と経営を行ってきました。ECサイト立上げ当初は年間ネット経由売上げ20万円というさんざんな結果で、当時は「中山はパソコンで遊んでいる」と言われたものです。ただ、その後のネット環境の発展やもともと通信販売という基本的な仕組みもあったこともあり2010年にはネット経由売上げを700憶円にまで拡大することができました。


数字だけ見ると成功物語のように思えますが、その過程は失敗の連続というのが実際です。当時は参考になるサイトなどない時期でしたのでECマーケティングは自己流の試行錯誤ばかりで、今思えば恥ずかしくなるような稚拙なサイト作りをしていたものです。でもまだネット黎明期だったこともあり、時代に翻弄されながらも失敗の中から身をもって学べた時代でもありました。そういった経験の中から見えてきたことを少しでもお伝えできればとシリーズで語ってゆきたいと思っています。


幸いネット社会以前から通販というビジネスをしていましたので品番管理から配送までの裏の仕組みと知見を持っていたため実質的なECへの参入のハードルは低い方でしたがネット以前の企業(今後は既存企業と表現します)はどうでしょうか。昔に比べてECをスタートさせる環境は随分整備されています。モールにも出店できますし簡単なクライドサービスからもECを立ち上げることができますがビジネスとしてはどうでしょう。「通販事業」も「ネットビジネス」も初めて、ましてや既存ビジネスと並行してネット社会に対応したビジネススキームを再構成しなければならないということはほぼ「新規事業開発」に近いことなのです。ところが既存企業が長年染みついた「小売りの概念」をそのままECに持ち込んでしまい既存ビジネスの延長でECを展開してしまうことはある意味「小売りの呪縛」でもあり私が千趣会で辿ってきた道でもあるのです。


店舗などのリアルのビジネスとECなどのネット上のビジネスを融合させることを端的に示した「オムニチャネル」という概念はそれまで言われてきた「マルチチャネル」や「クロスチャネル」の概念を進化させ、「顧客情報・管理」「商品情報・管理」を一元化させどんなチャネルにアクセスしても

「いつでも」
「どこでも」
「どのようにでも」
と、ユーザーが無意識にサービスを受けることができる状態をうまく表現できた事は「オムニチャネル」という言葉の「功」の部分です。

 

ところが「マルチチャネル」や「クロスチャネル」というチャネル変化の時代を経てしまったがゆえに「小売りの悪しき慣習」まで引きずってしまった歴史があるのです。その大きな要因としては以下の2つです

1) 過去の経緯から企業がチャネルの定義を「販売チャネル」と位置づけてしまった
2)オムニ時代になっても販売チャネルごとで部署が構成され個別評価されていた

まずチャネル定義ですが、それぞれのチャネルにはそれぞれのユーザーがいる(現在からみると「いた」と過去形ですが)のでそれぞれのチャネルのユーザーに適した対応をしてゆきましょうというのがマルチチャネル概念。チャネルごとに消費行動の違うという考え方だったわけですね。当時、ネット利用者はまだ少なくかつ特殊な時代だったので「ネット利用のユーザー」はかなり特殊で個別の情報発信と販売手法を取ったんですね。

 

そしてその後それぞれのネットチャネルが浸透してゆくにつれてリアル一辺倒のユーザーに向けて「ネットを利用すると在庫情報もリアルで確認できてご注文も楽ですよ」とご案内しネットチャネルにシフトさせようとしたのが「クロスチャネル」です。この時も完全なる融合というよりネット販売チャネルの便利さも利用して欲しいという手法です。

 

 

ただ、この時代を過ごしてきた企業にとってチャネル毎のユーザーという概念で進めてきたので潜在意識の中で「チャネル=販売チャネル」という意識が根付いてしまったのです。実際当時はそれでも理屈は通っていましたし。ただ、それがゆえにスマホやSNSが発展しあらゆるところで「ネットチャネル」がタッチポイントになりすべての行動がスマホ起点になった現在においても過去の定義が潜在的に根付いてしまってその後の消費行動を俯瞰で見られなくなった「罪」が生まれてしまったのです。

 

第二章につづく

 

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