オムニチャネルコマースの4つの機能 顧客購買体験 対談 Part02
西間木:
オムニチャネルのメリットは、顧客にとっては明らかだと思います。のでこれは別のコラムにお任せすることにします。
今回は、複数の購買チャネルにまたがる広告、在庫、フルフィルメントなどの管理はどうするべきなのかについて、まとめていきたいと考えています。
これは、コマースだけにフォーカスされた情報に埋もれていますが、その各々のパート機能で適切なテクノロジーとインハウス・アウトソースに限らずパートナーシップがない場合にはオムニチャネルサービスの提供はとても困難であることを本コラムではお伝えしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
吉村:
オムニチャネルを顧客の購買体験として成功させるには、
1:購買チャネル
2:マーケティングと広告とコミュニケーション
3:オペレーション
4:フルフィルメント
という4つの機能ポイントからなる全体的なアプローチが必要になります。
この4つの分野がそれぞれオムニチャネルなのですが、みなさんは、販売チャネルだけを捉えてオムニチャネルと言われることがあるのですが、この4つが連携することが重要です。これによって顧客層を多様化するとともに、よりスムーズなバックエンドプロセスを実現することができます。
それが顧客にとって、ポジティブなショッピング体験を提供するもとであり、顧客とブランドがつながりつづける理由になるのです。
ここでは、オムニチャネル・コマースの4つの機能ポイントと、それらがどのように組み合わされ、あなたのD2C・小売ビジネスを成長・成功させてくれるための機能を与えているのかについて機能要件とそれに関連するシステムに落しこんで俯瞰、確認していきましょう。
先ずは、MACH Alliance https://machalliance.org/ が提示しているこちらの一般的なコマース環境を構成する要素を確認してみてください。
上から
レイヤー①FRONT END
これは、ヘッドレスコマースとも表現されている、1の購買チャネルですね。
そして、それを支える各機能要素として、
レイヤー②EXEPERIENCE MANAGEMENT
として
・CMS Contents Management System:
コンテンツ・マネジメント・システム ウェブコンテンツを構成するテキストや画像などのデジタルコンテンツを統合・体系的に管理し、配信など必要な処理を行うシステム
・CAMPAIGNS:
キャンペーンマネジメントとは、適切な顧客に、適切なタイミングで情報を届け、購入率や継続率、ロイヤルティーを維持・向上する全体的な取り組みを統合的にすること
・LOYALTY
顧客体験をロイヤルティプログラムの中心にすること信頼できる自社唯一の情報源を元にパーソナライズを実現して、ロイヤルティプログラムだけではない体験を提供すること
などの機能があります。
そして、CLOUDベースでのCOMMERCE機能としてお馴染みの
・CART:カート機能
・PROMOTION:プロモーション機能
・PAYMENT:CHECKOUT:支払いとチェックアウトプロセス機能
・MERCHANDISING:マーチャンダイジング機能
・ACCOUNT:顧客アカウント機能
・ORDERS:注文・取引履歴管理機能
という機能があります。
これをサポートするための専門機能として、
・SEARCH:商品カタログやサイト内での検索機能
*広義では、キュレーションやAIなどもですが、あえて狭儀で捉えておいてください。
・PAYMENT:クレジットや、BNPLなどの外部パートナーの決済機能
などがあります。
EXECUTION機能(オペレーション執行するためのサポート機能です)として
・PERSONALIZE:パーソナライズ
・OPTIMISE:最適化・最良化・最善化
・TARGET:オーディエンスとセグメント
・ANALYSIS:収集・分析と予想
のファンクション機能があります。
そして重要なバックオフィス機能面、
レイヤー③ DATA LAYER
に入っていくのですが、
・OMS Order Management System 受注管理システム
と呼ばれる。商品の受注を一括で管理・処理するシステム
・CUSTOMER
CRMとMAなどのコミュニケーションツールですね
・PIM Product Information Management(商品情報管理)
マーケティングや営業活動のための製品・商品の情報管理の仕組み
・DAM Digital Asset Management - デジタルアセットマネジメント
デジタルデータを集約、メタ情報を付与し、必要な情報に容易にアクセスできるようにする仕組み
などが例記・列記されています。
最後に、SYSTEMS OF RECORD として、
・ERP
ここに、SCMや、WMS、IMSなどを付加する場合もあります。
・FINANCE(会計・財務)
を列記しています。
これらを、後ほど、4つの機能ファンクションに添ってどうするべきかを紐解ければと思っています。
これらを構築して、連携して、運用するためのテクノロジーとしてMACHを提唱しているわけですが、先ずは簡単にMACHについて確認をしていきたいと思います。
中田様:
それでは、そこはわたしからITエンジニアではなくてもご理解できるようにご説明していきます。
◆Microservices based マイクロサービスアーキテクチャ
*コマースエクスペリエンスを迅速に構築して最適化するためのアプローチ方法
◆API-first アプリケーション・プログラミング・インターフェース
*ソフトウェアやプログラム、Webサービスなどの間をつなぐインターフェース
◆Cloud-native SaaS(Software-as-a-Service)
*クラウドサービスとだけではなく、クラウドネイティブ開発されて提供されているソフトウエア
◆Headless ヘッドレスコマース
*eコマースエクスペリエンスのフロントエンドの顧客を、ビジネスを強化しているバックエンドシステムのコマース機能およびビジネスロジックから切り離して提供できる形態
の頭文字をとってのMACHです。
まだ、なんのことやらだと思います。
西間木:
はい、わたしもよく耳にはしますが、なんのことやらです。ので今回の対談でしっかりと理解したいと思いますので、みなさんを代表してお伺いしますね。
Microservices based マイクロサービスアーキテクチャ
中田様:
マイクロサービスとはですが
ソフトウェア開発するための設計思想(アーキテクチャ)的および開発チームなどの組織的なアプローチの仕方だと捉えてください。設計図と大工さんまたは自動車組み立てや家電を想像ください。
チーム(職人)は複数の個別のマイクロサービス(材料)を組み合わせてソフトウェア(部屋から家へ)を作成します。
マイクロサービス自体は、独立して開発およびデプロイ(構築)されて分離されているサービスとだけ覚えておいてください。これらはAPIを介して通信し、それぞれに独自のデータソースがあることがポイントです。
一番のポイントは、一般に、マイクロサービスはビジネス機能を中心に編成されているということですね。
単一のマイクロサービスを独自のパッケージ化されたビジネス機能にすることも、複数のマイクロサービスを組み合わせて1つのパッケージ化されたビジネス機能を作成することもできます。
レゴブロックみたいな感じです。
メリットは、テクノロジーチーム視点と、ビジネスチーム視点がありますが、スタッフ・ユーザーや顧客としてみてビジネスチームだけにしましょう。
スタッフ・ユーザーや顧客は、システムなんてなんでもいいです。プログラムやコードを触ることは一生ないでしょうし、触りたくもないはずです。
求めるものは、
ポイント1:
やりたいことが、どれだけ早く簡単に安くできるか
*顧客を喜ばせ、競合他社をしのぐために必要なエクスペリエンスをより機敏に構築、起動、最適化できます
ポイント2:
ベストフォーミーコマースソリューションを提供してくれるか
*ビジネスに適したソリューションを作成するためのマイクロサービスをアラカルトで選択できます。
だけです。
西間木:
アパレルなら、ファストファッションみたいなものですね。
API-first アプリケーション・プログラミング・インターフェース
中田様:
APIとはからですが、Application Programming Interfaceの略です。
簡単に言えば、機能を確保するために必要な「言語」とデータを標準化することで、さまざまなサービス(カート、カタログ、価格設定など)が相互に通信できるようにします。
それをeコマースで活用するのですが、身近なところでは、ショッピングカート、カタログ管理、チェックアウトフロー、支払いなどのサービスへのアクセスを提供しています。各APIは、eコマースソリューション全体の円滑な運用を保証するために、API間でデータを共有しているのですね。
たとえば、新商品がカタログに追加されると、カタログAPIは、カートAPIを更新せずに、新製品のカートAPIに必要な関連情報を配信しています。データを別のマイクロサービスに転送する必要がある場所でのデータフローを容易にしているということです。
eコマースAPIの特徴は、他のコマースAPIとの通信に加えて、選択したフロントエンドやサードパーティシステムなどと外部通信を容易にして統合してくれます。
西間木:
物流で言えば、商品を運んでくれるトラックとドライバーさんみたいなものですかね。目立たないけどしっかりと働いてくれているいうことですね。
3番目ですが
Cloud-native SaaS(Software-as-a-Service)
中田様:
わたしたちの、LexicaはAWSクラウド上でサービス提供しています。
クラウドネイティブSaaSのメリットですが、
1:スケーラビリティ:
独立したサービスで構成されているアーキテクチャであるので、これまでにない方法で保守と拡張が可能になるということです。
作っておしまいではないというモデルに合っているということ。
2:迅速な開発サイクル:
各サービスは、アジャイルDevOpsなどを介した継続的インテグレーションとデプロイのために自動化されていますので、迅速な開発サイクルでサービスが中断されないことを保証されているということです。
適宜、随時、機能というサービスを追加・変更・修正していけますよということ。
3:顧客中心:
SaaSプロバイダーは、大きな混乱を招くことなく、顧客の要求に迅速かつ安全に対応して、多くの場合は、より低いコストへ削減するとともにROIを実現できるということ。
適正な費用=時間と能力で提供できますよということ。提供されても高くては。顧客は満足するでしょうけど、費用対効果としても意味が無いですから。
4:スピードと節約:
開発期間の短縮が現実としてあります-
「大規模なパッチとアップグレードに6〜9か月の開発プロセスをかけるような時代は過去のものであってほしいです。」
それで、高額な費用を見積・請求されてもユーザーはビジネスを持続・発展出来ないということです。
西間木:
はやい、うまい、やすい ということですか。
最後になりますが
Headless ヘッドレスコマース
中田:
これも、立場ポジションからみてのメリットをご案内したほうが判りやすいかも知れませんね。
ポジションその1:E-コマースの事業責任者
ポジションその2:E-コマースのマーケッターやCX担当
ですかね。IT関係は割愛しましょう。
ポジション:E-コマースの事業責任者
より良い顧客体験のためのシームレスなオムニチャネルショッピングを作成して提供したいですよね。
競争にさらされているために速く動くことができることが不可欠だとみなさん言われます。
ヘッドレスコマースアーキテクチャで単一のソリューションを使用することになりますから、新しい商品ライン、ブランド、および新しいタッチポイントを簡単に立ち上げることができます。
ポジション:E-コマースのマーケッターやCX担当
各顧客の個人的なニーズに応えたい=パーソナライズしたいとのご要望がほとんどです。そのためには、コンテンツが、豊富な顧客のエクスペリエンスを設計できて、提供できるということです。
オーディエンス顧客を、新しいコンテンツに引き付け続けて貰うことが必要です、コンテンツが豊富なページとデータとそれを活用した検索とマーチャンダイジングなどで顧客の購買体験として、チャネルをシームレスにまたぐ前に、パーソナライズされた情報をもとに、顧客がいるところへコミュニケーションして、ブランドへ呼び戻すことが、一番のポイントです。
ユニファイドコマースエクスペリエンスかは別次元のプロセスと結果です。
最後に顧客視点
ですが、
パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供してくれるから、ストレスがなく安心した購入体験ができるから、ファンになる。
そのためには、過去の購入・行動などの顧客データを使用して、パーソナライズされた顧客体験として、各顧客に関連するプロモーション、オファー、およびブラウジング機能などでパーソナライズされるということです。
吉村:
ヘッドレスのご説明でお気づきだと思いますが、B2B、B2Cのいずれであっても、ビジネスモデルは重要ではなくなってきているということをお気づきだと思います。
私たちはすべて消費者(顧客)です。
ある期待を調整するときに購入体験をさまざまなビジネスモデルに分類する人は誰もいませんよね。
私たち消費者(顧客)は、
誰からでも、どこからでも商品やサービスを購入するとき、すべてのやりとり(コミュニケーション)で、同じ期待を抱いています。
私たち消費者(顧客)は、
利便性を第一に考えています、次に経験を優先しています。
いつでもどこでも購入したいのですが、少しも考えずに購入したいです。(わがままですね)顧客としてのタッチポイントの急増によりこれが現実になりました。
それに、どう流動的に対応するかだけです。そのためにはバックオフィス機能(オペレーションとフルフィルメントなど)がしっかりとしていることがあって、バックエンドのコマースプラットフォームに依存したり影響を与えたりすることもないということです。
ヘッドレスのカタログコンテンツ、価格設定、顧客プロファイル情報などを活かすために柔軟につながっていて、顧客体験を継続的に反復および進化させてサービスを提供できることがポイントだとお気づきだと思います。
西間木:
おのおのに発展・進化していくけど、重要なところではしっかりと情報交換して、つながって業務プロセスというバトンを渡せるということですね。
ありがとうございます。
次からは、4つのオムニチャネル機能について詳しくお話をお伺いしていきたいと思います。
株式会社E-リテイリングシステムズ | 代表取締役 中田 恒介 様 |
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大手ECパッケージベンダーに10年以上在籍し、主力ECパッケージ製品の開発責任者として複数バージョンの設計・開発を行った他、有名・大手サイトの構築にもプロジェクトマネージャーとして数多く参画。 |
株式会社富士ロジテック |
通販営業部 部長 西間木 智 |
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物流会社で20年経験し、直近8年間はB2C物流に携わり、取扱い商材も「アパレル、BAG・靴、輸入商材、食品、化粧品、健康食品、コンタクトレンズ、ファングッズ」など多品種でEC物流を経験。昨年からD2C_EC事業者が増えてきているので購入体験を物流側でも実現し事業者の施策(UX/CX)を一緒に考え購入者のファン化する活動を啓蒙している。EC事業者の売上を上げるために通販支援事業社として常に事業者・購入者目線で新しい仕組み構築を提案している。 |
ファシリテータ: |
吉村 典也 |
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日本の製造業を強くするためのコンサルティング会社、外資システム会社などを経て、通販、Eコマースの事業運営・CRM運用・フルフィルメント運用のアドバイザーからBPO受託までを担ってきた。OMOシステム設計・運用の視点まで含めて事業会社ととも一緒にグロースしてきた。 やずやグループの基幹CRMシステムの外販のための導入サポート業務委託を終え、そこで出会った事業者とのコミュニケーションから、まだまだ、日本のDNVBビジネスには成長の可能性、未知のカテゴリーがあると確信しつつ、1社でも多くの30億、100億円事業にグロースするためのアドバイス・サポートを提供している。 |